病院の経営管理を行う上で、最も重要な指標と言っても過言ではない!
「入院(病床)稼働率」
おそらく、この数字に一喜一憂している経営管理者は、多いんじゃないかな~
だって、病院という業態は、売上と経費が比例(連動)しないからね。
ベットが空いていようが、ベットが埋まっていようが、かかってくる人件費は、原則、変わらないし。(多少の残業代は違いますけど)
つまり、病院において、入院稼働率が下がるというこは、直接的に利益が下がるってことなんですよね。
ちなみに、病院の経費は、人件費がダントツ多いです。(人件費率50%以上はあたりまえ)
さらに言えば、人件費がほぼ変動しない病院は、入院稼働率の上位数%部分で利益を得ているってことです。(例えて言うなら、入院稼働率の95~100%部分が利益みたいな感じ)
よって、入院稼働率が下がるということは、病院にとっては死活問題です。
だって、利益がそのままなくなっちゃうんですから。
そのため、どの組織も、試行錯誤しながら、稼働確保に取り組んでいるはずです。
でも、そもそも「なぜ、入院稼働率を、上げなければならないのか?」について、考えたことがありますか?
「は!?売上や利益が落ちるからでしょ!?」
と思うかもしれませんが、
じゃあ、なぜ、売上と利益が落ちるといけないの?
そして、なぜ、売上と利益を上げないといけないの?
どうですか?
どんな答えになりますか?
なお、この答えって、仕事をする立場(役職)や職種によって、ぜんぜん変わってきちゃうと思うんです。
結果、利害をめぐり組織内(部署間)でぶつかり、思うように改革や改善が進まないんだと思います。
そこで、今回は、「本当に、入院稼働率を上げたいと思いますか?」の答えについて、掘り下げてみたいと思います。
組織内においては、ほぼすべての職員が自分の利害を優先している
基本的に、人は、自分の利害を優先する生き物です。
特に、組織(病院や介護施設などの職場)においては、それが顕著に出てきます。
「入院稼働率を上げろーーー」って、騒ぐ経営者や経営管理者(事務長など)なんか、その最たるものだと思います。
また、現場で働く職員は、経営者や経営管理者(事務長など)とは、逆に、
「わがままな患者は、診たくない」
とか、
「重症な患者は、診れない」
「時間外に患者を受けたくない」
などと、入院稼働率を上げるのに協力的じゃない発言が出たりします。
でも、これも、現場の職員が自分の利害を優先した発言なんですよね。
なので、入院稼働率を上げたい経営者であっても、入院稼働率を気にしてない現場の職員であっても「どっちもどっち」であり、どちらも自分の利害を優先してるってことです。
ちなみに、どっちも悪くありませんよ。
人なんで、当然のことですし。
ただ、立場が違うだけなんですから。
まず、この考え方を理解しないと、職員のモチベーションを上げる仕組みを構築することは難しいと思います。
立場(職種)ごとの「入院稼働率」に対する認識の違い
それでは、職種ごとの利害(考え方や認識)について、職種ごとに考えてみます。
なお、わかりやすいように2つのグループに分けて説明します。
入院稼働率を上げたいグループ
まずは、入院(病床)稼働率を上げたいグループからです。
経営者(理事長・院長)
最初は、一番わかりやすい経営者の利害からです。
経営者は、病院運営で得た利益は、自分の収入に直結します。(すべて自由に使えるわけではありませんが)
つまり、入院稼働率が下がるということは、自分の収入が減り、最終的には、自分の病院が倒産することを意味します。
倒産して困るのは、当然、経営者です。
借金だって、かなり抱えるでしょうし。
まー、倒産はちょっと大げさですが、自分の収入が直接的に減るわけですから、入院稼働率を上げたいのは、当然ですね。
結果、経営者は、自分の利害のために、職員にプレッシャーをかけているわけです。
経営管理を行う人(事務長など)
次に、事務長さんです。
経営管理を担当してる人からすれば、入院稼働率が下がれば、経営者や法人の本部から怒られます。
そして、業績が悪ければ、自分の評価も下がります。
当然、給料(賞与)も下がり、出世も厳しくなります。
だから、入院稼働率を上げたい。
これも、わかりやすいですね。
結果、事務長さんは、
自分の評価のために、「医師や看護師などの現場スタッフに患者を診ろ!」って言っているのです。
色々な、言い回し(言葉の表現)を使ってね。(笑)
入院調整を行っている部署の職員
続いて、入院調整(病床管理を行う)部署の職員です。
この部署も、「経営者」および「経営管理を行う人」と同じくわかりやすいです。
だって、入院稼働率が下がれば、院長や事務長から怒られますし、自分の評価も下がり、結果、給料(賞与)が下がります。
そうなると、やっぱ、入院稼働率を上げないと・・・ってことになります。
