措置入院の受入れができる「指定病院」の基準とは?【人員配置・精神病床数・必要な設備】

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法律、ルール、許可証

措置入院患者の受入れをするには、国、都道府県、地方公共団体が設立した独立行政法人などの病院を除き、都道府県知事より「指定を受けた病院」でなければなりません。

 

精神保健指定医の取得においては、措置入院患者のケースレポートが必須であるため、指定を受けていない病院の医師は何年働いても精神保健指定医の新規取得はできません。

結果、病院としては、医師採用に多かれ少なかれ、影響が出ます。

ケースレポート作成のため措置入院の受入れを行っている病院を希望する医師は多いです。

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そこで、この記事では、

「措置入院患者を入院させることができる指定病院の基準」

について、まとめておきます。

 

こんな人に読んでいただけると嬉しいです。

  • 指定病院の申請を考えている
  • 精神科の医療機関で働いている
  • 医師の採用を担当している

指定病院の3つの基準【人員配置・精神病床数・必要な設備】

指定病院の基準については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法という)等にて、次のように定められています。

(指定病院)

第十九条の八 

都道府県知事は、国、都道府県並びに都道府県又は都道府県及び都道府県以外の地方公共団体が設立した地方独立行政法人(以下「国等」という。)以外の者が設置した精神科病院であつて厚生労働大臣の定める基準に適合するものの全部又は一部を、その設置者の同意を得て、都道府県が設置する精神科病院に代わる施設(以下「指定病院」という。)として指定することができる。

 

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第十九条の八の規定に基づき厚生労働大臣の定める指定病院の基準(厚生省告示90号)

一 次に掲げる人員を有し、かつ、都道府県知事又は指定都市の市長の求めに応じて措置入院者を入院させて適切な治療を行える診療応需の態勢を整えていること。

1 医師の数が、入院患者の数を三をもって除した数と、外来患者の数を五をもって除した数との和が五十二までの場合にあっては三であり、
当該和が五十二を超える場合にあっては、三に、当該和が五十二を超えて十六又はその端数を増すごとに一を加えた数以上であること。

2 医師のうち二名以上は、常時勤務する法第十八条第一項の規定により指定された精神保健指定医であること。

3 措置入院者を入院させる病棟において看護を行う看護師及び准看護師の数が、入院患者の数が三又はその端数を増すごとに一以上であること。

二 精神病床の数が五十床以上であること。ただし、措置入院者に対して精神障害の医療以外の医療を提供するために十分な体制を有する病院であって二十床以上の精神病床を有するものについては、地域において指定する必要があると認められる場合は、この限りでない。

三 措置入院者の医療及び保護を行うにつき必要な設備を有していること。

 

ちょっと、わかりづらい文章なので、ポイントを整理してみます。

【指定病院の基準】

  • 医師の人員配置基準を満たすこと
  • 常勤の精神保健指定医が2名以上
  • 入院患者3名に対し、1名の看護職員の配置
  • 精神病床数が、50床以上あること
  • 措置入院者の受入れにおける、必要な設備の設置
5つの要件をいずれも満たす必要があります。

 

それでは、1つずつ説明していきます。

医師の人員配置基準を満たすこと

医師の必要数は、次の計算にて算出できます。

(1日平均入院患者 ÷ 3)+(1日平均外来患者 ÷ 5)= A

  • Aの数が、52までは、3人配置
  • Aの数が、52を超える場合は、Aを16で割った人数の配置

 

算出された人員(必要数)以上の医師配置がされていればOKです。

1日平均患者数は、年度間(4月~3月)の数字を基準とし、医師の配置数は、常勤換算して算出します。

 

なお、実際に計算してみると、次のようになります。

【計算例1】

  • 1日平均入院患者数 240人
  • 1日平均外来患者数 70人

 

(240人 ÷ 3)+(70 ÷ 5)= 94(A)

94 ÷ 16 = 5.875人(必要数)

 

【計算例2】

  • 1日平均入院患者数 120人
  • 1日平均外来患者数 25人

 

(120人 ÷ 3)+(25 ÷ 5)= 45(A)

Aが、52以下だったため、3人(必要数)

