患者さんから処方箋の再発行を依頼されることってありますよね?
再発行の理由としては、
- 処方箋の使用期間(交付の日を含めて4日以内)が過ぎてしまった
- 処方箋をなくしてしまった
がほとんどだと思います。
このときの医療機関や調剤薬局の取扱いについて、当院で「あーでもない、こーでもない」と、ごちゃごちゃしたんです。
そこで、「処方箋の再発行時の取り扱い」について、厚生局に確認しつつ、色々と調べてみましたので備忘録的にまとめておきます。(間違いがあれば、ご指摘ください)
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 医療事務の仕事をしている
- 医療機関で働いている
- 調剤薬局で働いている
処方箋の再発行にかかる費用は、保険請求が認められず、自費扱いとして患者(被保険者)が全額負担する
処方箋の再発行時のルールは、次のようになっています。
- 処方箋を紛失した場合の再発行にかかる費用は患者負担
- 処方箋の使用期間が過ぎてしまった場合の再発行にかかる費用は患者負担
- 薬品を紛失した場合の処方箋の再発行および薬剤の費用は患者負担
それでは、1つずつ詳しく説明していきます。
処方箋を紛失した場合の再発行にかかる費用は患者負担
患者さんが、調剤薬局から薬をもらう前に処方箋を紛失してしまった場合は、
- 処方箋の再発行にかかる費用:自費扱い
- 調剤薬局からもらう薬の費用:保険適用
となります。
根拠としては、次のとおりです。
Q&A「全国保険医団体連合会(平成26年4月2日)」
【問】院外処方箋を患者自身の過失により紛失して、処方箋の再交付を行った場合の費用はどうなるのか?
【答】再交付に係る費用については患者の負担となる。
処方箋の再発行に係る費用は自費扱い(自由診療)となります。
なので、再発行にかかる費用(金額)については、医療機関によって変わってきます。
ただ、一般的には、診療報酬の「処方箋料680円」としているところが多いかと思います。
ちなみに、処方箋発行日から4日を超え、使用期間が過ぎている場合、医師の判断により次のように取り扱います。(厚生局の担当者に確認した内容です)
【診察が必要な場合】
- 処方箋の再発行にかかる費用:保険診療にて再受診
- 調剤薬局からもらう薬の費用:保険適用
この取扱いは、厚生局の回答とは言え、ちょっと不安がありますよね。
【診察が不要な場合】
- 処方箋の再発行にかかる費用:自費扱い
- 調剤薬局からもらう薬の費用:保険適用
処方箋の使用期間が過ぎてしまった場合の再発行にかかる費用は患者負担
患者さんが、処方箋の使用期間内に、調剤薬局にて薬をもらわなかった場合は、
- 処方箋の再発行にかかる費用:自費扱い
- 調剤薬局からもらう薬の費用:保険適用
となります。
根拠としては、次のとおりです。
厚生労働省 事務連絡(平成22年9月30日)
「処方せんの使用期間について」
処方せんの使用期間を徒過した場合には、当該処方せんは無効となり、再発行してもらう必要があるが、この再発行にかかる費用については保険請求が認められず、患者(被保険者)が全額負担することとなる。
ちなみに、処方箋の再発行にかかる費用と処方箋発行日から4日を超え、使用期間が過ぎている場合の取扱いについては、「処方箋を紛失した場合」と同じです。
薬品を紛失した場合の処方箋の再発行および薬剤の費用は患者負担
患者さんが、調剤薬局から薬をもらった後に、その薬を紛失してしまった場合は、
- 処方箋の再発行にかかる費用:自費扱い
- 調剤薬局からもらう薬の費用:自費扱い
となります。
根拠としては、次のとおりです。
診療報酬点数表「第2章 特掲診療料 第5部 投薬 通則」
8 被保険者が保険医より薬品の授与を受け、持ち帰りの途中又は自宅において薬品を紛失したために(天災地変の他やむを得ない場合を除く。)保険医が再交付した場合は、その薬剤の費用は、被保険者の負担とする。
処方箋の使用期間は、なぜ4日間なのか?
