混合診療について厚生局に確認した3つのこと【一連の診療の具体例】

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医師、診察、カルテ

厚生労働省は、混合診療について次のように定義しています。

「一連の診療において、保険診療と保険外診療(自由診療)を併用すること」

混合診療は、原則、禁止されています。

 

で、「一連の診療」って、具体的にどういうこと?

って思ったので、厚生局に聞いてみました。

【厚生局へ確認したこと】

  1. 一連の診療とは、その日という意味ではなく、治療期間すべてということか?
  2. 保険診療と保険外診療を別々の医療機関で行えば、混合診療にならないのか?
  3. 別の病気ごとに、保険診療と保険外診療(自由診療)を行うことは混合診療になるのか?

 

そこで、この記事では、混合診療における

  • 厚生局の回答
  • 算定ルール
  • 保険外併用療養費

についてまとめておきます。

 

こんな人に読んでいただけると嬉しいです。

  • 医療事務の仕事をしている
  • 医療機関で、施設基準等の管理を担当している
この記事で紹介している算定ルールは、令和4年4月時点のものです。

混合診療になるのか?ならないのか?【厚生局の回答】

厚生局からは、次のように回答いただきました。

一連の診療とは、その日という意味ではなく、治療期間すべてということか?

【回答】

一連の診療とは、治療期間内のすべての期間をいう。

混合診療かどうかの判断は、日ごとではなく期間で行う。

 

つまり、

  • 6/22 保険診療
  • 6/23 保険外診療(自由診療)

というように、日を変えればOKということではないってことです。

保険診療と保険外診療を別々の医療機関で行えば、混合診療にならないのか?

【回答】

医療機関が違っても、一連の診療に該当する。

つまり、混合診療となる。

 

たとえば、

  • A病院:保険診療のみ
  • B病院:保険外診療(自由診療)のみ

という場合でも混合診療になります。

別の病気ごとに、保険診療と保険外診療(自由診療)を行うことは混合診療になるのか?

【回答】

混合診療にはならない。

 

たとえば、同一の保険医療機関内において、

  • 病気A:保険診療のみ
  • 病気B:保険外診療(自由診療)のみ

は、混合診療にはなりません。

交通事故などの場合は、このケースになりますね。

 

結果、厚生局の回答をもとに、僕なりに混合診療を再定義すると、

「診療日別および保険医療機関別に関わらず、同一の病気やケガ等における一連の診療に対し、保険診療と保険外診療を併用すること」

となります。

ちょっと、無理やり感が出てますが、ご理解を。

混合診療に該当する場合の算定ルール

混合診療に該当する場合、次のどちらかの取扱い(算定)となります。

  1. 投薬を含むすべての診療に対し、保険外診療(自由診療)として患者に請求する
    ⇒患者さんへ、10割請求
  2. 保険外診療(自由診療)部分は、請求せず、保険診療部分のみ保険請求する
    ⇒保険外診療部分は、医療機関の負担
保険診療部分は保険請求し、保険外診療部分だけを、患者さんに10割で請求することはできません。

 

こんなイメージです。

【すべての診療に対し、保険外診療(自由診療)とする場合】

すべての治療に対し、保険外診療(自由診療)とする場合

 

【保険外診療(自由診療)部分は、請求しない場合】

保険外診療(自由診療)部分は、請求しない場合

保険外診療を行ったとしても、患者さんに請求しなければ、混合診療にはなりません。

保険診療と保険外診療を併用できるもの「保険外併用療養費」

混合診療は、原則、禁止されていますが、一部、保険制度の中で認められているものあります。

それを、保険外併用療養費といいます。

 

保険外併用療養費に該当するものは、保険診療と併用することができます。

つまり、保険診療部分は、保険請求し、保険外診療部分(保険外併用療養費)は、患者さんに自費として10割の請求ができるってことです。

こんなイメージです。

【保険外併用療養費に該当する場合】

保険診療と保険外診療を併用できるもの(保険外併用療養費)

 

また、保険外併用療養費は、3つに分けられていています。

  • 評価療養
  • 選定療養
  • 患者申出療養

 

