日本の人口は、なぜ減っているのか?【厚生労働省と内閣府の資料から】

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世界地図、疑問符、なぜ?

日本の人口は、2022年1月1日現在、1億2,322万人です。

日本の人口ピークは、2008年の1億2,808万人ですので、14年間で486万人減ったことになります。

 

国は、約40年後(2065年)の日本の人口を8,808万人と推計しており、これから、3,500万人以上が減少することになります。

3,500万人というと、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の総人口とほぼ同じです。(2020年現在)

 

人口が減ると、

  • 消費活動の減少
  • 労働力の減少
  • 企業の海外流出

などにより、国の税収が減りますので、日本の経済規模がどんどん縮小します。

結果、今までのような行政サービスを維持することも難しくなり、私たちの生活にも少なからず影響が出ます。

 

そこで、

「なぜ、人口が減っているのか?」

「改善はできないの?」

と疑問に思ったので、厚生労働省と内閣府の資料から「日本の人口減少の原因」について考えたことを、備忘録的にまとめておきます。

外国人の受入れについては、この記事では考えていません。

出生数が少ないのか?死亡数が多いのか?

人口が減るってことは、単純に考えれば、出生数より死亡数が多いってことです。

なので、まずは、出生数と死亡数の年間推移を見てみます。

 

【日本の出生数・死亡数の年間推移(2000~2021年)】

日本の出生数・死亡数の年間推移(2000~2021年)

 

予想どおりですね。

2007年から死亡数が、出生数を上回り続けています。

そして、どんどん出生数が減り、どんどん死亡数が増え、その差がどんどん広がっています。(人口減少が加速しているってことです)

 

とすると、人口減少を防ぐには、

  • 出生数を増やす
  • 死亡数を減らす
  • 両方を行う(出生数を増やし、死亡数を減らす)

しかないということになります。

なぜ、日本の出生数は減っているのか?【結論:結婚する人が減っているから】

まずは、出生数について見ていきます。

合計特殊出生率 2020年で「1.33」

1人の女性が生涯に産む子供の数の平均を表す指標として、「合計特殊出生率」というのがあります。

出生数が減っているということは、この合計特殊出生率が減っているということです。

 

【合計特殊出生率の年間推移(1947~2020年)】

合計特殊出生率の年間推移(1947~2020年)

出典:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」

 

予想どおり、激減していますね。

 

合計特殊出生率の最大値は、団塊の世代と言われる1947年の「4.54」です。

つまり、1人の女性が生涯で、平均4.54人の子どもを産んでいるということです。

 

また、過去最高の出生数(2,696,638人)となった1949年で「4.32」です。

その後、多少上がった年はありますが、全体としては、2005年の「1.26(最低値)」まで下がり続けています。

そして、2020年現在は「1.33」となっています。

 

人口維持に必要な水準は、合計特殊出生率「2.08」とされてますので、人口を維持することはかなり難しいことがわかります。

完結出生児数は、1972から2015年まで、ほぼ変わっていない

夫婦の最終的な平均出生子供数を表す指標として、完結出生児数というのがあります。

わかりやすく言うと、「結婚した夫婦から、平均で何人の子どもが生まれているのか?」ってことです。

合計特殊出生数の下がり方を見れば、当然、完結出生児数も大きく下がっていると思いますよね。

でも、違うんです。

 

【完結出生児数の推移(1940~2015年)】

完結出生児数の推移(1940~2015年)

出典:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」

 

完結出生児数は、1975年から2005年の30年間は、ほぼ変わっていません。

常に、2人以上をキープしています。(2005年で、2.09人です)

 

ということは、2005年までは、結婚した夫婦は、2人以上の子どもを出産していることになります。

その後、緩やかに減少してますが、2015年でも「2人の子どもを出産している夫婦」が多いことがわかります。

2021年に実施された、国立社会保障・人口問題研究所「結婚と出産に関する全国調査」では、完結出生児数は「1.90」となっています

結婚件数は減り続けている

結婚した夫婦からの出生数である「完結出生児数」が、ほぼ変わっていないということは、「結婚件数が減っているのでは?」って思いますよね。

結果は、そのとおりです。

激減です。

 

