「看護師の仕事が、つまらなくなった・・・」
これは、ある看護部門の責任者(以後、「看護部長」といいます)の言葉です。
看護部を取りまとめる人(立場)からのこの発言は、当時、衝撃だったのを覚えています。
でも、この発言の意図(真相)を詳しく聞いてみると、
「あ~、確かにそうかも!!」
という強烈な納得感がありました。
また、「とても興味深い視点だな」とも感じました。
そこで今回、看護部長が語った「看護師の仕事がつまらなくなった理由」について、ご紹介したいと思います。
もし、
- 仕事がつまらない
- 仕事がつまらなくなった・・・
と感じているなら、自分の職場と照らし合わせながら読んでみてください。
仕事がつまらない理由がわかれば、少しだけでも「仕事を楽しくする方法」が見つかるかもしれませんので。
看護師の仕事がつまらなくなったのは「マニュアル化」が原因
まずは、この記事で伝えたいこと(結論)です。
「マニュアル化が進めば進むほど、仕事はつまらなくなる」
それでは、理由について紹介していきます。
仕事をマニュアル化し過ぎる「3つのデメリット」
どの組織でも、生産性の向上やサービスのバラつきをなくすため、マニュアル化を推進していると思いますが、
「マニュアル化は、メリットばかりでなくデメリットもある」
と看護部長は言います。
仕事をつまらなくする
マニュアル化された仕事とは、やることが決められた状態です。
そして、やることが決められた状態というのは「作業化された仕事」ってことであり、与えられた作業をひたすら、こなすだけになります。
結果、看護師本来の仕事(本質)である、
「この患者さんのために、何をしてあげられるか?」
を考えることから、どんどんかけ離れていき、仕事がつまらなくなります。
職員が「自分のアタマ」で考えなくなる
マニュアル化され過ぎた職場では、1日のスケジュールがすべてリスト化されてしまい、職員が自分のアタマで考える必要がなくなります。
例えば、
- 何時までオムツ交換
- 何時までに褥瘡の処置
- 何時までにお風呂に入れないといけない
というように、決められた仕事を決められた時間に行うだけの1日になってしまいます。
結果、
「この患者のために、何をしてあげられるか?」
を考える必要がなくなります。
また、普段から自分のアタマで考えることをしていない人は、想定外(マニュアルにない)の問題が起きたときに、自分で考え、判断することができなくなります。
つまり、「指示がないと動けなくなる」ってことです。
こういった職員さんが増えることは、組織の三大資産の1つ「人的資産」の低下を招くことになりますので、「自分のアタマで考える必要のない職場環境」というのは、マイナス面が大きいと思います。
職員のモチベーションが下がる(サービスの質が低下する)
本来は、サービスのバラつきをなくすための「マニュアル」ですが、マニュアル化し過ぎると、職員のモチベーション(やる気)が下がり、そして、サービスの質が低下します。
一般的に、
- やらされている仕事
- 自らやる仕事
では、パフォーマンスが全く違います。
工場のライン(流れ作業)のような仕事であれば、職員のモチベーションが生産力に大きな影響をおよぼすことは少ないのかもしれませんが、人と直接関わる仕事の場合、職員の対応がサービスの質を大きく左右します。
「おもしろくないな~」と思いながらする仕事は、相手に伝わりますし。
結果、マニュアル化し過ぎると、
「これをしてあげたい」から「これをやらないといけない」に変わってしまい、
サービスの質が低下します。
なお、看護師のモチベーションとは、
- 患者さんからの「ありがとう」
- 患者さんが、元気になっていく過程を見れること
であり、マニュアル化され過ぎた仕事だと、その嬉しさを感じづらくなってしまうのも問題だと看護部長は言います。
なので、
- 自分で考え「これをしてあげたい」と思って行動する
- 自らする行動により、責任感とモチベーションがあがる
- 患者さんとの関わりの中で、喜び(嬉しさ)をたくさん感じられるようになる
- 看護師の仕事がおもろしろくなる
というサイクル(職場環境)をつくりたいと言っていました。