具体的には、次のとおりです。

評価療養

健康保険の対象とするかどうかの評価を行うもの(医療機関が起点となり実施するもの)

  • 先進医療
  • 医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
  • 薬事法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用
  • 薬価基準収載医薬品の適応外使用(用法・用量・効能・効果の一部変更の承認申請がなされたもの)
  • 保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用(使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がなされたもの)

選定療養

健康保険の対象とするかどうかの評価を前提としないもの

  • 特別の療養環境(差額ベッド)
  • 歯科の金合金等
  • 金属床総義歯
  • 予約診療
  • 時間外診療
  • 大病院の初診
  • 小児う触の指導管理
  • 大病院の再診
  • 180日以上の入院
  • 制限回数を超える医療行為

患者申出療養

健康保険の対象とするかどうかの評価を行うもの(患者さんの申出が起点となり実施するもの)

患者が未承認薬等を迅速に保険外併用療養として使用したいとの申出を行い認められたもの

 

患者申出療養制度の手続き等については、こちらのサイトを。

厚生労働省「患者申出療養制度」

療養の給付と直接関係ないサービス等に該当するものは、混合診療にならない

次に該当するものは、そもそも診療(療養の給付)ではないため、患者さんに自費で請求しても混合診療にはなりません。

つまり、保険診療と併用してOKってことです。

2 療養の給付と直接関係ないサービス等

療養の給付と直接関係ないサービス等の具体例としては、次に掲げるものが挙げられること。

(1) 日常生活上のサービスに係る費用

ア おむつ代、尿とりパット代、腹帯代、T 字帯代

イ 病衣貸与代(手術、検査等を行う場合の病衣貸与を除く。)

ウ テレビ代

エ 理髪代

オ クリーニング代

カ ゲーム機、パソコン(インターネットの利用等)の貸出し

キ MD、CD、DVD 各プレイヤー等の貸出し及びそのソフトの貸出し

ク 患者図書館の利用料等

 

(2) 公的保険給付とは関係のない文書の発行に係る費用

ア 証明書代
(例)産業医が主治医に依頼する職場復帰等に関する意見書、生命保険等に必要な診断書等の作成代等

イ 診療録の開示手数料(閲覧、写しの交付等に係る手数料)

ウ 外国人患者が自国の保険請求等に必要な診断書等の翻訳料等

 

(3) 診療報酬点数表上実費徴収が可能なものとして明記されている費用

ア 在宅医療に係る交通費

イ 薬剤の容器代(ただし、原則として保険医療機関等から患者へ貸与するものとする。) 等

 

(4) 医療行為ではあるが治療中の疾病又は負傷に対するものではないものに係る費用

ア インフルエンザ等の予防接種、感染症の予防に適応を持つ医薬品の投与

イ 美容形成(しみとり等)

ウ 禁煙補助剤の処方(ニコチン依存症管理料の算定対象となるニコチン依存症(以下「ニコチン依存症」という。)以外の疾病について保険診療により治療中の患者に対し、スクリーニングテストを実施し、ニコチン依存症と診断されなかった場合であって、禁煙補助剤を処方する場合に限る。)

エ 治療中の疾病又は負傷に対する医療行為とは別に実施する検診(治療の実施上必要と判断し検査等を行う場合を除く。) 等

 

(5) その他

ア 保険薬局における患家等への調剤した医薬品の持参料及び郵送代

イ 保険医療機関における患家等への処方箋及び薬剤の郵送代

ウ 日本語を理解できない患者に対する通訳料

エ 他院より借りたフィルムの返却時の郵送代

オ 院内併設プールで行うマタニティースイミングに係る費用

カ 患者都合による検査のキャンセルに伴い使用することのできなくなった当該検査に使用する薬剤等の費用(現に生じた物品等に係る損害の範囲内に限る。なお、検査の予約等に当たり、患者都合によるキャンセルの場合には費用徴収がある旨を事前に説明し、同意を得ること。)

キ 院内託児所・託児サービス等の利用料

ク 手術後のがん患者等に対する美容・整容の実施・講習等

ケ 有床義歯等の名入れ(刻印・プレートの挿入等)

