以前の記事「介護医療院の役割とⅠ型・Ⅱ型の違い」で紹介させていただいたとおり、介護医療院は、Ⅰ型とⅡ型に役割(機能)が分けられています。
そして、そのサービス型(Ⅰ型・Ⅱ型)の中で、さらにサービス費が分かれています。
そこで今回は、その「Ⅰ型介護医療院サービス費」における、
- 介護報酬(単位数)
- 人員基準
- 入居者要件(算出方法含む)
の違いについてまとめておきます。
Ⅰ型介護医療院のサービス費は、(Ⅰ)~(Ⅲ)の3つに分かれている
Ⅰ型介護医療院の介護報酬の根幹である、サービス費は(Ⅰ)~(Ⅲ)の3つに分かれています。
介護報酬は、(Ⅰ)が一番高く、(Ⅲ)が一番低くなっています。
また、当然ですが、介護報酬が高いほど「人員基準」や「入居者要件」が厳しくなってきます。
それでは、項目ごとに違いをみていきます。
Ⅰ型介護医療院のサービス費(多床室)の比較「要介護度別単位数」
入居者1人あたりの1日ごとの単位数で表示しています。
(単位:単位)
要介護度 |
サービス費(Ⅰ) |
サービス費(Ⅱ) | サービス費(Ⅲ) |
要介護1 | 803 | 791 | 775 |
要介護2 | 911 | 898 | 882 |
要介護3 | 1,144 | 1,127 | 1,111 |
要介護4 | 1,243 | 1,224 | 1,208 |
要介護5 | 1,332 | 1,312 | 1,296 |
サービス費(Ⅰ)と(Ⅲ)を比較すると、1日あたり28単位~36単位の介護報酬に差があります。
この単位差、1人1日あたりですからね~
入居者さんの人数にもよりますが、結構な売上差が出てきます。
ちなみに、単位差36単位で、60床にて試算した場合、
360円 × 60床 × 365日 = 7,884,000円/年間
となります。
Ⅰ型介護医療院のサービス費別人員基準(看護・介護職員)の比較
Ⅰ型介護医療院「サービス費(Ⅰ)~(Ⅲ)」において、人員基準の違いがあるのは、
介護職員
だけです。(他の職種については、人員配置基準は変わりません)
詳しくは、こちらの記事で。
それでは、比較してみます。(一応、看護職員も載せています)
職種 | サービス費(Ⅰ) |
サービス費(Ⅱ) |
サービス費(Ⅲ) |
看護職員 | 入居者6人に対し1名配置 (6:1) |
入居者6人に対し1名配置 (6:1) |
入居者6人に対し1名配置 (6:1) |
介護職員 | 入居者4人に対し1名配置 (4:1) |
入居者4人に対し1名配置 (4:1) |
入居者5人に対し1名配置 (5:1) |
ちなみに、60床の介護医療院で試算した場合、次のような人員配置になります。
- 看護職員 10人(うち、2人が看護師)
- 介護職員 15人(4:1の基準の場合)、12人(5:1の基準の場合)
Ⅰ型介護医療院の入居者要件
介護医療院には、入居者の要件(対象入居者の比率)が設定されています。
ですので、
「要介護者なら、誰が入居してもいい」
という言葉は、半分は正しいですが、半分は間違っています。(笑)
基本的に、介護医療院は、要介護者であれば誰に入居いただいてもかまいません。
ただ、入居者要件(対象入居者の比率)を満たせなくなると、介護報酬がすっごく下げられちゃいますので、経営を圧迫します。(おそらく、赤字に・・・)
結果、「入居者要件(対象入居者の比率)を満たすことを前提に、要介護者の方々に入居いただく必要がある」ってことです。
入居者要件は、「重傷者の割合」「医療処置の実地状況」「ターミナルケアの実施状況」の3つ
それでは、入居者要件(対象入居者の比率)を紹介していきます。
【入居者要件対象者割合一覧表】
入居者要件 | サービス費(Ⅰ) | サービス費(Ⅱ) | サービス費(Ⅲ) |
重傷者の割合 | 50% | 50% | 50% |
医療処置の実施状況 | 50% | 30% | 30% |
ターミナルケアの実施状況 | 10% | 5% | 5% |
各入居者要件の詳細については、次のようになっています。
重傷者の割合
入所者等のうち、重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者
医療処置の実施状況
入所者等のうち、喀痰吸引、経管栄養又はインスリン注射が実施された者
ターミナルケアの実施状況
入所者等のうち、次のいずれにも適合する者
- 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること。
- 入所者等又はその家族等の同意を得て、入所者等のターミナルケアに係る計画が作成されていること。
- 医師、看護職員、介護職員等が共同して、入所者等の状態又は家族の求め等に応じ随時、本人又はその家族への説明を行い、同意を得てターミナルケアが行われていること。
つまり、各入居者要件に該当する入居者が、「入居者要件対象者割合一覧表」に示した割合(%)を超える必要があるってことです。
入居者要件対象者割合の算出方法(計算方法)
続いて、各入居者要件の対象者割合の計算方法についてです。
「重傷者の割合」・「医療処置の実施状況」の算出
「重傷者の割合」と「医療処置の実施状況」については、算出方法が2種類あり、次の2つの方法から好きなほうを選んで計算することになります。
