この記事では、「新型コロナウイルスに感染し、仕事を休んだ場合の労災補償」についてまとめています。
新型コロナウイルスに感染した人は、「業務により感染した可能性が高い」と認められる場合、労災保険給付(休業補償給付)の対象となります。
そして、休業補償給付の対象となると、仕事を休んだ期間において、給料の約8割(最初の3日間は6割以上)が補償されます。
ただ、労災保険の対象となる範囲(考え方)が、結構、複雑なため、
- 新型コロナウイルスに感染してしまった
- もしものとき、休業補償ってどうなるの?
- 医療従事者は、職場からの感染リスクが高いんだけど・・・
という人は取り扱いについて、ぜひ、チェックしてみてください。
新型コロナウイルスの場合、感染経路が特定されなくても労災補償の対象になる
まず、結論です。
- 業務に起因して新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象になる
- 医療従事者等は、原則として、労災保険給付の対象になる
- 医療従事者等以外でも、感染リスクが高い労働者は、労災保険給付の対象になる場合がある
- 労災補償の対象になるかどうかは、請求書提出後に、労働基準監督署が行う
- 休業補償給付等の支給額は、給付基礎日額の80%
それでは、1つずつ説明していきます。
業務に起因して新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象になる
労災保険とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡に対して給付を行うものです。
業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいいます。(いわゆる「業務起因性」ってやつです)
新型コロナウイルスに感染した場合は、「業務上の疾病」に該当することになり、業務上にある状態において有害因子(病原体など)にさらされたことにより発症した疾病ということになります。
ポイントとしては、
「業務上の疾病は、労働者が業務上にある状態において発症した疾病ではない」
ってことです。
分かりやすく言うと、
「職員さんが、勤務時間中に脳出血で倒れた(発症した)としても、その発症原因となった業務上の理由が認められない限り、労災保険給付の対象とならない」
ってことで、逆にいうと、
「勤務時間外での発症であっても、その発症原因となった業務上の理由が認められる場合は、労災保険給付の対象となる」
ということです。
また、具体的には、次の3つの要件を満たすときに、原則、業務上疾病と認められます。
- 労働の場に有害因子(病原体など)が存在していること
- 健康障害を起こしうるほどの有害因子(病原体など)にさらされたこと
- 発症の経過および病態が医学的にみて妥当であること
新型コロナウイルスについても、上記の要件に照らし合わせ、業務に起因して感染したものであると認められる場合に、労災保険給付の対象になります。
なお、法的根拠は、次のとおりです。
2.具体的な取扱いについて
イ 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」
問1 労働者が新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となりますか。
業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」
医療従事者等は、原則として、労災保険給付の対象になる
原則として、労災保険給付の対象になるには、
- 労働の場に有害因子(病原体など)が存在していること
- 健康障害を起こしうるほどの有害因子(病原体など)にさらされたこと
- 発症の経過および病態が医学的にみて妥当であること
の要件をすべて満たす必要がありますが、医師、看護職員、介護職員などの医療従事者等については、感染経路が特定されていなくても、労災保険給付の対象となります。
根拠としては、このとおり。
2.具体的な取扱いについて
ア 医療従事者等
患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」
問2 医師、看護師などの医療従事者や介護従事者が、新型コロナウイルスに感染した場合の取扱いはどのようになりますか。
患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」
見てのとおり、「業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」とされています。
つまり、医療従事者等については、ほぼ、労災保険給付の対象になると言っても過言ではないと思います。
医療従事者等以外でも、感染リスクが高い労働者は、労災保険給付の対象になる場合がある
医療従事者等ほどの明確さはありませんが、次のような感染リスクが相対的に高いと考えられる業務をしている人が新型コロナウイルスに感染したとき、感染経路が特定されていなくても労災保険給付の対象になる場合があります。
【感染リスクが相対的に高いと考えられる業務】
- 複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
- 顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
具体的には、次のとおりです。