コ 画像・動画情報の提供に係る費用(区分番号「B010」診療情報提供料(Ⅱ)を算
定するべき場合を除く。)

サ 公的な手続き等の代行に係る費用等

 

出典:厚生労働省「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて(令和2年3月23日改正)」

 

イメージとしては、こんな感じです。

【療養の給付と直接関係ないサービス等に該当する場合】

保険診療と保険外診療を併用できるもの(保険外併用療養費)

 

ちなみに、保険外併用療養費を徴収する場合は、

  • 厚生局への保険外併用療養費の届出
  • サービス等の内容や料金を院内へ掲示
  • 患者さんへの説明と同意(同意書への署名)

が必要になります。

療養の給付(診療報酬)に含まれているので、請求してはいけないもの

混合診療とは少し脱線しますが、次に該当するものは保険診療(診療報酬)に含んでいるため、自費として患者に請求することはできません。

2重請求になっちゃうからです。

 

3 療養の給付と直接関係ないサービス等とはいえないもの

療養の給付と直接関係ないサービス等とはいえないものとしては、具体的には次に掲げるものが挙げられること。

(1) 手技料等に包括されている材料やサービスに係る費用

ア 入院環境等に係るもの
(例)シーツ代、冷暖房代、電気代(ヘッドホンステレオ等を使用した際の充電に係るもの等)、清拭用タオル代、おむつの処理費用、電気アンカ・電気毛布の使用料、在宅療養者の電話診療、医療相談、血液検査など検査結果の印刷費用代等

イ 材料に係るもの
(例)衛生材料代(ガーゼ代、絆創膏代等)、おむつ交換や吸引などの処置時に使用する手袋代、手術に通常使用する材料代(縫合糸代等)、ウロバッグ代、皮膚過敏症に対するカブレ防止テープの提供、骨折や捻挫などの際に使用するサポーターや三角巾、医療機関が提供する在宅医療で使用する衛生材料等、医師の指示によるスポイト代、散剤のカプセル充填のカプセル代、一包化した場合の分包紙代及びユニパック代等

ウ サービスに係るもの
(例)手術前の剃毛代、医療法等において設置が義務付けられている相談窓口での相談、車椅子用座布団等の消毒洗浄費用、インターネット等より取得した診療情報の提供、食事時のとろみ剤やフレーバーの費用等

 

(2) 診療報酬の算定上、回数制限のある検査等を規定回数以上に行った場合の費用(費用を徴収できるものとして、別に厚生労働大臣の定めるものを除く。)

 

(3) 新薬、新医療機器、先進医療等に係る費用

ア 薬事法上の承認前の医薬品・医療機器(治験に係るものを除く。)

イ 適応外使用の医薬品(評価療養を除く。)

ウ 保険適用となっていない治療方法(先進医療を除く。) 等

 

出典:厚生労働省「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて(令和2年3月23日改正)」

混合診療における法的根拠

興味があれば、検索してみてください。

  • 健康保険法 第52条 保険給付の種類
  • 健康保険法 第63条 療養の給付
  • 健康保険法 第86条 保険外併用療養費
  • 療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等
  • 療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて(令和2年3月23日改正)
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まとめ

ここで、「混合診療の算定ルール」について、おさらいです。

  • 保険診療と保険外診療を別々の日に行っても混合診療になる
  • 保険診療と保険外診療を別々の保険医療機関で行っても混合診療になる
  • 病気が違えば、保険診療と保険外診療を併用しても混合診療にはならない
  • 混合診療に該当する場合、投薬を含むすべての診療に対し、保険外診療(自由診療)として患者に請求するか、保険外診療(自由診療)部分は請求せず、保険診療部分のみ保険請求するかを選ぶ
  • 保険外併用療養費については、保険診療と保険外診療を併用できる

 

混合診療に該当していることに気づかずに算定を続けてしまうと、厚生局の立入検査(適時調査や個別指導等)などのときに、場合によっては、とんでもないことになっちゃいます。

そうならないためにも、制度の理解を深め、適切に判断していきたいですね。

わかりづらい通知が多いですけどね・・・

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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