人材紹介サービス経由の入職者は離職率が高い【ミスマッチ防げてる?】

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医療事務、病院、受付

人材不足が深刻な医療・介護業界においては、人材紹介サービスはなくてはならないものです。

なので、かなりの事業所が利用していると思います。

 

もちろん、当院も人材紹介サービスを活用して、採用活動を行っており、そうとう助けてもらってきました。

ただ、最近は、利用頻度が減り、人材紹介サービスを経由しての職員採用は、ほぼありません。(4~5年前は、ほとんどが人材紹介サービス経由の採用でした)

 

理由としては、「人材紹介サービスの質が落ちた(そう感じている)」からです。

というのも、

  • 採用しても、すぐに辞めてしまう
  • 既往歴があるのに、全く知らされていなかった(紹介サービスの担当者も把握してない)
  • 求職者について、キャリアシート(定型文)に書いてあること以外、何も答えられない
  • 当院の情報を把握していない

ということが続いたからです。

 

そこで、「当院以外の状況はどうなんだろう?」と思い、人材紹介サービス経由の入職者の離職率などについて色々と調べてみましたので、まとめておきます。

 

こんな人に読んでいただけると嬉しいです。

  • 医療・介護事業所で人材採用の仕事をしている
  • 医療・介護事業所の管理者
  • 人材紹介サービスの利用を考えている人

 

ちなみに、結果は、想像以上でした・・・

人材紹介サービス経由の入職者は、離職率が「1.4~5倍」高い

厚生労働省が行った調査によると、

  • 人材紹介サービス経由の入職者
  • 人材紹介サービス経由以外の入職者

の離職率は、次のようになっています。

 

医療分野の職業紹介の離職率(厚生労働省)

介護分野の職業紹介の離職率(厚生労働省)

出典:厚生労働省「医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査」

 

「3ヶ月以内・6ヶ月以内」、「医療・介護分野」問わず、ほぼすべての職種で、人材紹介サービス経由の入職者の離職率が高くなっています。

倍率としては、次のとおりです、

【職種別の離職率の倍率】

  職種 倍率
医療分野 医師 5.3
保健師・助産師 3.3
看護師・准看護師 1.9
看護助手 1.4
薬剤師 2.0
リハビリ専門職 4.5
介護分野 介護支援専門員 1.5
介護職員 1.5
看護職員 1.5
リハビリ専門職 0.4
人材紹介サービス経由の入職者の離職率が、人材紹介サービス経由以外の入職者と比べてどのくらい高いのかを比較したものです。

 

高い紹介手数料を払って、入職後6ヶ月間に、これだけの人がやめてしまうというのはキツイですよね。

 

また、全日本病院協会および福祉医療機構等が行った調査でも同様の結果(近しい結果)が出ています。

職種別の人材紹介会社の利用状況(離職率)

出典:全日本病院協会等「病院の人材紹介手数料」に関するアンケート調査

 

こちらの調査では、入職後1年間の離職率も算出されており、

  • 医師 15.8%
  • 看護師 20.3%
  • 准看護師 41.5%
  • 看護補助者 33.5%
  • 薬剤師 19.1%

となっています。

 

ちなみに、日本看護協会「病院看護実態調査」によると、2022年度の看護職員の離職率は、

  • 新卒者 10.2%
  • 既卒者 16.6%

となっていますので、人材紹介サービス経由の入職者の離職率がいかに高いかがわかると思います。

 

【2022年度の看護職員の離職率】

看護職員の離職率の推移(日本看護協会)看護職員の離職率の推移 注意書き(日本看護協会)

出典:日本看護協会「2023年病院看護実態調査結果」

人材紹介サービスの質は、なぜ、下がったのか?

僕のまわりでは、「人材紹介サービスの質が落ちた」と感じている事務責任者や採用担当者がほとんどです。(というか、全員そう思っています)

では、「なぜ、人材紹介サービスの質は下がったのか?」ですが、僕としては、

  • 人材紹介会社の増加(乱立)
  • 人材紹介担当者(キャリアアドバイザー)の離職率の高さ
  • 紹介手数料が高い事業所への優先的紹介

の3つが原因だと考えています。

 

それでは、1つずつ説明していきます。

人材紹介会社の増加(乱立)

有料の人材紹介サービスは、令和4年(2022年)時点で、28,740件あります。

平成27年(2017年)時点では、20,783件でしたので、直近5年間で、約8,000件増えています。

こんな感じです。

民営職業紹介事業所数の推移(厚生労働省)

