以前の記事「看護師は人生で3回働き方を変える!?」で紹介しましたが、
看護師さんは、
「仕事(働くこと)に対する優先順位の変化」
にあわせて転職を考えます。
ちなみに、こんな感じ。
時期・経験年数 | ターゲット層 | 優先順位(働き方ニーズ) |
看護師資格取得時 | 新卒層 | 大学病院等(急性期の大病院)で学びを重視 |
経験3~5年目 | 経験者層 | やりたいことを重視(診療科など) |
結婚・出産後 | 子育て層 | 働きやすさを重視(柔軟な勤務体系や休みやすさ) |
子育てが落ち着くと | やりがい層 | 看護師としてのやりがいと自分の体力を重視 |
看護師採用を行う病院側からすれば、この「優先順位(働き方ニーズ)」って、採用活動において、すっごく重要なポイントになります。
なぜなら、看護師さんの「働き方ニーズ」に合わせて、職場環境を整備(改善)することで、
「この病院で働きたい!」
と思ってもらえる確率を高めることができるからです。
また、この「働き方ニーズ」にあわせて、採用する「ターゲット層」を絞ることで、さらに採用効率をアップすることができますし。
そこで今回、病院の人事担当者という立場で「ターゲット層を絞った効果的な看護師採用について」考えてみましたので、まとめておきます。
効果的に看護師を採用したいなら「ターゲット層」を絞れ
まず、効果的な看護師採用(人材採用)について、僕が出した結論です。
- 病院機能にあわせて、採用する「ターゲット層」を絞る
- 病院として「どの層の働き方ニーズに、応えられるのか?」を見極める
- 職員の「働き方ニーズ」を無視した職場環境の整備に意味はない
- すべての看護師から好かれる「最高の病院」なんか存在しない
それでは1つずつ紹介していきます。
病院機能にあわせて、採用するターゲット層を絞る
まず、病院の機能によって、どの層の看護師をターゲットにするべきか考えてみました。
大学病院等の急性期病院(総合病院など)
大学病院などの高度な医療行為を行っている病院の場合、「学びを重視」している新卒層が、メインターゲットになります。
理由としては、大学病院等であれば、新卒層の看護師さんが求める学びの効率を最大化できるからです。
実際、新卒層をメインターゲットにしている大学病院などは多いと思います。
「看護学校の運営」なんて、その最たるものですし。
なお、大学病院などの場合、やれることの選択肢が広いため、経験者層への積極的な採用活動も効果的だと思います。
逆に言えば、大学病院などが、子育て層の看護師採用を促進しても、あまり効果は期待できないでしょう。
なぜなら、大学病院などの救急病院の場合、
- 勤務体系
- 勤務時間
- 休みやすさ
など、子育て層の「働き方ニーズ」に合わないためです。
中小規模の専門病院(診療科が限定された救急病院など)
このタイプの病院は、ターゲット層を絞るのが難しいかもしれません。
ただ、絞るとすれば、
- 新卒層をターゲットにして、特定の分野で学べる病院を目指すのか?
- 働きやすさを重視して、子育て層をターゲットにするのか?
のどちらかですかね~
このあたりは、「病院機能」と「経営者の方針」から選択していくしかないですね。
回復期リハビリ・慢性期(療養)病院
このタイプの病院で、新卒層の採用は、ほぼ不可能です。
なぜなら、学べることがかなり限定されてしまい、看護師さんにとって、あまり大きな成長が見込めないからです。
つまり、「学び」というメリットが少ないということ。
なので、子育て層をメインターゲットにし、「働きやすさ」を追求していくしかありません。
病院として「どの層の働き方ニーズに、応えられるのか?」を見極める
ターゲット層を絞るときには、
「どの層の働き方ニーズに、うちの病院は対応できるのか?」
を考えることが大切です。
慢性期(療養)病院で、「最新医療が学べる環境」をつくるのは難しいですし、救急病院で「毎日定時退出、休みが多い、有給休暇が自由に使える」って職場は少ないでしょうから。
つまり、病院として、看護師さんの働き方ニーズに応えられないのに、その層をターゲットにしても採用効果は薄いってことです。
働き方ニーズが合わなければ、早期退職者が増え、離職率も上がりますし。
なので、応えられそうな「看護師の働き方ニーズ」に焦点を絞って、職場環境の整備(改善)を行うべきです。
狙うは、特定の分野での「NO.1」ってことです!!
