この記事では、医師、看護師等の宿日直許可基準の1つである、
「通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のもの」
の解釈について、複数の労働基準監督署に確認した内容をまとめています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 「断続的な宿直又は日直勤務許可申請」を考えている
- 医療機関等の管理者
- 病院や有床診療所で、労務管理(事務)を行っている
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宿日直許可の制度については、こちらの記事を。
「通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のもの」の解釈は、労働基準監督署によって違う
医師、看護師等の宿日直許可基準における「通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のもの」の解釈については、労働基準監督署(担当官など)によって変わりました。
具体的には、
- 通常勤務から連続して宿日直勤務に入らないこと(30分以上の空き時間をつくる)
- 業務内容的に通常の勤務と宿日直勤務で、しっかり切り分けができていれば、通常勤務から連続して宿日直勤務に入ってもいい
という2つです。
見てのとおり、全く解釈が違いますので、「断続的な宿直又は日直勤務許可申請」を行う場合は、事前に、労働基準監督署への確認を徹底しましょう。
ちなみに、厚生労働省の通達では、「医師、看護師等の宿日直許可基準」について、次のように定められています。
医師等の宿日直勤務については、次に掲げる条件の全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合には、規則第23条の許可(以下「宿日直の許可」という。)を与えるよう取り扱うこと。
(1)通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。
すなわち、通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、通常の勤務時間の拘束から解放されたとはいえないことから、その間の勤務については、宿日直の許可の対象とはならないものであること。
出典:厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について(令和元年7月1日)」
それでは、「通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること」の解釈について、1つずつ説明していきます。
通常勤務から連続して宿日直勤務に入らないこと(30分以上の空き時間をつくる)
1つ目の解釈は、
「通常の日勤時間から、そのまま宿直勤務に入ってはいけない」
という意味です。
たとえば、通常の日勤が「9:00~17:00」だった場合、宿直勤務は「17:30~翌8:30」にしましょう!ってことです。
ちなみに、「なぜ、30分の空き時間?」かと言うと、労働基準監督署の担当官に「最低でも30分は空けてください!」と指導されたからです。
なので、地域によっては、「15分」や「1時間」って言われるかもしれません。
業務内容的に通常の勤務と宿日直勤務で、しっかり切り分けができていれば、通常勤務から連続して宿日直勤務に入ってもいい
2つ目の解釈は、
「通常の日勤時間と宿直勤務との間に、空き時間があるかないかではなく、業務内容としてしっかり分けられているか?」
ということで、通常業務がダラダラと続き、宿日直勤務とのメリハリがないというのは許可されないということになります。
なので、逆にいえば、通常業務と宿日直業務がしっかりと時間で分けられていれば、
- 日勤 9:00~17:00
- 宿直 17:00~9:00
という勤務であっても、「断続的宿直又は日直勤務許可」を受けることができるということになります。
医療機関における宿日直勤務に係る基準(労働基準法第41条関係)
参考までに、宿日直許可の法的根拠について載せておきます。
労働基準法
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
労働基準法施行規則
第二十三条 使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第三十二条の規定にかかわらず、使用することができる。
なお、様式十号とは、次の様式です。
医療機関における宿日直勤務に係る許可基準(条件)
医師等の宿日直勤務については、次に掲げる条件の全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合には、規則第23条の許可(以下「宿日直の許可」という。)を与えるよう取り扱うこと。
(1)通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。
すなわち、通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、通常の勤務時間の拘束から解放されたとはいえないことから、その間の勤務については、宿日直の許可の対象とはならないものであること。
(2)宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。
例えば、次に掲げる業務等をいい、下記2に掲げるような通常の勤務時間と同態様の業務は含まれないこと。
- 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
- 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
- 看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと
- 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと
(3)上記(1)、(2)以外に、一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること。
出典:厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について(令和元年7月1日)」
一般の宿日直の許可の際の条件
一般の宿日直勤務に係る許可基準に定められる事項の概要
(1)勤務の態様
ア 常態として、ほとんど労働する必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。
イ 原則として、通常の労働の継続は許可しないこと。従って始業又は終業時刻に密着した時間帯に、顧客からの電話の収受又は盗難・火災防止を行うものについては、許可しないものであること。
(2)宿日直手当
ア 宿直勤務1回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む。)又は日直勤務1回についての日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われる賃金(法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る。)の一人一日平均額の3分の1を下らないものであること。
ただし、同一企業に属する数個の事業場について、一律の基準により宿直又は日直の手当額を定める必要がある場合には、当該事業場の属する企業の全事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者について一人一日平均額によることができるものであること。
イ 宿直又は日直勤務の時間が通常の宿直又は日直の時間に比して著しく短いものその他所轄労働基準監督署長が上記アの基準によることが著しく困難又は不適当と認めたものについては、その基準にかかわらず許可することができること。
(3)宿日直の回数
許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回を限度とすること。
ただし、当該事業場に勤務する18歳以上の者で法律上宿直又は日直を行いうるすべてのものに宿直又は日直をさせてもなお不足でありかつ勤務の労働密度が薄い場合には、宿直又は日直業務の実態に応じて週1回を超える宿直、月1回を超える日直についても許可して差し支えないこと。
(4)その他
宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。
出典:厚生労働省労働基準局「医療機関における休日及び夜間勤務適正化について」
まとめ
繰り返しにはなりますが、医師、看護師等の宿日直許可基準の1つである「通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のもの」は、労働基準監督署(担当者)によって解釈に違いがあります。
この解釈が違うと、「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書(様式10号)」における、宿直・日直勤務の開始及び終了時刻が変わっちゃうので、申請書が出し直し(辞退 ⇒ 再提出)になっちゃいます。
ここの部分です。
再提出の手続きは、結構、面倒なので「断続的な宿直又は日直勤務許可申請」を考えているなら、労働基準監督署への事前確認を徹底するようにしてください。
じゃないと、僕みたいになっちゃうかもしれませんので。(笑)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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