【婚姻・離婚・再婚件数の年間推移(1955~2021年)】

婚姻・離婚・再婚件数の推移(内閣府令和4年度男女共同参画白書)

出典:内閣府「令和4年版 男女共同参画白書」

 

婚姻件数は、2021年で「51.4万件」です。

1970年のピーク時「102.9万円」の約半数です。

 

ちなみに、日本は、他の国に比べて、婚外出生が少ないため、婚外子割合は2020年で「2.4%」です。

つまり、出生する子どもの約98%は、婚姻関係にある男女から産まれているってことです。(アメリカの婚外子割合は、約40%です)

 

なので、結婚する人が減るってことは、直接的に、出生数に影響が出ます。

婚外子とは、法的に婚姻関係にない男女から生まれた子供のことです。

 

【各国の婚外子割合】

参考までに。(2008年のデータです)

  • スウェーデン 54.7%
  • フランス 52.6%
  • デンマーク 46.2%
  • 英国 43.7%
  • オランダ 41.2%
  • アメリカ 40.6%
  • アイルランド 32.7%
  • ドイツ 32.1%
  • スペイン 31.7%
  • カナダ 27.3%
  • イタリア 17.7%

出典:厚生労働省「世界各国の婚外子割合」

50歳時の未婚割合(生涯未婚率)は、上がり続けている

50歳の時点で一度も結婚したことがない人の割合を表す指標として、「50歳時の未婚割合(生涯未婚率)」というのがあります。

結婚件数が減っていますので、想像に難しくなく「50歳時の未婚割合(生涯未婚率)」は上がり続けています。

 

【50歳時の未婚割合の年間推移(1970~2020年)】

50歳時の未婚割合(生涯未婚率)の推移(令和4年内閣府)

出典:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」

 

1970年では、男性「1.7%」、女性「3.3%」ですから、ほとんどの人が結婚していたことになります。

それが、上昇を続け、2020年で男性「28.3%」、女性「17.8%」です。

男性の約3割、女性の約2割が結婚しなくなりました。

 

50歳時の未婚割合(生涯未婚率)の上昇は、結婚件数同様に、直接的に、出生数に影響が出ます。

つまり、合計特殊出生率の低下につながります。

 

また、初婚年齢も男女ともに上がり続けています。

【平均初婚年齢の年間推移(1975~2020年)】

平均初婚年齢の年間推移(1975~2020年)

出典:厚生労働省「人口動態調査(平均初婚年齢の推移)」を参考に作成

出生数・合計特殊出生率・完結出生児数等比較表

パッと見でわかるように、紹介した各指標を比較表にしておきます。

出生数・合計特殊出生率・完結出生児数等比較表

 

比較表から出生数について、まとめておくと、

  • 結婚した夫婦の出生児数は、長い間2.0人を維持している
  • なのに、合計特殊出生率が下がり続けているということは、「結婚しない人」が増えたということ
  • 結果、日本の出生数の減少は「生涯未婚率の上昇」が原因

って感じです。

 

また、完結出生児数が低下している原因としては、もちろん、経済的な問題もあるかと思いますが、「平均初婚年齢」の上昇も大きく影響していると思います。

妊娠率は、年齢の影響をすごく受けます。

そのため、「初婚年齢が上がる」ということは、「妊娠率が下がる」ということを意味します。

当然、出生児数に影響が出ます。

 

これは、「不妊治療をされる方」が多いとの報道からも、なんとなく感じとれますね。

実際、僕のまわりでも、不妊治療をする人が増えています。

 

ちなみに、国立社会保障・人口問題研究所の2021年調査(結婚と出産に関する全国調査)では、次のような結果が出ています。

【夫婦が理想の数の子どもを持たない理由】

  • 子育てや教育にお金がかかりすぎるから 52.6%
  • 高年齢で生むのはいやだから 40.4%
  • ほしいけれどもできないから 23.9%

 

