この記事では、在留資格「特定技能」制度における、
「1号特定技能外国人支援計画の義務的支援の内容」
について紹介しています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 外国人労働者の受入れを考えている
- 特定技能の外国人支援って何をすればいいの?
- 法務省入国管理局の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」を読まずにポイントだけ知りたい
「そもそも、特定技能制度ってなんなの?」という人は、こちらの記事をどうぞ。
1号特定技能外国人支援計画とは?
外国人受入れ機関である「特定技能所属機関」は、外国人が特定技能の活動を安定的に、また、円滑に行うことができるようにするため、職業生活、日常生活、社会生活上の支援を行う必要があります。
そして、その支援を行うための計画を作成する義務があります。
このときに作成される計画が、「1号特定技能外国人支援計画書」となります。
こんな様式です。
1号特定技能外国人に対する支援は、「義務的支援」と「任意的支援」がある
特定技能外国人の支援は、
- 義務的支援
- 任意的支援
と分けれており、義務的支援については、そのすべてを計画書に記載し、実施しなければなりません。
ただ、1号特定技能外国人に対する支援は、「登録支援機関(特定技能の窓 など)」に全委託することができますので、特定技能所属機関(受入れ機関)が実施しないことも可能です。
任意的支援については、その名のとおり事業所の任意で行います。
いわゆる、「やっておくことが望ましいって」やつですね。
なので、この記事では、「義務的支援」についてのみまとめています。
【関連記事】
1号特定技能外国人に対する支援の委託にかかる法的根拠は、こちらの記事を。
1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保の基準については、こちらの記事で紹介しています。
1号特定技能外国人支援計画の「義務的支援」の内容
特定技能外国人に対する支援内容は、次の9つの項目に分けられています。
【1号特定技能外国人支援計画の内容等】
- 事前ガイダンスの提供
- 出入国する際の送迎
- 適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 日本語学習の機会の提供
- 相談又は苦情への対応
- 日本人との交流促進に係る支援
- 外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
- 定期的な面談の実施、行政機関への通報
出典:法務省入国管理局「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」
項目だけ見ても、わかりづらいので、1つずつポイントを説明していきます。
事前ガイダンスの提供
特定技能所属機関または委託を受けた登録支援機関は、「在留資格認定証明書交付申請」の前に、特定技能外国人に対し、次のような情報提供(事前ガイダンス)を行わなければなりません。
- 業務内容、報酬額、その他の労働条件
- 日本で行うことができる活動の内容
- 入国にあたっての手続き
- 保証金等の支払や違約金等に係る契約を現にしていないこと及び将来にわたりしないことについての確認
- 特定技能雇用契約の申込みの取次ぎ又は活動の準備に関して自国等の機関に費用を支払っている場合は、その額及び内訳を十分理解して、その機関との間で合意している必要があること
- 外国人支援に要する費用について、特定技能外国人に負担させないこと
- 入国時には、港や飛行場から特定技能所属機関(受入れ機関)まで特定技能外国人の送迎を行うこと
- 適切な住居の確保のための支援を行うこと
- 職業生活、日常生活または社会生活に関する相談や苦情を受ける体制があること
- 支援担当者の氏名および連絡先
事前ガイダンスは、特定技能外国人が、十分に理解することができる言語により、対面またはテレビ電話等の方法により行う必要があります。
また、事前ガイダンスを行ったときは、
「事前ガイダンスの確認書(参考様式第1-7号)」
に、特定技能外国人の署名をもらう必要があります。
こんな書類です。
出入国する際の送迎
特定技能外国人が入国するときは、次の2箇所間の送迎を行わなければなりません。
- 上陸手続きを受ける港または飛行場
- 特定技能所属機関の事業所または当該特定技能外国人の住居
また、出国するときは、「出国手続きを受ける港または飛行場」まで送迎を行います。
なお、出国する際の送迎では、単に港または飛行場へ当該特定技能外国人を送り届けるだけではなく、保安検査場の前まで同行し、入場することを確認する必要があります。
適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
適切な住居に確保に係る支援
