回復期リハビリテーション病棟の入院稼働がなかなか上がらなくて困っていたとき、「入院相談に対して入院につながった割合(以下、入院率)」を調べてみたら、50%程度だったんです。
僕としては、
「入院率を上げることで、入院稼働を上げたいな~」
そして、
「どうしたら入院率を上げられるんだろう?」
って思って、入院につながらなかった理由(未入院理由)を集計してみたんです。
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そうしたら、「他の病院に決まってしまった」みたいなケースが結構な件数あったんです。
つまり、「入院受入のスピードが遅いため、他の病院に決まってしまった」ってことです。
でも、相談員さんたちに聞くと、「すぐに受入している」みたいなことを言うんですよね。
そこで、入院相談(問い合わせ)から、入院までの時間(日数)を集計し、数値化してみたら、あまりにも時間がかかり過ぎていたんです。
ちょっと、ショックでした・・・
そして、その受入スピードの改善を行うことにしたんです。
そんなことで、この記事では、「入院相談から入院までの受入スピードにおける、ボトルネックの見つけ方と改善方法」について、まとめておきます。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 病院の入院稼働が上がらなくて困っている
- 病院の経営管理を担当している
- 地域連携を担当している
入院の受入スピードは、ボトルネックを特定し、効率的に改善する
次のような手順で、対応時間を把握し、改善していきます。
- 入院の問合せから入院までの流れをいくつかに分類し、対応時間を把握する
- 各項目における、「歩留まり」の状況を確認する
- どの項目に時間がかかっているかを特定する
- 歩留まりが多く、時間がかかっている項目に対し、改善を行う
こうすることで、改善効率の高い項目から、着手していくことができます。
また、問題点が特定できるので、効果が出やすいと思います。
それでは、1つずつ説明していきます。
入院の問合せから入院までの流れをいくつかに分類し、対応時間を把握する
うちの場合、入院までの流れは、次のようになっています。
- 入院の問合せ(患者の紹介)
- 入院受入ができるかどうかの回答
- 入院相談の実施(主に患者家族)
- 入院
この1~4の項目に対し、「どのくらいの時間がかかっているのか?」を調べていきます。
このとき、地域連携室(相談員)へ、次の表にて、毎月記録を取ってもらいました。
【問合せから入院に係る対応時間一覧】
表の見方としては、
- 問合せのあった日
- 入院可否を回答した日
- 入院相談を実施した日
- 実際に入院した日
の各項目に対し、「何日かかっているのか?」を表示しています。
たとえば、Aさんなら問合せのあった日から、
- 入院可否の回答に「4日間」
- 相談日まで「7日間」
- 入院までに「17日間」
かかっているってことです。
で、最終的に、月ごとの平均値、中央値、標準偏差を算出しています。
平均値だけでなく、中央値と標準偏差を出しているのは、対象データ(各種対応時間)のバラツキの大きさを見るためです。
ちなみに、中央値とは、データを昇降順に並べたときにちょうど真ん中に位置するデータです。
データが偶数の場合は、真ん中の2つのデータを平均とします。
標準偏差とは、平均値の±標準偏差の範囲に、どのくらいのデータが含まれているかを示すものです。
±標準偏差に含まれる割合は、次のとおりです。
- ±1 標準偏差 68.3%
- ±2 標準偏差 95.4%
- ±3 標準偏差 99.7%
たとえば、上記の表の場合、問合せから入院まで「平均値 18.9・標準偏差 4.9」となっていますので、±1標準偏差の場合、問合せから入院まで「14.0日~23.8日」の範囲に、68.3%のデータが入っているってことです。
つまり、標準偏差が大きければ、大きいほど、バラツキが大きいってことになります。
各項目における、「歩留まり」の状況を確認する
次に、毎月の「問合せから入院に係る対応時間一覧」から、各項目における「歩留まり」の状況を確認します。
こんな感じです。
【問合せから入院に係る対応時間(月次集計)】
ちょっと、小さくて見づらいと思うので、拡大しておきます。
この表の赤く囲った部分を見てください。
これによると、
- 問合せ19.8件に対し、15.1件が入院可なので、76.0%
- 入院可15.1件に対し、12.6件が相談を実施しているので、82.3%
- 相談12.6件に対し、10.6件が入院となったため、85.7%
となっています。
このデータでは、項目による「歩留まり」の状況にほとんど違いがなかったので、優先度に違いはありません。
ただ、もし入院可の件数に対し、相談を実施した件数が、あまりにも少ないなどの場合、
「そこに問題があるのかな?」
って仮説を立てられます。
たとえば、
「入院可15.1件に対し、5.0件しか相談が実施できてない」
なら、そこに大きな阻害要因があるんじゃないかってことです。
そんな感じで、ボトルネックを探していきます。
どの項目に時間がかかっているかを特定する
入院の問合せから入院までの対応時間を把握し、「歩留まり」の状況を確認したら、どこの項目に時間がかかっているかをチェックします。(赤く囲った部分です)
【問合せから入院に係る対応時間一覧】
すると、この月については、問合せから平均的に、
- 入院可否の回答に「3.7日間」
- 相談日まで「8.6日間」
- 入院までに「18.9日間」
かかっていることがわかります。
感じ方は、人それぞれかもしれませんが、僕としては、
「回復期リハビリ病棟でこんなに時間がかかっていたら、入院率なんて上がるわけないよね!?」
って思いました。
で、「どの項目から改善していくか?」なんですけど、一番簡単に改善できそうなのは、入院可否の回答に「3.7日間」かな?って思います。
そもそも、
「入院できるかどうかの確認に、4日かかるってどういうこと?」
って思いませんか?
