退職後に傷病手当金をもらうには【3つの支給条件、支給額早見表、申請方法】

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デスクで書類(申請書)を書いている男性

病気やケガで、仕事を4日以上休んだときに支給される「傷病手当金」ですが、仕事を辞めたあとも継続して受け取ることができます。

ただし、条件(要件)があります。

それは、次の3つです。

  1. 健康保険被保険者の資格を喪失した日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること
  2. 健康保険の資格喪失時に傷病手当金を受給している、または支給条件を満たしていること
  3. 退職日に労務不能で、出勤していないこと

 

これだけだと、ちょっと、わかりづらいですよね。

 

そこで、この記事では、

「退職後も継続して傷病手当金をもらうための条件(要件)」

について、わかりやすくまとめておきます。

 

「体調不良(精神疾患を含む)で仕事を辞めた、または辞めようと思っている」

という人は、チェックしてみてください。

健康保険被保険者の資格を喪失した日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること

1つ目の要件は、わかりやすくいうと、

「退職日までに、継続して、1年以上の健康保険の被保険者期間があること」

です。

 

ポイントは、「継続して」の部分です。

「継続して」ということなので、1日でも被保険者でない期間がある場合、要件(条件)を満たせません。

つまり、「連続した1年間以上の被保険者期間」が必要ってことです。

 

連続した1年間以上の被保険者期間については、転職などにより会社(職場)が違ってもOKですし、それこそ、保険者が違ってもOKです。

たとえば、前職の保険者が「健保組合」で、現在の職場の保険者が「健康保険協会(協会けんぽ)」という場合でもOKってことです。

なので、入職後、体調不良により、短期間(1年未満)で退職になった場合でも、前職の被保険者期間と通算して、1年以上の被保険者期間があれば、退職後も傷病手当金をもらえます。

 

ただし、次の期間は、「1年以上の健康保険(社会保険)の被保険者期間」から除かれます。

  • 任意継続被保険者
  • 国民健康保険の被保険者

 

【継続して1年以上の被保険者期間の考え方】

退職後の傷病手当金(退職日前1年間の被保険者期間のイメージ)

出典:全国健康保険協会「協会けんぽGUIDEBOOK補足説明」

健康保険の資格喪失時に傷病手当金を受給している、または支給条件を満たしていること

傷病手当金の支給条件は、次の5つです。

  1. 社会保険の加入者(被保険者)であること
  2. 業務外での病気やケガのため休んでいること
  3. 仕事に就くことができないこと(働くことができないこと)
  4. 連続して3日間以上働くことができなかったこと
  5. 休んでいる期間について給料をもらっていないこと

 

支給条件を満たしていれば、在職中に傷病手当金の申請(受給)をしていなかったとしても、退職後に申請することで、傷病手当金をもらうことができます。(もちろん、上記、5つの支給条件を含むすべての支給条件を満たす場合です)

 

それでは、1つずつ詳しく説明していきます。

社会保険の加入者(被保険者)であること

傷病手当金は、社会保険(健康保険)の制度であるため、社会保険に加入していない人は支給の対象となりません。

なので、支給対象となるのは、次のような人です。

  • 会社員(正社員)
  • パート、アルバイト(社会保険に加入している場合)
正社員でなくても、その会社の社会保険に加入していれば、傷病手当金は支給されます。

 

逆に「対象にならない人」は、

  • 国民健康保険の加入者(自営業の人など)
  • 家族等の扶養に入っている人

などとなります。

業務外での病気やケガのため休んでいること

業務外の病気やケガであれば、原則、すべての病気(ケガ)が傷病手当金の支給対象となります。

記憶の範囲ですが、僕が手続きさせてもらった「傷病名」をいくつか紹介します。

  • うつ病
  • 自律神経障害
  • 適応障害
  • がん
  • 関節の炎症(膝や手首)
  • 半月板損傷
  • 流行性結膜炎
  • 腱鞘炎
  • 骨折
  • 脊髄損傷
  • つわり
  • 妊娠悪阻
  • 切迫流産
  • 切迫早産
  • 痛風
  • 腰椎椎間板ヘルニア

などなど。

仕事中の事故や仕事が原因の病気で、仕事を休んでいる場合は、傷病手当金の支給対象となりません。ただ、その代わりに、傷病手当金よりも給付額の多い「労災保険による休業補償」があります。

 

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仕事に就くことができないこと(働くことができないこと)

「働くことができない」かどうかの判断は、医師が行います。

 

なので、病院などを受診し、

「その病気やケガが原因で働くことができない(労務不能)という診断」

を医師にしてもらう必要があります。

「あー、これは働けないな~」という自己判断で仕事を休んだ場合は、傷病手当金は支給されません。

 