問5 「複数の感染者が確認された労働環境下」とは、具体的にどのようなケースを想定しているのでしょうか。
請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定しています。
なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられます。
問6 「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」として想定しているのは、どのような業務でしょうか。
小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しています。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」
労災補償の対象になるかどうかは、請求書提出後に、労働基準監督署が行う
労災保険給付に対象になると、休業4日目から、
- 休業補償給付(給付基礎日数の約60%)
- 休業特別支給金(給付基礎日数の約20%)
が支給されます。
ただ、労災保険給付の対象になるかどうかは、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を労働基準監督署へ提出してみないとわかりません。
なので、「もしかして?」と思ったら、必ず請求するようにしましょう。
【休業補償給付支給請求書(様式第8号)】
出典:厚生労働省「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」
なお、労災保険給付(休業補償給付)の手続きは、事業主を通して行うことができますので、職場の社会保険担当者に相談すれば、色々と説明してくれるはずです。
【休業補償給付の請求イメージ】
出典:厚生労働省「労災保険 休業(補償)給付の請求手続き」
休業補償給付等の支給額は、給付基礎日額の80%
休業補償給付・休業特別支給金の計算は、次の式で行います。
- 休業補償給付 = 給付基礎日数の60% × 休業日数
- 休業特別支給金 = 給付基礎日数の20% × 休業日数
給付基礎日数とは、直前3ヶ月間の1日あたりの平均賃金
給付基礎日額とは、原則として、事故が発生した日(賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日)の直前3ヶ月間に支払われた給料の総額を、その期間の歴日数で割った1日当たりの賃金額のことです。
なので、4月、5月、6月に、月額20万円の給料をもらっていた人の場合、
20万円 ÷ 91日(3ヶ月) = 6,593.4円
となり、給付基礎日額は「6,594円」となります。
休業補償給付・休業特別支給金を試算してみると
次の条件で、試算してみます。
【条件】
- 給付基礎日額 6,594円
- 「業務上の疾病」により、20日間、仕事を休んだ
まずは、1日あたりの給付額を算出します。
休業補償給付 6,594円 × 0.6 = 3,956.4円/1日
休業特別支給金 6,594円 × 0.2 = 1,318.8円/1日
次に、休業補償給付と休業特別支給金の合計額に休んだ日数を掛けます。
(3,956円 + 1,318円) × 17日 = 89,658円
月額給与別「休業補償給付等」早見表
いちいち計算するのが面倒なので、早見表(概算)を載せておきます。
参考までに。
【月額給与別 給与基礎日額・休業補償給付・休業特別支援金 早見表】
新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いに関する質疑応答(厚生労働省)
厚生労働省が労働局に対して出した「事務連絡(令和3年2月16日)」です。
具体例が載っていて、わかりやすいので、役に立ちそうな部分だけ引用しておきます。
発出日の考え方
問1
4月10日に発熱や咳など症状が出現したので、4月13日に医療機関を受診しPCR検査を受けた。4月14日に検査結果が陽性だったので、医師から新型コロナウイルスへの感染が診断された。この場合、発病日は、いつか。
また、休業期間の始期はいつか。
(答)
発病日(傷病年月日)は、「医学上療養を必要とすると認められるに至った日」であることから、検査結果が陽性と確認された場合に、受診した医療機関への初診日(療養の請求書記載の発病年月日)となる。
したがって、本件の発病日は、初診日である4月13日となる。
また、休業期間の始期は、発病日である4月13日となる。
なお、業務状況等の調査の起算日となる発症日は、4月10日となる。
問2
4月10日に発熱や咳など症状が出現したので、4月13日にA診療所を受診した。
検査の必要性があったことから、A診療所の紹介で4月14日にB医療機関を受診しPCR検査を受けた。
4月15 日に検査結果が陽性だったので、医師から新型コロナウイルスへの感染が診断された。
この場合、発病日は、いつか。
(答)
本件の発病日は、最初に医療機関を受診した日である4月13日となる。
なお、A診療所とB医療機関との受診間隔や、自覚・他覚症状の経過等から疑義が生じる場合は、調査の上、専門医の意見を踏まえて決定すること。
問3
4月10日に発熱や咳など症状が出現したので、4月13 日に保健所へ連絡したところ、医療機関の受診はなく、保健所にてPCR検査を受けた。
4月15日に検査結果が陽’性だったので、同日から入院となった。
この場合、発病日は、いつか。
(答)
