身体や精神に障害がある人は、一定の条件を満たす場合「障害者手帳」の取得をすることができます。
障害者手帳を取得すると、
- 税金(所得税・住民税など)の軽減
- 医療費の助成
- 障害者雇用での就職や転職
などのメリットがあります。
また、障害者手帳は、次の3つの種類があり、障害の種類(対象疾患)が違ってきます。
- 身障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
認知症は、2の「精神障害者保健福祉手帳」に該当するため、認知症になった場合、2の「精神障害者福祉手帳」を申請することができます。
ただ、厚生労働省の資料によると、認知症で「精神障害者保健福祉手帳」を取得している人は、少ないように思います。
せっかく、税金が安くなるなどの優遇があるのにです。
そこで、この記事では、「精神障害者保健福祉手帳」における
- 所得税や住民税が安くなる「障害者控除」
- 取得条件
- 申請方法
について紹介します。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 家族が認知症と診断された
- 家族が介護認定を受けた
- 認知症の家族を扶養している
認知症になったら、「精神障害者保健福祉手帳」の申請をしよう
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するもので、精神障害者の自立と社会参加の促進を図るためのものです。
そのため、手帳を持っていることで、様々な支援(サービス)を受けることができます。
支援策としては、次のようなものです。
- 公共料金等の割引(NHK受信料の減免など)
- 所得税、住民税の控除(障害者控除)
- 相続税の控除、贈与税の非課税
- 自動車税・自動車取得税の軽減(手帳1級の方)
- 手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウント
これらは、主に、障害者本人が受けられるサービス(支援)になりますが、2の「所得税、住民税の控除(障害者控除)」については、障害者を扶養している人でも受けられます。
つまり、あなたが家族を扶養に入れており、その家族が認知症と診断された場合は、あなたの税金が安くなるってことです。
なので、家族が認知症と診断されたら、「精神障害者保健福祉手帳」の申請をし、必要以上の税金を払わないようにしましょう。
所得税や住民税が安くなる「障害者控除」とは?
障害者控除とは、納税者本人や扶養している家族などが、所得税法でいう障害者に当てはまる場合に、一定金額の所得控除が受けられるというものです。
障害者控除の対象となる人の範囲
障害者控除の対象(所得税法でいう障害者)となるのは、次のいずれかに当てはまる人です。
- 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
この人は、特別障害者になります。- 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人
このうち重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者になります。- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者になります。- 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人
このうち障害の程度が1級又は2級と記載されている人は、特別障害者になります。- 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)、(2)又は(4)に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人
このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長、特別区区長や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者になります。- 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人
このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は、特別障害者となります。- 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人
この人は、特別障害者となります。- その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする(介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にあると認められる)人
この人は、特別障害者となります。出典:国税庁「障害者控除」
障害者控除の金額
区分 | 主な要件 | 所得税控除額 | 住民税控除額 |
障害者控除 | 本人または扶養親族などが次に該当する場合
|
27万円 | 26万円 |
特別障害者控除 | 本人または扶養親族などが次に該当する場合
|
40万円 | 30万円 |
同居特別障害者控除 | 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族で、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている人 | 75万円 | 53万円 |
障害者控除で、どのくらい税金が安くなるのか?
概算ではありますが、
「障害者控除の適用を受けると、どのくらい税金が安くなるのか?」
について、次の条件で試算してみます。
【条件】
- あなたの年齢 45歳
- 配偶者あり(収入80万円)
- 子ども1人(16歳)
- 月額給与 40万円(交通費6,500円を含む)
- 年間賞与額 140万円
- 住宅ローン減税なし
上記の条件で、比較してみると次のようになります。
控除の種類 | 所得税 | 削減額 | |
障害者控除の適用なし | 128,300円 | ー | |
障害者控除の適用あり | 障害者控除 | 101,300円 | 27,000円 |
特別障害者控除 | 92,900円 | 35,400円 | |
同居特別障害者控除 | 75,400円 | 52,900円 |
これに、住民税(10%)を加えて、合計で
- 障害者控除 53,000円
- 特別障害者控除 65,400円
- 同居特別障害者控除 105,900円
の税金(所得税・住民税)が安くなります。