「そんなの理想論でしょ!?」という人が多いかもしれませんが、
僕としては、
「そういう熱い温度(ビジョン)は、リーダーには必要だよな~」
と思います。
医療・介護業界は、「規程、マニュアル、指針」のオンパレード
次は、「なぜ、医療・介護業界は、マニュアルだらけの職場になるのか?」についてです。
医療・介護業界は、厚生労働省の政策でガチガチです。
なので、
- マニュアル
- 規程
- 指針
などの作成が細かく義務付けられています。
また、患者・利用者さんへのサービスは「診療報酬・介護報酬」として、すべてがリスト化され、その報酬(収入)を得るための要件が定められています。
例えば、
- 記録しなければならない項目
- 作成しないといけない書類
- 実施しないといけない会議(委員会)
- 研修の実施回数
- 患者さんやその家族への説明と同意(署名など)
- 病気ごとの出せる薬と出せない薬
- 利用者さんをお風呂に入れる回数
などなど、あげればキリがないっす・・・
つまり、行動すべてに「法的根拠」が存在するってことです。
なかには、「患者さんのためになっているのか?」と疑問に思う要件もあります。
ただ、これらすべての要件を満たせなければ、病院や介護施設は収入がなくなり、サービス提供することはできなくなります。(倒産するってことです)
結果、病院や介護施設の職員は、
- 施設基準
- 診療報酬
- 介護報酬
などの要件を満たすための仕事(作業)に追われて、ぜんぜん患者さんのことを考える(関わる)時間が取れなくなります。
いかにして時間内にすべての業務終わらせるかが目的になっちゃいますし。
つまり、看護部長がいう「看護師の仕事がつまらなくなった・・・」には、医療費を削減したいという国の政策も大いに関係しているのです。
毎朝が楽しみだった「看護師の仕事」
看護部長は、新人のときから看護師の仕事が大好きで、毎朝仕事に行くのが楽しみだったと言います。
理由としては、
「今日は、あの患者さんに何をしてあげよう?」
って、患者さん一人一人に対して、最良の看護を考えて仕事をすることができたから。
だから、毎日が楽しかった。
でも、マニュアル化が進んだ今は、
- 看護の自由度
- 患者さんと関わる時間
を失い、全員の患者さんに「平均点のサービス」をすることを求められる。
でも、「平均点のサービス」では、絶対に患者最適にはならない。
だって、患者一人一人、必要とされる看護・介護は違うんだから。
医療・介護業界で働く以上、国が定めた要件を満たすことは大切だけど、それだけが看護師の仕事になっちゃうと、ぜんぜんおもしろくない。
だから、日々忙しく働いている看護師の仕事の中に「自由という余白」をつくって、「これをしてあげたい」を増やしてあげたい。
これが、「看護師の仕事がつまらなくなった・・・」と発言した、看護部長の真意(想い)でした。
まとめ
ここで、看護部長がいう「看護師の仕事がつまらなくなった理由」をまとめておきます。
- 「診療報酬・介護報酬」という仕組みの中で、マニュアル化が進み過ぎた
- 「看護の自由度」と「患者に直接関わる時間」が少なくなった
- やらされる仕事が増え、「自分のアタマで考える自由(余白)」を失った
職員さんに働き続けたいと思ってもらえる職場環境をつくるには、「マニュアル化」と「自由(余白)」のバランスが大切かもしれません。
マニュアル化が全くされていない職場の場合、どうしていいか不安を感じるでしょうし。
また、すべてを決めてほしい(指示してほしい)という人がいることも考慮する必要があります。
このあたりは、職員さんの働き方のニーズと得手不得手を考慮しながら、職場環境を整備していく必要があるんでしょうね。
ちなみに、僕の場合は、仕組み化(マニュアル化)するまでは楽しいんですが、仕組み化したあとの運用が面倒なんですよね~
ほんと、ダメダメですね・・・(笑)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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