令和5年10月1日より、
「新型コロナ患者を入院対応した場合の診療報酬の算定ルール(臨時的な取扱い)」
が変更になります。
そこで、この記事では、次の特定入院料における「新型コロナ患者を入院対応した場合の診療報酬の算定ルール」について、まとめておきます。
【特定入院料】
- 認知症治療病棟入院料
- 精神療養病棟入院料
「新型コロナの入院患者って、何が算定できるの?」という人のお役に立てば嬉しいです。
なお、記事の最後に、この記事のポイントをまとめた「配布用資料(エクセルファイル)」をダウンロードできるようにしてあります。
使っていただけそうなら、ご活用ください。(それか、加工して使ってください)
特定入院料(認知症治療病棟・精神療養病棟)における新型コロナ患者の診療報酬
「認知症治療病棟入院料」「精神療養病棟入院料」は、どちらも特定入院料に該当します。
なので、次の事務連絡のとおり、入院料は「精神病棟入院基本料の特別入院基本料561点」が算定できます。
令和5年秋以降の新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて
厚生労働省 事務連絡 令和5年9月15日
(2)特定入院料等を算定する病棟でコロナ患者の入院を受け入れた場合の特例について
① 新型コロナウイルス感染症患者を地域包括ケア病棟入院料等の特定入院料を算定する病棟に入院させた場合、医療法上の病床種別と当該入院基本料が施設基準上求めている看護配置等により算定する入院基本料を判断の上、当該入院基本料を算定できる。なお、入院料の変更の届出は不要である。
④ 新型コロナウイルス感染症患者を、精神療養病棟入院料を算定している病棟に入院させた場合、精神病棟入院基本料における特別入院基本料(561 点)を算定できる。なお、入院料の変更等の届出は不要である。
事務連絡では、精神療養病棟入院料についての取扱いですが、厚生局に確認したところ、「認知症治療病棟入院料」も同様に扱うとのことでした。
認知症治療病棟・精神療養病棟における新型コロナ患者の算定例
臨時的な取扱いとして「精神病棟入院基本料の特別入院基本料561点」を算定する場合は、
- 中等症Ⅰ 呼吸不全なし(呼吸困難、肺炎所見)
- 中等症Ⅱ 呼吸不全あり(酸素投与が必要)
と患者さんの重症度に応じて、加算の点数が変わってきます。
わかりやすく言うと、酸素投与があるかないかです。
なお、重症度は、次の分類表で判断します。
出典:新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第9.0版
中等症Ⅰ 呼吸不全なし(呼吸困難、肺炎所見)の算定例
入院している新型コロナ患者の治療期間は、次のとおり算定します。
区分番号 | 診療報酬名 | 頻度 | 点数 |
A103 | 精神病棟特別入院基本料 | 1日につき | 561点 |
A103 | 精神病棟入院期間加算(特別入院基本料) ※入院期間が1年以内の場合 |
1日につき | 3~300点 |
A218 | 地域加算 | 1日につき | 3~18点 |
A205 | 救急医療管理加算2(臨時的な取扱い) ※原則、14日間に限る |
1日につき | 840点 |
A210 | 二類感染症患者入院診療加算 | 1日につき | 125点 |
A220-2 | 二類感染症患者療養環境特別加算(個室・陰圧室) | 1日につき | 300点・200点 |
中等症Ⅱ 呼吸不全あり(酸素投与が必要)の算定例
入院している新型コロナ患者で、酸素投与を行っている治療期間は、次のとおり算定します。
区分番号 | 診療報酬名 | 頻度 | 点数 |
A103 | 精神病棟特別入院基本料 | 1日につき | 561点 |
A103 | 精神病棟入院期間加算(特別入院基本料) ※入院期間が1年以内の場合 |
1日につき | 3~300点 |
A218 | 地域加算 | 1日につき | 3~18点 |
A205 | 救急医療管理加算2(臨時的な取扱い) ※原則、14日間に限る |
1日につき | 1,260点 |
A210 | 二類感染症患者入院診療加算 | 1日につき | 125点 |
A220-2 | 二類感染症患者療養環境特別加算(個室・陰圧室) | 1日につき | 300点・200点 |
D223 | 経皮的動脈血酸素飽和度測定 | 1日につき | 35点 |
各種診療報酬(加算)の算定根拠
算定根拠としては、次のとおりです。
令和5年秋以降の新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて
厚生労働省 事務連絡 令和5年9月15日
2.入院における対応に係る特例
(1)重症・中等症の新型コロナウイルス感染症患者に対する診療に係る特例