特定技能外国人の住居については、次のいずれかの支援を行う必要があります。
- 特定技能外国人が賃借人として賃貸借契約を締結する場合は、不動産仲介業者や賃貸物件の情報を提供し、必要に応じて外国人に同行し、住居探しの補助を行う
- 特定技能所属機関などが自ら賃借人となって賃貸借契約を締結し、1号特定技能外国人の合意のもと、当該特定技能外国人に対して住居として提供する
- 特定技能所属機関が所有する社宅などを、1号特定技能外国人の合意のもと、当該特定技能外国人に対して住居として提供する
もし、特定技能外国人が賃貸借契約を締結するにあたり、連帯保証人がいない場合は、
- 特定技能所属金等が連帯保証人になる
- 利用可能な家賃債務保証業者を確保するとともに、特定技能所属機関等が緊急連絡先となる
のどちらかの支援を行う必要があります。
また、確保する居室の広さにまで決まりがあります。
基準は、「1人あたり7.5㎡以上」となっているため、約4畳半って感じです。
生活に必要な契約に係る支援
特定技能所属機関または委託を受けた登録支援機関は、特定技能外国人が日本で生活するにあたり必要となる、
- 銀行その他金融機関における預金口座または貯金口座の開設手続き
- 携帯電話の利用に関する契約手続き
- 電気、ガス、水道等のライフラインに関する契約手続き
の補助を行う必要があります。
契約手続きの補助とは、
- 必要な書類の提供
- 窓口の案内
のことをいい、必要に応じて、当該特定技能外国人に同行することが求められています。
生活オリエンテーションの実施
特定技能所属機関または委託を受けた登録支援機関は、入国後速やかに、特定技能外国人に対し、次のような情報を提供(生活オリエンテーション)する必要があります。
【生活オリエンテーションで提供しなければならない情報】
- 金融機関の利用方法
- 医療機関の利用方法等
- 交通ルール等
- 交通機関の利用方法等
- 生活ルール、マナー
- 生活必需品等の購入方法等
- 気象情報や災害時に行政等から提供される災害情報の入手方法等
- 日本で違法となる行為の例
- 特定技能所属機関等に関する届出
- 住居地に関する届出
- 社会保障及び税に関する手続き
- その他の行政手続き
- 相談または苦情の申出に対応する支援担当者の氏名と連絡先
- 相談または苦情の申出をすうることができる国または地方公共団体の機関の連絡先など
- 外国人受入れ体制が整備されている病院の名称、所在地および連絡先(言語が通じるなど)
- 医療通訳雇入費用等をカバーする民間医療保険への加入案内
- トラブル対応や身を守るための方策(自然災害や火災、事故など)
- 緊急時の連絡先(110番や119番など)
- 気象情報、避難指示、避難勧告等の把握方法、災害時の避難場所
- 入管法令および労働関係法令に関する知識
- 入管法令に関する違反がある場合のその相談先と連絡方法
- 労働に関する法令違反がある場合のその相談先と連絡方法
- 特定技能雇用契約に反することがあった場合のその相談先と連絡方法
- 人権侵害があった場合のその相談先と連絡方法
- 年金の受給権に関する知識および脱退一時金制度に関する知識とそれらの相談先および連絡方法
また、生活オリエンテーションを実施したときは、
「生活オリエンテーションの確認書(参考様式第5-8号)」
に1号特定技能外国人の署名をもらい、記録しておく必要があります。
こんな書類です。
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生活オリエンテーションの詳しい内容については、こちらの記事を。
日本語学習の機会の提供
特定技能所属機関または委託を受けた登録支援機関は、特定技能外国人に対し、次のいずれかの支援を行う必要があります。
- 就労・生活する地域の日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報を提供すること(必要に応じ、同行して入学の手続の補助を行う)
- 自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報を提供すること(必要に応じて利用契約の補助を行う)
- 特定技能外国人との合意のもと、特定技能所属機関等が日本語講師と契約して、当該外国人に日本語の講習の機会を提供すること
特定技能外国人の日本語の習得状況に応じて、適切で継続的な学習の機会を提供していくことが必要となります。
相談又は苦情への対応
特定技能外国人から
- 職業生活
- 日常生活
- 社会生活
に関する相談や苦情を受けたときは、その相談等に適切に応じ、相談等の内容に対して、必要な助言や指導を行う必要があります。
また、「相談又は苦情への対応」については、次のようなことも求められています。
- 必要に応じて、相談等内容に対応する適切な機関(地方出入国在留管理局、労働基準監督署等)を案内し、当該外国人に同行して必要な手続の補助を行うこと