出典:厚生労働省「民営職業紹介事業所数の推移」

2017年に、人材紹介事業(有料職業紹介)を行うための要件が、一部緩和(事業所要件が緩和)されましたので、その影響が出ているのかもしれません。

 

事業所数が短期間にこれだけ増えているので、サービスにバラツキが出てしまうのは、しょうがないのかもしれません。

 

また、求職者の取り合い(分散)も起きるため、経営的に少ない登録人材の中で、無理やりにでも就職させようという意思が働く部分もあると思います。

つまり、「マッチングを無視した人材紹介」ってことです。

結果、サービスの質は下がっていきます。

 

ちなみに、有料職業紹介の市場規模は、次のとおり拡大しています。

求職申込件数と就職件数の推移

 

転職市場の規模は変わってないんですけどね・・・(若干減っているかな?)

転職者数の推移

人材紹介担当者(キャリアアドバイザー)の離職率の高さ

人材紹介会社の担当者によると、「人材紹介会社の人材の流動性は高い」とのことです。(複数名から聞きました)

つまり、「人材紹介担当者(キャリアアドバイザー)の離職率が高く、人材が定着しない」ということです。

かつ、採用困難で、常に人が足りないとのことです。

 

人材紹介サービスの質は、ほぼ人材紹介担当者(キャリアアドバイザー)のスキルで決まります。

人材紹介担当者(キャリアアドバイザー)の育成がされなければ、当然のことですが、サービスの質は下がります。

「人材が定着しない」ということは、人が育たないということです。

 

ちなみに、人材紹介会社のキャリアアドバイザーは、求職者の予定に合わせて業務を行うため、終業時間が遅くなりがちです。

また、業務量もかなり多いと聞きます。

そういった部分もあり、人材が定着しづらいのかもしれません。

紹介手数料が高い事業所への優先的紹介

人材紹介サービスの仕組み上、紹介手数料を多く払ってくれる事業所へ優先的に人材が紹介されます。

具体的には、

  1. 看護師1名の採用に対し、年収の20%を紹介手数料を払う
  2. 看護師1名の採用に対し、年収の30%を紹介手数料を払う

という2つの事業所(病院など)があった場合、2の「紹介料30%」の契約をしている事業所に多くの人材が紹介されるということです。

 

逆に言えば、1の「紹介料20%」の事業所には、どこの事業所にも採用されなかった人材しか紹介されないということになります。(極端に言っています)

そうなると、1の「紹介料20%」の事業所に対しては、マッチングとか関係なく、どこでもいいから就職させたいという意思が働きます。

結果、サービスの質は下がっていきます。

 

うちの場合は、いわゆる1の「紹介料20%」の病院のため、人材紹介サービスの質が低いのかもしれません。

だからといって、「紹介手数料を高くして、人材紹介サービスを活用してどんどん採用しよう」とは思いませんが・・・

経営的にも苦しくなりますし。

「紹介される人材の質が低い」という間違った認識

人材紹介サービス(職業紹介事業)とは、

「企業等の求人と仕事を探している人(求職者)をマッチングさせ、就職を斡旋(あっせん)する事業」

のことです。

 

なので、人材紹介サービスの一番の売りは、「マッチング力」であり、企業等が人材紹介サービスを使う一番のメリットは、「ミスマッチを防ぐこと」です。

つまり、

  • 企業等が希望する人材(こういう人材を求めている)
  • 求職者が希望する職場(こういう所で働きたい)

をつなげることです。

 

採用担当者の中には、「紹介される人材の質が低い」と嘆く人がいますが、そもそも良い人材(優秀)かどうかは職場によって定義が違うため、すべてはマッチングの精度によるものです。

A病院で活躍できなかった人が、B病院では大活躍しているってことが、往々にして起きています。

 

なので、「人材の質が低い」のではなく、「マッチングの精度が低い」が正解であり、すべては人材紹介サービスの質が問題なのです。

職業紹介実績のない事業者が半数以上

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の調査によると、有料職業紹介事業の許可を受けている事業者のうち「51.7%」が紹介実績がないと回答しています。

 

紹介実績のない人材紹介会社

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会「職業紹介業に関するアンケート調査報告書」

厚生労働省の職業紹介事業報告でも、53.1%の事業所が「紹介実績がない」と回答しています。

 

紹介実績がなかった理由としては、

  1. 許可を取ったが、まだ行っていない 40.6%
  2. 求職者を確保できなかった 31.4%
  3. 求人を確保できなかった 24.5%

となっています。

 

