精神疾患を患っている人は、年々増加しており、2017年時点で約420万人となっています。
また、患者数の増加とともに、傷病手当金の受給者も増えています。
実際、うちの病院でも、うつ病などの精神疾患が原因で休職する職員さんが、結構います。
そこで、この記事では、「精神及び行動の障害」による傷病手当金の
- 受給割合と件数の推移
- どの職種で、受給者が多いのか?
- どの地域(都道府県)で、受給者が多いのか?
について、調べてみましたので、まとめておきます。
「精神疾患(うつ病など)で、仕事を休んでいいの?」
「傷病手当金をもらっていいの?」
って人に、読んでもらえると嬉しいです。
結構、みんな、もらってますので。
「精神及び行動の障害」による傷病手当金の支給は、全体の「32.7%」
まず、結論です。
- 精神疾患患者は、2002年から2017年の15年で「160.9万人」増加
- 傷病手当金受給者の「32.7%」は、精神及び行動の障害が原因
- 精神及び行動の障害による受給者は、「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」の就業者が多い
- 精神及び行動の障害による受給者は、東京都の就業者が多い
- 傷病手当金は、1件あたり、約20万円の支給(精神及び行動の障害の場合)
それでは、1つずつ説明していきます。
精神疾患患者は、2002年から2017年の15年で「160.9万人」増加
厚生労働省の調査によると、2017年の精神疾患の患者は「約420万人」で、2002年から「約160.9万人」増えています。
こんな感じです。
【精神疾患を有する患者の推移】
出典:厚生労働省「精神医療について」
外来患者における疾病別では、
- 認知症(血管性など) 11.4万人
- 認知症(アルツハイマー病) 51.3万人
- 統合失調症等 63.9万人
- 気分(感情)障害 124.6万人
- 神経症性障害等 82.8万人
- 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 6.4万人
- その他 31.4万人
- てんかん 21.1万人
となっており、躁うつ病を含む「気分(感情)障害」が一番多くなっています。
【精神疾患を有する外来患者数の推移】
出典:厚生労働省「精神医療について」
一方、入院患者における疾病別では、
- 認知症(血管性など) 2.8万人
- 認知症(アルツハイマー病) 4.9万人
- 統合失調症等 15.4万人
- 気分(感情)障害 3.0万人
- 神経症性障害等 0.6万人
- 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 1.3万人
- その他 1.6万人
- てんかん 0.7万人
となっており、「統合失調症等」が一番多くなっています。
【精神疾患を有する入院患者数の推移】
出典:厚生労働省「精神医療について」
傷病手当金受給者の「32.7%」は、精神及び行動の障害が原因
全国健康保険協会の現金給付受給者状況調査(令和2年度)によると、傷病手当金の申請「130,538件」のうち、「精神及び行動の障害」によるものは「42,712件」と「約32.7%」の割合になっています。
もちろん、「精神及び行動の障害」による受給は、ダントツの1位です。
こんな感じです。
また、この割合は、件数とともにかなりの勢いで、増えています。
このとおり。
【2013~2020年の推移】
一覧にすると、こんな感じです
【傷病手当金「精神及び行動の障害」の件数・割合一覧】
年 | 割合 | 件数 |
2013年 | 25.7% | 22,158 |
2014年 | 26.5% | 23,302 |
2015年 | 27.5% | 24,051 |
2016年 | 27.6% | 24,315 |
2017年 | 28.6% | 26,622 |
2018年 | 29.1% | 30,932 |
2019年 | 31.3% | 35,849 |
2020年 | 32.7% | 42,712 |
直近7年間(2013~2020年)では、構成割合が「25.7%」から「32.7%」へ増え、件数も「22,158件」から「42,712件」となっています。(2倍以上の増加です)
次に、1995年から2020年の推移を見てみます。
【1995~2020年の推移】
構成割合が、「4.5%」から「32.7%」へ増えています。
件数も増加していることを思うと、「精神及び行動の障害」による受給者が、すごい勢いで増えていることがわかります。
精神及び行動の障害による受給者は、「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」の就業者が多い
「精神及び行動の障害」による傷病手当金の受給者を、業態別で見てみると、
- 医療業・保健衛生 10.4%
- 社会保険・社会福祉・介護事業 14.7%
で、ダントツの割合となっています。
こんな感じです。
この結果について、僕は、「2つの考え方があるな~」と思っていて、
1つは、「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」は、精神的負担が大きく、大変な仕事だから、精神疾患で休職などをする人が多い。
2つ目は、職種や業態的に、傷病手当金の利用がしやすいってことです。
具体的には、
- 傷病手当金の制度案内がされている
- シフト勤務の人が多いため、勤務調整がしやすい(人材の確保がされている場合)
- 医師の診断書がもらいやすい
みたいな感じです。
ちなみに、「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」の受給件数もどんどん増えています。
こんな感じです。
直近7年間(2013年から2020年)で、
- 医療業・保健衛生 1.7倍
- 社会保険・社会福祉・介護事業 2.2倍
となっています。
精神及び行動の障害による受給者は、東京都の就業者が多い
次に、精神及び行動の障害による傷病手当金の受給者を、都道府県別で見てみます。
すると、「びっくり?」することに、ダントツで「東京都」です。
で、「東京都の就業者は、他県に比べて、多いんだから、傷病手当金の受給者多くなるのは
あたりまえだよね」って思ったので、就業者数の割合をグラフに組み込んでみました。
こんな感じです。
そうしたら、さらに東京都の割合が高いことに気づいちゃいました。
というのも、就業者数の割合(赤いグラフ)を、傷病手当金の割合(青いグラフ)が、はるかに超えていたからです。
逆に、埼玉、千葉、神奈川などは、就業者数の割合(赤いグラフ)に対し、傷病手当金の割合(青いグラフ)が少なくなっていました。
つまり、精神的に病む人が多い街は、「東京」ってことなのかも?ってことです。
まぁ、一概には言えませんけどね。
傷病手当金は、1件あたり、約20万円の支給(精神及び行動の障害の場合)
令和2年度における、「精神及び行動の障害」による傷病手当金は、
- 件数 42,712件
- 総日数 1,487,791日
- 総金額 8,642,833,913円(約86億円)
となっています。
なので、
- 1件あたりの平均日数は、34.8日
- 1件あたりの平均金額(受給額)は、202,351円
となります。
もちろん、同じ人が、継続的に申請することもあるので、1人あたりの受給総額とは違いますが、参考までに。
ちなみに、直近7年間(2013年から2020年)の推移は、次のとおりです。
毎年、ほぼ変わってないですね。
【関連記事】
傷病手当金の支給額および申請方法について、詳しくは、こちらの記事を。

まとめ
傷病手当金は、業務に起因する疾病やケガについては、利用(受給)できません。
とすると、
「どんな理由で、精神疾患を発症したのか?」
「なぜ、職種・業態による割合にバラツキが大きいのか?」
って思ったりします。
ただ、今回紹介した全国健康保険協会「現金給付受給者状況調査」からすると、東京都における「医療業・保健衛生」「社会保険・社会福祉・介護事業」の就業者が、精神的負担が大きい!って見えちゃうことを思うと、少なからず仕事の影響はあるんだと思います。
なので、もし、仕事に疲れていて、
- 眠れない
- 食欲がない
- 朝、起きられない
- 仕事に行こうと思うと、苦しくなる
って場合は、頑張りすぎず、仕事を休んで、傷病手当金をもらってください。
危険信号(精神的な)ですので。
それこそ、この記事で紹介したとおり、みんな、もらってますし。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【あわせて読みたい】
コメント