新型コロナにおける休業補償給付(労災補償)の取り扱い【対象範囲、給付額、請求手続き】

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新型コロナ、労災保険給付、医療従事者

この記事では、「新型コロナウイルスに感染し、仕事を休んだ場合の労災補償」についてまとめています。

 

新型コロナウイルスの感染した人は、「業務により感染した可能性が高い」と認められる場合、労災保険給付(休業補償給付)の対象となります。

そして、休業補償給付の対象となると、仕事を休んだ期間において、給料の約8割(最初の3日間は6割以上)が補償されます。

 

ただ、労災保険の対象となる範囲(考え方)が、結構、複雑なため、

  • 新型コロナウイルスに感染してしまった
  • もしものとき、休業補償ってどうなるの?
  • 医療従事者は、職場からの感染リスクが高いんだけど・・・

という人は取り扱いについて、ぜひ、チェックしてみてください。

この記事は、令和2年4月28日に出された、厚生労働省の通知「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて(基補発0428第1号)」を参考に書いています。

新型コロナウイルスの場合、感染経路が特定されなくても労災補償の対象になる

まず、結論です。

  • 業務に起因して新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象になる
  • 医療従事者等は、原則として、労災保険給付の対象になる
  • 医療従事者等以外でも、感染リスクが高い労働者は、労災保険給付の対象になる場合がある
  • 労災補償の対象になるかどうかは、請求書提出後に、労働基準監督署が行う
  • 休業補償給付等の支給額は、給付基礎日額の80%

 

それでは、1つずつ説明していきます。

業務に起因して新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象になる

労災保険とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡に対して給付を行うものです。

業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいいます。(いわゆる「業務起因性」ってやつです)

 

新型コロナウイルスに感染した場合は、「業務上の疾病」に該当することになり、業務上にある状態において有害因子(病原体など)にさらされたことにより発症した疾病ということになります。

ポイントとしては、

「業務上の疾病は、労働者が業務上にある状態において発症した疾病ではない」

ってことです。

 

分かりやすく言うと、

「職員さんが、勤務時間中に脳出血で倒れた(発症した)としても、その発症原因となった業務上の理由が認められない限り、労災保険給付の対象とならない」

ってことで、逆にいうと、

「勤務時間外での発症であっても、その発症原因となった業務上の理由が認められる場合は、労災保険給付の対象となる」

ということです。

 

また、具体的には、次の3つの要件を満たすときに、原則、業務上疾病と認められます。

  1. 労働の場に有害因子(病原体など)が存在していること
  2. 健康障害を起こしうるほどの有害因子(病原体など)にさらされたこと
  3. 発症の経過および病態が医学的にみて妥当であること

 

新型コロナウイルスについても、上記の要件に照らし合わせ、業務に起因して感染したものであると認められる場合に、労災保険給付の対象になります。

 

なお、法的根拠は、次のとおりです。

2.具体的な取扱いについて

イ 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの

感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。

出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」

問1 労働者が新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となりますか。

業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。

出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」

医療従事者等は、原則として、労災保険給付の対象になる

原則として、労災保険給付の対象になるには、

  1. 労働の場に有害因子(病原体など)が存在していること
  2. 健康障害を起こしうるほどの有害因子(病原体など)にさらされたこと
  3. 発症の経過および病態が医学的にみて妥当であること

の要件をすべて満たす必要がありますが、医師、看護職員、介護職員などの医療従事者等については、感染経路が特定されていなくても、労災保険給付の対象となります。

 

根拠としては、このとおり。

2.具体的な取扱いについて

ア 医療従事者等

患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。

出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」

問2 医師、看護師などの医療従事者や介護従事者が、新型コロナウイルスに感染した場合の取扱いはどのようになりますか。

患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。

出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」

 

見てのとおり、「業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」とされています。

つまり、医療従事者等については、ほぼ、労災保険給付の対象になると言っても過言ではないと思います。

医療従事者等以外でも、感染リスクが高い労働者は、労災保険給付の対象になる場合がある

医療従事者等ほどの明確さはありませんが、次のような感染リスクが相対的に高いと考えられる業務をしている人が新型コロナウイルスに感染したとき、感染経路が特定されていなくても労災保険給付の対象になる場合があります。

 

【感染リスクが相対的に高いと考えられる業務】

  • 複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
  • 顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

 

具体的には、次のとおりです。

問5  「複数の感染者が確認された労働環境下」とは、具体的にどのようなケースを想定しているのでしょうか。

請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定しています。

なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられます。

 

問6  「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」として想定しているのは、どのような業務でしょうか。

小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しています。

出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」

上記に示した「感染リスクが相対的に高いと考えられる業務」以外の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断するとされています。

労災補償の対象になるかどうかは、請求書提出後に、労働基準監督署が行う

労災保険給付に対象になると、休業4日目から、

  • 休業補償給付(給付基礎日数の約60%)
  • 休業特別支給金(給付基礎日数の約20%)

が支給されます。

 

