赤字病院を、黒字化(1年で)するためにやったこと【事務責任者の視点から】

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ビジネスマン、分析、経営改善

僕は、医療・介護業界で働く、ごくごく普通のサラリーマンです。

うちの法人は、いくつかの病院や介護施設、在宅事業所などを運営しているため、定期的にというわけではないですが、人事異動があります。

 

そんな法人内の人事異動で、昨年(1年ぐらい前)、何年も赤字続きだった病院に事務責任者として着任し、なんとか1年で黒字化することができました。

この人事異動により、初めて事務責任者の役割を担うことになりましたので、ほぼ手探り状態で、なかなかの経験でした。

 

そこで、この記事では、「経営を改善するために、何をやったのか?」について、備忘録的にまとめておきます。

 

もちろん、病院の種類やおかれている状況により、改善しないといけない部分は変わってしまうため、「再現性があるのか?」というと、怪しい部分が多いですが、僕と同じような境遇で頑張っている人の参考になれば嬉しく思います。

赤字病院を黒字化するためにやった「3つ」のこと

着任して、まず、取り組んだのは、次の3つです。

  • 明確な目標値の設定
  • 職員の向きをあわせる
  • 危機感の共有

 

まとめちゃうと、これだけです。

逆に言うと、「これができていなかったから、ずっと赤字だった」ってことになります。

 

それでは、着任時の病院の状況を含め、赤字病院を黒字化するためにやったことについて、詳しく説明していきます。

着任時の病院の状況(約1年前)

僕が担当させていただいた病院は、こんな感じでした。

  • 慢性期の患者さんをメインとした病院
  • 病床数 200床弱
  • 平均入院稼働率 92.0%
  • 外来患者数 1,300名/月
  • 築40年の建物
  • 経常損益 -3,000~6,000万円
  • 人件費率 67%
  • 院長としては、黒字化したいという想いはあるが、大変になる(負担が増える)のは、ちょっと・・・という感じ
この状態からスタートし、着任後の次年度には、約2,000万円の経常利益となりました。

明確な目標値の設定

まず、僕がやったのは、黒字化するための目標値を設定することでした。

というのも、

  • どこを目指せばいいのか?
  • どこに向かえばいいのか?

がわからないと、職員さんが動けないと思ったからです。

 

そこで、次の指標を設定しました。

  • 平均入院稼働率(平均入院患者数) 96%
  • 人件費率 60%
  • 新規入院患者数 8名/週

 

1つずつ説明していきます。

平均入院稼働率(平均入院患者数) 96%

病院の売上を増やす一番手っ取り早い方法は、入院患者さんを増やすことです。

つまり、入院稼働率を上げるってことです。

 

なので、「どのくらいまで入院稼働率を上げればいいか?」を設定するうえで、まず、損益分岐点を算出しました。

すると、高い人件費率、老朽化した建物の修繕費などの投資もあったため、入院稼働率「95~96%」が、損益分岐点であることがわかりました。

 

そんなことで、「平均入院稼働率 92%」を、「96%」まで上げよう!って思いました。

200床の病院であれば、184床から、192床まで上がります。

 

うちの病院の場合、1床1日あたりの単価は、20,000円程度のため、平均稼働で「8床」上げられれば、

2万円 × 30日 × 8床 = 480万円/月

の売上が増えることになります。

年間にすれば、単純に「5,760万円」の売上増です。

 

もちろん、薬品代や医療材料費などがかかるため、そのまま利益になるわけではないですが、経営改善という意味では、かなり大きな効果となります。

 

ただ、院長も含め、病院全体の空気が、

「大変になるのは(忙しくなるのは)・・・」

みたいな感じなので、入院稼働率の設定はしたものの、なかなか実働が伴わない時期が続きましたが・・・

人件費率 60%

次に設定した目標値は、人件費率です。

もちろん、病院の種類などでも変わってしまいますが、病院の安定した経営という意味では、人件費率「60%」ぐらいが目安だと思います。

 

人件費率は、売上高に対する比率なので、下げようと思うなら、次の2つの考え方があります。

  1. 人件費を下げる(給与を下げる、人員を削減する)
  2. 売上を上げる

 

言うまでもありませんが、「2.売上を上げる」が健全なやり方です。

そのために、入院稼働率を「96%」まで引き上げようとしました。

 

