医師の長時間労働が問題となっており、国により、「医師の働き方改革」が進められています。
結果、
「医師 = 激務(残業が多い、休みがない)」
みたいなイメージが強くなっていますが、実際は、すべての医師が激務なわけじゃありません。
というのも、僕が働いてきた病院(主に、回復期・療養・精神)においては、
- 週当たりの勤務時間 32時間
- 週4日勤務(週休3日制)
- 当直(宿直)、日直は希望制
- 有給休暇取得率 100%
- 別途、夏休みおよび年末年始休暇あり
が多かったからです。
そこで、この記事では、療養(慢性期)・精神科の病院における医師の働き方についてまとめておきます。
こんな人に、読んでいただけると嬉しいです。
- そろそろ、仕事とプライベートのバランスをとって働きたい
- 子育て優先で働きたい
- 今の職場が激務過ぎて、ツラい
療養・精神科の病院では、常勤医師の週4日(週32時間)勤務は、あたりまえ
まず、結論です。(僕の経験則です)
- 精神科病院では、常勤医師の週4日勤務(週休3日制)が多い
- 療養病院では、週5日(週32時間)が多い
- 当直(宿直)、日直勤務は、希望に応じてくれるところが多い
- 当直は、ほとんど実働がない、いわゆる「寝当直」
- 年間休日は、170日超え(有給休暇を含まず)
それでは、1つずつ説明していきます。
精神科病院では、常勤医師の週4日勤務(週休3日制)が多い
精神科の病院で初めて勤務したとき、ある先生(医師)から、こんなことを言われました。
「精神科では、週4日勤務はあたりまえだよ。週5日勤務じゃ、働いてくれる医師なんか、ほとんどいないよ。」
僕は、医師の採用も担当していましたので、週4日勤務(週休3日制)って、医師採用時の大きな強みになると思っていました。
でも、「ぜんぜん」ということに気づき、結構、びっくりしました。
なので、もし、精神科医として働いていて、「休みが少ない・・・」と悩んでいるなら、週4日勤務の病院を探してみてください。
結構、簡単に探せると思いますので。
ちなみに、事務的な視点からすると、医療法においては、週32時間以上の勤務者は、常勤医師としてカウントできますので、
「1日8時間 × 週4日間 = 32時間」
となり、常勤医師としての採用が可能です。
もちろん、施設基準の常勤要件にも適応できますので、週4日勤務でもぜんぜんOKとなります。
また、「常勤の精神科医って、ほんとにそんなに休めているの?」についてですが、厚生労働省の調査を見ると、結構、しっかり休めていることがわかります。
こんな感じです。(令和元年調査)
出典:厚生労働省「医師の勤務実態について」
精神科医の週当たり平均勤務時間は、「47時間50分」となっていますので、週4日勤務で、週1回の当直をやった場合と、ほぼ同じ勤務時間になります。
また、勤務時間の内訳は、こんな感じです。
出典:厚生労働省「医師の勤務実態について」
精神科は、診療時間自体が短くなっています。
ちなみに、平成28年の調査では、精神科医の週当たり平均勤務時間は、「50時間45分」でしたので、徐々に勤務時間が短くなっています。
【医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査(平成28年実施)】
療養病院では、週5日(週32時間)が多い
療養(慢性期)病院では、週5日勤務の所が多かったです。
ただ、1日あたりの勤務時間が短くなっていて、1週間の所定労働時間は「32時間」となっていました。
たとえば、
- 1日7時間勤務 × 4日間 = 28時間
- 1日4時間勤務 × 1日間 = 4時間
みたいな感じです。
なので、週4日勤務と労働時間は、同じになります。
僕、個人としては、「週の労働時間は同じでも、出勤数が少ない方が嬉しいな~」って思いますが、病院の診療体制等を考えるとなんとも言えないですね・・・
当直(宿直)、日直勤務は、希望に応じてくれるところが多い
病院側の都合から言えば、常勤医師には、当直(宿直)・日直を、極力、やっていただきたいと思っています。
ただ実際は、希望により、当直勤務に入っていない医師も多かったです。
主な理由としては、
- 子育ての関係
- 親の介護
- そもそも、やりたくない
などです。
なので、当直を希望しない場合は、入職時にしっかりと意思表示しておけば、日勤のみの常勤という働き方も可能です。
もちろん、採用のハードルは上がっちゃいますけどね・・・
ただ、最近は、「断続的宿直又は日直勤務許可(いわゆる、宿日直許可)」の関係もあってか、当直専門の非常勤医師を雇っている病院が多いので、