ただ、労災保険給付の対象になるかどうかは、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を労働基準監督署へ提出してみないとわかりません。

なので、「もしかして?」と思ったら、必ず請求するようにしましょう。

 

【休業補償給付支給請求書(様式第8号)】

休業補償給付支給請求書(様式第8号)

出典:厚生労働省「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」

 

通勤災害の場合は、「休業給付支給請求書(様式第16号の6)」を使いますが、新型コロナウイルスにおける労災補償で、こちらの様式を使うことは少ないと僕は思っています。感染経路の特定が難しいので・・・

 

なお、労災保険給付(休業補償給付)の手続きは、事業主を通して行うことができますので、職場の社会保険担当者に相談すれば、色々と説明してくれるはずです。

 

【休業補償給付の請求イメージ】

休業補償給付の請求手続きの流れ(厚生労働省)

出典:厚生労働省「労災保険 休業(補償)給付の請求手続き」

休業補償給付の請求権は、2年間となっています。2年間を過ぎると、請求ができなくなりますので、ご注意してください。

休業補償給付等の支給額は、給付基礎日額の80%

休業補償給付・休業特別支給金の計算は、次の式で行います。

  • 休業補償給付 = 給付基礎日数の60% × 休業日数
  • 休業特別支給金 = 給付基礎日数の20% × 休業日数

給付基礎日数とは、直前3ヶ月間の1日あたりの平均賃金

給付基礎日額とは、原則として、事故が発生した日(賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日)の直前3ヶ月間に支払われた給料の総額を、その期間の歴日数で割った1日当たりの賃金額のことです。

「給料の総額」には、臨時的支払われた賃金、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません。

 

なので、4月、5月、6月に、月額20万円の給料をもらっていた人の場合、

20万円 ÷ 91日(3ヶ月) = 6,593.4円

となり、給付基礎日額は「6,594円」となります。

給付基礎日額に1円未満の端数がある場合は、これを1円に切り上げます。

休業補償給付・休業特別支給金を試算してみると

次の条件で、試算してみます。

【条件】

  • 給付基礎日額 6,594円
  • 「業務上の疾病」により、20日間、仕事を休んだ

 

まずは、1日あたりの給付額を算出します。

休業補償給付  6,594円 × 0.6 = 3,956.4円/1日

休業特別支給金 6,594円 × 0.2 = 1,318.8円/1日

1円未満の端数は、切り捨てます。

 

次に、休業補償給付と休業特別支給金の合計額に休んだ日数を掛けます。

(3,956円 + 1,318円) × 17日 = 89,658円

休業初日から3日間(連続する必要はありません)は待期期間といい、この期間については、業務災害の場合、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償として、1日につき平均賃金の60%以上を支払うこととなっています。

月額給与別「休業補償給付等」早見表

いちいち計算するのが面倒なので、早見表(概算)を載せておきます。

参考までに。

給付基礎日額は、91日間にて算出しています。

 

【月額給与別 給与基礎日額・休業補償給付・休業特別支援金 早見表】

休業補償給付等早見表20200501

労災保険給付の対象にならなかった場合は、傷病手当金の検討を!

「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」の提出を行ったが、労災保険給付の対象にならなかったときは、健康保険における傷病手当金の対象となる場合があります。

給付額は、給与額の3分の2程度となり、労災保険給付に比べると、見劣りしますが休業期間の生活保障としてはかなり魅力的です。

 

傷病手当金の支給条件は、次の5つをいずれも満たすこととされており、新型コロナウイルスに感染した場合、支給を受けられる可能性が高いです。

  1. 社会保険の加入者(被保険者)であること
  2. 業務外での病気やケガのため休んでいること
  3. 仕事に就くことができないこと(働くことができないこと)
  4. 連続して3日間以上働くことができなかったこと
  5. 休んでいる期間について給料をもらっていないこと

 

労災保険給付の対象にならなかった場合は、傷病手当金の申請を必ず検討しましょう。

 

【関連記事】

傷病手当金について、詳しくは、こちらの記事を。

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まとめ

ここで、「新型コロナウイルスに感染し、仕事を休んだ場合の補償(保障)」についてまとめておきます。

  • 業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となる
  • 医療従事者等の場合は、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる
  • 感染リスクが相対的に高いと考えられる労働者は、感染経路が特定されていなくても労災保険給付の対象になる場合がある
  • 労災保険給付の対象になるかどうかは、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を労働基準監督署へ提出してみないとわからない
  • 休業補償給付等の支給額は、直前3ヶ月の平均給与の約80%
  • 労災保険給付の対象にならなかった場合、傷病手当金の検討を

 

厚生労働省は、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという「新型コロナウイルス感染症」の特性をかんがみた対応として、

「当分の間、調査により、感染経路が特定されなくても、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合に、労災保険給付の対象とする」

としています。

 

なので、「労災になるかな?」と悩むぐらいなら、とりあえず、請求してみるというのが得策かと思います。

書類作成が面倒ですけどね・・・

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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