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医師の研鑽に係る、労働時間の考え方【厚生労働省の資料をわかりやすく】

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医師、診察、薬、ベアー

この記事では、

「医師の研鑽は、どんなときに、労働時間に該当するのか?」

について、まとめています。

 

医師の研鑽については、

「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方(令和元年7月1日)」

という通達が厚生労働省から出ていますが、この通達、かなり読みづらいです・・・(僕だけかもしれませんが)

 

そこで、

「こんな通達、2度と読まないぞ~」

という思いを込め、備忘録的に、わかりやすく整理してみました。

 

こんな人に読んでいただけると嬉しいです。

  • 医療機関等で労務管理を担当している
  • 医師として勤務していて、勤怠管理の取り扱いに疑問を感じている
  • 厚生労働省の通知を読みたくない

労働時間かどうかは、上司の指示(明示・黙示)の有無で決まる

この通達、かなり読みづらいんですが、ポイントは次の3つです。

  • 所定労働時間内の研鑽は、労働時間に該当する
  • 所定労働時間外に行う医師の研鑽は、原則、労働時間に該当しない
  • 上司の指示により行われる研鑽は、所定労働時間外であっても、労働時間に該当する

 

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」によると、

「労働時間とは、労働者の行為が、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより、客観的に定まるもの」

とされています。

 

なので、使用者(上司などを含む)の指示により行っている研鑽は、所定労働時間外においても、すべて労働時間となります。

もちろん、所定労働時間内の研鑽は、すべて労働時間です。

 

それでは、この考え方を前提としつつ、1つずつ説明していきます。

研鑽とは、医療機関等に勤務する医師が、診療等その本来業務の傍ら、医師の自らの知識の習得や技能の向上を図るために行う学習、研究等をいいます。

所定労働時間内の研鑽は、労働時間に該当する

厚生労働省の通達(医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方)によると、

「所定労働時間内において、使用者に指示された勤務場所(院内等)において、研鑽を行う場合は、当然、労働時間となる」

とされています。

 

なので、

  • 業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者(いわゆる、上司)の指示があるか、ないか
  • 診療等の本来業務と直接関連性があるか、ないか

に関わらず、労働時間となります。

 

「所定労働時間内だからって、なんで、本来業務と直接関連性がない研鑽まで、労働時間になっちゃうの?」

と思うかもしれませんが、厚生労働省としては、次のような考え方により、所定労働時間内の研鑽は、すべて労働時間に該当するとしています。(研修会で聞きました)

 

【厚生労働省の考え方】

「所定労働時間内に、診療等の本来業務と直接関連性のない研鑽をしている医師もいるかと思うが、その場合は、上司などの管理の問題であり、その医師に所定労働時間内は、本来業務と直接関連性のない研鑽はしないよう指導すればいいこと」

 

まぁ、ごもっともって感じですね・・・

所定労働時間外に行う医師の研鑽は、原則、労働時間に該当しない

業務上必須ではなく、上司の指示(明示・黙示)がないことが前提ですが、所定労働時間外に行う医師の研鑽は、労働時間ではありません。

 

それは、職場(院内)に残って行う研鑽であっても同様ですので、

「職場にいる時間 = 労働時間」

とはなりません。

 

なお、「業務上必須ではない研鑚」とは、次のようなことをいいます。

一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習

  • 診療ガイドラインの勉強        
  • 新しい治療法や新薬の勉強
  • 手術や処置等の予習や振り返り
  • シュミレーターを用いた手技の練習
診療の準備または、診療に伴う後処理として不可欠なものは、労働時間に該当します。

博士の学位を取得するための研究及び論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成

  • 学会への参加・発表準備
  • 勉強会(院内・院外)への参加・発表準備
  • 臨床研究に係る診療データの整理
  • 症例報告の作成         
  • 論文執筆
  • 大学院の受験勉強
  • 専門医の取得・更新に係る症例報告作成・講習会受講
研鑚の不実施が不利益につながる場合や、研鑚が業務上必須である場合、業務上必須でなくても上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は、労働時間に該当します。

手技を向上させるための手術の見学

  • 手術、処置等の見学の機会の確保
  • 症例経験を蓄積するために、見学を行うこと
手術などの見学途中で、診療(補助を含む)を行う場合は、労働時間になります。

上司の指示により行われる研鑽は、所定労働時間外であっても労働時間に該当する

所定労働時間外であっても、上司からの指示(明示・黙示)により行われる研鑽は、すべて労働時間となります。

それは、診療等の本来業務と直接関連性がなかったとしてもです。

 

なので、診療等の本来業務と直接関連性がなく、医師が自主的に行っている研鑽以外は、労働時間ということになります。

研鑽における、労働時間を明確化するためにやっておくこと

事業主(病院など)としては、医師が研鑽を行った時間が労働時間に該当しないことを、明確化する必要があります。

なので、厚生労働省としては、次のような措置を講ずるよう求めています。

 

【医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続き】

1.研鑽を行う医師は、自らがその旨を上司に申し出ること

2.申出を受けた上司は、次の3つの確認を行うこと

  • 本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理のいずれにも該当しないこと
  • 当該研鑽を行わないことについて制裁等の不利益はないこと
  • 上司として当該研鑽を行うよう指示しておらず、かつ、当該研鑽を開始する時点において本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、本人はそれらの業務から離れてよいこと

 

つまり、

「研鑚ということにして、仕事をしている(させている)」

ってことがないように、お互い確認し合いましょうってことですね。

 

また、労働時間を明確化するにあたっては、記録として残るよう書面などにしておいた方がいいと思います。(通達では、書面等に示すことが望ましいとなっていますが)

「口頭で、確認しました」だけだと、後々、「言った・言ってない」みたいになっちゃううえ、労働基準監督署の立入検査の時など、根拠を示すことができませんので。

「医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続き」を行った場合は、研鑽を行う医師からの申出への確認や、その医師への指示などの記録を労働基準法第109条に則り、3年間保存しておくことをオススメします。(厚生労働省の担当官も、研修会で言ってましたよ)

 

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まとめ

ここで、「医師の研鑽に係る、労働時間の考え方」についておさらいです。

  • 所定労働時間内においては、すべて労働時間に該当する
  • 所定労働時間外に行う医師の研鑽は、原則、労働時間に該当しない。ただし、上司の指示により行われる研鑽は、所定労働時間外であっても、労働時間に該当する
  • 研鑽を行う医師は、自ら上司に申し出を行い、その上司は、3つの確認を徹底すること
  • 労働時間該当性を明確化するための手続きは、書面などで記録し、3年間保管すること

 

働き方改革により、医師についても適正な労働時間管理が必要となってきています。

もちろん、長時間労働の是正についてもです。

 

今までは、医師の崇高な価値観に甘え、比較的、曖昧な管理だった分、「ちょっと窮屈だな~」と感じたりしますが、適正な労働時間の管理を行うのが、あるべき姿なんですよね。

 

そう思うと、「厚生労働省の通知が読みづらい~」とか言ってられないですね・・・(笑)

先生方に、最高のパフォーマンスを発揮してもらうためにも。

 

ちなみに、「医師の働き方改革」において、切っても切れない問題がもう1つあります。

 

それは、「宿日直許可基準」です。

医師などの宿日直については、労働基準監督署長の許可を受けていない場合、宿直時間すべてが労働時間となります。

労働時間ってことは、すべて時間外労働ということになり、膨大な手当額を支払わなけばなりません。

 

もし、許可を受けていない場合は、早急に対応することをオススメします。

結構、ハードルの高い基準ですが、対応しないという選択肢はありませんので。

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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