【不妊についての心配と検査・治療経験】

  • 不妊について心配したことがある 39.2%(前回調査35.0%)
  • 不妊検査または治療経験がある 22.7%(前回調査18.2%)

なぜ、日本の死亡数は増えているのか?【結論:高齢者が増えているから】

次に、死亡数について見ていきます。

高齢になるほど、死亡率は高くなる

厚生労働省は、毎年、年齢ごとの死亡率を調査(発表)しています。

もちろん、言うまでもありませんが、僕たちは、年齢が上がれば上がるほど、死亡率が高くなります。

こんな感じです。

死亡率(人口10万人対)2021年 厚生労働省調査

出典:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より作成

 

死亡率が一番低いのは、5~9歳で、一番高いのは、100歳以上となります。

その差、約6,015倍です。

つまり、高齢者が増えるということは、「=死亡者が増える」ということになります。

高齢者は増え続けている

国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人のことを高齢者としています。

日本における65歳以上の人(いわゆる、高齢者)は、次のとおり増え続けています。

 

【日本の総人口と人口構造の推移】

日本の人口構造(内閣府)

出典:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」

 

わかりやすく、65歳以上の人口だけで、グラフにしておきます。

65歳以上の人口推移(1950~2060年)

2021~2060年は、推計値となっています

平均寿命と健康寿命は延びている

日本人の平均寿命と健康寿命は、次のようになっています。

 

【平均寿命と健康寿命の推移(2001~2019年)】

平均寿命と健康寿命の推移(厚生労働省)

出典:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」

 

「平均寿命が延びてるなら、死亡数は減少するのでは!?」って思いますよね?

でも、逆に、死亡数は増え続けているので、もはや、そのレベルを超えて高齢者が増えているんだと思います。

死亡率(年齢調整死亡率)は下がり続けている

死亡数を人口で除した通常の死亡率(粗死亡率)では、年齢構成に差がある場合、高齢者の多い年では高くなり、若年者の多い年では低くなる傾向があります。

このような年齢構成の異なる年度間で死亡状況の比較ができるよう年齢構成を調整した指標に「年齢調整死亡率(人口10万対)」というのがあります。

この年齢調整死亡率を用いることによって、年齢構成の異なる集団について、年齢構成の相違を気にすることなく、より正確に年次比較をすることができます。

 

つまり、生活環境の改善、食生活・栄養状態の改善、医療技術の進歩等により、

「純粋に死亡率が下がっているのか、上がっているのか?」

がわかるってことです。

 

この年齢調整死亡率は、次のように推移しています。

 

【年齢調整死亡率(人口10万人対)の推移】

年齢調整死亡率(人口10万人対)の推移

 

年齢調整死亡率は、下がり続けているので、本来であれば、死亡数が減少してもよさそうなのに、逆に、増え続けています。

ということは、平均寿命と同様に、それ以上のスピードで高齢者が増え続けているんだと思います。

 

ちなみに、死亡数と比較すると、こんな感じになります。

【年齢調整死亡率と死亡数の比較(1960~2015年)】

年齢調整死亡率と死亡数の比較

 

完全に、反比例しちゃってます。

日本の人口減少は止まらない!?

日本の人口減少を止めるには、出生数を上げるしかないわけですが、今後、出生数が急激に増えることはありえません。

というのも、厚生労働省は、15~49歳までの女性のデータを用いて、合計特殊出生率を算出しているのですが、そもそものその世代の女性が激減しているからです。

つまり、出生数に関係する年齢層の女性が少ないってことです。

出生数が特に多い世代は、25~39歳です。

 

こんな感じです。

【人口ピラミッド 1970年】

1970 人口ピラミッド

 

【人口ピラミッド 2020年】

2020 人口ピラミッド

 

【人口ピラミッド 2060年(推計)】

2060 人口ピラミッド

 

2060年の推計は別としても、少なくとも今後20~25年間は、出生数に関係する年齢層の女性が増えることありませんので、日本の人口減少を止めることは難しいと思います。

 