ただ、それだけだと、どうしても「67%」もの人件費率を「60%」まで下げることはできません。

なので、看護部(病棟)の人員配置の適正化を考えました。

 

そもそも、うちの病院は、入院基本料等で定められている法定人員より、かなり多く配置していました。

これは、看護部長が現場の声(忙しい、忙しい・・・)を聞きすぎて、過剰に職員を配置していることが原因でした。

 

そこから、看護部長と相談を重ね、看護部の業務改善(効率化)などを行っていただき、人員配置の適正化を進めました。

もちろん、職員の解雇は行わず、自然減(退職)の中で採用を行わないというやり方で人員を削減していきました。

で、なんだかんだで、人員配置の適正化(法定人員)まで「10ヶ月」ぐらいかかりました。

 

ちなみに、うちの病院は、着任時、年間売上高が「約12億円」だったため、人件費率を目標値まで下げられると、

・人件費率 67% 804,000,000円
・人件費率 60% 720,000,000円

となり、約8,000万円の人件費を削減できます。

新規入院患者数 8名/週

これは、病院によっては、わざわざ設定する必要もないかと思いますが、うちの病院の場合、「入院受入における暗黙のルール」がすごかったんで、院内の共通認識(合意)を諮るため設定しました。

ちなみに、暗黙のルールとは、

  • 医師が担当病棟以外の入院を受けない
  • 医師ごとに入院受けができる曜日や時間帯がさまざま
  • 週の入院受け数の制限がある

みたいな感じです。

 

しかも、このルールが明示(透明化)されてなく、相談員の頭の中にだけしかなかったのです。

なので、

  • なんで、入院希望者がいるのに、入院できないのか?
  • なんで、もっと早い入院日にできないのか?

みたいなことが起きていました。

 

そんなやりとりが、常時、行われていたので、整理して一覧表にしました。(一覧表の作成にあたっては、各医師の確認をしています)

そして、週8人の入院を受けよう!(受けられる)とし、院内に周知しました。

 

参考までに、一覧表はこんな感じです。

【医師・曜日別の入院可能日一覧表】

医師・曜日別の入院可能日

週10~12名の入院患者を受けられる枠の中で、8名の入院を徹底することとしました。

職員の向きをあわせる

黒字化に向けて、どんなに論理的な目標値を設定しても、職員さんが前向きに取り組んでくれないと、絵に描いた餅です。

なので、なんとしても、職員さんの「向き」をあわせる必要がありました。

 

そこで、意識したのは、

  • 個人の利害
  • 組織の利害

をあわせるってことです。

 

つまり、どういうことかというと、

  • 個人にとっての利益が、組織にとっての利益になる
  • 組織にとっての利益が、個人にとっての利益になる

ってことです。

 

たとえば、入院患者数が増えることで、職員さんは、仕事が大変になります(負担が増えます)。

なのに、職員さん個人に対する報酬がない(変わらない)っていうのでは、入院患者数を増やすというメリットはありません。

そうならないように、「頑張って、入院患者数を増やしてよかった」をつくるってことです。

 

【関連記事】

「個人の利害と組織の利害をあわせる」について、詳しくは、こちらの記事を。

病院の入院(病床)稼働率が上がらないのは、組織と個人の利害が一致してないからだよ!
病院の経営管理を行う上で、最も重要な指標と言っても過言ではない! 「入院(病床)稼働率」 おそらく、この数字に一喜一憂している経営管理者は、多いんじゃないかな~ だって、病院という業態は、売上と経費が比例(連動)しない...

 

報酬って意味では給料が一番わかりやすいので、うちの場合は、入院稼働が上がり始めたということもありますが、「冬季賞与を、前年度比20%アップで支給」しました。

コロナ禍で、色々な会社や病院の業績が落ち、賞与支給が怪しいって言われている中でしたので、職員さんには、かなり喜んでいただきました。

 

これにより、「頑張れば、いいことあるよね」をつくれたと思います。

 

あとは、年間休日数を「10日間」ほど増加しました。

これは、「職員採用のため」ということもありますが、職員さんにとっては、大きなメリットになるので、こちらも、かなり喜んでいただきました。

 