ちなみに、退職後も傷病手当金をもらうには、退職前の健康保険被保険者期間中と同一の病気やケガであることが条件です。

そして、その同一の病気やケガで、資格喪失後も引き続き療養のため労務不能でなければなりません。

なので、退職後の任意継続被保険者である期間中に発生した病気やケガについては、傷病手当金は支給されません。

連続して3日間以上働くことができなかったこと

傷病手当金は、休み始めてから「4日目以降」について支給されます。

最初の3日間(連続であること)は、待期期間と呼ばれ、傷病手当金の支給はありません。

 

傷病手当金(待機3日間の考え方)

出典:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」

3日間の待期期間については、土日・祝日を含みます。

 

たとえば、あなたが金曜日にケガをした場合、

  • 医師が、ケガをした金曜日から労務不能と診断
  • 「金・土・日曜日」の3日間が待期期間
  • 月曜日(4日目)から傷病手当金が支給

ってことになります。

 

退職後に傷病手当金をもらうには、退職日の前日までに、連続した3日間の待期期間が完成している必要があります。

 

【退職後の傷病手当金における待期期間の考え方】

退職後の傷病手当金(待期期間の考え方)

出典:全国健康保険協会「傷病手当金について」

休んでいる期間について給料をもらっていないこと

傷病手当金が支給される4日目以降について、給与の支払いがある場合は、傷病手当金は支給されません。(支給額によっては、減額調整となります)

ですので、

「有給休暇を取得した日は、会社から給与が支払われるため、その日については傷病手当金は支給されない」

ってことになります。

3日間の待期期間は、有給休暇を使っても問題ありません。(待期が完成します)

 

なお、退職後の支給でなければ、健康保険の被保険者期間は支給条件に入っていないため、入職してすぐに病気やケガで働けなくなった場合でも「傷病手当金」は支給されます。

つまり、

「入職日の朝に自宅で転倒して労務不能となった場合は、傷病手当金が支給される」

ってことです。(事業主と相談が必要そうですが・・・)

退職日に労務不能で、出勤していないこと

退職後も傷病手当金をもらうには、退職日が労務不能で、仕事を休んでいなければなりません。

たとえ、退職日の前日まで、仕事を休んでいたとしても、退職日に出勤してしまっては、傷病手当金は支給されません。

退職にあたり、引継ぎを含めた仕事の調整があるかもしれませんが、出勤(勤務)はしないようにしましょう。

退職日に有給休暇をつかって、休むことは問題ありません。

 

【傷病手当金の退職日の考え方】

退職後の傷病手当金(退職日も休んでいることが条件)

出典:全国健康保険協会「協会けんぽGUIDEBOOK補足説明」

傷病手当金の支給期間(支給開始日が令和2年7月2日以降の取扱い)

同一の病気やケガで支給される期間は、支給開始から最大で1年6ヶ月です。

出勤して給与支払いがあった期間は、傷病手当金の支給期間に含まれませんので、傷病手当金を受給した期間が、1年6ヶ月分になるまで支給されます。

 

改正後の傷病手当金の支給期間(令和4年1月1日から)

出典:厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」

令和4年1月1日に制度が改正されました

 

ちなみに、退職後の傷病手当金については、一旦仕事に就くことができる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になったとしても、傷病手当金は支給されません。

 

【退職後の傷病手当金における断続支給の考え方】

退職後の傷病手当金(断続支給できない)

出典:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」

 

【詳細記事】

傷病手当金の支給期間については、こちらの記事で詳しく説明しています。

傷病手当金の支給期間の通算化とは?【1年6ヶ月分の支給に変更】

傷病手当金の支給額(傷病手当金支給日額早見表)

傷病手当金の1日あたりの支給額 = 

支給開始前(12ヶ月)の平均標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3

 

これだと、「パッ」と計算できないので、早見表(概算)にしておきます。

使い方は、次のとおりです。

  1. あなたがもらっている月額給与にて「傷病手当金支給日額」をチェック
    ⇒これが「傷病手当金の1日あたりの支給額」です。
  2. 仕事を休んだ日数から3日を引く
    ⇒これが「傷病手当金の支給日数」です。
  3. 「傷病手当金支給日額」と「傷病手当金の支給日数」を掛ける
  4. 計算結果が、「傷病手当金の支給合計額」となります。

月額給与「0円以上~370,000円未満」

傷病手当金支給額早見表1

月額給与「370,000円以上」

傷病手当金支給額早見表2

 

たとえば、月額給与40万円の人が、30日間仕事を休んだ場合、

9,113円  × 27日 = 246,051円(傷病手当金の支給合計額)

となります。

退職後の傷病手当金の申請手続き

傷病手当金の申請書類

傷病手当金の申請手続きは、「健康保険傷病手当金支給申請書」にて行います。

こんな様式です。(令和5年1月の新様式です)

