以前の記事「介護医療院を開設できる者がわかりづらいから・・・」で紹介させていただきましたが、介護医療院は開設者(開設できる者)の範囲は結構広いです。
ですので、色々な機関で「介護医療院」を開設するチャンスがあります。
でも、だからといって「サービス付き高齢者向け住宅」のように、好き勝手にボンボン作れるわけではありません。
なぜなら、「介護医療院」は介護保険法第107条で、次のように規定されているからです。
5 都道府県知事は、第一項の許可又は第二項の許可(入所定員の増加に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の申請があった場合において、当該申請に係る施設の所在地を含む区域(第百十八条第二項第一号の規定により当該都道府県が定める区域とする。)における介護医療院の入所定員の総数が、同条第一項の規定により当該都道府県が定める都道府県介護保険事業支援計画において定めるその区域の介護医療院の必要入所定員総数に既に達しているか、又は当該申請に係る施設の開設若しくは入所定員の増加によってこれを超えることになると認めるとき、その他の当該都道府県介護保険事業支援計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、第一項の許可又は第二項の許可を与えないことができる。
出典:介護保険法
つーか、どこで切ったらいいか、わからない・・・(笑)
相変わらず、読みづらい文章なんで、わかりやすくポイントだけ説明します。
- 地域ごとの「介護医療院」の総病床数は、各都道府県によって定められている。
- 介護医療院の総病床数は、「介護保険事業支援計画」において定める。
- その定められた総病床数のことを「必要入所定員総数」という。
- 「必要入所定員総数」までしか、その地域に「介護医療院」を開設することはできない。
- 「必要入所定員総数」を超えた場合、都道府県知事は、開設を許可しないことができる。
一言でいうと、
「都道府県が定める必要数までしか、介護医療院は作らせないよ」
ってことです。
なお、この開設拒否のことを、一般的に「総量規制」と呼んでいます。
ただ、「介護医療院」においては、いくつかの支援策が用意されており、その1つとしてある条件を満たすことで「総量規制の対象外とする」とされています。
ちなみに、「総量規制の対象外」ってことは、どんなに「必要入所定員総数」を超えていたとしても、自治体は介護医療院の開設を拒否できないってことです。
これは、「介護療養型医療施設」の転換が進まなかったという苦い経験から「介護医療院へ転換して欲しい!」という国の熱い想い(必死さ)なのかもしれません。(笑)
そんなことで、ちょっと前置きが長くなりましたが、今回は「介護医療院の総量規制」について、まとめておきます。
介護医療院への転換は、総量規制の対象外
まず、結論からです。
次の3つの施設からの「介護医療院」への転換は、総量規制の対象にはなりません。
- 医療療養病棟
- 介護療養型医療施設
- 介護療養型老人保健施設(転換型老健)
なお、この3つ以外の転換(開設)については、新設扱いになりますので、総量規制の対象となります。
総量規制の対象から外れるには、いつまでに転換すればいいの?
僕が調べた限りでは、「総量規制の対象外となる期間」に定めがあるのかどうか、わかりませんでした。
ただ、少なくとも、
- 医療療養病棟
- 介護療養型医療施設
- 介護療養型老人保健施設(転換型老健)
の転換時に適用される経過措置(基準緩和)の期限が、2024年3月31日までとなっているため、そこまでは、総量規制を受けることはないはずです。
ただ、その後のことは、わかりませんけどね・・・(笑)
【関連記事】
総量規制の対象から外れるのは、全国で約28万床
次に、どのくらいの病床が「総量規制の対象外」となるのか紹介します。
なお、厚生労働省「介護医療院の概要」からの抜粋です。
医療療養病床(平成27年7月)
- 療養病棟入院基本料1(20:1) 14.4万床
- 療養病棟入院基本料2(25:1) 7.2万床
介護療養型医療施設(平成28年3月)
- 5.9万床
介護療養型老人保健施設(平成27年10月)
- 0.9万床
合計で、28.4万床の「総量規制の対象外」の病床があります。
ありえない話ですが、すべての病床が「介護医療院」に転換したら、介護保険財政は破綻するでしょうね・・・
でも、制度上はありえますからね。(笑)
介護医療院の総量規制にかかる法的根拠
次に、根拠通知を紹介します。
厚生労働省老健局介護保険計画課(事務連絡 平成29年8月10日)
第7期介護保険事業(支援)計画における療養病床、介護医療院等の取扱いに関する基本的考え方について
⇒ダウンロード「公益社団法人 全国老人保健施設協会 公式サイト」
介護医療院における総量規制のポイント
ここでは、ポイントとなる部分を抜粋し紹介します。
がっつり読みたい人は、上記の「全国老人保健施設協会 公式サイト」からダウンロードしてください。
1.必要入所定員総数等の考え方
(1)療養病床からの転換に係る必要入所定員総数等
市町村介護保険事業計画における介護保険施設に係る必要入所定員総数には、医療保険適用の療養病床(以下「医療療養病床」という。)及び指定介護療養型医療施設が、これらの事業を行う施設等へ転換する場合における当該転換に伴う利用定員、入所定員の増加分は含まないものとする。
(2)介護老人保健施設から介護医療院への転換に係る必要入所定員総数
平成18年度以降、医療療養病床及び指定介護療養型医療施設からの転換を促進してきた経緯に鑑み、介護医療院に係る必要入所定員総数には、介護老人保健施設(平成18年7月1日から平成30年3月31日までに医療療養病床又は指定介護療養型医療施設から転換して許可を受けたものに限る。)が介護医療院に転換する場合における当該転換に伴う入所定員の増加分は含まないものとする。
3.指定、許可等の取扱いの考え方
医療療養病床及び指定介護療養型医療施設からの転換並び介護老人保健施設から介護医療院への転換については、当該転換による入所定員、利用定員の増加分は、第7期計画における必要入所定員総数、必要利用定員総数に含まないこととすることから、介護保険法第94条第5項等に基づく介護保険施設等の許可等の拒否(いわゆる「総量規制」)は基本的に生じないものと考えられる。
4.介護医療院の必要入所定員総数及び見込み量の設定の考え方
介護医療院は、平成30年度から開始される新たなサービス種別であり、サービスの量の見込みや必要入所定員総数を設定する必要がある。このうち、医療療養病床、指定介護療養型医療施設及び1(2)に記載する介護老人保健施設(以下「療養病床等」という。)からの転換分については、上記で示したとおりである。
一方、介護医療院を新設する場合(医療療養病床、指定介護療養型医療施設及び1(2)に記載する介護老人保健施設以外の病床等から転換する場合を含む。)には、必要入所定員総数に基づき、平成29年改正法による改正後の介護保険法第107条第5項に基づく許可の拒否(いわゆる「総量規制」)の対象となる。
まとめ
介護医療院への転換において、
- 医療療養病棟
- 介護療養型医療施設
- 介護療養型老人保健施設(転換型老健)
の3施設については、経過措置(基準緩和)の適用や、総量規制の対象から外れるなど、支援策が充実しています。
この支援策から察するに、「国は、ほんと転換して欲しいんだろうな~」ってしみじみ感じます。
でも、逆に「にんじん(エサ)」が釣られ過ぎていて、怖いんですよね~
これは、なかなか、食いつけないわ・・・(笑)
ちなみに、
- 医療療養病棟
- 介護療養型医療施設
- 介護療養型老人保健施設(転換型老健)
の転換以外は、総量規制の対象になるってことは・・・
「介護医療院の開設は、この3施設の転換以外、ほとんど認めないんじゃないの???」
って思った、今日この頃でした~
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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