この記事では、病院・診療所(保健医療分野)で働く公認心理師の
- 勤務者の割合
- 業務内容(相談内容や障害・疾患等)
- 平均給料、年収
について、紹介しています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 病院・診療所で働こうと思っている
- 転職を考えている
- 公認心理師になろうと思っている
なお、この記事で紹介している各種データは、
- 日本公認心理師協会「令和2年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業公認心理師の活動状況等に関する調査」
- 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター「厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査」
の結果をもとに作成したものです。
また、引用させていただきました表などについては、記事の中で明記しています。
公認心理師は、どこで働いているのか?
公認心理師の就業先(活動分野)は、主に、次の6つに分けられます。
- 保健医療
- 福祉
- 教育
- 司法、犯罪
- 産業、労働
- その他(私設心理相談機関、大学等附属心理相談施設、大学、研究所など)
就業人数の割合としては、次のようになっています。
出典:日本公認心理師協会「令和2年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業公認心理師の活動状況等に関する調査」
保健医療分野が一番多く「30.2%」です。
次に、教育分野が「28.9%」となっています。
公認心理師が一番多く働いている保健医療分野の具体的な勤務先は、次のとおりです。
就業先(勤務先) | 就業者の割合 |
精神保健福祉センター | 3.2% |
保健所・保健センター | 12.2% |
介護老人保健施設 | 0.8% |
精神科病院(単科精神科・精神科主体) | 30.3% |
一般病院(総合病院・身体科主体) | 25.9% |
一般診療所(精神科主体) | 23.1% |
一般診療所(精神科以外が主体) | 6.0% |
歯科診療所 | 0.1% |
医療機関に併設の心理相談室等(自費の心理相談機関等) | 3.2% |
その他 | 4.7% |
わかりやすく、グラフにしてみます。
精神科病院、一般病院、精神科主体の診療所で約8割を占めています。
保健医療分野の公認心理師の主な業務「心理支援」
病院や診療所で働く公認心理師さんの業務は、次にようになっています。
- 心理支援 92.0%
- 「心理支援」に関するマネジメント(管理)・コーディネーション(調整) 25.8%
- 心理専門職の養成・教育や「心理支援」に関わる研究等 6.7%
- 「他の専門性に基づく活動」(医療職・福祉職・教育職等) 13.1%
- その他 0.8%
心理支援が、92.0%とダントツです。
つまり、病院や診療所で働くほとんどの公認心理師さんは、心理支援をメインに行っていることになります。
次に、もうちょっと掘り下げて、心理支援の具体的な内容を次の3つに分けて紹介します。
- ライフサイクル・問題等
- 障害・疾患等
- 業務内容
心理支援の内容と割合「ライフサイクル・問題等」
公認心理士が、調査時点の直近1年間で関わったことのある支援・活動等の内容です。
ライフサイクル・問題等 | 割合 |
妊娠・出産・産後の問題 | 29.3% |
子育て・就学前の問題 | 53.5% |
児童期の問題 | 46.2% |
思春期・青年期の問題 | 65.5% |
成人期の問題 | 67.0% |
高齢期の問題 | 43.8% |
終末期(ターミナル)の問題 | 14.6% |
不登校に関する問題 | 53.6% |
いじめに関する問題 | 27.5% |
学業に関する問題 | 41.3% |
就労・職業に関する問題 | 55.0% |
ひきこもりに関する問題 | 39.5% |
自傷行為に関する問題 | 47.6% |
自殺未遂に関する問題 | 35.0% |
家族・パートナー等との関係に関する問題 | 59.4% |
介護に関する問題 | 18.9% |
人間関係に関する問題 | 69.2% |
住居・経済に関する問題 | 17.4% |
犯罪や法制度に関する問題(犯罪被害・訴訟・収監・刑務所からの出所等) | 10.0% |
精神疾患によらない反社会的行動に関する問題 | 8.4% |
虐待に関する問題 | 33.6% |
インフォームド・コンセントのフォロー | 16.6% |
意思決定支援/アドバンス・ケア・プランニング | 14.5% |