入院稼働率を上げたくない(あまり気にしない)グループ
次に、入院稼働率をあまり気にしない、もしくは、上げたくないグループです。
医師・医療技術者
雇用契約にもよりますが、もし、入院稼働率などの業績に連動しない契約なのだとしたら、医師や医療技術者は、患者を診れば診るほど、損をすることになります。
だって、入院稼働率に関係なく、毎月の給料は一定なんですよ。
働く時間が少なければ少ないほど、自分の時間単価(時給)が上がるってことになっちゃいます。
逆に言えば、患者をたくさん診れば診るほど、自分の時間単価(時給)が下がるってことです。
そうです、損をするってことです。
つまり、自分の利害を優先すると、入院稼働率を上げたくないってことになりますよね。
看護職員・介護職員
こちらも医師や医療技術者と同様の考え方です。
自分の利害を優先した場合、病棟のベットが空いていれば空いているほど、自分の仕事が少なくていいわけですから、入院稼働率を上げたくないってことになります。
だって、入院患者が少ないほうが、仕事が楽ですから。
ちなみに、超人手不足の医療・介護業界においては「業績が悪かったので、給料を下げます」は、なかなかできません。
なぜなら、職員が辞めちゃいますから。
なお、求人が、くさるほど出てるというのも、病院側からすれば厳しい話です。(笑)
つまり、看護職員や介護職員については、入院稼働率が下がっても、給料が減らない(減らせない)職種であると言えます。(医師もそうかも・・・)
その他の職員(一般事務など)
事務員などの職員については、入院稼働率なんか、もう、どっちでもいいです。(笑)
給与や賞与が減らされるなら、不満を感じるでしょうが、給与が減らない範囲であれば、どこまで入院稼働率が下がっても、全く危機感はありません。
ちなみに、一般事務の職員がどんなに仕事を頑張っても、病院の売上は増えないため、偉い人(偉そうな人)たちから、怒られることもないでしょうし。
つまり、何が言いたいかというと
仕事をする立場によって、利害が違うため、想いが同じ方向を向かないってことです。(職種ごとの利害が一致しないってこと)
そして、組織全体の想いを同じ方向に向けられなければ、組織のパフォーマンスは上がりません。
だって、目指しているものが違うんですよ、力が分散しちゃいます。
結果、サービスの質は上がらない!!
だから、入院稼働率は上がらないってことです。
じゃあ、組織のパフォーマンスを高めるには、どうすればいいの?
僕は、組織のパフォーマンスを上げるには、病院(組織)と個人の利害を一致させる必要があると思っています。
つまり、どういうことかって言うと、
「職員が頑張れば頑張っただけ、職員個人のためになり、また、それが病院のためにもなる」
ってことです。
それは、お金だったり、周りからの評価だったり、患者さんからの「ありがとう」かもしれません。
これを一致させることができれば、必ず、入院の稼働率は上がります。
なぜなら、病院で働く全職員にとって、入院稼働率が、自分事になるからです。
自分事になると、入院の稼働率が低下すると、危機感を感じるはずです。
危機感を感じると、入院患者を増やそうと必死になります。
これ、最高の組織でしょ!?(笑)
ですので、
まず、やらないといけないのは、病院(組織)の利害と職員の利害を一致する仕組みを作るってことです。
まとめ
病院の業績改善を図りたいなら、まずは、職員の気持ちを理解し、組織の利害と職種ごとの職員の利害を一致させるべきです。
この仕組みができてない組織は、「インセンティブシステム」の設計が、逆なんだと思います。
つまり、「頑張れば頑張るほど、損をする仕組み」ってことです。
だから、サービスの質も上がらないし、業績も良くならない!!
ということで、結論としては、
医師や看護師などの現場の職員さんが、「患者を診たくなる仕組み」を考える必要があるってことです。
そこで必要となる大切な要素は、「承認欲求」と「自己実現の欲求」かもしれないですね。
このあたりを上手く活用し、「インセンティブシステム」を設計してみてはいかがでしょうか。
最後に、あえて触れておきますが、
「病院の入院稼働率が低下し利益が出せなければ、病院が倒産し、職員だって困るじゃないか?」
と思うかもしれませんが、
はっきり言って、職員は、病院が倒産しても、全く困りません!!
病院という業態においては、職員は、ほぼ有資格者(国家資格保持者)です。
ですので、転職先はすぐに見つかります。
つまり、今働いている病院が倒産すれば、他の病院を探せばいいんです。
かつ、超人手不足のご時世であるため、なおもです。
なので、そんな脅し文句では、職員は全くやる気になりませんよ!!(笑)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【あわせて読みたい】
コメント