「常勤医師に当直の負担を強いる必要はない」
という病院も多くなっています。
【関連記事】
当直は、ほとんど実働がない、いわゆる「寝当直」
精神科や療養(慢性期)の病院においては、医師の当直は、ほぼやることはありません。
やることとすれば、
- 各病棟への巡回
- 電話対応
- 非常時に備えての待機・文書等の対応
- 患者の状態の報告(応急処置的な処方など含む)
って感じです。
非常(緊急)時の対応なんて、病院の特性上、ほとんどありませんので、数か月に1回あるかないかぐらいの頻度です。
日当直の回数については、労働基準法の規制があり、原則は、
- 週1回の当直(宿直)
- 月1回の日直
が上限となりますので、そこまでの負担にはならないはずです。
事実、独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査(2012年)」を見てみると、1ヶ月あたりの医師の当直回数は、1~2回が一番多くなっています。
こんな感じです。
【診療科別 1ヶ月あたり「当直」回数割合】
(単位:%)
診療科 | 当直回数 | |||
なし | 1~2回 | 3~4回 | 5回以上 | |
内科 | 33.3 | 33.3 | 23.6 | 9.7 |
外科 | 26.3 | 39.5 | 24.0 | 10.4 |
整形外科 | 31.1 | 42.0 | 22.0 | 4.9 |
脳神経外科 | 22.0 | 42.3 | 26.0 | 9.7 |
小児科 | 28.3 | 20.5 | 30.2 | 21.0 |
産科・婦人科 | 29.9 | 21.1 | 21.1 | 27.8 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 26.0 | 48.0 | 19.6 | 6.5 |
精神科 | 25.0 | 25.4 | 29.6 | 20.0 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 41.2 | 42.5 | 14.6 | 1.8 |
救急科 | 5.6 | 11.1 | 19.4 | 63.9 |
麻酔科 | 43.1 | 22.9 | 18.3 | 15.7 |
放射線科 | 59.6 | 30.7 | 8.8 | 0.9 |
その他 | 50.0 | 27.4 | 13.7 | 8.8 |
合計 | 32.6 | 34.8 | 21.8 | 10.8 |
やっぱり、救急科の当直回数は、ダントツですね・・・
全体的には、当直を行っていない医師も、3割以上いますね。
ちなみに、日直回数は、こんな感じです。
【診療科別 1ヶ月あたり「日直」回数割合】
(単位:%)
診療科 | 日直回数 | |||
なし | 1~2回 | 3~4回 | 5回以上 | |
内科 | 38.9 | 50.3 | 5.8 | 4.9 |
外科 | 37.0 | 53.8 | 5.0 | 4.3 |
整形外科 | 38.1 | 55.2 | 3.8 | 2.7 |
脳神経外科 | 38.2 | 52.8 | 5.7 | 3.2 |
小児科 | 26.3 | 58.0 | 11.2 | 4.4 |
産科・婦人科 | 30.6 | 44.9 | 16.3 | 8.2 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 30.0 | 61.1 | 5.4 | 3.5 |
精神科 | 31.2 | 53.1 | 8.8 | 6.9 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 47.8 | 47.6 | 2.8 | 1.8 |
救急科 | 8.3 | 41.7 | 16.7 | 33.4 |
麻酔科 | 46.4 | 36.6 | 8.5 | 8.5 |
放射線科 | 60.5 | 36.0 | 1.8 | 1.8 |
その他 | 51.6 | 41.1 | 5.6 | 1.6 |
合計 | 38.2 | 51.0 | 6.3 | 4.5 |
1ヶ月あたりの日直回数は、1~2回が一番多くなっています。
当直を行っていない医師も、約4割いますね。
年間休日は、170日超え(有給休暇を含まず)
次のような条件で、2022年度の休日数を試算してみると、年間休日は「171日」となります。
【条件】
- 週4日勤務(月・火・木・金曜日)
