病院の経営管理をするうえで、もっとも重要な数値と言えば、平均入院患者数(入院稼働)ではないでしょうか。
もちろん、病院の種類によっても違うと思いますが、僕が、担当してきたいつくかの病院では、売上高の「90~96%」が入院からの収入だったので、この数値が取れないってことは、つまりは、経営が成り立たないってことになります。
そういう意味では、平均入院患者数(入院稼働)の目標値を達成するというのは、もはや、病院経営においては、至上命令みたいなものです。
そこで、この記事では、「目標を細分化して、入院患者数(入院稼働)の目標を達成しやすくする方法」について、まとめておきます。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 病院の入院稼働が上がらなくて困っている
- 病院の経営管理を担当している
- 地域連携を担当している
入院患者数(入院稼働)は、細分化して目標を設定しよう
入院稼働目標を達成するための要素としては、次の3つになります。
- 相談件数(入院の紹介件数)
- 入院率(入院相談に対して、入院につながった割合)
- 退院数(=入院数)
この要素ごとに目標値を設定したうえで、さらに、細分化して、行動レベルで「やれば必ず達成できる目標」の設定をすると、職員さんも動きやすくていいと思います。
入院患者数(入院稼働)の目標
わかりやすくするため、次のような条件の病院を想定しています。
- 慢性期の患者さんをメインとした病院
- 病床数 180床(60床 × 3病棟)
- 現在の入院患者数 176床(97.8%)
- 平均月間退院患者数 30名(1病棟 10名)
- 直近1年間の入院率 50%
で、年間の平均入院患者数(入院稼働)の目標を176床とします。
つまり、1年間、ほぼ満床をキープするってことです。
もちろん、現在の入院患者が許可病床数に対して少ない場合は、入院稼働を上げるべく、3つの要素(相談件数・入院率・退院数)を考えていくことになります。
相談件数・入院率・退院数における目標値の設定
病院の入院数は、次のような式が成り立ちます。
相談(問い合わせ)件数 × 入院率 = 入院数
この式を基本に、目標値を設定していきます。
どれだけの入院患者数が必要なのか?
ほぼ満床での稼働を維持するには、最低限、「退院数 = 入院数」にしなければなりません。
なので、各病棟ごとの月間退院患者数から「必要となる入院患者数」を算出していきます。
この病院の場合、月間の退院患者数は「30人」なので、自動的に必要となる入院患者数は、「30人」ということになります。
とすると、
相談(問い合わせ)件数 × 入院率 = 入院数(=退院数)
ってことになります。
入院率から必要となる相談件数を算出する
必要となる相談件数は、入院率によって、大きく変わってきます。
この病院の場合、入院率が「50%」のため、相談件数は次のようになります。
入院患者数(30人)÷入院率(50%)=相談件数(60人)
このとき、昨年の実績を確認し、月間の相談件数が「60件」を超えていれば問題はありません。
ただ、もし超えていないのであれば、相談件数を増やさないと、入院稼働を維持できなくなりますので、その施策を考える必要があります。
目標値を設定するときの考え方(3つの要素へのアプローチ)
あたりまえなんですけど、3つの要素は、1つ1つ影響しあうので、1つの要素が変われば、他の要素の数値が変わってきます。
つまり、目標値が大きく変わってくるってことです。
なので、病院として達成しやすい目標値を各要素ごとに設定し、取り組んでいくようにするといいと思います。
たとえば、入院率を上げれば、相談件数を減らせますし、退院数を減らせば、必要入院数を減らせるので、入院率が同じでも、相談件数を減らせます。
こんな感じです。
- 必要入院数(退院数)30人=相談件数 60件×入院率 50%
- 必要入院数(退院数)30人=相談件数 40件×入院率 75%
- 必要入院数(退院数)20人=相談件数 40件×入院率 50%
ちなみに、3つの要素へのアプローチ(改善策)としては、次のようなことが考えられます。
- 相談件数:営業戦略・計画を立て実行
- 入院率:未入院理由の把握と改善
- 退院数:退院の抑制の可否、入院期間の延長
目標値を設定したら、必要に応じて施策を講じる
3つの要素の目標値を設定できたら、
「その目標値を達成するために、どうするのか?」
が大切になります。
このとき、前年実績等で目標値を達成できているなら、特別なにかをする必要はありません。
ただ、前年実績値以上の目標を立てているなら対策を講じる必要があります。
で、「じゃあ、どんな対策を講じればいいのか?」ですが、僕としては、次のようにしています。
相談件数の増加
相談件数が足りない場合は、営業を行うしかありません。
なので、相談員さんに近隣の連携先を回ってもらったり、電話をしてもらったりしながら、当院をアピールします。
このとき、「行動レベルで、やれば必ず達成できる目標」を設定すると職員さんの頑張りが目に見えるので、良いと思います。
たとえば、
- 月50件の電話営業
- 月10件の訪問営業
みたいな感じです。
こういう目標だと、やれば必ず達成できるので、取り組みやすいはずです。
ただ、やるだけだと意味がないので「効果を検証する」っていうのも、やったほうがいいと思います。
効果が全く見られなかった場合、
- 案内の方法
- 資料の改善
- 営業手法の見直し
などを行うことで、営業の効果を上げることができると思いますので。
ちなみに、病院における営業の考え方、営業計画の立て方については、こちらの記事で詳しく説明しています。
入院率の改善
入院率を上げようと考えるなら、
「なぜ、入院につながらなかったのか?」
を明確にしないといけません。
そして、その理由を改善していく必要があります。
つまり、「未入院理由の把握と改善」ってことです。
【関連記事】
効果的な「未入院理由の把握と改善」については、こちらの記事で詳しく説明しています。
あとは、当院が一番受入しやすい患者さんが多いところへ、しっかり営業するってことだと思います。
つまり、「釣りたい魚のいる池で、釣りをしよう」ってことです。
このあたりは、上記の「営業」の記事でも、詳しく書いていますので、チェックしてみてください。
退院の抑制(入院期間の延長)
これは、ほんと、オススメじゃないです。(健全じゃないので)
ただ、多かれ少なかれ、ほとんどの病院がやっている気がします。
で、少しでも入院期間を延ばす方法としては、患者さんや患者の家族に説明し、同意を得るってことです。
そんなとき、よく使われる理由としては、
- 状態が安定してない
- 症状の改善が見られない
- 今、退院すると家族の負担が多い
- もう少し、リハビリを継続しましょう
みたいな感じです。
もちろん、主治医の判断になりますけどね・・・
まとめ
ここで、「入院患者数(入院稼働)の目標を達成しやすくする方法」について、おさらいです。
- 入院稼働の目標は、相談件数、入院率、退院数に細分化して設定する
- 前年実績等を参考に、病院として達成しやすい目標値を設定する
- 必要に応じて、相談件数、入院率、退院数の改善に向け、施策を講じる
- 行動レベルで、やれば必ず達成できる目標を設定する
漠然とした目標値でも、細分化していくと、行動レベルで「何をしたらいいのか?」がわかりやすくなります。
もし、「この目標を達成するには、どうしたらいいのか?」で、悩んでいるなら、徹底的に要素を細分化してみると、結構、楽になるかもしれません。
ぜひ、試してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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