精神疾患を患っている人は、年々増加しており、2017年時点で約420万人となっています。
また、患者数の増加とともに、傷病手当金の受給者も増えています。
実際、うちの病院でも、うつ病などの精神疾患が原因で休職する職員さんが結構います。
そこで、この記事では、「精神及び行動の障害(うつ病など)」による傷病手当金の
- 受給割合と件数の推移
- どの職種の受給者が多いのか?
- 受給期間と受給金額
などについて、調べてみましたので、まとめておきます。
「体調が悪くて、仕事に行けない」
「傷病手当金ってもらえるの?」
って人に、読んでもらえると嬉しいです。
精神及び行動の障害による傷病手当金の受給者は増え続けている(令和4年度 56,341件)
「精神及び行動の障害」による傷病手当金の受給状況については、次のようになっています。
- 精神疾患患者は、2002年から2017年の15年で「160.9万人」増加
- 傷病手当金をもらった人の「35.2%」は、精神及び行動の障害が原因
- 精神及び行動の障害による受給者は、「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」の就業者が多い
- 傷病手当金は、1件あたり、約20万円の支給(精神及び行動の障害の場合)
- 精神及び行動の障害による傷病手当金の平均支給日数は「214日」
- 退職後に傷病手当金を受給した割合「10.7%」
それでは、1つずつ説明していきます。
精神疾患患者は、2002年から2017年の15年で「160.9万人」増加
厚生労働省の調査によると、2017年の精神疾患の患者は「約420万人」で、2002年から「約160.9万人」増えています。
こんな感じです。
【精神疾患を有する患者の推移】
出典:厚生労働省「精神医療について」
外来患者における疾病別では、
- 認知症(血管性など) 11.4万人
- 認知症(アルツハイマー病) 51.3万人
- 統合失調症等 63.9万人
- 気分(感情)障害 124.6万人
- 神経症性障害等 82.8万人
- 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 6.4万人
- その他 31.4万人
- てんかん 21.1万人
となっており、躁うつ病を含む「気分(感情)障害」が一番多くなっています。
【精神疾患を有する外来患者数の推移】
出典:厚生労働省「精神医療について」
一方、入院患者における疾病別では、
- 認知症(血管性など) 2.8万人
- 認知症(アルツハイマー病) 4.9万人
- 統合失調症等 15.4万人
- 気分(感情)障害 3.0万人
- 神経症性障害等 0.6万人
- 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 1.3万人
- その他 1.6万人
- てんかん 0.7万人
となっており、「統合失調症等」が一番多くなっています。
【精神疾患を有する入院患者数の推移】
出典:厚生労働省「精神医療について」
傷病手当金受給者の「35.2%」は、精神及び行動の障害が原因
全国健康保険協会の現金給付受給者状況調査(令和4年度)によると、新型コロナウイルス感染症(特殊目的用コード)を除く、傷病手当金の申請「159,836件」のうち「精神及び行動の障害」によるものは「56,341件」と「約35.2%」の割合になっています。
もちろん、「精神及び行動の障害」による受給は、ダントツの1位です。
こんな感じです。
また、この割合は、件数とともに増え続けています。
このとおり。
【2013~2022年の推移】
一覧にすると、こんな感じです
【傷病手当金「精神及び行動の障害」の件数・割合一覧】
年 | 割合 | 件数 |
2013年 | 25.7% | 22,158 |
2014年 | 26.5% | 23,302 |
2015年 | 27.5% | 24,051 |
2016年 | 27.6% | 24,315 |
2017年 | 28.6% | 26,622 |
2018年 | 29.1% | 30,932 |
2019年 | 31.3% | 35,849 |
2020年 | 33.0% | 42,712 |
2021年 | 36.9% | 51,054 |
2022年 | 35.2% | 56,341 |
直近9年間(2013~2022年)では、構成割合が「25.7%」から「35.2%」へ増え、件数も「22,158件」から「56,341件」となっています。(2倍以上の増加です)
次に、1995年から2022年の推移を見てみます。
【1995~2022年の推移】
構成割合が、「4.5%」から「35.2%」へ増えています。
件数も増加していることを思うと、「精神及び行動の障害」による受給者が、すごい勢いで増えていることがわかります。