常勤の精神保健指定医が2名以上

医師の配置数のうち、2名は「常時勤務する精神保健指定医」でなければなりません。

「常時勤務する」とは、精神保健福祉法で、1日8時間以上、かつ、1週間に4日以上勤務することをいいます。

なので、常勤換算で、2名を配置しても要件は満たせません。

 

根拠としては、こんな感じです。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

(指定医の必置)

第十九条の五 

第二十九条第一項、第二十九条の二第一項、第三十三条第一項、第三項若しくは第四項又は第三十三条の七第一項若しくは第二項の規定により精神障害者を入院させている精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。第十九条の十を除き、以下同じ。)の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、その精神科病院に常時勤務する指定医(第十九条の二第二項の規定によりその職務を停止されている者を除く。第五十三条第一項を除き、以下同じ。)を置かなければならない。

 

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則

第四条の三 

法第十九条の五に規定する精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。以下同じ。)に常時勤務する指定医は、一日に八時間以上、かつ、一週間に四日以上当該精神科病院において精神障害の診断又は治療に従事する者でなければならない。

 

精神保健福祉法第一九条の八に基づく指定病院の指定について(厚生省保健医療局長通知)

三 指定基準の第一号2(常勤指定医の配置)関係

第一号2中「常時勤務する精神保健指定医」については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則第四条の三によること。

入院患者3名に対し、1名の看護職員の配置

措置入院患者を受け入れる病棟の看護師および准看護師の人数は、いわゆる「3:1配置」以上でなければなりません。

 

なので、その病棟の1日平均入院患者数が、48人だった場合、

「48 ÷ 3 = 16名」

となり、常勤換算で16名以上の看護職員を配置する必要があります。

1日平均患者数は、年度間(4月~3月)の数字を基準とします。

精神病床数が、50床以上あること

原則、病院としての精神病床数が、50床以上必要です。

「ただし書き」があるので、特例もありますが・・・

 

こんな感じの。

ただし、措置入院者に対して精神障害の医療以外の医療を提供するために十分な体制を有する病院であって二十床以上の精神病床を有するものについては、地域において指定する必要があると認められる場合は、この限りでない。

措置入院者の受入れにおける、必要な設備の設置

必要な設備については、

  • 病床
  • デイルーム
  • 食堂
  • 作業療法施設等
  • 保護室(隔離室)

となっています。

 

根拠としては、次のとおりです。

「精神保健福祉法第一九条の八に基づく指定病院の指定について(厚生省保健医療局長通知)」

第三号中「必要な設備」については、措置入院者を入院させるのに適切な病床、デイルーム、食堂、作業療法用施設等のほか、保護室(隔離室)を適宜の数有すること。

指定病院となるための手続き

指定病院となるには、都道府県へ「指定病院指定申請書」を提出する必要があります。

指定期間は、年度間(4~3月)ごとの3年間となります。

期限が近付くと、都道府県から指定更新の案内が届きます。(だいたい12月頃)

 

ちなみに、新規指定については、次のとおり指定期限が調整されます。(更新時期をあわせるため)

「精神保健福祉法第一九条の八に基づく指定病院の指定について(厚生省保健医療局長通知)」

八 指定期限及び更新

指定病院の指定は、原則として三年の期限を付して指定し、三年ごとに見直しを行い、更新すること。この場合、更新時期は、平成八年四月一日以後の三年度ごととし、既指定のものや新規指定のものについては、指定期限を調整して、更新時期を合わせること。

まとめ

ここで、「措置入院患者を入院させることができる指定病院の基準」についてまとめておきます。

  • 医師の配置「入院患者 48:1」「外来患者 80:1」
  • 医師のうち、常勤の精神保健指定医が2名以上
  • 看護職員の配置「入院患者 3:1」
  • 精神病床数が、50床以上
  • 措置入院者を受入れるための適切な設備の設置

 

基準自体は、そんなに難しいものはないと思いますので、指定は比較的、取りやすいと思います。

都道府県としても、「受入れ機関を増やしたい」という意向もありますし。

 

医師採用の施策として、指定病院の申請も検討してみてはいかがでしょうか。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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