病院は、医療法等の関係法令により、職員研修を行わなければなりません。
具体的な研修の種類としては、
- 医療安全管理
- 院内感染対策
- 個人情報保護
- 医薬品の安全使用
- 医療機器の安全使用
- 診療用放射線の安全利用
などです。(医療法等で定められているものです)
病院の研修担当者(教育担当者)は、これらの法定研修の実施について、大変な苦労をしているものと思います。
そこで、研修担当者の負担を軽減するため、当院が行った対策について、まとめておきます。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 病院で研修担当者(教育担当者)をしている
- 病院の管理者や看護部長など
病院における「医療安全管理・院内感染管理」研修の基準
病院の研修と言えば、「医療安全管理・院内感染管理」ですよね。
なので、まず、病院における「医療安全管理・院内感染管理」研修の基準を整理しておきます。
医療安全管理体制
根拠法令は、次のとおりです。
良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について(平成19年3月30日)(医政発第0330010号)
第2 医療の安全に関する事項
1 医療の安全を確保するための措置について
(3) 医療に係る安全管理のための職員研修
平成28年改正省令による改正後の医療法施行規則第1条の11第1項第3号に規定する医療に係る安全管理のための職員研修では、当該病院等の具体的な事例等を取り上げ、職種横断的に行うものであることが望ましいものであること。
本研修は、当該病院等全体に共通する安全管理に関する内容について、当該研修を実施する病院等の従業者に周知徹底を行うものであり、年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること。
また、研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録すること。
Ⅱ 診療体制関係
1 医療安全管理体制
ウ 医療に係る安全管理のための職員研修を実施すること。
(ア) 従業者の医療安全に対する意識、他の従業者と相互に連携して業務を行うことについての認識、業務を安全に行うための技能の向上等を目的とするものであること。
(イ) 医療安全管理のための基本的な事項及び具体的な方策について実施すること。
(ウ) 当該医療機関の具体的な事例等を取り上げ、職種横断的に行うことが望ましいこと。
(エ) 当該医療機関全体に共通する安全管理に関する内容について、従業者に周知徹底を行うものであり、年2回程度開催するほか、必要に応じて開催すること。
(オ) 実施内容について記録を残すこと。(開催または受講日時、出席者、研修項目)
出典:東京都「病院管理の手引」
医療安全管理に関する職員研修は、年2回の実施義務があります。
ちなみに、診療報酬「医療安全対策加算」の施設基準において、医療安全管理に関する職員研修の企画・実施は、医療安全管理者の役割・業務と定義されています。
こんな感じです。
【医療安全管理者の役割・業務内容】
- 安全管理部門の業務に関する企画立案及び評価を行うこと。
- 定期的に院内を巡回し各部門における医療安全対策の実施状況を把握・分析し、医療安全確保のために必要な業務改善等の具体的な対策を推進すること。
- 各部門における医療事故防止担当者への支援を行うこと。
- 医療安全対策の体制確保のための各部門との調整を行うこと。
- 医療安全対策に係る体制を確保するための職員研修を企画・実施すること。
- 相談窓口等の担当者と密接な連携を図り、医療安全対策に係る患者・家族の相談に適切に応じる体制を支援すること。
院内感染対策
根拠法令は、次のとおりです。
良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について(平成19年3月30日)(医政発第0330010号)
第2 医療の安全に関する事項
2 医療施設における院内感染の防止について
③ 従業者に対する院内感染対策のための研修
平成28年改正省令による改正後の医療法施行規則第1条の11第2項第1号ハに規定する従業者に対する院内感染対策のための研修は、院内感染対策のための基本的考え方及び具体的方策について、当該研修を実施する病院等の従業者に周知徹底を行うことで、個々の従業者の院内感染に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能やチームの一員としての意識の向上等を図るものであること。
当該病院等の実情に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われるものであること。
本研修は、病院等全体に共通する院内感染に関する内容について、年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること。
また、研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録すること。
Ⅱ 診療体制関係
4 院内感染対策
ウ 従業者に対する院内感染対策のための研修を実施すること。
(ア) 研修計画は院内感染対策のための基本的考え方及び具体的方策について、病院の従業者に周知徹底を行うことで、院内感染に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能やチームの一員としての意識向上等を図るものであること。
(イ) 当該病院等の実情に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われるものであること。
(ウ) 病院全体に共通する院内感染に関する内容について、年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること。
(エ) 研修の実施内容について記録すること(開催または受講日時、出席者、研修項目)。
出典:東京都「病院管理の手引」