本件の発病日は、PCR検査を受けた4月13日となる。
問4
4月10日に新型コロナウイルスに感染した者と濃厚接触し、その後、発熱や咳など症状が出現したので、4月13 日に医療機関で1回目のPCR検査を受けたところ陰性であった。
しかし、症状が続いたことから、4月20日に再受診し、2回目のPCR検査を受けたところ陽性で、あっ
たため、同日から入院となった。
この場合、発病日は、いつか。
(答)
本件の発病日は、1回目のPCR検査を受けた4月13日となる。
新型コロナウイスル感染症に係るPCR検査については、感度(陽性者を正しく陽性と判定する率)には限界があるため、濃厚接触者であり、かつ発熱や呼吸器症状を有している者で、あっても、陰性判定がなされる場合がある。
したがって、濃厚接触者であり、かつ発熱や呼吸器症状を有している者で、あった場合、1回目のPCR検査結果が陰性であっても、2回目以降のPCR検査結果で陽性であれば、1回目のPCR検査時点で新型コロナウイルスに感染していたものと判断して差し支えない。
なお、1回目のPCR検査時点では無症状であった場合や、検査間隔、行動履歴、自覚・他覚症状の経過等から疑義が生じる場合は、調査の上、主治医や専門医の意見を踏まえて決定すること。
問5
PCR検査は受けていないが、抗原検査を受けて陽性であった場合、PC R検査を抗原検査と読み替えて判断してよろしいか。
(答)
抗原検査は、ウイルスの抗原を検知し、診断に導く検査であり、PCR検査と同様に用いられていることから、読み替えて判断して差し支えない。
なお、問1~問5でいうPCR検査・抗原検査は、医療機関(医師)又は保健所が行ったものをいい、事業場で購入した簡易キット等による検査であって、検査結果を踏まえた新型コロナウイルス感染症の診断を医師が行っていない場合は、当該検査は医療行為とならないため、当該検査日を発病日とすることはできない。
通達の考え方
通達とは、「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて厚生労働省 基補発0428 第1号 令和2年4月28日」のことです。
問6
通達の記の2 (1)アの「医療従事者等」とは、医療機関や介護施設で働く全ての労働者が該当すると考えて良いのか。
(答)
通達の記の2(1)アの「医療従事者等」とは、労働基準法施行規則別表第1の2第6号1に掲げる業務に従事する労働者が該当する。
したがって、医療機関や介護施設で勤務する労働者であっても、患者の診察、看護の業務等に従事していない労働者は、医療従事者等には該当しない。
一般的には、医師、看護師、介護職、理学療法士、診療放射線技師、診療エックス線技師、臨床検査技師、機能訓練指導員、歯科衛生士などが医療従事者等に該当すると考えられ、事務員、生活支援相談員、清掃員、調剤に従事する薬剤師などはここでいう「医療従事者等」に該当しないと考えられる。
なお、医療従事者等に該当するか否かは、労働者の職種ではなく、従事する業務内容の実態により個別に判断するものであることから、例えば、コロナ病棟等の病院内で、診療支援や服薬指導などの病棟業務に従事する薬剤師は、「医療従事者等」に該当することに留意すること。
問7
通達の記の2 (1)アの「患者」とは、新型コロナウイルスに感染したことが診断された者、症状が出現している者などに限定されるのか。
(答)
新型コロナウイルス感染症は、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという特性を有していること等から、本取扱いの対象となる「患者」については、感染が確認された者等に限定するものではない。
なお、眼科、歯科、整形外科等の医師についても、感染した患者を診察する可能性があること、また、診察行為は一般に患者と近接して行うものであることから、本感染症については、業務以外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。
問8
通達の記の2(1)アの「介護の業務」とは、どのような者の介護なのか。
(答)
「介護の業務」とは、患者を介護する場合に限らず、高齢者、障害者等の身体に直接接触して日常生活行動を援助するという介護を行う業務を含むものである。
なお、労働基準法施行規則第35条専門検討会報告書(平成21年12月)において、介護業務従事者については、一般に伝染性疾患に感染するリスクが高いとされていることを踏まえ、別表1の2第6号1に追加されたものである。
問9
通達の記の2 (1)イの「感染経路が特定されたもの」 とは、保健所の「積極的疫学調査」で感染源が特定されていることが必要か。
(答)
請求人及び使用者又は関係者からの申述(申立書、使用者報告書など)により、感染者との接触が明らかに認められる等感染経路が客観的に特定できる場合は、「感染経路が特定されたもの」として取り扱うこと。
なお、このように、感染者との接触に係る請求人及び使用者の申立てが一致している場合や市町村がHPで公表した内容等により感染経路や感染者との接触が明らかな事案(クラスター事案を含む)については、原則として、保健所照会を省略しても差し支えない。(問18も参照)
問10
会社員が事業場内でクラスターが発生したことにより感染した場合は、通達の記の2 (1) イと2 (1) ウ(ア)のどちらに該当するのか。
(答)
事業場内において、感染者との濃厚接触が確認され、感染経路が特定された場合は、通達の記の2 (1) イに該当する。(問9も参照)