- 休日(水・土・日曜日、祝日)
- 年末年始休暇(12/30~1/3)
- 当直(宿直)、日直なし
【2022年度 月別出勤・休日数】
月 | 出勤日数 | 休日数 |
4月 | 16日 | 14日 |
5月 | 16日 | 15日 |
6月 | 17日 | 13日 |
7月 | 16日 | 15日 |
8月 | 17日 | 14日 |
9月 | 16日 | 14日 |
10月 | 16日 | 15日 |
11月 | 16日 | 14日 |
12月 | 17日 | 14日 |
1月 | 15日 | 16日 |
2月 | 15日 | 13日 |
3月 | 17日 | 14日 |
合計 | 194日 | 171日 |
もちろん、有給休暇は別に付与されますので、実際は、もっと多くの休日数となります。
やっぱ、週4日勤務のインパクトは、大きいですね~
最高のワークライフバランスです。
ちなみに、厚生労働省の資料によると、1ヶ月(平成27年6月)の医師の平均休日数は「5.3日」となっています。
ちょっと、少なすぎますよね。
ただ、「休日9日以上」の医師も「10.7%」いるので、休日数についても、かなりの格差があるように思えます。
こんな感じです。
出典:平成27年度厚生労働省医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組に対する支援の充実を図るための調査・研究事業報告書
週4日勤務(常勤医師)でも、給料は変わらない
「週5日勤務と週4日勤務で、給料は変わるの?」
という人もいるかと思いますが、原則は、変わりません。
ただ、給料については、
- 経験年数
- 有している資格(専門医・精神保健指定医など)
- 病院の状況(人手不足など)
などに大きく左右されるため、転職の際は、いつくかの病院に条件提示(給料額など)をしてもらい比較したほうがいいと思います。
結構、病院によって、給料額って変わっちゃうので。
なお、僕の感覚値としては、40~50歳ぐらいの医師で、
- 療養(慢性期)病院 年収1,500~1,800万円
- 精神科病院(精神保健指定医) 年収1,500~1,600万円
って感じです。
もちろん、当直(宿直)をやる場合は、この金額に手当額が上乗せされますので、結構な給料になりますね。
【関連記事】
まとめ
ここで、「療養(慢性期)病院、精神科病院における医師の働き方」についておさらいです。
- 常勤医師は、週4日勤務または週32時間勤務が多い
- 当直(宿直)、日直勤務は、希望を聞いてくれるところもある
- 当直は、ほぼ「寝当直」
- 週4日勤務は、最高の「ライフワークバランス」
- 給料は、勤務日数の影響を受けない
国により、医師の働き方改革が進められていますが、医師の働き方も、かなり両極端なんですよね。
働き方改革が必要な医師と、そんなでもない医師で・・・
そう思うと、一番の働き方改革は、医師一人ひとりが自分にとって、働きやすい職場に転職するってことなんだと思います。
そうすることで、ブラックな職場は自然と淘汰されていき、結果、職場の改善が進むと思いますので。
もちろん、「仕事が生きがい」って人もいると思いますので、
- やりたくて、やっているのか?
- やらされているのか?
で、負担はぜんぜん違っちゃいますけどね。
どちらにせよ、希望する働き方ができるということが、とても大切だと思いますので、ワークライフバランスを重視するのであれば、ぜひ、週4日勤務の職場を探してみてください。
ほんと、働きやすいと思いますので。
なお、「どうやって探したらいいの?」という人は、医師専門の無料で利用できる転職エージェント
などの利用がオススメです。
エージェントサービスなら、医療機関の情報が豊富のため、あなたの希望条件にあった事業所をいくつも探してくれます。
また、
- 面接などの日程調整
- 給料や休日などの条件面の交渉
- 宿直・日直の回数
- どういう患者が多いのか?
などの「面倒な手続き」や「気になったことの確認(情報収集)」も、あなたの代わりにやってくれます。
もちろん、途中で利用をやめても、キャンセル料などが発生することもありません。
なので、「今すぐ、転職する気はないんだけど・・・」という人でも、情報収集という意味で、登録しておいて損はないと思いますよ。
【無料登録(公式サイト)はこちら】※1分で登録
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【あわせて読みたい】
コメント