措置入院・医療保護入院等の違いとは?【精神保健福祉法の4つの入院形態】

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医師、診察、カルテ

この記事では、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法という)における、

  • 任意入院
  • 措置入院
  • 医療保護入院
  • 応急入院

の違いについて、備忘録的にまとめています。

任意入院・措置入院・医療保護入院・応急入院の概要

精神保健福祉法に基づく入院形態は、次の4つとなります。

精神保健福祉法の入院形態

出典:厚生労働省「医療保護入院制度について」

 

なお、精神保健福祉法における「精神障害者」とは、

  • 統合失調症
  • 精神作用物質による急性中毒又はその依存症
  • 知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者
  • 精神病質
  • その他の精神疾患

を有する人のことをいいます。

 

根拠としては、このとおり。

(定義)

第五条 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。

出典:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

 

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それでは、1つずつ詳しく説明していきます。

任意入院(精神保健福祉法 第20条・第21条)

任意入院は、読んで字のごとく、患者さん(精神障害者)自らの意思による入院です。

 

入院に際し、精神保健指定医の診察は必要ありませんが、患者さんへの

  • 書面による、入院(任意入院)に際してのお知らせ
  • 任意入院同意書の受取り

が必要になります。

 

こんな様式です。

【入院(任意入院)に際してのお知らせ】

入院(任意入院)に際してのお知らせ

出典:厚生労働省「障害者福祉 各種様式について」

 

【任意入院同意書】

任意入院同意書

出典:厚生労働省「障害者福祉 各種様式について」

 

任意入院は、精神科病院なら、どこでも受け入れできます。

 

ちなみに、任意入院について、精神保健福祉法では、次のように定められています。

第二十条 

精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。

 

第二十一条 

精神障害者が自ら入院する場合においては、精神科病院の管理者は、その入院に際し、当該精神障害者に対して第三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせ、当該精神障害者から自ら入院する旨を記載した書面を受けなければならない。

2 精神科病院の管理者は、自ら入院した精神障害者(以下「任意入院者」という。)から退院の申出があつた場合においては、その者を退院させなければならない。

 

任意入院は、患者さん(精神障害者)自らの意思による入院するので、原則、退院の申出があったときには、退院させなければならないことになっています。

措置入院(精神保健福祉法 第29条・法第29条の2)

措置入院は、「入院させなければ、自傷他害のおそれがある」という精神障害者を行政処分として、入院させることをいいます。

措置入院は、都道府県知事の権限で行われるものです。

 

入院条件としては、

  • 警察官などからの通報、届出等があること
  • 精神保健指定医2名以上の診察により、「自傷他害のおそれがある」と認められること(診察が一致すること)

の2つを満たす場合に、措置入院となります。

あたりまえではありますが、任意入院とは違い、措置入院は、患者さんの同意は必要ありません。(行政処分なんで)

 

また、措置入院者の入院先は、国・都道府県立病院または指定病院に限られます。

急を要し、通常の措置入院の手続きができない場合は、精神保健指定医1名の診察により、入院させることができますが、入院期間は72時間以内に制限されます。これを、「緊急措置入院」といいます。

 

ちなみに、措置入院について、精神保健福祉法では、次のように定められています。

(都道府県知事による入院措置)

第二十九条 

都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

2 前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには、その指定する二人以上の指定医の診察を経て、その者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めることについて、各指定医の診察の結果が一致した場合でなければならない。

3 都道府県知事は、第一項の規定による措置を採る場合においては、当該精神障害者に対し、当該入院措置を採る旨、第三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせなければならない。

4 国等の設置した精神科病院及び指定病院の管理者は、病床(病院の一部について第十九条の八の指定を受けている指定病院にあつてはその指定に係る病床)に既に第一項又は次条第一項の規定により入院をさせた者がいるため余裕がない場合のほかは、第一項の精神障害者を入院させなければならない。

 

第二十九条の二 

都道府県知事は、前条第一項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について、急速を要し、第二十七条、第二十八条及び前条の規定による手続を採ることができない場合において、その指定する指定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を前条第一項に規定する精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

2 都道府県知事は、前項の措置をとつたときは、すみやかに、その者につき、前条第一項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。

3 第一項の規定による入院の期間は、七十二時間を超えることができない。

4 第二十七条第四項及び第五項並びに第二十八条の二の規定は第一項の規定による診察について、前条第三項の規定は第一項の規定による措置を採る場合について、同条第四項の規定は第一項の規定により入院する者の入院について準用する。