一方、事業場内において、感染者と近接や接触の機会はあるが濃厚接触がない場合や、近接した時期に発症した者が複数人存在し、感染経路が不明な場合は、通達の記の2 (1) ウ(ア)に該当する。(問11も参照)
問11
通達の記の2 (1) ウ(ア)の「複数の感染者が確認された労働環境下」とは、どのような場合か。
(答)
通達の記の2(1)ウ(ア)の「複数の感染者が確認された労働環境下」とは、同一の労働環境下で、被災労働者以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定している。
なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられる。
※参考事例
同一事業場に勤務する労働者3名が同時期に新型コロナウイノレスに感染したが、保健所による調査結果では、感染経路は不明であった。
- 労働者Aは、8月14日に発熱し、同月21日にPCR検査を受け陽性判定となった。
- 労働者Bは、8月18日に味覚異常が出現し、同月22日にPCR検査を受け陽性判定となった。
- 労働者Cは、無症状であったが、Aの濃厚接触者として8月22日にPCR検査を受け陽性判定となった。
- 8月11日、12日に上記労働者3名を含む10名で長時間会議室の打合せ等を行っていたことが確認された。
- 3名とも、発症前14日間の休みの日に外出はしておらず、自宅で過ごしていた。家族の感染者はいない。
上記のような事案は、感染経路は不明であるが、一般生活下での感染リスクは低く、3名とも近接し花時期に発病し、会議室の打合せ等で近接や接触の機会が確認されるため、3名とも「複数の感染者が確認された労働環境下での業務Jに従事していたものとして、労災保険給付の対象となり得る。
問12
通達の記の2 (1) ウ(イ)の「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務Jとは、どのような業務をいうのか。
(答)
通達の記の2 (1) ウ(イ)の「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」に該当する業務は、小売業の販売業務、飲食サービス業務、パス・タクシー等の旅客運送業務、育児サービス業務、医療機関における受付等の業務、調剤薬局における受付等の業務が想定されるが、これに限定するものではない。
問13
通達の記の2 (1) ウについて、市中感染が拡大した中で、業務により感染した蓋然性が高いか否かの判断はどのように行うべきか。
また、業務と一般生活の感染リスクを比較する上で、どのようなことを調査すべきか。
(答)
市中感染が拡大する中にあっても、業務による行動での感染リスクと業務外による行動での感染リスクを比較した上で、医学専門家の意見も踏まえて感染の蓋然性を評価し判断する。
また、感染リスクを比較するに当たっては、おおむね発症前14日間において、主に、次のような項目について調査することとなるが、事案に応じ、これ以外にも必要な調査をすること(調査事項については、適宜、本省に相談されたい。)。
業務:①人との接触状況(回数、会話時間、距離、人数など)、②就労場所での感染予防対策の程度(マスク着用の有無、消毒、飛沫防止対策など)、③就労場所の感染者(疑い含む)の発生状況(人数、時期など)
一般生活:①外食・会食の状況(回数、時間、距離、人数、飲酒の有無、マスク着用の有無、庖の混雑状況及び感染防止対策など)、②カラオケ等遊興施設の利用状況(場所、回数以下①と同じ)、③感染者(疑い含む)との接触状況(人数、時期など)、④同居している親族等や接した知人等の健康状態(発熱呼吸器症状の出現時期及び症状経過、PCR検査結果など)
なお、日常生活上で必要不可欠な行為(日用品等の買い物、通院、公共交通機関利用による移動など)は、訪問先に感染者がいたことが明らかである等の特段の事情がなければ、感染リスクが高い行動とは評価しない。
休業期間の考え方
問21
新型コロナウイルス感染症で入院していた者について、PCR検査の結果陰性が確認されたため退院した。その後、医師の指示で自宅において2週間待機した場合(退院後の受診はない)、休業補償給付の対象になるのか。
(答)
当該待機期聞が、休業補償給付の支給対象になるためには、その期間、「療養のため労働することができない」ことが医学的に認められる必要がある。
よって、休業補償給付請求書に当該期間に係る医師の証明がある場合のほか、医師の証明がない場合であって、療養ため労働することができないことが医学的に認められたときには、休業補償給付の対象となる。
問22
4月15日に新型コロナウイルスに感染した者と濃厚接触したことにより、無症状であったが4月17 日に1回目のPCR検査を受け陰性でで、あった。
保健所等の指示で自宅にて待機をしていたが、その後、発熱や咳などの症状が出現したので、4月22日に、2回目のPCR検査を受け陽性となった。
この場合、1回目のPCR検査日から、休業補償給付の対象になるのか。
(答)
新型コロナウイルスに感染した者が、1回目のPCR検査で陰性かっ無症状である場合でも、1回目のPCR検査日から、療養のため労働することができないことが医学的に認められれば、休業補償給付の対象となる。
問23
P CR検査で陽性だったが、症状が軽かったため、医療機関への受診はなく、保健所の指示により、自宅(ホテル)にて2週間療養を行った。