院内感染対策に関する職員研修も、医療安全管理と同様、年2回の実施義務があります。
ちなみに、診療報酬「感染対策向上加算」の施設基準において、院内感染対策に関する職員研修の実施は、感染制御チームの役割(業務)と定義されています。
こんな感じです。
【感染制御チームの役割(業務)】
ウ 感染制御チームは院内感染対策を目的とした職員の研修を行う。
また院内感染に関するマニュアルを作成し、職員がそのマニュアルを遵守していることを巡回時に確認する。
研修実施者・教育担当者の負担軽減ツール「学研ナーシングサポート(e-ラーニングシステム)」
当院は、「学研ナーシングサポート」を導入し、劇的に負担が軽減しました。
動画を選んで、職員に見てもらうだけでいいので。
サービス概要「学研ナーシングサポート」
- 研修のための講義動画をインターネット経由で視聴できる
- インターネットブラウザ(Chrome・Safari・Edge等)で、いつでも、どこでも見れる
- 医療安全・感染対策などの法定研修(病院全体研修)にも対応
- 講義中で流れるスライドをまとめた「講義資料」のダウンロード可能
- 1講義15分程度のため、スキマ時間を利用しての病棟勉強会にも活用可能
- 約940テーマ(2024年度)の豊富な講義動画
- 毎年度、7割の講義動画が刷新される
サービス費用「学研ナーシングサポート」
病床数 | 月額料金(税別) |
199床以下 | 39,800円 |
200~399床 | 49,800円 |
400~599床 | 59,800円 |
600床以上 | 69,800円 |
「学研ナーシングサポート」は、年度ごとの契約になっていているので、年度途中の解約はできません。
つまり、解約手続きは、毎年3月末で行われるってことです。
サービス開始までの流れ「学研ナーシングサポート」
サービスの申込みから使用開始までの流れは、こんな感じでした。
- 学研メディカルサポート申込書の提出(FAXにて)
- 教育担当(評価者)用の資料が届く
- ID(アカウント)発行手続き
- 使い方説明会(1時間程度)
当院の場合は、申込みから1週間程度で使用開始となりました。
ID(アカウント)は、職員ごと、部署ごとなど、自由に発行してもらえるので病院運営の方針にあわせて、活用が可能です。
なお、ID(アカウント)発行手続きは、学研ナーシングサポートのシステムから次の手順で行います。
出典:株式会社 学研メディカルサポート「New! ID登録申請機能 かんたん3ステップ!」
オンラインにおける研修(e-ラーニング)は、法的に問題はないのか?
オンラインにおける研修(e-ラーニング)は、法的に認められています。
このとおりです。
厚生労働省 事務連絡 令和2年5月12日
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う医療法等において定期的に実施することが求められる業務等の取扱いについて
1.医療法で規定された委員会及び研修等について
医療法で規定された委員会及び研修等については、現下の状況においては、感染予防の観点等から、オンラインで行う等の対応も検討し、柔軟に対応すること。
厚生労働省 事務連絡 令和5年3月27日
医療法等において定期的に実施することが求められる業務等について(周知)
医療法(昭和23年法律第205号)等において定期的に実施することが求められる業務等ついては、「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う医療法等において定期的に実施することが求められる業務等の取扱いについて」(令和2年5月12日付け厚生労働省医政局総務課ほか連名事務連絡。以下「令和2年事務連絡」という。)において、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた取扱いを示していたところです。
今般、新型コロナウイルス感染症の感染状況等を踏まえ、令和2年事務連絡を廃止することとしました。
なお、令和2年事務連絡が廃止された後においても、令和2年事務連絡「1.医療法で規定された委員会及び研修等について」に列挙されている委員会及び研修等については、従前通り、オンラインで行う等の対応も可能であること及び令和2年事務連絡「3.特定機能病院及び地域医療支援病院による紹介患者への医療の提供について」の取扱いは、令和4年度実績分についてまで適用することを申し添えます。
ちなみに、当院を管轄している保健所の担当者に確認したところ、オンラインにおける研修(e-ラーニング)を推奨するとのことでした。
理由としては、
- 全員参加が基本となっている法定研修だが、病院という業態において、それは不可能
- でも、オンラインにおける研修(e-ラーニング)を活用することで、勤務中の空き時間等を利用し、全職員に参加(視聴)してもらうことができる
ということでした。
保健所からのこの回答をもって、当院としては、研修の実施方法を次のように変えました。
- 月ごとに研修テーマを決める(e-ラーニングの動画を選択)
- 月内に、各職員に、研修を受講してもらう(動画を見てもらう)
- 職員は、研修受講後、研修内容についてのアンケートを記入する
- 参加者名簿とアンケートは、部署ごとに取りまとめて、事務部へ提出する
まとめ
病院の法定研修は、学研ナーシングサポートなどの「e-ラーニングシステム(オンライン研修システム)」を活用することで、研修実施者の負担が劇的に減らすことができます。
病院は、採用困難職種の集まりです。
どの職種も、ギリギリの人員の中で、勤務しています。
研修担当者(教育担当者)も通常業務と兼務で行っていることが多いと思うので、少しでも負担を軽減させてあげたいですよね。
生産性向上という意味でも、「e-ラーニングシステム(オンライン研修システム)」はオススメです。
【学研ナーシングサポート(公式サイト)】
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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