就職、結婚、出産(出生)のタイミングで、生命保険や医療保険への加入を検討する人って多いと思います。
ただ、生命保険や医療保険ってかなり制度が複雑なので、
「結局、どの保険に入ればいいんだよ~」
状態になっちゃって、結局、保険会社の営業さんに勧められるがまま加入したという人も多いのではないでしょうか?
たとえば、こんなことを言われて・・・
- 社会人になったら、保険に入っておかないと・・・
- あなたに、もしものことがあったら、入院費の支払いや生活費とかどうするの?
- 生命保険は払った保険料が、年末調整で控除されるからお得ですよ
保険会社(営業)さんのオススメが悪いというわけではありませんが、それだと、必要以上の生命保険料を支払っている可能性が高いです。
というのも、
僕は、毎年400人ほどの年末調整を担当し、職員さんの生命保険等の加入状況を確認していますが、結構、すっごい金額の保険に入っている人って多いんです。
つまり、
「なんで、こんなに保険料を払っているの?」
ってこと。
はっきり言って、大きなお世話ですが、僕としては「もったいないな~」って思います。
そこで、この記事では、
- 生命保険に入る「本来の目的」
- 医療保険への加入は、「傷病手当金、高額療養費制度」を試算が必須
- 年末調整における、保険料控除の仕組み(ワナ)
についてまとめておきます。
「生命保険の加入(見直し)を考えている」という人に、読んでいただけると嬉しいです。
生命保険・医療保険へ加入する前にやっておくべき、3つのこと
- 自分にもしものことがあったとき、どのくらいの金額が必要なのかを考える
- その必要な金額のうち、公的制度(傷病手当金、高額療養費)で、どのくらいまで補えるのか試算する
- 年末調整の保険料控除は、メリットが、ほぼないので、節税効果は考えない
この3つを意識していくことで、生命保険料を必要以上に支払うことがなくなります。
それでは、1つずつ説明していきます。
生命保険に入る「本来の目的」
あなたは、生命保険に、何のために入りますか?
「そんなの、自分にもしものことがあったときに、お金をもらうためでしょ?」
って人が多いかと思いますが、実際は、少し違います。
「お金をもらう」というのは、あくまでも「手段」であって、「目的」ではありません。
よって、「なぜ、自分にもしものことがあったとき、お金が必要なのか?」を考えることが大切なんです。
なので、
「自分に、もしものことがあったとき、路頭に迷う人(家族など)はいるのか?」
を、まず考えてみてください。
もし、「路頭に迷う人(家族など)はいない」という結論なら、まだ、生命保険へ加入する必要はありません。
ちなみに、僕の場合は、子どもが生まれるまでは、生命保険に加入する必要は全くないと思っていましたので、結婚して子どもが生まれたときに、生まれて初めて生命保険に加入しました。
一般的には、結構、遅い「生命保険デビュー」だと思います。
「生命保険デビューが遅かった」理由としては、
「たとえ、僕が死んだとしても、妻や両親は自分で働けばいいので、高い保険料を払って、利用するかどうかもわからない生命保険で大金を残す必要はない」
と考えていたからです。
ただ、子どもが生まれたなら、生命保険に加入するべきだと僕は思います。
なぜなら、ひとり親で、子育てをしながら仕事をしていくのは、経済的にすっごく大変だからです。
事実、「母子(父子)家庭の6割は貧困」とのデータが厚生労働省から出ていますし。
なので、僕の場合は「少しでも多くのお金を残してあげたい」って思い、生命保険に加入しました。
まぁ、遺族年金等の制度もありますが、それだけだとさすがに、家族に申し訳ないですから・・・
医療保険への加入は、「傷病手当金、高額療養費制度」を試算が必須
次に、医療保険(入院保障など)の加入についてです。
医療保険も、生命保険同様「自分にもしものことがあったとき」のために加入するものですが、一般的に、次のような違いがあります。
- 生命保険:死亡したときに給付される保険
- 医療保険:病気やケガの治療で、入院や通院をしたときに給付される保険
上記のとおり、医療保険とは、治療費を補うための保険です。
わかりやすく言うと、
「支払いができないぐらい治療費が高額になったときのために入る保険」
ってことです。
なので、治療費が払えるなら、医療保険に加入する必要ってないんです。
以上のことから、医療保険に加入する前に、やっておかないといけないのは、
「治療費(入院・通院)がどのくらいかかって、どのくらいお金が足りなくなるか?」
を試算しておくことです。
そのためには、「傷病手当金」と「高額療養費」の制度を理解しておく必要があります。
傷病手当金は、「給与額の3分の2程度」が支給される制度
傷病手当金とは、病気やケガで仕事を休み、給料がもらえなくなってしまった期間に対し、健康保険から生活保障として一定額を給付する制度です。
要するに、「病気やケガで働けなくなったときに、お金がもらえる制度」ってことです。
また、支給額は、
傷病手当金の1日あたりの支給額 =