当該療養期間について、PCR検査を実施した医師に休業補償給付請求書の医師証明を求めたところ、検査を実施したのみで、診療をしていないため証明することができないとの回答であった。この場合、医師の証明の取扱い如何。
(答)
当該療養期間について、発症から一度も医療機関に受診していない場合やPCR検査の実施を行ったのみで診療をしていないとの理由で医師が証明することができない場合には、保健所の証明による「宿泊・自宅療養証明書J(別紙4参照)や「就業制限通知書J、「就業制限解除通知書Jを休業補償給付請求書に添付することで、診療担当者の証明に代用して差し支えない。
陰性事案の考え方
問24
濃厚接触者として、医療機関を受診しPCR検査を受けた。検査結果は陰性であったが、その検査費用は、労災保険給付の対象となるのか。
また、その後、自宅で待機していた場合、休業補償給付の対象となるのか。
(答)
新型コロナウイスル感染症に係るPCR検査については、感度(陽性者を正しく陽性と判定する率)には限界があるため、濃厚接触者であり、かつ発熱や呼吸器症状を有している者であっても、陰性判定がなされる場合がある。
特に、発熱等の症状が出てから7日から10日程度経過すると、新型コロナウイルス感染者の感染性が急激に低下することから、症状出現日から10日程度以上経過した後に最初のPCR検査を受けた場合には、検査結果が陰性判定となる場合がある。
これは、PCR検査結果が検査実施時期等により影響を受けることによるものであり、この場合の陰性判定は、必ずしも症状発症時の感染状況を示したものでないということになる。
このため、PCR検査の陰性判定のみをもって、新型コロナウイルスに感染していなかったと判断することは、適当でない。
したがって、別添「新型コロナウイルス感染症疑い(PCR検査陰性)事案の当面の取扱いについて」により、陰性者の症状出現の有無、その程度や経過などを調査し、専門医の意見を踏まえて総合的に判断すること。
その結果、新型コロナウイルス感染症に擢患していた蓋然性が高いと判断される場合は、検査費用や休業補償給付について支給対象となる。
なお、当初の検査では陰性で、あったが、その後の再検査で陽性となった場合は、ここでいう「PCR検査陰性事案」とはならない。
通勤災害
問25
通勤途上で、新型コロナウイルスに感染したとの申立により労災請求があった場合、通達により判断することとなるのか。
(答)
通勤途上において、新型コロナウイルスに感染したとして労災請求があった場合は、新型コロナウイルスの感染が通勤に起因するものかどうか個別に判断することとなる。
また、通勤災害に関する請求があった場合には、本省に協議すること。
労災保険給付の対象にならなかった場合は、傷病手当金の検討を!
「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」の提出を行ったが、労災保険給付の対象にならなかったときは、健康保険における傷病手当金の対象となる場合があります。
給付額は、給与額の3分の2程度となり、労災保険給付に比べると、見劣りしますが休業期間の生活保障としてはかなり魅力的です。
傷病手当金の支給条件は、次の5つをいずれも満たすこととされており、新型コロナウイルスに感染した場合、支給を受けられる可能性が高いです。
- 社会保険の加入者(被保険者)であること
- 業務外での病気やケガのため休んでいること
- 仕事に就くことができないこと(働くことができないこと)
- 連続して3日間以上働くことができなかったこと
- 休んでいる期間について給料をもらっていないこと
労災保険給付の対象にならなかった場合は、傷病手当金の申請を必ず検討しましょう。
【関連記事】
傷病手当金について、詳しくは、こちらの記事を。
まとめ
ここで、「新型コロナウイルスに感染し、仕事を休んだ場合の補償(保障)」についてまとめておきます。
- 業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となる
- 医療従事者等の場合は、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる
- 感染リスクが相対的に高いと考えられる労働者は、感染経路が特定されていなくても労災保険給付の対象になる場合がある
- 労災保険給付の対象になるかどうかは、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を労働基準監督署へ提出してみないとわからない
- 休業補償給付等の支給額は、直前3ヶ月の平均給与の約80%
- 労災保険給付の対象にならなかった場合、傷病手当金の検討を
厚生労働省は、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという「新型コロナウイルス感染症」の特性をかんがみた対応として、
「当分の間、調査により、感染経路が特定されなくても、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合に、労災保険給付の対象とする」
としています。
なので、「労災になるかな?」と悩むぐらいなら、とりあえず、請求してみるというのが得策かと思います。
書類作成が面倒ですけどね・・・
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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