その他 | 1.8% |
人間関係に関する問題が「69.2%」で最も多く、
- 成人期の問題 67.0%
- 思春期・青年期の問題 65.5%
- 家族・パートナー等との関係に関する問題 59.4%
- 就労・職業に関する問題 55.0%
- 不登校に関する問題 53.6%
- 子育て・就学前の問題 53.5%
と続きます。
年代も含め、かなり幅広い問題に関わっていますね。
心理支援の内容と割合「障害・疾患等」
公認心理士が、調査時点の直近1年間で関わったことのある障害・疾患等の内容です。
障害・疾患等 | 割合 |
知的障害(知的発達症等) | 56.9% |
発達障害(自閉症スペクトラム障害/学習障害/注意欠如・多動性障害等) | 81.7% |
高次脳機能障害 | 21.8% |
統合失調症等 | 44.1% |
気分症:双極症等 | 48.7% |
気分症:抑うつ症・気分変調症等 | 66.7% |
不安または恐怖関連症 | 61.4% |
強迫症または関連症 | 47.4% |
ストレス関連症:心的外傷後ストレス症・急性ストレス反応等 | 39.9% |
ストレス関連症:適応反応症(適応障害) | 43.0% |
ストレス関連症:小児期の反応性アタッチメント症等 | 21.0% |
解離症 | 27.4% |
食行動症または摂食症 | 32.8% |
身体的苦痛症群または身体的体験症(身体化障害) | 29.8% |
物質使用症(アルコール・薬物等) | 24.0% |
嗜癖行動症(ギャンブル等) | 14.1% |
秩序破壊的または非社会的行動症:反抗挑発症 | 5.4% |
秩序破壊的または非社会的行動症:素行・非社会的行動症(放火・窃盗等) | 4.8% |
パーソナリティ症および関連特性 | 38.8% |
パラフィリア症(窃視症、小児性愛症、窃触症等) | 2.8% |
神経認知障害(認知症、軽度認知症、せん妄等) | 24.4% |
性の健康に関連する状態(性別不合、性機能不全等) | 14.6% |
睡眠・覚醒障害 | 30.4% |
生活習慣病 | 9.7% |
がん/緩和ケア | 11.1% |
HIV | 3.7% |
その他の身体疾患・障害に関連する心理的状態 | 10.4% |
その他 | 1.1% |
発達障害(自閉症スペクトラム障害/学習障害/注意欠如・多動性障害等)が「81.7%」で最も多く、
- 気分症:抑うつ症・気分変調症等 66.7%
- 不安または恐怖関連症 61.4%
- 知的障害(知的発達症等)56.9%
- 気分症:双極症等 48.7%
- 強迫症または関連症 47.4%
- 統合失調症等 44.1%
- ストレス関連症:適応反応症(適応障害)43.0%
と続きます。
関わる障害・疾患も幅広いです。
心理支援の内容と割合「業務内容等」
公認心理士が、調査時点の直近1年間で関わったことのある支援・活動等の業務内容です。
業務内容等 | 割合 |
個人に対する心理検査 | 78.5% |
個人に対するアセスメント面接 | 75.4% |
疾患の診断補助としての心理アセスメント | 54.9% |
家族・集団に対する心理アセスメント | 29.9% |
コミュニティに対する地域アセスメント | 4.6% |
心理検査のフィードバック・セッション | 59.0% |
個人に対する心理面接・カウンセリング:外来・通所 | 74.0% |
個人に対する心理面接・カウンセリング:入院・入所 | 31.1% |
各種疾患の回復・改善に向けた専門的心理面接 | 26.0% |
家族に対する心理面接・カウンセリング | 44.3% |
集団療法:外来・通所 | 17.9% |
集団療法:入院・入所 | 9.5% |
心理教育:個別 | 36.3% |
心理教育:家族・集団 | 25.2% |
デイ・ケア/ナイト・ケア/ショート・ケア:精神科 | 14.7% |
デイ・ケア:認知症 | 2.1% |
アウトリーチ | 6.1% |
健康診断 | 1.8% |
乳幼児健康診査 | 12.9% |
受療支援 | 3.9% |
予防啓発活動 | 5.1% |
精神保健福祉相談 | 8.3% |
高齢者・認知症に関する相談 | 8.7% |
アルコール関連問題相談 | 6.4% |
ギャンブル関連問題相談 | 3.9% |
薬物関連問題相談 | 3.1% |
思春期・青年期相談 | 14.9% |
地域リソース(社会資源)の組織育成 | 2.1% |
社会復帰活動(就労支援・リワーク等のデイ・ケア) | 7.7% |
職員のメンタルヘルス支援 | 18.6% |
その他 | 0.9% |
個人に対する心理検査が「75.8%」で最も多く、
- 個人に対するアセスメント面接 75.4%