精神及び行動の障害による受給者は、「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」の就業者が多い
「精神及び行動の障害」による傷病手当金の受給者を、業態別で見てみると、
- 医療業・保健衛生 10.1%
- 社会保険・社会福祉・介護事業 14.9%
で、ダントツの割合となっています。
こんな感じです。
この結果について、僕は、「2つの考え方があるな~」と思っていて、
1つは、「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」は、精神的負担が大きく、大変な仕事だから、精神疾患で休職などをする人が多い。
2つ目は、職種や業態的に、傷病手当金の利用がしやすいってことです。
具体的には、
- 傷病手当金の制度案内がされている
- シフト勤務の人が多いため、勤務調整がしやすい(人材の確保がされている場合)
- 医師の診断書がもらいやすい
みたいな感じです。
ちなみに、「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」の受給件数もどんどん増えています。
こんな感じです。
直近9年間(2013年から2022年)で、
- 医療業・保健衛生 2.3倍
- 社会保険・社会福祉・介護事業 3.0倍
となっています。
傷病手当金は、1件あたり、約20万円の支給(精神及び行動の障害の場合)
令和4年度における、「精神及び行動の障害」による傷病手当金は、
- 件数 56,341件
- 総日数 1,975,083日
- 総金額 11,462,093,206円(約114億円)
となっています。
なので、
- 1件あたりの平均日数は、35.1日
- 1件あたりの平均金額(受給額)は、203,441円
となります。
もちろん、同じ人が、継続的に申請することもあるので、1人あたりの受給総額とは違いますが、参考までに。
ちなみに、直近9年間(2013年から2022年)の推移は、次のとおりです。
毎年、ほぼ変わってないですね。
精神及び行動の障害による傷病手当金の平均支給日数は「214日」
傷病手当金の平均支給日数は、次のようになっています。
出典:全国健康保険協会「令和4年度 現金給付受給者状況調査報告」
平均支給日数は、83.96日です。
1年(365日)以上、支給を受けている人も結構いますね。
傷病別では、精神及び行動の障害が「214.6日」で一番長くなっています。
こんな感じです。
たとえば、月額給与25万円の人の場合、傷病手当金の1日あたりの支給額は、5,780円(概算)になります。
その人が精神疾患を患い、仕事を平均的な日数(214日)休んだとすると、
5,780円 × 214日 = 1,236,920円(傷病手当金の支給合計額)
となります。
傷病手当金の支給額および申請方法について、詳しくは、こちらの記事を。
退職後に傷病手当金を受給した割合「10.7%」
令和4年度における傷病手当金の支給件数は、合計で「311,099件」です。
そのうちの「33,343件」が、仕事を辞めた後(健康保険の資格喪失後)に傷病手当金をもらっています。
割合としては、「10.7%」です。
傷病別では、精神及び行動の障害がダントツで、全体の「62.9%」となっています。
こんな感じです。
ダントツというより、退職後の傷病手当金の受給は、ほぼ「精神及び行動の障害」って感じですね。
そういう意味では、「精神及び行動の障害」は、比較的、職場復帰しづらい傷病ということなんだと思います。
ちなみに、30日以上、退職後も傷病手当金をもらう場合は、失業等給付(失業保険)の受給期間延長手続きをしておきましょう。
受給期間延長申請をしておかないと、傷病手当金の受給期間が長くなった場合、失業保険が受給できなくなる場合がありますので。
【関連記事】
退職後の傷病手当金のもらい方と失業保険の受給期間延長申請のしかたについて、こちらの記事で詳しく説明しています。
⇒退職後に傷病手当金をもらうには【3つの支給条件、支給額早見表、申請方法】
⇒傷病手当金をもらった後に、失業保険をもらうために【受給期間延長申請】
まとめ
傷病手当金は、業務に起因する疾病やケガについては、利用(受給)できません。
とはいえ、職種・業態などにより割合にバラツキがあることを思うと、少なからず仕事の影響があるんだと思います。
なので、もし、仕事に疲れていて、
- 眠れない
- 食欲がない
- 朝、起きられない
- 仕事に行こうと思うと、苦しくなる
って場合は、頑張りすぎず、仕事を休んで、傷病手当金をもらってください。
危険信号(精神的な)ですので。
みんなもらってますし。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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