もちろん、入院の可否は、医師が行うため、確認に時間がかかるケースもあるかと思いますけど、4日はかかりすぎです。
できれば、原則、当日回答を徹底したいですよね。
次は、相談日まで「8.6日間」の短縮かと思います。
入院可否の回答に「3.7日間」ですので、相談に来てもらうまで、5日間かかっているということになります。
このあたりは、相談を受けられる時間(枠)を増やすとか、病院の都合でなんとかなるかも?って思いました。
入院日については、家族の都合(仕事が休めないとか)が大きく影響するため、優先度としては、後回しかなと思います。
歩留まりが多く、時間がかかっている項目に対し、改善を行う
「どこに問題があるのか?」が特定できたら、改善策を考えていきます。
入院可否の回答時間
患者さんを紹介してくれた連携先のことを考えれば、問い合わせをくれた電話で、入院可否を伝えらえるのがベストなんですが、医師への確認が必要な場合がほとんどだと思うので、そうはいきません。
なので、各医師に相談し、ある程度「こういう患者は、入院にしていいよ」みたいなのを、ルール化しておくといいと思います。
つまり、相談員(前方連携看護師など)にある程度の権限を委譲するってことです。
そうすることで、入院可否の回答が早くなります。
医師は、嫌がるかもしれませんが・・・
また、患者を紹介いただける連携先に、入院受入可能患者の疾患などのリストや入院依頼の際に欲しい患者情報を渡しておくのもいいかもしれません。
あとは、「患者は断らないと決める」ってことですかね。
- まずは、なんにせよ、受ける
- で、どうしても入院を継続できないなら、転院してもらう
ってことです。
まぁ、これはこれで、医師は嫌がるかもしれませんけどね。
入院相談日の調整
入院相談までに時間がかかるのは、「患者家族が、仕事などの都合で病院に来れない」みたいなのが大きな要因だと思います。
なので、次のような策が考えられます。
- Zoomなどを活用して、オンラインで入院相談を実施
- 施設紹介などの動画を作成し、ホームページに掲載しておく
- 地域連携室に、遅番を設定し、夜間でも相談を受けられるようにする(20:00ぐらいまで)
- 入院相談自体をやめる
入院日の調整
繰り返しにはなりますが、入院日については、家族の都合(仕事が休めないとか)が大きく影響するため、こちらから入院日を指定して、極力、あわせてもらうようにお願いするしかないかと思います。
つまり、気合です。(笑)
問合せから入院に係る対応時間一覧(エクセル)の無料ダウンロード
必要ないかもしれませんが、一応、置いておきます。
お役に立てそうなら、使ってみてください。
【問合せから入院に係る対応時間一覧】
ダウンロード(エクセル)
【問合せから入院に係る対応時間(月次集計)】
ダウンロード(エクセル)
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まとめ
ここで、「入院相談から入院までの受入スピードにおける、ボトルネックの見つけ方」について、おさらいです。
- 問合せから入院までの流れをいくつかの項目に分け、対応時間を算出する
- 各項目における、「歩留まり」の状況を確認する
- どの項目に時間がかかっているかを確認する
- 歩留まりが多く、時間がかかっている項目に対し、優先的に改善を行う
問題点が特定できれば、改善するのは、わりと簡単です。
そのために、一連の流れをセグメントに分けて問題点を絞り込んでみると「何を改善すべきか?」がわかりやすくなります。
もし、改善策を色々と講じているのに、効果がないという場合は、試してみることをオススメします。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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