2017年(平成29年)に公認心理師法が施行され、徐々に診療報酬の算定要件に公認心理師の実施や配置が増えてきています。
ただ、まだまだ算定できる項目が少なく、公認心理師が活躍できる場所(業務)は限定されています。
医療機関としては、診療報酬につながらない職種を抱える余裕はないため、公認心理師を多数採用をしているところは少ないと思います。
うちも同じです。
でも、「もっと、公認心理師さんに活躍してもらうことってできないのかな?」って思うんです。
そこで、
「公認心理師が関与できる保険診療にかかる業務」
について調べてみましたので、まとめておきます。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 公認心理師として働いている
- 医療機関で、施設基準等の管理を担当している
- 精神科の医療機関で働いている
公認心理師の業務内容
公認心理師法では、公認心理師の業務を、次のように定義しています。
(定義)
第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
わかりやすく言うと、次の3つです。
- 心理状態の分析
- 心理に関する相談、助言、指導、援助
- 心の健康教育
公認心理師として活躍いただくには、これらの業務をもとに、医療機関での役割を考えることになります。
公認心理師が関与できる診療報酬【令和4年4月改正時点】
次の3つの項目にわけて紹介します。
- 臨床心理・神経心理検査
- 公認心理師が実施することにより算定できるもの
- 施設基準に「公認心理師」の配置があるもの
臨床心理・神経心理検査
次の検査を実施した場合、検査料が算定できます。
公認心理師の実施じゃなくても、検査料は算定できますが、公認心理師がやっていることが多いと思います。
- D283 発達及び知能検査
1 操作が容易なもの 80点
2 操作が複雑なもの 280点
3 操作と処理が極めて複雑なもの 450点 - D284 人格検査
1 操作が容易なもの 80点
2 操作が複雑なもの 280点
3 操作と処理が極めて複雑なもの 450点 - D285 認知機能検査その他の心理検査
1 操作が容易なもの
イ 簡易なもの 80点
ロ その他のもの 80点
2 操作が複雑なもの 280点
3 操作と処理が極めて複雑なもの 450点
診療報酬ごとの具体的な検査については、診療報酬点数表の通知「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和4年3月4日保医発0304第1号)」に記載されています。
公認心理師が実施することにより算定できるもの
公認心理師が実施することで、算定できる診療報酬です。
- I005 入院集団精神療法 100点(週2回)
- I006 通院集団精神療法 75点(週2回)
- I006-2 依存症集団療法
1 薬物依存症の場合 340点(週1回)
2 ギャンブル依存症の場合 300点(週1回)
3 アルコール依存症の場合 300点(週1回) - I008 入院生活技能訓練
1 入院の日から起算して6月以内の期間に行った場合 100点(週1回)
2 入院の日から起算して6月以内の期間に行った場合 75点(週1回) - I008-2 精神科ショート・ケア
1 小規模なもの 275点(1日につき)
2 大規模なもの 330点(1日につき) - I009 精神科デイ・ケア
1 小規模なもの 590点(1日につき)
2 大規模なもの 700点(1日につき) - I010 精神科ナイト・ケア 540点(1日につき)
- 010-2 精神科デイ・ナイト・ケア 1,000点(1日につき)
- I015 重度認知症患者デイ・ケア 1,040点(1日につき)
- B001 小児特定疾患カウンセリング料
ロ 公認心理師による場合 200点(月2回) - B001_23 がん患者指導管理料 200点
- B001-9 療養・就労両立支援指導料の相談支援加算 50点
施設基準に「公認心理師」の人員配置があるもの
病棟や部門、各チームなどに、公認心理師の配置要件があるものです。
- A311-2 精神科急性期治療病棟入院料
- A311-4 児童・思春期精神科入院医療管理料
- A312 精神療養病棟入院料
- A314 認知症治療病棟入院料
- A318 地域移行機能強化病棟入院料
- A230-4 精神科リエゾンチーム加算
- A231-3 依存症入院医療管理加算
- A231-4 摂食障害入院医療管理加算
- A234-4 重症患者初期支援充実加算
- A303 総合周産期特定集中治療室管理料の成育連携支援加算
- B001_33 生殖補助医療管理料
- B005-10 ハイリスク妊産婦連携指導料1・2
- I002 通院・在宅精神療法の児童思春期精神科専門管理加算
- I002 通院・在宅精神療法の療養生活環境整備指導加算
- I002-3 救急患者精神科継続支援料
公認心理師が関与できる保険診療にかかる業務一覧(エクセル)
「公認心理師が関与できる診療報酬」を、エクセルファイルにまとめています。
使っていただけそうなら、ご活用ください。
こんな表です。
【無料ダウンロード(エクセルファイル)】
⇒kouninnsinnrisigyoumuitiran2022
公認心理師は、どのくらい診療報酬に関与できているのか?
令和元年(2019年)に、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターが行った調査によると、公認心理師は診療報酬の算定にほとんど関与できていません。
【心理職の関与する診療報酬(外来)】
出典:厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業「公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査」
【心理職の関与する診療報酬(入院)】
出典:厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業「公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査」
⼼理職が関与する診療報酬は、最も多い「精神科デイケア」「精神科ショートケア」でも27.6%〜33.5%です。
次いで「通院・在宅精神療法 児童思春期精神科専⾨管理加算」の22.9%となっています。
外来、⼊院のどちらにおいても、⼼理職が診療報酬に関してほとんど関与できていないことがわかります。
令和4年度診療報酬改定で変更となった「公認心理師」が関与する業務
令和4年度の改定では、保険診療における公認心理師の業務に、次の5つが追加となっています。
- A234-4 重症患者初期支援充実加算
- A303 総合周産期特定集中治療室管理料の成育連携支援加算
- B001_23 がん患者指導管理料
- B001-9 療養・就労両立支援指導料の相談支援加算
- B001_33 生殖補助医療管理料
少しづつですが、公認心理師さんの活躍の場は、広がっています。
まとめ
令和元年(2019年)の国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターによる調査では、⼼理職は診療報酬に関してほとんど関与できていないとなっていましたが、診療報酬の改定により業務範囲が広がっていくことで、公認心理師にもっと活躍してもらうことができると思います。
ただ、いつどう変わるかわからない診療報酬の改定を待っているだけだと、もったいないので、
「現在の制度の中で、公認心理師さんにどう活躍してもらうか?」
を考えていきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【あわせて読みたい】
コメント