記事内に広告が含まれています

【通報者探しはダメ!】公益通報者保護法における通報者保護の内容とは?

スポンサーリンク

就職、転職、失業保険、仕事探し

会社(組織)は、公益通報者保護法により、「内部公益通報受付窓口」の設置が義務付けられています。

そして、通報した人が守られる仕組みがあります。

 

なので、

「職場の不正を発見した」

「職場でハラスメントを受けている」

という場合は、安心して通報できます。

 

とはいえ、通報したことがバレたら、

  • 職場に居られなくなるんじゃないか?
  • 働きづらくなるんじゃないか?
  • 降格になるんじゃないか?

って、不安に思ったりしますよね?

 

そこで、この記事では、少しでも気楽に通報できるように、公益通報者保護法における通報者保護の仕組み(内容)について、まとめておきます。

「通報しようか悩んでいる」という人に読んでいただけると嬉しく思います。

公益通報者保護のイメージ

公益通報者保護のイメージ(消費者庁)

出典:消費者庁「公益通報ハンドブック」

公益通報者の保護の内容

公益通報を行った者(公益通報者)は、公益通報をしたことを理由とした、事業者による不利益な取扱いから保護されます。

具体的には、次の3つです。

  1. 解雇の無効
  2. 解雇以外の不利益な取り扱いの禁止
  3. 損害賠償の制限

 

公益通報者保護法では、公益通報をしたことを理由として事業者が公益通報者に対して行った解雇や解雇以外の不利益な取扱いをすることを禁止しています。

【「不利益な取扱い」の例】

  • 降格
  • 減給
  • 役員報酬の減額
  • 訓告
  • 自宅待機命令
  • 給与上の差別
  • 退職の強要
  • 専ら雑務に従事させること
  • 退職金の減額・没収等

 

また、事業者は、公益通報をしたことを理由とした公益通報者に対する損害の賠償を請求することもできません。

通報者保護の観点から、事業者には通報者に関する情報の守秘等が義務付けられている

事業者の守秘義務は、次のとおりです。

  • 通報者探しの禁止
  • 組織の長その他幹部からの独立性の確保
  • 範囲外共有等の防止に関する措置

 

それでは、1つずつ説明していきます。

通報者探しの禁止

公益通報対応業務を行う「従事者」は、刑事罰としての守秘義務が発生し、公益通報者を特定させる情報を漏らしたり、通報者を探索することは禁止されています。

公益通報対応業務を行う「従事者」は、公益通報者を特定させる事項を漏らした場合には、刑事罰として30万円以下の罰金が科されます。(過失による情報漏えいは、刑事罰の対象とはなりません)

 

ちなみに、公益通報対応業務を行う「従事者」とは、消費者庁にて、次のように定義されています。

Q1

従事者として定めなければならないのはどのような者ですか。

A

従事者とは、本法第11条第1項に定める公益通報対応業務従事者をいい、事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として定める必要があります。

具体的には、事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行うことを主たる職務とする部門の担当者を、従事者として定める必要があります。

また、それ以外の部門の担当者であっても、事案により、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者に該当する場合には、必要が生じた都度、当該担当者を従事者として定める必要があります。

他方、内部公益通報の受付、調査、是正に必要な措置について、主体的に行っておらず、かつ、重要部分について関与していない者は、公益通報対応業務を行っているとはいえないことから、従事者として定める対象には該当しません。

例えば、社内調査等におけるヒアリングの対象者、職場環境を改善する措置に職場内において参加する労働者等、製造物の品質不正事案に関する社内調査において品質の再検査を行う者等であって、内部公益通報の内容を伝えられたにとどまる者等は、内部公益通報の受付、調査、是正に必要な措置について、主体的に行っておらず、かつ、重要部分について関与していないことから、たとえ調査上の必要性に応じて公益通報者を特定させる事項を伝達されたとしても、従事者として定めるべき対象には該当しません。

ただし、従事者以外の者についても、内部規程において範囲外共有等は禁止され、違反した場合には懲戒処分その他の措置を受けることには注意が必要です。

 

Q2

公益通報対応業務にはどのような業務が該当しますか。

A

公益通報対応業務とは、本法第11条第1項に定める公益通報対応業務をいい、内部公益通報の受付、調査、是正に必要な措置の全て又はいずれかを、主体的に行う業務及び当該業務の重要部分について関与する業務を行う場合に、これに該当します。

出典:消費者庁「従事者に関するQ&A」

組織の長、その他幹部からの独立性の確保

内部公益通報受付窓口は、組織のトップやその他の幹部に関係する事案について、これらの者から独立性を確保する必要があります。

組織においては、社長や役員などの幹部職員の影響力はすさまじいです。

結果、社長や役員などの幹部職員の圧力などによって、「通報させない」とか「事実を隠蔽する」みたいなことができなくもない。

 

だからこそ、事業者には、そういうことができないように、事前に措置を講じることが義務づけらています。

 

