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精神保健指定医の資格を取るには?【精神保健福祉法の4つ要件(条件)】

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医師、病院、聴診器

この記事では、

「精神保健指定医の資格を取得するための要件」

について、まとめています。

 

こんな人に読んでいただけると嬉しいです。

  • 精神保健指定医の資格を取ろうと思っている
  • 精神科の医療機関で働いている

精神保健指定医になるには、「実務経験」「ケースレポートの提出」「研修会への参加」が必要

精神保健指定医の資格要件については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法という)にて、次のように定めています。

精神保健福祉法

(精神保健指定医)

第十八条 厚生労働大臣は、その申請に基づき、次に該当する医師のうち第十九条の四に規定する職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を、精神保健指定医(以下「指定医」という。)に指定する。

一 五年以上診断又は治療に従事した経験を有すること。

二 三年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること。

三 厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること。

四 厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修(申請前一年以内に行われたものに限る。)の課程を修了していること。

 

ちょっと抽象的な文章でわかりづらいので、わかりやすくしてみます。

【精神保健指定医の資格要件】

  • 医師として5年以上の臨床経験(医療実務経験)
  • 医師として、精神科を標榜している医療機関で3年以上の臨床経験(精神科実務経験)
  • ケースレポートの提出と口頭試問
  • 精神保健指定医研修会への参加
4つの要件をいずれも満たす必要があります。

 

それでは、1つずつ説明していきます。

医師として5年以上の臨床経験(医療実務経験)

精神保健福祉法第18条第1項の「診断又は治療に従事した経験」とは、医療機関において行った、医師としての実務経験のことです。

 

実務経験期間は、5年以上とされており、次のような算定ルールがあります。

  • 1週間に4日以上患者の診断または治療に当たっている期間を算定対象とする(8時間以上の勤務日を1日とする)
  • 当直のみをする時間および期間は、実務経験期間に算入しない
  • 初期研修期間の2年間は算定対象とする(研修医期間も算入)

医師として、精神科を標榜している医療機関で3年以上の臨床経験(精神科実務経験)

精神保健福祉法第18条第2項の「精神障害の診断又は治療に従事した経験」とは、精神科を標榜している医療機関において行った、精神科医としての実務経験のことです。

 

実務経験期間は、3年以上とされており、次のような算定ルールがあります。

  • 1週間に4日以上、精神障害者の診断または治療に当たっている期間を算定対象とする(8時間以上の勤務日を1日とする)
  • 当直のみをする時間および期間は、実務経験期間に算入しない
  • デイケア、ナイトケア、ショートケアなどに従事した時間および期間は、算定対象とする
  • 外国での精神障害者の診断または治療に当たっている期間は算定対象とする
精神科実務経験の3年は、医療実務経験にも算入できるため、医師免許取得後、最短5年で精神保健指定医の申請が可能ということになります。

ケースレポートの提出と口頭試問

精神保健福祉法第18条第3項の「厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験」とは、指定医の指定申請の際に提出するケースレポートと口頭試問により確認されるものです。

ケースレポートにかかる症例分野と症例数

ケースレポートは、対象となる症例が決まっており、指導医の指導のもと、自ら担当した5分野5症例以上が必要となります。

こんな感じです。

精神保健指定医にかかるケースレポートの症例(厚生労働省)

出典:厚生労働省「精神保健指定医の指定に関する要件・実施方法等の見直しについて」

 

また、提出するケースレポートは、次の条件を満たす必要があります。

  1. 措置入院者又は医療保護入院者の症例に限る
  2. 5症例のうち1例以上は医療保護入院者の症例とする
  3. 5症例のうち1例以上は措置入院者の症例とする
  4. 医療保護入院者の症例について1例以上は、申請者が、当該医療保護入院者の入院時点からその診断又は治療に従事したものであり、入院時の指定医の診察に立ち会ったものとする
  5. 5症例のうち1例以上は、申請前1年以内に従事したものとする
  6. 5症例のうち2例以上は、申請日の1年前の日より前に従事したものとする
  7. 5症例のうち1例以上は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者に係るものであることが望ましい
  8. 1例以上は、申請者が、措置入院者又は医療保護入院者の退院後に、任意入院による治療を行ったものであることが望ましい
  9. 1例以上は、申請者が、措置入院者又は医療保護入院者の退院後に、通院による治療を行ったものであることが望ましい(通院による治療の期間がおおむね1ヶ月以上であることが望ましい)
3~6については、経過措置が適用となっており、2022年6月30日までは、必須条件ではありません。

 

ちなみに、ケースレポートは、申請者が申請前7年以内に従事したものでなければなりません。

 

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口頭試問の実施

ケースレポートの書面審査後に、ケースレポートの内容や精神保健指定医として職務を行うのに必要な知識および技能を有しているかについて確認が行われます。

口頭試問は、評価基準に則し、試験委員による質疑応答形式とされています。

ケースレポートと口頭試問の評価基準

ケースレポートと口頭試問については、評価基準が明示されています。(申請の際の参考に)