【重傷者の割合と医療処置の実施状況の算出方法】
- 月の月末における該当者(対象者)の割合によることとし、算定日が属する月の前3ヶ月において、当該割合の平均値が当該基準に適合していること。
- 算出日が属する月の前3ヶ月において、当該基準を満たす入院患者等の入院延べ日数が、全ての入院患者等の入院延べ日数に締める割合によることとし、算定月の前の3ヶ月において当該割合の平均値が当該基準に適合していること。
「ターミナルケアの実施状況」の算出
「ターミナルケアの実施状況」の計算方法は、次のとおりです。(1つしかありません)
【ターミナルケアの実施状況】の計算方法
「重傷者の割合」「医療処置の実施状況」「ターミナルケアの実施状況」算出表
「Ⅰ型介護医療院の基本施設サービス費に係る届出(別紙13-5)」に、
- 重傷者の割合
- 医療処置の実施状況
- ターミナルケアの実施状況
の算出表が明示されていますので紹介します。
これを使うと、計算(算出)しやすいと思います。
重傷者の割合
基準値は、サービス費(Ⅰ)~(Ⅲ)すべて、50%以上です。
① | 前3ヶ月間の入所者等の総数 | 人 |
② | ①のうち、重篤な身体疾患を有する者の数 | 人 |
③ | ①のうち、身体合併症を有する認知症高齢者の数 | 人 |
④ | ②と③の和 | 人 |
⑤ | ①に占める④の割合 | % |
【注意点】
②及び③のいずれにも該当する者については、いずれか一方についてのみ含めること。
医療処置の実施状況
基準値は、次のとおりです。
- サービス費(Ⅰ) 50%以上
- サービス費(Ⅱ)(Ⅲ) 30%以上
① | 前3ヶ月間の入所者等の総数 | 人 |
② | 前3ヶ月間の喀痰吸引を実施した入所者等の総数(注2) | 人 |
③ | 前3ヶ月間の経管栄養を実施した入所者等の総数(注3) | 人 |
④ | 前ヶ月間のインスリン注射を実施した入所者等の総数(注4) | 人 |
⑤ | ②から④の和 | 人 |
⑥ | ①に占める⑤の割合 | % |
【注意点】
- ②、③及び④のうち複数に該当する者については、各々該当する数字の欄の人数に含めること。
- 過去1年間に喀痰吸引が実施されていた者(入所期間が1年以上である入所者にあっては、当該入所期間中(入所時を含む。)に喀痰吸引が実施されていた者)であって、口腔衛生管理加算又は口腔衛生管理体制加算を算定されているものを含む。
- 過去1年間に経管栄養が実施されていた者(入所期間が1年以上である入所者にあっては、当該入所期間中(入所時を含む。)に経管栄養が実施されていた者)であって、経口維持加算又は栄養マネジメント加算を算定されているものを含む。
- インスリン注射を自ら実施する者は除く。
ターミナルケアの実施状況
基準値は、
- サービス費(Ⅰ) 10%以上
- サービス費(Ⅱ)(Ⅲ) 5%以上
となります。
① | 前3ヶ月間の入所者延日数 | 日 |
② | 前3ヶ月間のターミナルケアの対象者延日数 | 日 |
③ | ①に占める②の割合 | % |
入居者要件を満たせない場合の「特別介護医療院サービス費(多床室)」
もし、介護医療院の入居者要件を満たせない場合、「特別介護医療院サービス費」という、サービス費(Ⅲ)以下の介護報酬を算定することになります。
【特別介護医療院サービス費の単位数】
要介護度 | 特別介護医療院サービス費 |
要介護1 | 736 |
要介護2 | 838 |
要介護3 | 1,055 |
要介護4 | 1,148 |
要介護5 | 1,231 |
サービス費(Ⅰ)と比較すると、1日あたり67~168単位下がってしまいます。
これは、完全にダメなやつです!!(笑)
こうならないように、管理を徹底するしかないですね~
その他の要件
これは、Ⅰ型介護医療院「サービス費(Ⅰ)~(Ⅲ)」のすべてに共通する要件です。
- 生活機能を維持改善するリハビリテーションの実施
- 地域に貢献する活動の実施
まとめ
ここで、Ⅰ型介護医療院の「サービス費(Ⅰ)~(Ⅲ)」の基準の違いについてまとめておきます。
- 1人1日あたり12単位~36単位の介護報酬が違う
- 人員基準の違いがあるのは、介護職員のみ
- 入居者要件で違いがあるのは「医療処置の実施状況」「ターミナルケアの実施状況」の2つ
色々な要件の違いをみてきましたが、サービス費(Ⅰ)~(Ⅲ)において、そんなに大きな基準の違いはありません。(入居者要件もそんなにハードルが高いわけではありませんし)
ですので、Ⅰ型介護医療院を開設するなら、「サービス費(Ⅰ)」の1択です。
ぜひ、「サービス費(Ⅰ)」狙いで、計画を立てましょう。
なお、最近手に入れた「介護報酬の本」が、すっごくわかりやすいので紹介しておきます。
行政の介護保険担当官も使っている本なので、介護保険関係の仕事をしているなら必須だと思います。(今さらかもしれませんが・・・)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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