② 新型コロナウイルス感染症患者の受入れを行う医療機関において、中等症以上の新型コロナウイルス感染症患者(入院基本料又は特定入院料のうち、救急医療管理加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)については、14 日を限度として1日につき救急医療管理加算2の100 分の200 に相当する点数(840点)を算定できる。
また、中等症以上の新型コロナウイルス感染症患者のうち、継続的に診療が必要な場合には、15 日目以降も当該点数を算定できる。なお、その場合においては、継続的な診療が必要と判断した理由について、摘要欄に記載すること。
なお、中等症の新型コロナウイルス感染症患者には、酸素療法が必要な状態の患者のほか、免疫抑制状態にある患者の酸素療法が終了した後の状態など、急変等のリスクに鑑み、入院加療の必要があると医学的に判断される患者を含むものとし、また、本特例による救急医療管理加算2の100 分の200 に相当する点数と、本特例によらない救急医療管理加算は併算定可能であること。
③ 中等症以上の新型コロナウイルス感染症患者のうち、呼吸不全を認める者については、呼吸不全に対する診療及び管理(以下「呼吸不全管理」という。)を要することを踏まえ、それらの診療の評価として、呼吸不全管理を要する中等症以上の新型コロナウイルス感染症患者(入院基本料又は特定入院料のうち、救急医療管理加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)については、14 日を限度として1日につき救急医療管理加算2の100 分の300 に相当する点数(1,260 点)を算定できる。
また、呼吸不全管理を要する中等症以上の新型コロナウイルス感染症患者のうち、継続的に診療が必要な場合には、15 日目以降も当該点数を算定できる。なお、その場合においては、継続的な診療が必要と判断した理由について、摘要欄に記載すること。
なお、本特例による救急医療管理加算2の100 分の300 に相当する点数と、本特例によらない救急医療管理加算は併算定可能であること。
(2)入院における感染対策の特例について
① 別表2に示す入院料を算定する病棟において、新型コロナウイルス感染症患者を必要な感染予防策を講じた上で保険医療機関に入院させた場合、看護配置に応じて、1日につき別表2に示す二類感染症患者入院診療加算に相当する点数を算定できる。
また、別表2に示す入院料又はA305 一類感染症患者入院医療管理料を算定する病棟以外の病棟において、新型コロナウイルス感染症患者を必要な感染予防策を講じた上で保険医療機関に入院させた場合、二類感染症患者入院診療加算の100 分の50 に相当する点数(125 点)を算定できる。
なお、いずれの場合においても、初日については、新型コロナウイルス感染症疑い患者についても算定でき、その場合は摘要欄に新型コロナウイルス感染症を疑う理由について記載すること。
② 新型コロナウイルス感染症患者を個室又は陰圧室に入院させた場合、別表2に示す入院料又はA305 一類感染症患者入院医療管理料を算定する病棟以外の病棟において、二類感染症患者療養環境特別加算(300 点、200 点)が算定できる。
なお、初日については、新型コロナウイルス感染症疑い患者についても算定でき、その場合は摘要欄に新型コロナウイルス感染症を疑う理由について記載すること。
【根拠資料】
厚生労働省のサイトからダウンロードできます。
⇒新型コロナウイルス感染症に関する特例措置について(厚生労働省)
中等症Ⅰと中等症Ⅱの状態を行き来する患者における算定ルール(救急医療管理加算)
患者さんによっては、呼吸不全で酸素を投与したり、状態が安定して酸素投与が不要になったりしますよね。
その場合は、その日ごとの患者の状態に応じて算定することになります。
たとえば、新型コロナの治療期間のうち、
- 酸素投与なし 10日間
- 酸素投与あり 4日間
であれば、
- 救急医療管理加算2(臨時的な取扱い) 840点 10日間
- 救急医療管理加算2(臨時的な取扱い) 1,260点 4日間
となります。
新型コロナ患者の治療期間は原則14日間
臨時的な取扱いにおける「救急医療管理加算2」の算定は、原則、14日間を限度とされています。
なので、新型コロナ患者さんのレセプトは、次のようになります。(加算については、当院が算定しているものを参考までに入れています)
精神療養病棟入院料で、新型コロナ患者を入院対応した場合
その月に30日間入院していた場合は、次のように入院料等を算定します。
【新型コロナ感染症の治療期間】
- 精神病棟特別入院基本料 14日
- 精神病棟入院期間加算(特別入院基本料) 14日
- 救急医療管理加算2(臨時的な取扱い) 14日
- 二類感染症患者入院診療加算 14日
- 二類感染症患者療養環境特別加算(個室の場合) 14日
【その他の期間】
- 精神療養病棟入院料 16日
- 重傷者加算 16日