障害者控除の適用を受けるには、「扶養控除等(異動)申告書」に記載する
年末調整で、障害者控除の適用を受けるには、次のように記載します。
【給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方】
【障害者控除の記入例】
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出・変更については、職場の担当者に相談し、案内してもらってください。
書類とかももらえるはずです。
精神障害者保健福祉手帳は、障害の程度に応じて1~3級に分けられる
精神障害者保健福祉手帳の交付対象になるのは、精神障害のため長期にわたり日常生活や社会生活に支障がある人です。
具体的には、次のようなもので、すべての精神障害が対象となります。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
- 認知症
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
また、精神障害者保健福祉手帳は、障害の程度に応じて、次のように等級が分けられています。
等級 | 精神障害の状態 |
1級 | 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
「精神障害者保健福祉手帳の障害等級判定基準」について、詳しく確認したいという人は、こちらのサイトをご覧ください。
⇒東京都立中部総合精神保健福祉センター「精神障害者保健福祉手帳の障害等級判定基準」
ちなみに、「精神障害者保健福祉手帳」は、こんな様式です。
精神障害者保健福祉手帳の申請方法
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けるには、居住地を管轄する市町村の担当窓口で手続きをする必要があります。
申請に必要な書類等
- 障害者手帳申請書(精神障害者保健福祉手帳)
- 診断書(精神障害者保健福祉手帳用)
⇒診断書の作成日が、その疾患の初診日から6ヶ月以上経過しているもの - 精神障害を支給事由とする年金給付を現に受けていることを証明する書類の写し
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、番号通知カード、住民票など)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
- 本人の写真(縦4cm×横3cm)
⇒申請前1年以内に上半身脱帽で撮影されたもの
ちなみに、「障害者手帳申請書(精神障害者保健福祉手帳)」と「診断書(精神障害者保健福祉手帳用)」は、こんな書類(様式)です。
申請から交付までの流れ
なお、医師の診断書作成には、一般的に2週間程度かかります。
急ぎの場合は、医療機関の窓口で、相談してみることをオススメします。
早めに作成してくれるかもです。
また、医師の診断書には、費用がかかります。
相場としては、「5,500円~6,600円(税別)」ぐらいです。
手帳の申請は、家族などが代行することができる
本人が精神障害者保健福祉手帳の申請手続きを行うことが難しいときは、家族や医療機関の職員などが手続きを代行することができます。
もちろん、手帳の受け取りも、家族や医療機関の職員などが代行できます。
一応、法的根拠です。
第2 手帳の交付手続き
1 交付申請
(5)手帳の交付申請は、精神障害者本人が行うものとするが、家族、医療機関職員等が手帳の申請手続きの代行をすることは差し支えない。
5 手帳の交付
(1)手帳の交付は、その申請を受理した市町村長を経て申請者に対して交付する。
なお、家族、医療機関職員等が受領の代行をすることは差し支えない。
出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」
家族や医療機関の職員などが代行する場合は、上記の「申請に必要な書類等」に加え、
- 委任状や代理人選任届(代理権を確認できる書類)
- 代行する人の身分証明書
が必要になります。
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は「2年間」
精神障害者保健福祉手帳には、有効期限があります。
有効期限は、障害者手帳申請書(精神障害者保健福祉手帳)を市町村の担当窓口に提出した日(受理日)から2年間が経過する日の属する月の末日までとなります。
引き続き、障害者手帳の利用を希望する場合は、有効期限の3ヶ月前から更新申請を行うことができます。
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていない人でも「障害者控除」受けられる?
65歳以上の方で、市町村長等が障害者等に準ずるものとして認定した方は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていなくても、「障害者控除」の適用を受けることができます。
「障害者等に準ずるもの」として認定を受けるには、次の書類を市町村の担当窓口へ提出します。
- 障害者控除対象者認定申請書
- 対象者の介護保険被保険者証の写し
- 医師の意見書(介護保険の認定を受けていない場合)
申請書の提出後、審査を経て、障害者等に準ずるものとして認定された方には、「障害者控除対象者認定書」が発行されます。
あとは、確定申告で、障害者控除の適用を受けるだけです。
ちなみに、「障害者控除対象者認定書」は、控除を受ける年の12月31日現在の状況で発行します。
なので、申請は、原則、1月以降に行います。
まとめ
ここで、「精神障害者保健福祉手帳」について、おさらいです。
- 障害者手帳の交付により、障害者控除の適用を受けられる
- 障害者控除は、障害者を扶養している人も受けられる
- 障害者控除の控除額は「所得税27・40・75万円」「住民税26・30・53万円」
- 障害者控除の適用を受けるには、「扶養控除等(異動)申告書」に記載
- 手帳の申請先は、居住地を管轄する市町村の担当窓口
- 有効期限は、2年間
- 申請および受取は、家族などが代行することができる
心理的な問題を除けば、障害者手帳取得のデメリットはありません。
そもそも、障害者手帳を持っているからって、開示する義務はありませんし。
なので、お得に使える場面だけ、うまく活用してみてください。
特に、「障害者控除」は、控除額が大きいため、結構な節税になりますよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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