- 個人に対する心理面接・カウンセリング:外来・通所 74.0%
- 心理検査のフィードバック・セッション 59.0%
- 疾患の診断補助としての心理アセスメント 54.9%
と続きます。
病院や診療所で働く公認心理師の平均年収
常勤で働く心理系職種の平均年収は、次のようになっています。
【常勤心理職の平均年収(令和2年調査)】
出典:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター「厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査」
医療機関によってばらつきが大きいですが、どの種類の医療機関においても、最も多いのは350 万~400 万未満となっています。
また、全体としても、年収400万円未満が「56.4%」です。
厚生労働省は、役職者を除く全産業平均年収を「440万円」としています。
とすると、公認心理師さんの平均年収は、お世辞にも高いとは言えないです。
公認心理師って、原則、⼤学院卒の国家資格者ですからね。
ちなみに、医療・福祉業界の他職種と比べても、公認心理師の年収は低めだと思います。
大学院卒ですからね・・・
公認心理師(常勤)の月額給料
公認心理師は、就業先(活動分野)によっても給料のバラツキがすごいです。
このグラフだけだと、ちょっとわかりづらいので、一覧表にしておきます。
【公認心理師の活動分野別月額給料割合(令和2年)】
全体としては、「20万円以上25万円未満」と「25万円以上30万円未満」が多くなっています。
ただ、少数ではありますが、50万円以上の給料をもらっている人もいますね。
活動分野別に見てみると、
- 司法、犯罪
- その他(私設心理相談機関、大学等附属心理相談施設、大学、研究所など)
の給料が比較的高めになっています。
だからといって、就業人数の割合がかなり少ない分野なので、就職って意味ではかなり狭き門ですね。
ちなみに、僕が仕事をしている保健医療分野における常勤公認心理師の月額給料をグラフにすると、こんな感じになります。
「かなり的を得てる調査結果だな・・・」って思います。
公認心理師が関与できる診療報酬がもっと増えていくと、処遇が改善されると思うんですけどね。
ただ、現状は、なかなか厳しいかもしれません。
医療機関としては、診療報酬につながらない職種を多数抱える余裕はないですからね・・・
【関連記事】
公認心理師の就業先(活動分野)別の常勤割合
公認心理師は、非常勤として働いている人が比較的多い職種です。
理由として一番多いのが、「希望する常勤の求人がない」で、半数以上となっています。
その中でも教育分野での非常勤の割合が高く、「74.1%」の人が非常勤として働いています。
【公認心理師の活動分野別「常勤・非常勤」割合一覧】
わかりやすくグラフにしています。
教育分野の公認心理師というと、スクールカウンセラーが多いと思うんですが、この職種のほとんどの人は非常勤ってことになりますね。
一方、常勤の割合としては、司法・犯罪分野「72.9%」、福祉分野「57.0%」、保健医療分野「56.3%」が高くなっています。
まとめ
ここで、「公認心理師の業務内容と平均年収」について、おさらいです。
- 公認心理師は、保健医療分野での就業者が一番多い
- 保健医療分野では、精神科病院、一般病院、精神科主体の診療所での就業者が約8割
- 保健医療分野の公認心理師は、「心理支援」が主な業務
- 医療機関で働く公認心理師の平均年収は、400万円未満が6割弱
- 公認心理師の給料は、「司法、犯罪分野」が一番多い
公認心理師の給料は、大学院卒の国家資格者としては、かなり厳しめです。
ただ、年収600万円以上や月給50万円以上の人もいるので、
- どうせ、どこの職場でも同じでしょ!?
- 我慢して、今の職場にいたほうがいい
- 転職で失敗するぐらいなら・・・
って諦めたりしないで、あなたの働きをきちんと評価してくれる環境(職場)をしっかりと探すってことが大切だと思います。
もちろん、仕事って給料だけで判断するものじゃないですけど、給与額って、経済的な価値だけじゃなく、感情的な価値もあると思うんです。
つまり、「その職種や仕事自体を組織(事業所)が、どう評価しているか?」ってことです。
なので、給料額が高い方が活躍の範囲が広く、やりがいという意味でも働きやすいと思います。
ぜひ、根気強く、あなたに合った職場を探してみてください。
ちなみに、公認心理師さんの求人は、他の職種と比べ、かなり少ないです。
そのため、「希望条件にあう、事業所はどう探したらいいの?」という人が多いと思います。
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