2017年以降、一気に人材紹介会社が増えていますが、求職者や求人を確保できていない事業者が多いようです。

そりゃ、求職者の取り合いにより、求職者数も少ないうえ、求人数も少ないわけですから、当然、マッチングの精度は低くなり、サービスの質は落ちますよね。

「求人データベース」と「求職者データベース」というサービス

ここ数年で、聞くようになった新たなサービスがあります。

それは、

  • 求人データベース求職者データベース
  • 求職者データベース

というサービスです。

 

このサービスは、人材紹介サービスを行っている事業者向けに、

  • 求人を出している企業等のリスト(データ)
  • 仕事を探している人のリスト(データ)

を提供し、そのデータに人材紹介サービスを行っている事業者がアプローチできる仕組みです。

 

人材紹介サービスは、

  • 企業等が希望する人材(こういう人材を求めている)
  • 求職者が希望する職場(こういう所で働きたい)

をマッチングするビジネスのため、求人情報と求職者の確保が必須です。

ただ、求人情報と求職者を集めるには、莫大な労力がかかります。

そんなとき、「求人データベース」と「求職者データベース」を利用すれば、費用はかかりますが、求人情報と求職者を集める労力やコストを削減できます。

 

つまり、「求人データベース」と「求職者データベース」は、人材紹介サービス(職業紹介事業)を割と簡単に起業できるサービスってことです。

こういったサービスもあるため、人材紹介会社は、まだまだ増えていくと思います。

求職者にとって人材紹介サービスは、本当に、メリットばかりなのか?

仕事を探す側(求職者)からすれば、完全無料で利用できる人材紹介サービスは、メリットばかりだと感じると思います。

ただ、僕としては、求職者が持つ、このイメージが少しずつ変わっていく(変わってきている)と思っています。

 

というのも、マッチングの精度が下がったことで、人材紹介サービスを利用するメリットがどんどん減り、デメリットが増えてきているからです。

以前なら、

  • 転職ノウハウを含め、経験豊富なキャリアアドバイザーに色々と相談できる
  • 求人票からではわからない情報が豊富

という売りが人材紹介サービスにはあったと思いますが、現在は、かなり怪しいです。(もちろん、すべての事業者ではありませんが)

 

流動性が高い、最近の人材紹介担当者(キャリアアドバイザー)は、基本、ネット上の情報を見て、病院等を紹介するだけです。

紹介する病院等に訪問し、職場や部署の雰囲気や上司(所属長)の人柄などの把握などは行っていません。

以前は、定期的に訪問し、ヒアリングなどを行い、一次情報の収集に力を入れていました。(僕も何度かヒアリングを受けたことがあります)

 

また、人材紹介サービスを利用すると、採用のハードルも上がります。

人材紹介サービス経由で職員を採用すると、事業主は紹介手数料を負担します。

【採用にかかる紹介手数料(1人あたり)】

  • 医師 300~500万円
  • 看護師 80~120万円
  • 薬剤師 100~130万円
  • セラピスト 70~90万円
  • 介護職員 70~90万円
かなりざっくりと試算しています。

 

なので、離職リスクが高い状況で、

「高額な紹介手数料を払ってまで、採用するべき人か?」

という判断が入ります。

 

このように、求職者にとっても人材紹介サービスのデメリットは増えています。

「無料」という言葉は、たしかに魅力的ですが、今後は、メリットとデメリットを天秤にかけて、人材紹介サービスの利用を考える求職者は増えていくと思います。

 

ちなみに、最近、「やりとりが煩わしい」「自分で連絡したほうが早い」という理由で、人材紹介サービスを使わず(キャンセルして)、自己応募してくれた職員が数名いました。

当院としては、すっごくありがたいので、もちろん採用しました。

人材紹介サービスを使わない採用方法【ダイレクトリクルーティング】

人材確保のため、当院が特に力をいれているツールがあります。

それは、「ジョブメドレー」です。

ジョブメドレーの特徴

「ジョブメドレー」は、医療・介護業界に特化した求人サイトです。

成功報酬型の求人サイトのため、採用するまで費用は発生しません。

求人掲載も無料ですし、求人作成もサクサクできます。

ジョブメドレーは、求人情報の作成や変更は、管理画面上で、求人者(事業所)が直接行えるので、新規の求人や求人情報の変更(修正)がしやすいです。

 

また、ジョブメドレーの登録者に対し、スカウトメールが送れるので、直接、求職者にアプローチできます。

ジョブメドレーは、Googleで検索した際、上位表示されることが多く、登録者(求職者)も多いので、スカウトメールはかなり効果的です。

 

ちなみに、当院の地域では、「ジョブメドレー」か「indeed」が、1位・2位表示されます。

【検索ワード(例)】

  • ○○市(地域)+看護師+求人
  • ○○市(地域)+介護職+求人
  • ○○市(地域)+看護師+病院
  • 看護師+○○市(地域)+求人
  • 介護職+○○市(地域)+求人
  • 看護師+求人+○○市(地域)
  • 介護職+求人+○○市(地域)

スカウトメールのタイトルに伝えたいことを凝縮する

ジョブメドレーを利用して求人を行うとき、かなり意識していることがあります。

それは、スカウトメールです。

 

ジョブメドレーの登録者に対し、直接、スカウトメールが送れるといっても、読んでもらえなければ意味がありません。

なので、スカウトメールは、徹底的にこだわり、定型文ではなく、施設独自の文章で送るようにしています。

 

特に、タイトルはすっごく意識しています。

スカウトメールを読んでもらえるかどうかは、タイトルで決まります。

ジョブメドレーのスカウトメールは、登録者の「LINE」か、「メール」で届きます。

その際、スカウトメールの文章自体が一部表示されます。

 

タイトルで、興味を持ってもらえなければ、読んでもらえません。

なので、タイトルには、魂を込めるべきです。

もちろん、求人のタイトルも同様です。(スカウトメールから求人を見てもらうために)

ジョブメドレーの担当者によると、スカウトメールの開封率は平均で、70%程度とのことです。

ジョブメドレーからの応募実績

当院のジョブメドレーにおける実績について、参考程度に載せておきます。

【直近3ヶ月間の実績】

職種 スカウトメール数 応募数
看護職員 154通 9人
介護職員 152通 8人

 

うちにとっては、とても素晴らしい(ありがたい)数値です。

ジョブメドレーを利用する付加価値

求人者(事業所)側が、ジョブメドレーを利用する価値は、ジョブメドレーを通じて職員を採用することです。

ただ、僕としては、「ジョブメドレーを経由しての職員採用」という本来の価値以外にも、ジョブメドレーを利用する価値があると思っています。

それは、次の2つです。

  • Googleで検索上位されるサイトに無料で求人を掲載できる
  • スカウトメールによる広告効果

 

自院で作成した求人サイト(ホームページ)を、Google検索で上位表示させることは至難の技です。

でも、ジョブメドレーなら無料で、検索上位のサイトに求人を掲載できます。

検索上位のサイトは、閲覧数が多いので、「ジョブメドレーで求人を検索して、直接応募する」みたいな人が出てきます。

 

また、「病院を知ってもらう」という広告効果もあります。

これは、スカウトメールでも同様です。

「スカウトメールをどんどん送っているのに、応募がない・・・」という場合でも、広告効果は必ずあります。

 

なので、応募がなくても悲観せず、「病院の広報をしている」思って、担当者としては、スカウトメールを長く続けたほうがいいです。

「スカウトメールを送ってから、数ヶ月後に応募」みたいなこともありますので、スカウトメールは送り続けることが大切だと思います。(当院は、実際にありました)

ジョブメドレーの採用単価(参考)

ジョブメドレーでも、採用時に費用がかかっちゃいますが、人材紹介サービスに比べると、圧倒的に安く済みます。

【採用時の費用(1人あたり)】

職種 常勤 非常勤
薬剤師 800,000円 400,000円
看護師 600,000円 300,000円
准看護師 480,000円 240,000円
介護福祉士 280,000円 140,000円
介護職(無資格) 80,000円 40,000円

まとめ

ここで、「人材紹介サービス(有料職業紹介事業者)の状況」について、まとめておきます。

  • 人材紹介サービス経由の入職者は離職率が高い(1.4~5倍)
  • 人材紹介会社は増加し続けている(2022年時点で、28,740件)
  • 人材紹介担当者(キャリアアドバイザー)の離職率は高い
  • 紹介手数料を多く払ってくれる事業所に優先的に人材が紹介される
  • 職業紹介実績のない事業者が半数以上
  • 求職者に対する人材紹介サービス利用のデメリットは増えている

 

医療・介護業界においては、人材紹介会社のサービスの質の低下により、求人者および求職者ともに、人材紹介サービスを利用するメリットが減っていきます。

なので、経営的にも、職員採用を人材紹介サービス(有料職業紹介事業者)に頼り切ってしまうのは危険です。

 

これからは、労働人口がどんどん減っていき、人材確保がますます厳しくなりますので、

  • 離職率を下げる
  • 職員さんに長く働いてもらえる職場環境の整備

により、人材紹介サービス以外の採用方法で人材を賄えるようにしておくことが大切だと思います。

採用する人数が少なくて済むように。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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