支給開始前(12ヶ月)の平均標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3
という式で計算されます。
なので、月額平均給与30万円の人が、30日間仕事を休んだ場合、
6,667円 × 27日 = 180,009円(傷病手当金の支給合計額)
となります。
結構、大きな給付額ですよね。
医療保険への加入するときは、この傷病手当金が支給されることを前提として、必要な治療費や給与保障を検討することが必要になります。
じゃないと、必要以上の保険に加入してしまいますので。
なお、傷病手当金の支給条件、支給額、申請手続きについては、こちらの記事でまとめています。
高額療養費は、医療費が高額になったとき、一定額を超えた分が払い戻される制度
高額療養費は、あなたの年齢および所得によって、支払う治療費(自己負担限度額)が変わってきます。
【自己負担限度額の計算(70歳未満の場合)】
所得区分 | 自己負担限度額(上限額) | |
標準報酬月額 |
83万円以上 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
53~79万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | |
28~50万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | |
26万円以下 | 57,600円 | |
低所得者(住民税非課税者等) | 35,400円 |
ちょっと、計算が複雑なんで、わかりやすく試算してみます。
条件は、次のとおりです。
- 70歳未満の社会保険加入者(3割の自己負担割合)
- 月額給与(総支給額)30万円
- 総医療費 100万円
- 食事負担と差額ベット代 76,120円
まずは、自己負担限度額の計算式「標準報酬月額28~50万円」にあてはめていきます。
80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円(自己負担限度額)
自己負担割合「3割」で、30万円の自己負担額を払っていますので、
300,000円-87,430円=212,570円(高額療養費)
となり、「212,570円」が高額療養費として支給(払い戻し)されます。
結果、自己負担限度額「87,430円」と食事負担と差額ベット代「76,120円」をあわせた金額「163,550円」が、医療機関などへの最終的な支払額となります。
こうして試算してみると、「入院費(治療費)のイメージ」が少し変わりませんか?
「実際に支払う治療費が、数百万円になることなんてほぼない」ってことに気づけるんで。
ちなみに、こちらの記事で、高額療養費の支給条件や自己負担限度額が「パッ」とわかる早見表の紹介をしています。
よろしければ、チェックしてみてください。
年末調整における、保険料控除の仕組み(ワナ)
年末調整で、「生命保険料控除」を受けている人って多いと思います。
こういう様式です。
はっきり言って、この生命保険料控除、あんまりお得じゃないです。
というのも、「控除」って言葉が、話をややこしくしてるんですが、「控除」って、所得税の課税対象額を減らせるってことなんです。
つまり、
「支払った保険料が全額戻ってくるわけじゃない」
ってことです。
たとえば、あなたが支払った年間の生命保険料が「100,000円」だとすると、生命保険料控除額は「40,000円」となります。
そして、この「40,000円(控除額)」に所得税率(5~45%)のいずれかを掛けた金額が、年末調整で戻ってくる金額です。
つまり、所得税率が、10%の人は「4,000円」が年末調整で戻ってくるってことになり、実質、年間「96,000円」の保険に加入してるってことになります。
以上のことから、
- 年末調整の保険料控除を目的とした保険加入は、ほぼ意味がない
- 必要な保険に加入した結果として、少しの保険料控除が受けられる
と考えるべきです。
ちなみに、節税効果を狙うなら、「個人型確定拠出年金(イデコ)」がオススメです。
拠出した金額(掛け金)のすべてを、所得控除できるうえ、運用益はすべて非課税になりますので。
参考までに。
【関連記事】
所得税の仕組みや生命保険料控除の計算については、こちらの記事を。
まとめ
ここで、「生命保険・医療保険に加入する前にやっておくこと」についておさらいです。
- 「自分に、もしものことがあったとき、路頭に迷う人(家族など)はいるのか?」を考えてみる
- 「傷病手当金で、いくらもらえるのか?」を試算する
- 「高額療養費制度の利用で、実際の治療費がいくらになるのか?」を試算する
- 生命保険料控除の節税効果が低いことを認識しておく
ぜひ、これらのことを意識しながら、生命保険・医療保険の加入を検討してみてください。
必要以上の保険料を支払ってしまわないためにも。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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