認知症治療病棟入院料で、新型コロナ患者を入院対応した場合
その月に30日間入院していた場合は、次のように入院料等を算定します。
【新型コロナ感染症の治療期間】
- 精神病棟特別入院基本料 14日
- 精神病棟入院期間加算(特別入院基本料) 14日
- 救急医療管理加算2(臨時的な取扱い) 14日
- 二類感染症患者入院診療加算 14日
- 二類感染症患者療養環境特別加算(個室の場合) 14日
【その他の期間】
- 認知症治療病棟入院料 16日
- 認知症夜間対応加算 16日
つまり、新型コロナの治療期間(14日)のみ、臨時的な取扱いの診療報酬を算定し、それ以外の期間は、今までどおり(通常どおり)に算定するってことです。
ちなみに、検体採取から検査結果が出るまでの期間など、新型コロナ感染症が疑われる期間は陽性者として扱いますので、救急医療管理加算2などの14日間の算定は、検査日を基準日とするのが適正かと思います。
疑いがあるから検査しますからね。
入院患者に行った新型コロナウイルス感染症検査は保険請求できる
認知症治療病棟・精神療養病棟でクラスターが起こった場合など、新型コロナの検査として、PCR検査や抗原検査を行うと思います。
このときの
- 検査実施料
- 検査判断料
も保険請求できます。
点数的には、こんな感じです。
【新型コロナウイルス感染症の検査に係る保険収載価格(令和5年5月8日~)】
検査項目 | 点数 | |
PCR検査 | 核酸検出(PCR)検査 | 700点 |
微生物学的検査判断料 | 150点 | |
抗原検査(定量) | 抗原検出検査(定量) | 560点 |
免疫学的検査判断料 | 144点 | |
抗原検査(定性) | 抗原検出検査(定性) | 300点 |
免疫学的検査判断料 | 144点 |
新型コロナ感染症から回復した患者の転院を受入れた場合の算定ルール
他の医療機関で、新型コロナウイルス感染症の治療を行い、回復後、転院を受入れた場合、通常の入院料などを算定したうえで、次の加算を算定できます。
【新型コロナ回復患者の算定ルール(転院を受入れた場合)】
区分番号 | 診療報酬名 | 頻度 | 点数 |
A210 | 二類感染症患者入院診療加算(通常の2倍) ※14日に限り |
1日につき | 500点 |
法的根拠は、次のとおりです。
令和5年秋以降の新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて
厚生労働省 事務連絡 令和5年9月15日
4.回復患者の転院受け入れに係る特例
① 新型コロナウイルス感染症から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた保険医療機関においては、当該患者について、いずれの入院料を算定する場合であっても、最初に転院した保険医療機関における入院日を起算日として14 日を限度として二類感染症患者入院診療加算の100 分の200 に相当する点数(500 点)を算定できる。
② ①については、やむを得ない事情により再転院した場合についても、引き続き算定できるが、起算日は最初に転院した保険医療機関における入院日を起算日とする。
また、当該加算の算定に当たっては、診療報酬明細書の摘要欄に、最初に転院した保険医療機関における入院日及び転院前の保険医療機関における当該加算の算定日数をそれぞれ記載すること。なお、当該保険医療機関に転院するよりも前に、複数の転院がある場合は、それぞれの保険医療機関における当該加算の算定日数を記載すること。
新型コロナ患者を入院対応した場合の診療報酬の算定【臨時的な取扱い】の配布用資料(エクセル)
認知症治療病棟入院料・精神療養病棟入院料の病棟で、新型コロナ患者および回復後の患者の転院を受入れた場合の算定のポイントをエクセルファイルにまとめています。
こんな表です。
【無料ダウンロード(エクセルファイル)】
令和5年10月1日以降用
⇒covid-19-medical-service-fees-excel2023-10-1
まとめ
ここで、「新型コロナ患者を入院対応したとき、何を算定すればいいか?(認知症治療病棟・精神療養病棟の場合)」について、おさらいです。
- 精神病棟特別入院基本料(561点)
- 救急医療管理加算2(840点・1,260点)
- 二類感染症患者入院診療加算(125点)
- 二類感染症患者療養環境特別加算(300点・200点)
- 処方や処置、酸素など、出来高算定
厚生局によると、新型コロナ患者さんについては、
- 臨時的な取扱いを適用するのか
- 今までどおりの入院料で算定するのか
自由に選択してよいとのことでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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