職員の「働き方ニーズ」を無視した職場環境の整備に意味はない
職員採用や職員の定着率向上のため、職場環境の整備(改善)を行っている病院さんは多いと思いますが、はっきり言って、職員の「働き方ニーズ」を理解せず、職場環境の整備(改善)を行っても意味がありません。
なぜ、ここまではっきり言うのかというと、
うちの職場(法人)で、職員さんの声を聞かずに失敗した経験があるからです。
なお、うちの失敗談ではないですが、いくつか例をあげておきます。
- 学びを最優先していない「子育て層」の看護師さんに、外部などの研修参加を強制する
- 「新卒層」の看護師さんを採用するために「院内保育室」の整備を行う
- 「収入最優先」の看護師さんの夜勤回数を減らす(職員の負担軽減を目的に・・・)
つまり、職員のニーズを理解しないで、経営陣の勝手な固定観念で職場環境を整備(改善)しても効果は期待できないってことです。
なので、職場環境の整備(改善)を行う際は、まず、職員の「働き方ニーズ」をしっかり把握しましょう。
ちなみに、研修制度については、
「職員からの希望制(申出制)にして、その希望にあわせて、しっかりフォローできる体制を作っておくのが一番かもな~」
って思っています。(研修参加を強制したりしないで・・・)
職員ごとに、学びに対する価値観や成長欲求に違いがありますので。
すべての看護師に好かれる「最高の病院」は存在しない
看護師さんの「働き方ニーズ」が変化していくということは、誰にでもあてはまる「最高の病院(職場)」は、ほぼ存在しないということになります。
わかりやすく言うと、
「誰からも好かれようとすると、すべてが中途半端になって、結局、誰からも好かれなくなっちゃうよ~」
ってことです。
なので、「いい病院(職場)の定義は、職員によって違う!」ってことを理解し、
「誰のためのNo.1を目指すのか」
を決めたほうが効果的な採用ができると思います。
つまり、やみくもに、なんでもかんでもやるのではなく「何をやらないか」を決めるってことです。
職員さんの価値観も多様化していますし。
まとめ
ここで、「看護師さんの効果的な採用活動のポイント」についておさらいしておきます。
- 看護師の「働き方ニーズ」を把握(理解)する
- 「どの層の働き方ニーズに応えられるのか?」を考え、病院機能にあわせて採用のターゲット層を絞る
- 職場環境の整備を行う前に、看護師(職員)のニーズをしっかり聞く
- 誰からも好かれる(認められる)病院を目指すのを止め、特定のジャンルで「No.1」を目指す
「患者のニーズに応える」というのは、サービス業として共通の認識だと思いますが、これからどんどん人口減少が進み、人手不足が深刻化していくことを考えると「患者のニーズ」以上に「職員の働き方ニーズに応えること」が大切かもしれません。
医療・介護業界は、職員がいなければ、サービス自体の提供ができませんから。
そのために、「人間関係」と「給与」はもちろんのこと、その他の「付加価値」をどれだけ高められるかが、職員確保の大きな要素になっていくと思います。
ほんと、「職場環境の整備(向上)」って、ちょーーーー大切ですね。
なお、今回考えた「看護師さんの効果的な採用活動のポイント」をうちの病院にあてはめてみたら、結構いい感じでしたよ~(笑)
うちの場合は、「回復期・慢性期・在宅」をメインにサービスを行っているので、
「子育て層」の看護師さんがメインターゲットになり、働きやすさに重点をおいて、職場環境の整備を行うことが大切になります。
で、思いつくままに、現在行っている「子育て層の看護師さん」のための施策をあげてみました。
- 有給休暇取得率率「80~90%」
- 時間単位有給休暇制度
- 休み希望「毎月5日」
- 院内保育室完備
- 柔軟な勤務形態(日勤常勤、短時間パート、勤務日数の調整など)
- 育児休業取得率「100%」
- 出戻り歓迎(年間2~3人の実績あり)
効果の有無はわかりませんが、ありがたいことに、うちは「ママさん看護師」が多いです。
ただ、新卒の看護師さんは、ほぼ皆無です・・・
ってことで、うちは「子育てしながら働くなら、この病院でしょ!?」をひたすら目指します。
そして、ママさん看護師に働きやすさを実感してもらい、そのまま「やりがい層」まで移行してもらう作戦です。
どうですか、最高の作戦じゃないですか???(笑)
(病院機能的に、これしかないんですけどね・・・)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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