組織(会社や病院など)って、仕組みのかたまりで、
- 会計の流れ
- 報告の流れ
- 稟申の流れ
- チェックシステム
- 各種定型業務のやり方
など、すべて仕組み化(マニュアル化)されているのが、一般的です。
こうした仕事における仕組みって、
- 仕事の効率化
- 職員一人ひとりの仕事のバラつきをなくす
- その人しかできない仕事という「属人化」をなくし、「標準化」する
など、目的は様々かもしれませんが、目的が明確にされていることがほとんどだと思います。
ただ、目的は明確でも、
「どういう視点で、仕組み化していけばいいのか?」
については、あまり議論されることはないように感じます。
そこで、この記事では、
「仕事を仕組み化するときに、意識してほしいこと」
について僕の考えをまとめておきます。
「施設などの運用管理を任されている人」や、「管理職(マネージャー)として働いている人」に読んでいただけると嬉しいです。
ちなみに、この記事でいう、仕組みとは「仕事のルール全般」のことを指しています。
仕事は、「性悪説」で仕組み化し、「性善説」で運用する
組織とは、人の集合体です。
なので、
- 価値観
- 自己抑止力
- 正義の定義
など、職員一人ひとり、かなりバラバラです。
そのため、
「そんなのあたりまえ」
「うちの職員が、そんなことをするわけない」
というような、人を信じ切った仕組みをつくってしまうのは危険です。
なぜなら、ミス(失敗)や不正行為が起こらない前提で仕組み化すると、
- ミスの隠ぺい
- 「良かれと思って」という善意の暴走
などを引き起こし、また、場合によっては、職員が犯罪に手を染めてしまうことさえあるからです。
だから僕は、
「仕事は、性悪説で仕組み化し、性善説で運用する」
が大事だと思っています。
ちなみに、性悪説・性善説とは、次のとおりです。
性悪説
中国、古代の性論の一つで、人間の本性は悪であるとする説
性善説
中国、古代の性論の一つで、人間の本性は善であるとする説
出典:コトバンク
性悪説で仕組み化する「3つのメリット」
性悪説で仕組み化すると、
- ミスや不正に、すぐに気づくことができる
- 職員の安心を担保することで、パフォーマンスを上げることができる
- 職員を犯罪者(悪者)にしない
という効果が期待できます。
これは、組織にとっても、職員にとっても、良いことです。
それでは、1つずつ説明していきます。
ミスや不正に、すぐに気づくことができる
人は、必ず「ミス」をします。
ミスをしない人なんていません。
なので、組織の仕組みとして大事なのは、
「職員に人的なミスをさせない仕組みづくりではなく、ミスがあっても、すぐに気づけるという仕組みづくり」
です。
ミスにすぐに気づけることで、その対応(対処)が迅速に行えますので、大きなミスになってしまう前に、修正することができます。
また、不正行為(着服・横領など)があった場合でも、すぐに気づける仕組みにしておくことで、被害の拡大を防ぐことができます。
組織としては、悪い情報ほど、早く収集しなければなりません。
そういう意味でも、
「人は、ミスや不正をするものだ」
という視点で仕組み化することが大切になります。
職員の安心を担保することで、パフォーマンスを上げることができる
「人は、ミスをするものだ」という視点で仕組み化し、ミスがあってもすぐに気づけるようにすることで、職員のパフォーマンスを上げることができます。
理由としては、
「ミスや失敗をしたとしても、すぐにみんなが気づいて指摘(フォロー)してくれる」
という安心感が、仕事のしやすさを向上させるからです。
「失敗(ミス)したら、どうしよう・・・」
「失敗(ミス)したら、上司に怒られる・・・」
と思いながらで、良い仕事をすることってできますかね?
僕は、難しいと思っています。
人材育成の観点からも、成長の機会を奪ってしまうことになりますし。
結果、性悪説で仕組み化することは、職員のためでもあるのです。
もちろん、職員一人ひとりが、精一杯ミスを減らす努力をするべきですし、失敗やミスを許容する組織文化も必要ですけどね。
職員を犯罪者(悪者)にしない
僕は、職員が行なった不正行為への対応経験があります。
どんな不正行為だったかを、ざっくり説明すると、次のようなものです。
- 入院未収金や窓口会計の担当者が、職場のお金を着服
- 回収した未収金を、回収不能として処理
- 入院保証金の伝票と台帳等の書き換え
もちろん、一番悪いのは、着服(横領)をした職員です。
ただ、組織としては、着服(横領)が出来てしまう仕組みが問題だと感じました。
つまり、
- 着服(横領)のできない
- 着服(横領)したとしても、すぐにばれてしまう
という仕組みを作っておけば、その職員が、不正行為に手を染めることはなかったのです。
人は、弱いものです。
どんなに自分を律することができる人でも、「魔が指す」ってこともあります。
事実、
「そんなことをするように人に見えなかった・・・」
というニュースが溢れていますし。
また、最初は罪悪感を感じていたとしても、1度成功してしまうことで、2回目以降は、その成功体験から、罪悪感が薄れていきます。
結果、どんどん着服(横領)を繰り返してしまい、被害は拡大していきます。
なので、職員の目の前に大金を置いて、
「取っちゃダメだよ、だけど、取っても絶対にばれないよ」
とするのではなく、
「取ったら、すぐにばれちゃうんだから、やる意味ないよね」
という、仕組みにしておくことが大切なんです。
そうすることで、職員を犯罪者(悪者)にしないで済みますし。
ちなみに、この考え方は、高齢者施設などで問題となっている、職員による虐待などにも通じると思います。
ぜひ、「性悪説による仕組み化」を徹底し、職員を守ってください。
まとめ
職員がミスや失敗をしたとき、その職員の人的問題にしてしまう組織って多いと思いますが、
「ミスや失敗が多いのは、仕組み(システム)に問題があるんじゃないか?」
と、仕事のやり方(仕組み)自体を疑ってみることも大切です。
人って、多かれ少なかれ、必ずミスをするものですし。
ただ、職員の不正行為については、完全に組織の仕組み(システム)に問題があります。
もし、不正行為が行なえるような仕組みになっている場合は、職員を犯罪者(悪者)にしないためにも、すぐに見直しをしたほうがいいと思います。
「仕事は、性悪説で仕組み化し、性善説で運用する」という視点で。
ちなみに、「性善説」で運用するのは、
- 常に疑われている環境で、いい仕事ができるとは思えない
- 一緒に働く仲間(職員)を疑うのは、マネージャーとして心苦しい
という理由からです。
なので、職員を疑うのは、仕組みだけに任せて、僕は「100%」職員を信用するようにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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