処方箋の使用期間は、保険医療機関及び保険医療養担当規則「第20条、21条」にて定められています。
こんな感じです。
三 処方せんの交付
イ 処方せんの使用期間は、交付の日を含めて四日以内とする。
ただし、長期の旅行等特殊の事情があると認められる場合は、この限りでない。
処方箋の使用期間は、原則、4日間ですが、医師の医学的な判断において4日を超えて使用期間を設定することが認められています。
ただし、処方箋の使用期間は、処方箋発行時に医師が判断するものなので、処方箋交付後、患者の希望などにより使用期間を変更することはできません。(もちろん、使用期限が切れたあとに延長することもできません)
また、厚生労働省は、処方せんの使用期間を4日以内としている理由について、
としています。
ちなみに、処方箋の使用期間は、赤く囲った部分です。
処方箋の使用期間が4日以内の場合は、記載する必要はありません。
使用期間を変更するときだけ、年月日を記載します。
根拠は、これです。
「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について
保医発0325第1号 令和4年3月25日
別紙2 第5 処方箋の記載上の注意事項
6 「処方箋の使用期間」欄について
(1) 交付の日を含めて4日以内の場合は、記載する必要がないこと。
(2) 患者の長期の旅行等特殊の事情があると認められる場合に、交付の日を含めて3日以内又 は交付の日を含めて4日を超えた日より調剤を受ける必要がある場合には、年月日を記載すること。
この場合において、当該処方箋は当該年月日の当日まで有効であること。
処方箋を紛失し、再発行した場合の薬の費用【厚生局に確認】
処方箋の再発行にかかる費用の取扱いは、厚生労働省の事務連絡等ではっきり出ているんですが、薬の取扱いについて、はっきり載ってないんですよね。
なので、厚生局に確認してみました。
【質問】
【回答】
ちなみに、京都府保険医協会さんのホームページに掲載されている取扱いと同様でした。
2015年の記事だったので、取り扱いが変わってないか、ちょっと不安だったんですけどね。
京都府保険医協会「京都保険医新聞(2015年9月20日)」
保険診療Q&A(307)
処方せんや薬品紛失の際の投薬料について
Q、患者が医療機関より持ち帰りの途中または自宅において薬品を紛失した場合は、天災地変その他やむを得ない場合を除き、再交付した薬剤料は患者の自己負担となる。一方、以下の場合はどうなるのか。
(1)患者が調剤薬局で薬剤を受け取る前に、処方せんを紛失した場合。
(2)患者が調剤薬局で薬剤を受け取った後で、薬剤を紛失した場合。
A、(1)処方せんの再交付に係る費用は自費となりますが、薬局での調剤は保険適用されます。
(2)調剤報酬の通知に「被保険者が保険薬局より薬剤の交付を受け、持ち帰りの途中又は自宅において薬品を紛失したため(天災地変その他やむを得ない場合を除く)、再交付された処方せんに基づいて保険薬局が調剤した場合は、当該薬剤の費用は被保険者の負担とする」とあり、処方せんの再交付に係る費用、調剤および薬剤の費用は全て患者の自己負担となります。
なお、この場合、調剤薬局では、薬剤の交付前か交付後か判断できない可能性もありますので、処方せんの記載注意事項通知には書かれていませんが、処方せんの「備考」欄に「薬剤の紛失による処方せんの再交付」等を記載した方が良いでしょう。
リフィル処方箋を紛失した場合の取扱いは?【厚生局に確認】
リフィル処方箋は、最大3回まで使用できます。
もし、1~2回使用して紛失してしまった場合は、保険診療にて、再度受診をしてほしいとのことでした。
まぁ、言われてみれば、そうですよね。
もちろん、1回も使わずに、リフィル処方箋を紛失した場合は、通常の処方箋と同様の扱いになります。
まとめ
ここで、「処方箋の再発行および投薬にかかる費用の取扱い」について、一覧表にまとめておきます。
【処方箋の再発行および投薬にかかる費用一覧】
再発行理由 | 医療機関(処方箋の費用) | 調剤薬局 (薬の費用) |
|
交付から4日以内 | 交付から5日以降 | ||
処方箋の紛失 | 自費 |
診察なし:自費 |
保険適用 |
処方箋の |
自費 |
診察なし:自費 |
保険適用 |
薬の紛失 | 自費 | 自費 | 自費 |
処方箋の再発行って、件数としては少ないと思うんですけど、取り扱いを間違うと、患者さんにも迷惑をかけちゃいます。
そうならないように、制度の理解を深め、適切に判断していきたいですね。
わかりづらい通知が多いですけどね・・・
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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