もちろん、10人兄弟のような大家族があたりまえになれば、日本の人口減少を止められるかもしれませんが、現実的ではないですよね。

「結婚していなくても、子どもを持ってもかまわない」という人は増加

国立社会保障・人口問題研究所では、「結婚・家族に関する意識」について調査しています。

その中の1つに、「結婚していなくても、子どもを持ってもかまわない」という設問があるんですが、賛成の割合が増えています。

特に、女性に関しては、賛成が、反対を上回るほどです。

 

【「結婚していなくても、子どもを持ってもかまわない」についての意識調査】

年次 男性 女性
未婚者 未婚者 既婚者
賛成 反対 賛成 反対 賛成 反対
2010 31.6% 64.7% 33.7% 62.9% 39.1% 57.9%
2015 32.3% 64.9% 34.6% 63.7% 35.3% 60.6%
2021 45.2% 53.6% 51.2% 47.2% 49.7% 47.5%

 

この調査結果をみる限り、「結婚はしたくないけど、子どもは欲しい」という女性が一定数いるってことです。

少子化対策という意味では、婚外子もその対策の1つの要素になるかと思いますが、現在、日本における、ひとり親家庭の貧困率は「50.8%」となっています。

 

当然ですが、婚外子が増加すれば、貧困率の上昇は避けては通れません。

もし、婚外子を少子化対策の1つの施策とするなら、社会保障制度の大幅な見直しも同時に進める必要がありそうです。

いずれ結婚するつもりの減少、一生結婚するつもりはないの増加【未婚者の生涯の結婚意思】

国立社会保障・人口問題研究所が、18~34歳の未婚者を対象に行った「結婚と出産に関する全国調査(2021年実施)」によると、

  • 「いずれ結婚するつもり」の減少
  • 「一生結婚するつもりはない」の増加

が続いています。

 

まず、「いずれ結婚するつもり」ですが、1982年では、男性「95.9%」、女性「94.2%」だったものが、2021年では、男性「81.4%」、女性「84.3%」まで減っています。

【未婚者の生涯の結婚意思調査(1982~2021年)】

未婚者の生涯の結婚意思(いずれ結婚するつもり)

 

次に、「一生結婚するつもりはない」ですが、1982年では、男性「2.3%」、女性「4.1%」だったものが、2021年では、男性「17.3%」、女性「14.6%」まで増えています。

かなりの増加です。

【未婚者の生涯の結婚意思調査(1982~2021年)】

未婚者の生涯の結婚意思(一生結婚するつもりはない)

 

若年層における価値観の変化を感じますよね。

まとめ

ここで、「日本の人口減少の原因」について、まとめておきます。

  • 結婚する人が減ったから出生数が激減した(50歳時の未婚割合の上昇)
  • 高齢者の増加により、死亡数が増えた

 

平均寿命が延び、年齢調整死亡率が下がり続けていることを思うと、人口減少の対策として、死亡数を減らすというのは難しいです。

そもそも、その対策は、医療の発展や介護予防などにより、ある程度、行われているわけですし。

 

となると、出生数を増やすしか、人口減少の対策はないということです。

 

とはいえ、「出生数に関係する年齢層の女性」が激減し、ライフスタイルを含めた、若年層の価値観の変化を考えると、人口減少を止めることは難しいです。

もちろん、「結婚したいのに、出会いがなくてできない」って人同士を結婚できるようにマッチングしたり、子育てに対する社会保障を厚くして、経済的な理由で子どもが生めないという人をなくし、人口減少を緩やかにすることは大切だと思いますが。

 

「じゃあどうするの?」ってことになるんですけど、僕としては、人口が減少することを前提に人生設計をするほうが健全だよねって思います。

日本の人口が減るっていうのは、揺るがない事実なんで。

 

ちなみに、次の表を見ちゃうと、「そもそも日本の人口って、逆に増えすぎただけなんじゃ!?」って思えなくもないのですが・・・

長期的な我が国の人口推移(厚生労働省)

出典:厚生労働省「平成27年版厚生労働白書 -人口減少社会を考える-」

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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