健康保険傷病手当金支給申請書2023年1月

出典:全国健康保険協会「健康保険傷病手当金支給申請書」

在職期間中の申請手続きは、事業主を通じて行う

傷病手当金支給申請書には「事業主が証明するところ」があるため、申請手続きは事業主を通じて行われることがほとんどです。

ですので、在職期間中の申請については、職場の担当者に相談すれば、

  • 提出書類(添付書類)
  • 申請書の書き方
  • 事業主の証明

など、すべて案内してくれるはずです。

 

退職後の傷病手当金の申請については、「事業主の証明」が不要となりますので、提出は本人が行います。

「健康保険傷病手当金支給申請書」を作成し、必要に応じ、添付書類をつけて、加入していた保険者(管轄の協会けんぽ支部など)へ提出しましょう。

提出は、窓口へ持参するか、または郵送でもOKです。

退職前に、職場の社会保険担当者に、退職後の申請方法などについて、確認しておくことをオススメします。

「労務不能」の診断には、お金がかかる(300円程度)

「健康保険傷病手当金支給申請書」の4枚目に、医師に記載してもらう項目があります。

こんな感じです。

傷病手当金 療養担当者が意見を記入するところ 2023年1月

傷病手当金 療養担当者が意見を記入するところ注意事項 2023年1月

出典:全国健康保険協会「健康保険傷病手当金支給申請書」

 

この書類の記載は、保険適用となっているため、3割負担で「約300円」のお金がかかることになります。(自費の診断書と違い、安く済みます)

診療報酬:傷病手当金意見書交付料 100点(令和4年4月1日現在)

申請期限

健康保険給付の申請期限は、2年間です。

傷病手当金の場合、1日ごとに給付金を支給しているため、「傷病手当金の支給対象日ごとにその翌日から2年間」が申請期間(期限)となります。

 

たとえば、4/1~4/30の期間が傷病手当金の支給対象となっている場合は、

  • 4/1分の申請期限は、2年後の4/1まで
  • 4/30分の申請期限は、2年後の4/30まで

となります。

退職後の健康保険と傷病手当金の支給

退職すると、在職中に加入していた健康保険の被保険者資格が喪失となります。

なので、退職後の健康保険について、選択・加入しなければなりません。

選択肢は、原則、次の3つです。

  1. 任意継続被保険者になる
  2. 国民健康保険に加入
  3. 家族の被扶養者になる

 

どの健康保険を選択・加入しても、退職後の傷病手当金は受給することができますので、どれを選択しても、問題ありません。

 

ただ、保険料という意味では、よく検討したほうがいいかもしれません。

というのも、加入する健康保険によって、保険料がぜんぜん違ってくるからです。

理想は、保険料が全くかからない「3.家族の被扶養者になる」ですが、

  • 収入の基準
  • 被扶養者の範囲等

の要件があり、傷病手当金の支給金額によっては加入できません。

 

収入の基準は、次のようになっています。

傷病手当金における「年間の支給見込額」が基準額以下であれば被扶養者になれる可能性があります。

【被扶養者の収入基準(年間)】

  • 60歳未満 130万円未満
  • 60歳以上 180万円未満

 

「1.任意継続被保険者になる」と「2.国民健康保険に加入」については、住んでる地域や保険者によって変わってしまうため、

「こっちの方が保険料が安くなりますよ」

と一概に言えません。

 

なので、職場の社会保険担当者や住んでいる地域の市区町村(市役所など)に相談してみてください。

まとめ

ここで、「退職後も継続して傷病手当金をもらうための条件(要件)」についておさらいです。

  • 退職日までに、継続して、1年以上の健康保険の被保険者期間があること
  • 業務外の病気やケガで労務不能であること
  • 退職日の前日までに、連続した3日間の待期期間が完成していること
  • 退職日に出勤していないこと
  • 支給期間は、最大で1年6ヶ月

 

経験則ではありますが、「傷病手当金が仕事を辞めたあとも受給できる」ってことを知らない人は、結構多いです。

せっかく保険料を払っているのに、利用しないのはもったいないので、制度を理解し、しっかりと活用していきましょう。

 

ちなみに、30日以上、退職後に傷病手当金をもらう場合は、必ず、失業等給付(失業保険)の受給期間延長手続きをしておきましょう。

受給期間延長手続きをしておくことで、傷病手当金の受給終了後、すぐに失業保険(基本手当)をもらうことができます。

 

手続きは、あなたの住んでいる地域のハローワークで行います。

離職票などをもって、ハローワークに行き、事前に相談しておきましょう。(受給期間延長申請について、案内してくれます)

受給期間延長申請をしておかないと、傷病手当金の受給期間が長くなった場合、失業保険が受給できなくなることがあります。

【関連記事】

傷病手当金をもらった後に、失業保険をもらうために【受給期間延長申請】

離職票が届く前に手続き可能!失業保険を早くもらう方法【ハローワーク確認】

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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こう

医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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