- 平日のうち3日以上、土曜・日曜のうち1日以上に対応し、相談しやすい就業時間外などにも対応できること
- 相談及び苦情の対応を行ったときは、相談記録書(参考様式第5-4号)に記録をしておくこと
- 相談及び苦情を受け、関係行政機関への相談又は通報を行ったものについては、当該外国人の支援実施状況に係る届出書(参考様式第3-7号又は第4-3号)に記載すること
なお、「相談記録書(参考様式第5-4号)」は、こんな様式です。
日本人との交流促進に係る支援
特定技能所属機関または委託を受けた登録支援機関は、必要に応じて、
- 地方公共団体やボランティア団体等が主催する地域住民との交流の場に関する情報の提供
- 地域の自治会等の案内
- 就労または生活する地域の行事(季節の行事など)に関する案内
を行い、各行事等への参加の手続きの補助を行う必要があります。
また、必要に応じて特定技能外国人に同行して、各行事の注意事項や実施方法を説明するなどの補助を行わなければなりません。
外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
特定技能所属機関(受入れ機関)の都合により、特定技能外国人との雇用契約を解除する場合は、次のいずれかの支援を行う必要があります。
- 次の受入れ先(特定技能所属機関)に関する情報を入手すること
- 公共職業安定所その他の職業安定機関又は職業紹介事業者等を案内し、必要に応じて1号特定技能外国人に同行し、次の受入先を探す補助を行うこと
- 特定技能外国人の希望条件、技能水準、日本語能力等を踏まえ、適切に職業相談・職業紹介が受けられるよう又は円滑に就職活動が行えるよう推薦状を作成すること
- 特定技能所属機関等が職業紹介事業の許可又は届出を受けて職業紹介事業を行うことができる場合は、就職先の紹介あっせんを行うこと
また、上記の支援に加え、次の支援のすべてを行う必要があります。
- 1号特定技能外国人が求職活動を行うための有給休暇を付与すること
- 離職時に必要な行政手続(国民健康保険や国民年金に関する手続等)について情報を提供すること
定期的な面談の実施、行政機関への通報
特定技能所属機関または委託を受けた登録支援機関は、3ヶ月に1回以上次の者と面談を行わなければなりません。
- 特定技能外国人
- 特定技能外国人を監督する立場にある者(直接の上司や雇用先の代表者など)
面談の結果、
- 労働基準法、その他労働に関する法令および入管法の違反
- 旅券及び在留カードの取上げ等その他の問題の発生
を知った時は、関係行政機関へ通報する必要があります。
また、定期的な面談を行ったときは、
「1号特定技能外国人用及び監督者用の定期面談報告書(参考様式第5-5号及び第5-6号)」
を作成し、支援実施状況に係る届出書の提出のときに、これらを添付する必要があります。
ちなみに、「1号特定技能外国人用及び監督者用の定期面談報告書」とは、こんな様式です。
1号特定技能外国人支援計画の作成義務は、特定技能所属機関(受入れ機関)にある
1号特定技能外国人に対する支援の実施は、「登録支援機関(特定技能の窓 など)」に全委託することができますが、作成については、特定技能所属機関(受入れ機関)の義務となっています。
ただ、登録支援機関が必要に応じて、支援計画作成の補助を行うことは差し支えないため、実際は「ほぼ、お任せ」って感じになりそうですね。
外国人支援計画は、日本語とその外国人が十分に理解することができる言語で作成する
1号特定技能外国人支援計画書は、
- 日本語
- 特定技能外国人が十分に理解することができる言語
の2種類で作成する必要があります。
そして、その計画書の写しを特定技能外国人に交付し、支援計画の内容を説明したうえで、署名を得る必要があります。
こんな感じです。(1ページ目と10ページ目を載せています)
1号特定技能外国人支援にかかる費用は、特定技能所属機関等が負担する
特定技能外国人支援に要する費用については、直接的または間接的に当該特定技能外国人に負担させることはできません。
なので、出入国の送迎や通訳人の手配、各種相談など、この記事で紹介した支援にかかってくる費用は、すべて特定技能所属機関等で負担することとなります。
事業主としては、これらの費用も人件費として考え、受け入れを検討する必要がありそうですね。
まとめ
特定技能外国人は、人材不足の介護業界を一緒になって、支えていく仲間だと思います。
そして、「1号特定技能外国人支援計画」とは、その特定技能外国人が、日本で安心して働いていただくためのものです。
ハードルが高めの支援内容もありますが、「日本に来てよかった~」って思ってもらえるよう、適正な制度利用をしていきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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