 

第二十九条の二の二

都道府県知事は、第二十九条第一項又は前条第一項の規定による入院措置を採ろうとする精神障害者を、当該入院措置に係る病院に移送しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の規定により移送を行う場合においては、当該精神障害者に対し、当該移送を行う旨その他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせなければならない。

3 都道府県知事は、第一項の規定による移送を行うに当たつては、当該精神障害者を診察した指定医が必要と認めたときは、その者の医療又は保護に欠くことのできない限度において、厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める行動の制限を行うことができる。

医療保護入院(法第33条・第33条の2・第33条の3)

医療保護入院は、自傷他害のおそれはない患者さん(精神障害者)について、本人の同意がなくても入院させることができる入院形態です。

 

入院条件としては、

  • 精神保健指定医の診察により、入院の必要があると認められること
  • その患者さんの家族等(配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人)のうち、いずれかの同意があること

の2つ満たす必要があります。

その患者さんの家族等において、該当者がいない、またはその意思を表示することができない場合は、市町村長の同意でOKです。

 

医療保護入院は、原則、精神保健指定医のいる精神科病院で受入可能です。

 

医療保護入院者を受入れた病院は、「医療保護入院者の入院届」を、10日以内に、保健所へ届出する必要があります。

こんなやつです。

【医療保護入院者の入院届】

医療保護入院の入院届

出典:厚生労働省「障害者福祉 各種様式について」

 

また、患者さん本人に対し、書面による、「入院(医療保護入院)に際してのお知らせ」を行う必要があります。

こんなやつです。

【入院(医療保護入院)に際してのお知らせ】

入院(医療保護入院)に際してのお知らせ

出典:厚生労働省「障害者福祉 各種様式について」

患者さんの病状からみて入院時に告知を行うことが精神科医療上支障があると認められる場合は、4週間に限り、「お知らせ(告知)」を延期できます。

 

ちなみに、医療保護入院について、精神保健福祉法では、次のように定められています。

(医療保護入院)

第三十三条 

精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。

一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの

二 第三十四条第一項の規定により移送された者

2 前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。

一 行方の知れない者

二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者又はした者並びにその配偶者及び直系血族

三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人

四 心身の故障により前項の規定による同意又は不同意の意思表示を適切に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

五 未成年者

3 精神科病院の管理者は、第一項第一号に掲げる者について、その家族等(前項に規定する家族等をいう。以下同じ。)がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合において、その者の居住地(居住地がないか、又は明らかでないときは、その者の現在地。第四十五条第一項を除き、以下同じ。)を管轄する市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。第三十四条第二項の規定により移送された者について、その者の居住地を管轄する市町村長の同意があるときも、同様とする。

4 第一項又は前項に規定する場合において、精神科病院(厚生労働省令で定める基準に適合すると都道府県知事が認めるものに限る。)の管理者は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、指定医に代えて特定医師に診察を行わせることができる。この場合において、診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは、第一項又は前項の規定にかかわらず、本人の同意がなくても、十二時間を限り、その者を入院させることができる。

5 第十九条の四の二の規定は、前項の規定により診察を行つた場合について準用する。この場合において、同条中「指定医は、前条第一項」とあるのは「第二十一条第四項に規定する特定医師は、第三十三条第四項」と、「当該指定医」とあるのは「当該特定医師」と読み替えるものとする。

6 精神科病院の管理者は、第四項後段の規定による措置を採つたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、当該措置に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。

7 精神科病院の管理者は、第一項、第三項又は第四項後段の規定による措置を採つたときは、十日以内に、その者の症状その他厚生労働省令で定める事項を当該入院について同意をした者の同意書を添え、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。

 

第三十三条の二 

精神科病院の管理者は、前条第一項又は第三項の規定により入院した者(以下「医療保護入院者」という。)を退院させたときは、十日以内に、その旨及び厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。

 

第三十三条の三 

精神科病院の管理者は、第三十三条第一項、第三項又は第四項後段の規定による措置を採る場合においては、当該精神障害者に対し、当該入院措置を採る旨、第三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせなければならない。ただし、当該入院措置を採つた日から四週間を経過する日までの間であつて、当該精神障害者の症状に照らし、その者の医療及び保護を図る上で支障があると認められる間においては、この限りでない。