具体的な措置としては、「内部公益通報受付窓口を外部業者に委託する」などです。

そうすることで、通報者の心理的ハードルを下げることができますので。

範囲外共有等の防止に関する措置

まず、「範囲外共有」とは、公益通報者を特定させる事項を必要最小限の範囲を超えて共有する行為をいいます。

通報者からすれば、通報したことが社内等に広まってしまう(うわさレベルも含め)ことで不利益を被ることが考えられます。

 

そうなると、通報自体を躊躇することもあるでしょう。

そうならないように、事業者には、範囲外共有を防止する措置が義務づけられてます。

 

ちなみに、消費者庁の指針では、次のようになっています。

(2) 範囲外共有等の防止に関する措置

イ 事業者の労働者及び役員等が範囲外共有を行うことを防ぐための措置をとり、範囲外共有が行われた場合には、適切な救済・回復の措置をとる。

ロ 事業者の労働者及び役員等が、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる。

ハ 範囲外共有や通報者の探索が行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。

出典:消費者庁「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」

 

つまり、「調査をするにあたり、この人に情報を共有しないと調査ができない」っていう人以外には、情報を共有しちゃダメってことです。

公益通報対応業務を行う「従事者」以外の職員に、守秘義務は発生しないのか?

公益通報者保護法上では、原則、従事者以外は、公益通報者保護法違反の刑事罰を受けることはありません。

ただし、従事者として定められていない者であっても、範囲外共有などを禁止した就業規則等に違反すると、当該規則等に従った懲戒処分を受ける可能性があります。

 

ちなみに、「公益通報者保護特別委員会委員 中野 真 弁護士」は、従事者ではない者による通報者探しは刑事罰の対象になり得るとしています。

このとおり。

従事者でない者による通報者探しが刑事罰の対象となり得る点にも留意が必要である。

従事者守秘義務違反に対する刑事罰を定める法21条には、刑法総則の規定が適用されることから、従事者守秘義務違反を唆した者には法21条の教唆犯が成立する。

そして、従事者に対し、誰が内部公益通報をしたのかを尋ねることは、通報者情報を漏らすことを唆す行為にあたるため、唆しにより従事者が通報者情報を伝えた場合には、唆した者に法21条違反の教唆犯が成立し得る。

このような形で、従事者でない者においても、刑事罰を負う場合がある。

例えば、従事者であるコンプライアンス部門の担当者が、役員等の上位の役職者から通報者情報を開示するよう指示を受け、通報者情報を開示する場合が想定される。

こうした場合、漏らすことについて「正当な理由」があると誤解をされる方もいるかもしれないが、業務命令はあくまで労働契約を根拠とするものであり、法令を根拠とするものではないところ、強行法規に反する契約は効力を生じないため(民法91条)、他に「正当な理由」があるといえない場合においても開示を求める業務命令は無効であり、当該業務命令があることをもって「正当な理由」があるとはいえない。

なお、委託元である会社から委託先の弁護士への開示要求も同様の考え方であり、弁護士が会社からの要求に正当な理由なく応じ通報者情報を開示すれば従事者守秘義務の違反となり得る。

こうした態様の通報者探しは、性質上、役員を含む上位者により行われやすいことから、役員に対しても従事者守秘義務の内容、守秘義務に違反した場合のリスクを十分に教育することが必要である(指針本文第4. 3 ⑴ でも、労働者のみならず役員への公益通報者保護法の教育を求めている)。

出典:LIBRA Vol.22 No.10 2022/10「どう変わった?公益通報者保護法」

 

公益通報対応業務を行う従事者に対し、「通報者は誰なのか?」と聞くこと自体が、犯罪をそそのかした行為になるってことです。

なんにせよ、「通報者探し」はしちゃダメなんです。

公益通報は、匿名でもOK!

公益通報者保護法においては、公益通報に該当する場合、匿名での通報も可能です。

公益通報は、匿名でもできますか?(消費者庁)

出典:消費者庁「公益通報ハンドブック」

公益通報とは、労働者・退職者・役員が、役務提供先の不正行為を、不正の目的でなく、一定の通報先に通報することをいいます。

まとめ

ここで、主な「公益通報者保護法における通報者が守られる仕組み」について、おさらいです。

  • 解雇の無効
  • 解雇以外の不利益な取り扱いの禁止
  • 損害賠償の制限
  • 通報者探しの禁止(刑事罰あり)
  • 組織の長その他幹部からの独立性の確保
  • 範囲外共有等の防止に関する措置

 

職場の不正や違法行為について、通報するのってすっごくエネルギーを使いますよね。

でも、公益通報は、匿名でも可能ですし、通報者探しや通報者に対する不利益な取扱いが禁止されていますので、

「職場の不正を発見した」

「職場でハラスメントを受けている」

という場合は、気軽に通報しちゃいましょう。

最終的には、その方が事業者にとっても良いことなので。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

【あわせて読みたい】

法令遵守
スポンサーリンク
こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

こうをフォローする
よろしければシェアお願いします
こうをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました