健康診断と予防接種における初診料・再診料の算定ルール【厚生局からの改善事項】

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医師、女性、白衣、書類

健康診断や予防接種は、原則、保険診療の対象ではありません。

なので、医療機関としては、自費(自由診療)として健康診断等を実施し、医療機関にて設定した金額を患者さんに請求していると思います。

 

金額としては、地域や医療機関によってバラツキがありますが、たとえば、

  • 定期健康診断なら「10,000円前後」
  • インフルエンザの予防接種なら「3,000円前後」

が一般的かと思います。

病気やケガなどの治療上、必要と判断された検査などは保険診療の対象となります。

 

この取扱いについて、医療事務の仕事をされている人で疑問を持つ人は少ないと思います。

 

では、「外来診察と健康診断や予防接種を同じ日に行った場合の請求」は、どうでしょうか?

 

結論から言うと外来診察と健康診断等を同じ日に行った場合、初診料・再診料は算定できません。(その他の診療報酬は、通常どおり算定できます)

 

これ実は、お恥ずかしながら、当院で「あーでもない、こーでもない」と、ごちゃごちゃしたんです。

 

そこで、「健康診断と予防接種における初診料・再診料の算定ルール」について、色々と調べてみましたので備忘録的にまとめておきます。(間違いがあれば、ご指摘ください)

 

こんな人に読んでいただけると嬉しいです。

  • 医療事務の仕事をしている
  • 医療機関で、施設基準等の管理を担当している
この記事で紹介している算定ルールは、令和4年4月時点のものです。また、この記事における健康診断には、特定健診などの公費負担があるものを含みます。

初診料・再診料は、健康診断等と併せて実施した場合、算定できない

初診料・再診料の取扱いは、関東信越厚生局が公表している「平成29年度に実施した個別指導において保険医療機関(医科)に改善を求めた主な指摘事項」にはっきりと出ています。

3.基本診療料

(2)再診料

○再診料を算定出来ない例が認められたので改めること。

  • 健康診断と併せて実施したものを算定
  • 予防接種と併せて実施したものを算定

 

もはや、取扱いとしてはこれがすべてなんですが、「なぜ、算定できないのか?」について参考までに紹介します。

興味があれば、チェックしてみてください。

初診料・再診料が算定できない理由(健康診断等と併せて実施した場合)

考え方としては、次のとおりです。

「健康診断および予防接種の料金には、診察料が含まれているため」

 

なので、初診料・再診料を算定してしまうと、2重請求ってことになっちゃいます。

「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」の記載

診療報酬点数表の通知(令和4年3月4日保医発0304第1号)では、次のようになっています。

第1節 初診料

A000 初診料

(4) 自他覚的症状がなく健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、当該保険医が、特に治療の必要性を認め治療を開始した場合には、初診料は算定できない。

ただし、当該治療(初診を除く。)については、医療保険給付対象として診療報酬を算定できること。

(5) (4)にかかわらず、健康診断で疾患が発見された患者が、疾患を発見した保険医以外の保険医(当該疾患を発見した保険医の属する保険医療機関の保険医を除く。)において治療を開始した場合には、初診料を算定できる。

 

わかりやすくすると、

  • 健康診断実施後、同日にそのまま治療をした場合、初診料は算定できない
  • 初診料以外は、診療報酬を算定できる
  • 健康診断を実施した医療機関とは別の医療機関で治療する場合は初診料を算定できる

ってことですね。

初診料となっていますが、再診料も同様の取扱いです。

 

ちなみに、健康診断と治療(保険診療)の順番が入れ替わっても初診料は算定できません。

つまり、「治療(診察)⇒ 健康診断」とか。

 

さらに言うと、

  • 午前 健康診断(自由診療)
  • 午後 診察(保険診療)

でも、初診料・再診料は算定できません。

健康診断時及び予防接種の費用について

平成15年7月30日の厚生労働省保険局医療課事務連絡では、健康診断と予防接種の費用は、次のようになっています。

1 健康診断時の内視鏡検査により病変を発見し、引き続き、その内視鏡を使用して治療を開始した場合においては、その治療は療養の給付として行われるものであるため、保険医療機関は内視鏡下生検法、病理組織顕微鏡検査、内視鏡を使用した手術など治療の費用を保険請求することができる。

なお、内視鏡を使用した手術の所定点数には内視鏡検査の費用が含まれていることから、内視鏡を使用した手術の費用を保険請求する場合には、健康診断としての内視鏡検査の費用の支払を受けることはできない。

 

2 入院患者に対する予防接種については、当該患者の罹患予防等の観点から実施されるものであって、療養の給付として行われるものではないことから、外来患者に対する予防接種と同様に、患者からその費用の支払を受けることができる。

予防接種と同日の外来診察における算定ルール

予防接種と一緒に別の病気の診察を行った場合、初診料・再診料は算定できません。

理由としては、繰り返しにはなりますが、予防接種の料金には、診察料が含まれているからです。

 

ただし、新型コロナウイルスワクチンの予防接種については臨時的な取り扱いとして、初診料・再診料を算定することができます。

 

法的根拠は次のとおりです。

厚生労働省 事務連絡(令和3年6月17)

「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その49)」

問1 令和3年2月16 日厚生労働省通知「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施について(指示)」(厚生労働省発健0216 第1号。以下「2月16 日通知」という。)における新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を実施するに当たり、保険医療機関において、予診(予防接種実施規則第4条に規定する「問診、検温及び診察」をいう。以下同じ。)を行った場合、当該予診を実施したことに対して、初診料、再診料、外来診療料等の診療報酬を算定することはできるか。

(答)算定不可。

 

問2 2月16 日通知における新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を保険医療機関で実施した場合であって、予防接種の実施後に当該保険医療機関において健康状態を観察している間に、何らかの症状が発生し、それに対する診療を行った場合、初診料、再診料又は外来診療料を算定することはできるか。また、その際、処置、検査又は投薬等の診療を実施した場合において、それぞれに対応する項目について算定することはできるか。

(答)初診料、再診料又は外来診療料については、算定不可。なお、処置、検査又は投薬等に対応する項目については、それぞれ算定要件を満たした場合には算定できる。

 

問3 2月16 日通知における新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を保険医療機関で実施した場合であって、実施した日と同日に、予防接種を実施した保険医療機関において別の傷病に対して予防接種(予診及び健康状態の観察を含む。)の前又は後に診療を行ったときには、当該診療行為について初診料、再診料又は外来診療料を算定することはできるか。

また、その際、処置、検査又は投薬等の診療を実施した場合において、それぞれに対応する項目について算定することはできるか。

(答)算定可。なお、初診料、再診料又は外来診療料以外の項目についても、それぞれ算定要件を満たした場合には算定できる。

健康診断や予防接種は、混合診療にはならない

通常の診察(保険診療)と健康診断や予防接種を同時に行っても混合診療にはなりません。

理由としては、健康診断や予防接種は「療養の給付と直接関係ないサービス等」に該当するからです。

 

「療養の給付と直接関係ないサービス等」の費用について患者から別途徴収することは、一定の範囲内で認められています。

なので、混合診療に該当せず、別に請求してよいということになります。

 

法的根拠としては、次のとおりです。

1 費用徴収する場合の手続について

療養の給付と直接関係ないサービス等については、社会保険医療とは別に提供されるものであることから、もとより、その提供及び提供に係る費用の徴収については、関係法令を遵守した上で、保険医療機関等と患者の同意に基づき行われるものである・・・

 

2 療養の給付と直接関係ないサービス等

療養の給付と直接関係ないサービス等の具体例としては、次に掲げるものが挙げられること。

(4) 医療行為ではあるが治療中の疾病又は負傷に対するものではないものに係る費用

ア インフルエンザ等の予防接種、感染症の予防に適応を持つ医薬品の投与

イ 美容形成(しみとり等)

ウ 禁煙補助剤の処方(ニコチン依存症管理料の算定対象となるニコチン依存症(以下「ニコチン依存症」という。)以外の疾病について保険診療により治療中の患者に対し、スクリーニングテストを実施し、ニコチン依存症と診断されなかった場合であって、禁煙補助剤を処方する場合に限る。)

エ 治療中の疾病又は負傷に対する医療行為とは別に実施する検診(治療の実施上必要と判断し検査等を行う場合を除く。) 等

出典:厚生労働省「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて(令和2年3月23日改)」

 

ちなみに、医療機関によっては、

  • 健康診断と診察や処方
  • 予防接種と診察や処方

は、同日にはできないとして、別日としているところがあるかと思います。

 

その際、「混合診療になるから・・・」みたいな理由付けをしているところを見かけますが、僕としては、「それって、ただ、初診料・再診料が算定できないから(収入が減るから)じゃないの?」って思ってたりします。

 

【関連記事】

混合診療について、詳しくは、こちらの記事でまとめています。

混合診療について厚生局に確認した3つのこと【一連の診療の具体例】
厚生労働省は、混合診療について次のように定義しています。 「一連の診療において、保険診療と保険外診療(自由診療)を併用すること」 混合診療は、原則、禁止されています。 で、「一連の診療」って、具体的にどういうこと? って思ったので、厚生局に...

まとめ

ここで、「健康診断・予防接種の算定ルール」について、おさらいです。

  • 健康診断や予防接種は、保険診療の対象ではない(自費にて請求)
  • 健康診断や予防接種の費用に、診察料は含まれている
  • 外来診察と健康診断や予防接種を同じ日に行った場合、初診料・再診料は算定できない(新型コロナワクチンを除く)

 

健康診断や予防接種の初・再診料については、厚生局も指導を行っています。

立入検査等で、指摘されないように制度の理解を深め、適切に判断していきたいですね。

わかりづらい通知が多いですけどね・・・

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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