この記事では、実際に労働基準監督署に相談しながら、申請手続きをした経験をもとに「断続的な宿直又は日直勤務に係る許可基準」についてまとめています。
この基準、おそらく、どの病院も苦労していると思います。(うちもかなり苦労しました)
主な理由としては、
- 基準通知がわかりづらい(解釈が難しい)
- 病院の実務とかなりかけ離れている
- 医療法と労働基準法のバランスの悪さ
って感じです。
ただ、宿直・日直勤務があるなら「断続的な宿直又は日直勤務許可申請手続き」を行わないという選択肢はありませんので、大変かもしれませんが、なんとか提出しちゃいましょう。
「宿日直勤務に係る許可基準」のまとめ
まず、結論です。
- 通常勤務から、連続して宿日直勤務に入らないこと(30分以上の空き時間を作る)
- ほとんど労働する必要がないこと
- 十分に睡眠がとれること
- 宿直勤務は、週1回、日直勤務は、月1回を限度とすること
- 宿日直手当の金額は、職種ごとに、宿日直勤務に就く労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1以上とすること
「宿日直勤務に係る許可基準」通知を見ながら解説
それでは、1つずつ見ていきます。
通常勤務から、連続して宿日直勤務に入らないこと(30分以上の空き時間を作る)
1 医師及び看護師の宿直勤務に係る許可基準に定められた事項の概要
(1)通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること。即ち通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、勤務から開放されたとはいえないから、その間は時間外労働として取り扱わなければならないこと。
この文章の解釈は、すごく難しいと思います。
「通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること。」とは、通常の日勤が「9:00~17:00」だった場合、宿直勤務は「17:30~翌8:30」にしろってことです!!
つまり、通常の日勤時間から、連続して宿直勤務に入る場合は、許可が下りないってことです。
だから、通常の日勤時間と宿直勤務との間に、30分の空き時間を作っているです。
ちなみに、「なぜ?30分の空き時間?」かと言うと、労働基準監督署の担当官に、「最低でも30分は空けてください!」と指導されたからです。
地域によっては、「1時間空けろ」って言われるかもしれません。
【追記(令和2年5月21日)】
「通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること」の解釈は、労働基準監督署によって違うことがわかりました。
詳しくは、こちらの記事でまとめていますので、チェックしてみてください。
ほとんど労働する必要がないこと
2 一般の宿日直勤務に係る許可基準に定められる事項の概要
(1)勤務の態様
ア 常態として、ほとんど労働する必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。
1 医師及び看護師の宿直勤務に係る許可基準に定められた事項の概要
(2)夜間に従事する業務は、一般の宿直業務以外には、病室の定時巡回、異常患者の医師への報告あるいは少数の要注意患者の定時検脈、検温等特殊の措置を要しない軽度の、又は短時間の業務に限ること。
次の5つの業務だけなら、ほとんど労働してないってことになります。
- 院内の見回り(巡視)
- 電話対応と緊急時の文書の受け渡し
- 非常事態に備えての待機
- 異常患者の報告
- 少数の患者の定期検脈・検温等(短時間の業務に限る)
なお、宿直の許可を受けていても、宿直中に突発的な事故による応急患者の診療又は入院、急患の死亡、出産等があった場合、その時間については「残業手当」の支給が必要となります。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
十分に睡眠がとれること
1 医師及び看護師の宿直勤務に係る許可基準に定められた事項の概要
(3)夜間に充分睡眠がとりうること。
2 一般の宿日直勤務に係る許可基準に定められる事項の概要
(4)その他
宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。
この基準については、労働基準監督署の担当者からは、次の2点を指導されました。
- 夜9時以降は、定期巡視(見回り)は行わないこと
- ベット等が設置してある宿直スペースは、極力、個室とすること(望ましいというニュアンスでしたが・・・)
つまり、「しっかりと睡眠が取れるように環境整備しろ」ってことです。
宿直勤務は、週1回、日直勤務は、月1回を限度とすること
2 一般の宿日直勤務に係る許可基準に定められる事項の概要
(3)宿日直の回数
許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回を限度とすること。
ただし、当該事業場に勤務する18歳以上の者で法律上宿直又は日直を行いうるすべてのものに宿直又は日直をさせてもなお不足でありかつ勤務の労働密度が薄い場合には、宿直又は日直業務の実態に応じて週1回を超える宿直、月1回を超える日直についても許可して差し支えないこと。
これは、読んだままですね。
宿直・日直は、回数制限があるってことです。
ちなみに、「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」の添付書類に、宿日直日誌が入っていますので、実施回数は確認されます。
結構、しっかり数えてましたよ・・・(笑)
宿日直手当の金額は、職種ごとに、宿日直勤務に就く労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1以上とすること
1 医師及び看護師の宿直勤務に係る許可基準に定められた事項の概要
(7)病院における医師、看護師のように、賃金額が著しい差のある職種の者が、それぞれ責任度又は職務内容を異にする宿日直を行う場合においては、1回の宿日直手当の最低額は宿日直につくことの予定されているすべての医師ごと又は看護師ごとにそれぞれ計算した一人一日平均額の3分の1とすること。
2 一般の宿日直勤務に係る許可基準に定められる事項の概要
(2)宿日直手当
ア 宿直勤務1回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む。)又は日直勤務1回についての日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われる賃金(法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る。)の一人一日平均額の3分の1を下らないものであること。ただし、同一企業に属する数個の事業場について、一律の基準により宿直又は日直の手当額を定める必要がある場合には、当該事業場の属する企業の全事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者について一人一日平均額によることができるものであること。
宿直・日直の手当は、宿直・日直勤務を行う職員の1日あたりの平均賃金の3分の1以上でなければなりません。
まぁ、「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」に、1人1日平均賃金の3分の1を算定する項目があるので、もし賃金が3分の1に達していなければ、金額を上げてください。(笑)
なお、申請書類については、こちらの記事からダウンロードできます。
まとめ
今回紹介させていただいた5つの基準をクリアできれば、「断続的な宿直又は日直勤務許可書」が手に入ります。
サクッと、取っちゃいましょう!!
それでは、最後に、「宿日直勤務に係る許可基準」についておさらいです。
- 通常勤務から、連続して宿日直勤務に入らないこと(30分以上の空き時間を作る)
- ほとんど労働する必要がないこと
- 十分に睡眠がとれること
- 宿直勤務は、週1回、日直勤務は、月1回を限度とすること
- 宿日直手当の金額は、職種ごとに、宿日直勤務に就く労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1以上とすること
なお、病院に関しては、申請しないという選択肢はありません!
医療法第16条により、病院は、医師を宿直させなければならないことになってますので。
医療法 第16条
医業を行う病院管理者は病院に医師を宿直させなければならない。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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