こんな感じです。

 

ケースレポート及び口頭試問の評価基準(精神保健指定医)

出典:厚生労働省「精神保健指定医」

 

ダウンロードは、厚生労働省のこちらのページでできます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/seishinhokenshiteii.html

精神保健指定医研修会への参加

精神保健福祉法第18条第4項の「厚生労働省令で定めるところにより行う研修」は、日本精神科病院協会さんなどが行っています。

 

研修の内容としては、次のようなものです。(参考までに)

【精神保健指定医研修会の内容】

  • 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律と精神保健福祉行政の現状
  • 統合失調症の疾病概念と治療計画
  • 物質使用障害について
  • 精神保健指定医の役割・職務
  • 精神保健指定医の関連法令と実務
  • 成年後見制度について
  • 精神障害者の人権と法
  • 精神障害者の社会復帰及び精神障害者福祉
  • 精神科医療の将来展望と指定医のあり方
  • 事例研究

出典:日本精神科病院協会「第26回精神保健指定医研修会プログラム」

 

日本精神科病院協会さんの場合は、3日間の研修で、45,000円程度の受講料がかかるようです。

詳しくは、日本精神科病院協会さんのホームページを。

https://www.nisseikyo.or.jp/

 

なお、精神保健指定医の要件としては、申請前1年以内に行われた研修への参加に限られています。

「指定申請書」提出後の流れ

精神保健指定医の資格取得における、全体の流れです。

申請から1年と、結構かかりますよね。

精神保健指定医申請後の流れ(厚生労働省)

出典:厚生労働省「精神保健指定医の指定に関する要件・実施方法等の見直しについて」

精神保健指定医の資格取得後は、5年度ごとに研修を受ける

精神保健指定医は、指定後、5年度ごとに厚生労働大臣が定める研修を受ける必要があります。

根拠としては、このとおり。

(指定後の研修)

第十九条 指定医は、五の年度(毎年四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下この条において同じ。)ごとに厚生労働大臣が定める年度において、厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を受けなければならない。

2 前条第一項の規定による指定は、当該指定を受けた者が前項に規定する研修を受けなかつたときは、当該研修を受けるべき年度の終了の日にその効力を失う。ただし、当該研修を受けなかつたことにつき厚生労働省令で定めるやむを得ない理由が存すると厚生労働大臣が認めたときは、この限りでない。

出典:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

 

研修については、新規申請時と同じく「日本精神科病院協会」さんなどが行っています。

研修期間は、新規申請時と違い、1日間です。

 

また、内容としては、次のようなものです。(参考までに)

【精神保健指定医研修会(更新時)の内容】

  • 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律と精神保健福祉行政の現状
  • 精神障害者の人権と法
  • 精神保健指定医の役割・職務
  • 精神障害者の社会復帰及び精神障害者福祉
  • 事例研究

出典:日本精神科病院協会「第142回精神保健指定医研修会プログラム」

 

詳しくは、日本精神科病院協会さんのホームページを。

https://www.nisseikyo.or.jp/

精神保健福祉指定医の人数と割合

  人数 基準日
精神保健指定医 14,944人 2017年4月1日時点
精神科の医療機関で勤務する医師 15,609人 2016年12月31日時点
厚生労働省「精神保健指定医の推移」「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」より作成しています。

 

単純な比較はできませんが、この割合を見る限り、医療機関で勤務する精神科医のほとんどが、精神保健指定医を持っていることになります。

そういう意味では、精神科医としてのキャリアを考えるなら、精神保健指定医は、必須の資格と言えます。

 

ちなみに、精神保健指定医の人数は、増え続けています。

 

精神保健指定医数の推移

出典:厚生労働省「精神保健指定医数の推移」

まとめ

ここで、「精神保健指定医の資格要件」についておさらいです。

  • 医師として、医療実務経験5年以上
  • 医師として、精神科実務経験3年以上
  • ケースレポート「5分野5症例」以上の提出と口頭試問の実施
  • 精神保健指定医研修会への参加(申請前1年以内に行われた研修に限る)

 

精神保健指定医の資格を取るには、措置入院患者などのケースレポートの提出が必要なため、措置入院の受入れが行える「指定病院」で勤務する必要があります。

また、症例分野や症例数に条件があるため、措置入院などの受入れ件数が多ければ、多いほど、レポートに困ることはありません。

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なので、精神科医としてのキャリアを考え、精神保健指定医の取得を目指すなら、

  • 措置入院の受入れをしているか?
  • 措置入院の受入れ件数はどのくらいか?

などを確認のうえ、勤務する病院を選んでください。

じゃないと、「実務経験は満たしているのに、ケースレポートが揃わない・・・」なんてことになりかねませんので。

 

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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