僕は、常日頃から、「本気で働いて、本気で遊ぼうぜ(休もうぜ)」って思っているので、そのほうが、「いい仕事をしてもらえるかな?」という想いです。

危機感の共有

うちの病院は、いくつかの病院や介護施設、在宅事業所などを運営している法人であるため、1つの病院が赤字でも、すぐに倒産するってことはありません。

そういう状況もあってか、職員は赤字に対する危機感はなく、業績に対して危機感を全く感じていませんでした。

 

だからこそ、何年も赤字運営を続けてきたんだと思います。

ただ、僕が着任したときは、理事長から「黒字化できないなら、つぶす」みたいな意向がありましたが・・・

 

また、院長をはじめとした病院幹部職員にさえ、財務状況(財務諸表など)が開示されていませんでした。

そういう意味では、「危機感を共有しなければならない」という意識も低かったのだと思います。

 

僕としては、隠ぺい体質の組織を、信用してくれる職員さんって少ないと思ってますので、「危機感の共有する」という意味では、情報の透明化は大事だと思います。

 

そこで、幹部職員の集まる会議にて、財務状況の月次報告を行い、

  • 現状の把握と共有
  • 黒字化するために何をすればいいかの共有
  • 黒字化に向けた「想い(危機感)」をあわせる

ってことを徹底(繰り返し説明)しました。

 

そもそも、院長としては、

  • 老朽化した施設や設備を更新(修繕)したい
  • 利益を出して、職員さんにしっかりと還元したい

という想い(大変なのは嫌だけど)があったので、毎月の報告により、院長を中心に、副院長、看護部長の向きがあってきて、「しっかり利益の出る病院をつくろう」という空気になっていきました。

 

こうなると、もう稼働に対しては、ほぼ安心です。

院長が入院稼働について、常にアンテナを張っているので、自然と病院全体で平均入院稼働率96%を目指すようになります。

やっぱり、院長の想いは、最重要ですね。

結果、病院の実績はどうなったのか?

着任後の次年度の実績は、

  • 年間平均入院稼働率:90.7%
  • 人件費率:62.5%
  • 年間入院患者数:192人
  • 看護部の人員配置:法定人員ギリギリ
  • 経常損益:2,150万円

となりました。

 

目標達成に至らなかった部分もありますが、目的は「黒字化」なので、一応達成です。(笑)

 

ただ、ちょっと、くやしいから言い訳を言わせてもらうと、

  • 新型コロナの影響で、一時期、入院稼働率が83%まで落ち込んだ
  • 売上高が落ち込んだことにより、人件費率が下がらなかった

ってことにより、

  • 年間平均入院稼働率:96%
  • 人件費率:60.0%

が達成できませんでした。

コロナがなければ、必ず、いけたはず!!(笑)

 

ちなみに、年度の最初の月と最後の月(4月・3月)を比べてみると、結構な改善が行えていることがわかります。

こんな感じです。

 4月3月
入院稼働率88.4%95.5%
人件費率67.3%55.6%
経常損益-400万円480万円
月の日数が、30日と31日なので単純な比較にはなりませんが、入院稼働率がかなり改善されたことがわかると思います。

まとめ

ここで、「赤字病院を、黒字化するためにやったこと」について、おさらいです。

  • 目標値の設定(平均入院患者数、人件費率、新規入院患者数)
  • 職員の向きをあわせる(個人と組織の利害を一致させるため、業績連動での賞与の支給と年間休日数の増加)
  • 危機感の共有(現状の把握、何をすればいいか?、黒字化への想い)

 

新年度に入り、平均入院稼働率は、「98~99%」で推移しています。

ただ、これが瞬間値で終わってしまっては全く意味がないので、継続できるように、次の施策を打っていきます。

 

で、現在、取り組んでるのは、入院相談(問い合わせ)を継続的にいただけるようにするため、営業戦略的なものを、地域連携室のデータをもとに作成しています。

限られた人的資源を効率的に活用しないと、すぐに赤字病院に逆戻りしちゃうと思うんで。

 

また、入院相談を増やすことで、病床回転率を高めることができるようになり、1床1日あたりの単価(日当点)が上がっていくので、入院をどんどん受けて、その分、退院調整を行っていくようにしようと考えています。

「入院ありきの退院」って感じです。

うちの病院が届出している入院基本料は、入院日数が少ない方が診療報酬が高くなります。

 

営業戦略については、ある程度、情報が整理されたら、また、記事にできればいいな~って思っています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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