病院の平均入院患者数(入院稼働)を増やそうとか、維持しようってとき「入院率」って、かなり大切な指標になります。
というのも、入院率が高ければ、入院相談の件数が、比較的、少なくても入院数を確保できますし、また、入院数が確保できれば、病床回転率が上がり、日当点を上げたりできるからです。
こんな感じで。
- 入院数 30人=相談件数 60件×入院率 50%
- 入院数 30人=相談件数 40件×入院率 75%
- 入院数 30人=相談件数 90件×入院率 33%
そこで、この記事では、「入院率を上げるための未入院理由の把握と優先度の考え方」について、まとめておきます。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 病院の入院稼働が上がらなくて困っている
- 病院の経営管理を担当している
- 地域連携を担当している
未入院理由の把握と優先度は、パレート図を使うとわかりやすい
入院につながらなかった理由(未入院理由)は、特定の項目に集中することが多いです。
なので、未入院理由の種類としては、結構、限られてくると思います。
そんなとき、パレート図を使うと「どの項目に注力するべきか?(優先度)」が、パッと見てわかるのでオススメです。
こんな感じです。(数字は適当です)
お役に立てないかもしれませんが、使えそうなら使ってください。(一応、置いておきます)
パレート図(エクセル)無料ダウンロード
パレート図の見方
- 青色の棒グラフが、未入院になった件数を表しています。
- 緑色の折れ線グラフが、累積比率を表しています。
- 下のA~Oが、入院につながらなかった理由(未入院理由)です。
このパレート図からわかるのは、
- Aという未入院理由が、40件あり、全体の約32%を占めている
- A~Dの未入院理由が、全体の約80%を占めている
- 全15項目の未入院理由のうち、A~Dの4つ(約26%)の未入院理由に集中している
ってことです。
パレート図を使って、優先度を把握する
このパレート図から、入院率を改善するために、施策を考えていきます。
入院率を上げるには、入院につながらなかった理由(未入院理由)を入院につなげられるようにする必要があります。
もちろん、すべての理由に対して改善が行えるなら、入院率は「100%」となるため、ただただ最高ですが、はっきりってそんなの不可能です。
なので、「やりやすさ(改善のしやすさ)」と「効果」から、改善する項目を選択していきます。
つまり、優先度を設定するってことです。
それでは、まずは、パレート図から効果が最大化する「改善するべき項目」を選択していきます。
繰り返しになりますが、このパレート図からわかるのは、
- Aという未入院理由が、40件あり、全体の約32%を占めている
- A~Dの未入院理由が、全体の約80%を占めている
- 全15項目の未入院理由のうち、A~Dの4つ(約26%)の未入院理由に集中している
ってことです。
これらのことから、効果の最大化を考えると、
- Aの未入院理由が改善できれば、40件の入院数を増やすことができる
- A~Dの未入院理由が改善できれば、約80%の未入院を改善することができる
ってことになります。
つまり、「効果的に改善を行うなら、A~Dに注力したほうがいい」ってことです。
あとは、「改善が簡単に行えるのか?」が問題になります。
これは、「2×2マトリクス」という方法で判断すると、簡単です。
こんなやつです。
たとえば、未入院理由のA~Dが次のような理由だとします。
- 病状的に診れない
- 受入れスピード
- 患者・家族からの断り
- 金銭的問題
で、A~Dの理由を、「2×2マトリクス」で判断してみます。
未入院理由 | 改善のしやすさ | 効果 | 優先度 |
A | × | ◎ | ③ |
B | ◎ | 〇 | ① |
C | 〇 | △ | ② |
D | × | × | ④ |
Aは、効果が一番高いですが、「病状的に診れない」は、医師の判断に委ねられている部分が大きいので、改善しづらいです。
医師を採用(入替)するっていうのも、なかなか厳しいですし。
Bは、効果も高く、院内の入院受入の仕組みを変えればいいので、改善もしやすいと思います。
Cは、効果は少し落ちますが、「患者・家族が、なぜ断ったのか?」を特定できれば、改善できる部分があるかと思います。
Dについては、効果も低く、患者さんの金銭問題を病院で解決するのは困難です。
こんな感じで、優先度を設定していきます。
こうすることで、可能な範囲で、「最小限の力で、最大限の効果を得る」ってことができるようになります。
結果、Bの未入院理由を改善することが、一番効果的ということになります。
まとめ
ここで、「パレート図をつかった、未入院理由の把握と優先度の考え方」について、おさらいです。
- 優先度は、「やりやすさ(改善のしやすさ)」と「効果」で判断する
- パレート図で、効果を判断する
- 「2×2マトリクス」で、改善のしやすさを含めて、判断する
入院率の改善は、入院稼働に直接的に影響が出るので、未入院理由の把握と改善を行うことは、病院経営において、すっごく重要なことです。
だからといって、「なんでもかんでも改善だ~」っていうのは、生産性という概念が、ちょっと足りない気がします。
つまり、改善効果が少ないものに、限られた経営資源(人的資源など)を投下するのは、もったいないってことです。
そんなとき、ある程度、優先度を設定し、「やる・やらない」を決めるっていうのは大切なことだと思います。
ぜひ、「パレート図」と「2×2マトリクス」を活用して、組織の生産性を高めてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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