2 精神科病院の管理者は、前項ただし書の規定により同項本文に規定する事項を書面で知らせなかつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。

応急入院(法第33条の7)

応急入院とは、「医療保護入院の緊急性のある場合」の入院形態です。

 

入院条件としては、

  • 精神保健指定医の診察により、入院の必要があると認められること
  • 急を要し、家族等の同意を得ることができない

の2つ満たす必要があります。

応急入院の対象となる患者については、一般的に、自傷他害のおそれはないが、昏迷状態、恐慌状態、興奮状態、意識障害等の状態により、直ちに入院させなければ患者さん本人に著しく悪影響を及ぼすおそれがあると判断される人です。

 

応急入院は、同意が得られていないということもあり、応急入院指定病院でのみ受入がされ、入院期間は72時間以内に制限されます。

 

また、応急入院者を受入れた病院は、「応急入院届」を、保健所へ届出する必要があります。

こんなやつです。

【応急入院届】

応急入院届

出典:厚生労働省「障害者福祉 各種様式について」

 

ちなみに、応急入院について、精神保健福祉法では、次のように定められています。

(応急入院)

第三十三条の七

厚生労働大臣の定める基準に適合するものとして都道府県知事が指定する精神科病院の管理者は、医療及び保護の依頼があつた者について、急速を要し、その家族等の同意を得ることができない場合において、その者が、次に該当する者であるときは、本人の同意がなくても、七十二時間を限り、その者を入院させることができる。

一 指定医の診察の結果、精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの

二 第三十四条第三項の規定により移送された者

2 前項に規定する場合において、同項に規定する精神科病院の管理者は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、指定医に代えて特定医師に同項の医療及び保護の依頼があつた者の診察を行わせることができる。この場合において、診察の結果、その者が、精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは、同項の規定にかかわらず、本人の同意がなくても、十二時間を限り、その者を入院させることができる。

3 第十九条の四の二の規定は、前項の規定により診察を行つた場合について準用する。この場合において、同条中「指定医は、前条第一項」とあるのは「第二十一条第四項に規定する特定医師は、第三十三条の七第二項」と、「当該指定医」とあるのは「当該特定医師」と読み替えるものとする。

4 第一項に規定する精神科病院の管理者は、第二項後段の規定による措置を採つたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、当該措置に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。

5 第一項に規定する精神科病院の管理者は、同項又は第二項後段の規定による措置を採つたときは、直ちに、当該措置を採つた理由その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。

6 都道府県知事は、第一項の指定を受けた精神科病院が同項の基準に適合しなくなつたと認めたときは、その指定を取り消すことができる。

7 厚生労働大臣は、前項に規定する都道府県知事の権限に属する事務について、第一項の指定を受けた精神科病院に入院中の者の処遇を確保する緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し前項の事務を行うことを指示することができる。

「任意入院・措置入院・医療保護入院・応急入院」判別フローチャート

ざっくりではありますが、精神保健福祉法に基づく入院形態の判別方法について、フローチャートにしておきます。

参考程度に、ご覧ください。

任意入院・措置入院・医療保護入院・応急入院 判別フローチャート

 

見づらい場合は、「エクセルファイル」を置いておくので、ダウンロード(無料)してみてください。

sotiiryouhogobunnbetuflowchart

 

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まとめ

ここで、「精神保健福祉法における、任意入院・措置入院・医療保護入院・応急入院」についておさらいです。

  • 任意入院は、精神障害者自らの意思による入院で、精神保健指定医の診察不要
  • 措置入院は、入院させなければ「自傷他害のおそれがある」と精神保健指定医2名以上の診察により認められた精神障害者を都道府県知事の権限で入院させること
  • 医療保護入院は、精神保健指定医の診察により入院が必要と認められた精神障害者を、その家族等の同意により入院させること
  • 応急入院とは、急を要し、家族等の同意を得ることができない精神障害者(自傷他害のおそれがない)について、精神保健指定医の診察により入院させること

 

任意入院・措置入院・医療保護入院・応急入院は、精神科特有の入院形態で、整理しておかないと、ごっちゃになりやすいです。(僕がそうです・・・)

行政への届出(手続き)も違ったりしますし。

 

そんなことで、自分のために整理しておきました。

参考になれば、嬉しく思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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