夫婦共働きの場合など、個々に健康保険に加入しているケースってありますよね。
いわゆる、「配偶者の扶養に入っていない」ってやつです。
このとき、
「子どもを、夫婦どちらの扶養(健康保険)に入れたらいいのか?」
または、
「どちらの扶養(健康保険)に入れたほうが、お得なのか?」
みたいなので、悩んだりしませんか?
そこで、この記事では、「夫婦で健康保険の被保険者である場合の被扶養者の認定基準」についてまとめておきます。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 出産の予定がある
- 子どもを、夫の扶養から妻の扶養に変えたい
- 仕事で、社会保険手続きを担当している
子どもは、年間収入(今後1年間の見込み額)の多いほうの扶養に入れる
夫婦で健康保険の被保険者である場合の被扶養者の認定については、厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日)」にて取扱い基準が定められています。
ポイントとしては、次のとおりです。
- 被保険者の年間収入(見込み額)が多いほうの被扶養者とする
- 夫婦間の年間収入(見込み額)の差額が1割以内の場合は、主として生計を維持する者の被扶養者とする
- 夫婦間の年間収入(見込み額)が逆転したら、被扶養者の異動を行う
- 育児休業期間などは、被扶養者の異動はしない
それでは、1つずつ詳しく説明していきます。
被保険者の年間収入(見込み額)が多いほうの被扶養者とする
原則として、夫婦共働きの場合など、個々に健康保険に加入している場合は、年間収入(見込み額)の多いほうの扶養に入れることになります。
逆に言うと、年間収入(見込み額)の少ないほうの扶養には入れることができないってことです。
このときの注意点としては、ここで言う年間収入は、「今後1年間の収入見込み額」で比較するってことです。
つまり、過去にいくらもらっていたかは関係なくて、社会保険の被保険者の場合は、
- 過去の収入
- 現在の収入
- 将来の収入予定
から「今後1年間にどのくらいの収入になるか?」を試算します。
また、国民健康保険の被保険者の場合には、直近の年間所得から「今後1年間にどのくらいの収入になるか?」を試算し、年間収入とします。
たとえば、昨年の年間収入が「500万円」だった人が、今年から転職して給料が下がっている場合、転職先の給料から今後1年間の収入を試算するってことです。
夫婦間の年間収入(見込み額)の差額が1割以内の場合は、主として生計を維持する者の被扶養者とする
夫婦間の年間収入(見込み額)を比較したとき、その差額が1割以内である場合は、主として生計を維持しているほうの扶養に入れます。
で、ここで問題になるのは、「主として生計を維持しているとは、具体的にどういうことか?」です。
一般的に、「生計を維持している」とは、次のような状態をいいます。
「生計を維持されている」とは、原則、次の要件をいずれも満たす場合をいいます。
- 生計を同じくしていること。(同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められます。)
- 収入要件を満たしていること。(前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。)
出典:日本年金機構「生計維持」
ただ、夫婦共働きで子どもと一緒に生活していて、収入がほぼ同じ(差額1割以内)という場合、どっちが主として生計を維持しているかなんて、わからなくないですか?
そこで、日本年金機構の担当者に聞いてみたんです。
【質問】
厚生労働省の通知「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」において、夫婦双方の年間収入の差額が1割以内である場合は、「届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする」とあるが、主として生計を維持する者とは具体的にどういうことか?
また、「届出により」の届出とは何なのか?
【回答】
原則として、年間収入が多いほうの扶養に入れる。それしか案内できない。
1割以内の取扱いは、わからない。
夫婦間の年間収入(見込み額)が同じ場合は、どちらの扶養に入れても良い。(自由)
届出は、「健康保険被扶養者(異動)届」のこと。(これ以外の届出書はない)
結果、何もわからないかったです・・・
まぁ、日本年金機構としては、「年間収入(見込み額)が多いほうに入れろ」ってことみたいです。
夫婦間の年間収入(見込み額)が逆転したら、被扶養者の異動を行う
子どもを扶養に入れた(認定)時点では、要件を満たしていたが、配偶者の転職などにより、年間収入が逆転した場合は、被扶養者の異動手続きが必要になります。
事業主(会社側)では、配偶者の収入変動はわからないことが多いため、原則、職員さんの自己申告をもって異動手続きを行います。
「そんなの、会社に言わなければ、バレないじゃん!?」って思うかもしれません。
でも、保険者(健康保険協会など)は、事業主を通じて「被扶養者資格の再確認」を原則、年1回行っていますので、ずっとそのままということはできません。
ちなみに、保険者による「被扶養者資格の再確認」で、健康保険の被扶養者要件を満たしていない場合は、扶養から外れることになります。
育児休業期間などは、被扶養者の異動はしない
子どもを扶養に入れている人が、育児休業などを取得することってありますよね。
そのとき、一時的に収入が配偶者より下がってしまうことがあります。
その場合は、特例として、被扶養者を異動しなくてよいことになっています。
健康保険の「収入」に含まれるもの・含まれないもの
年間収入に「含めるのか、それとも含めないのか?」については、次のように判断します。
収入に含まれるもの
- 給与収入(通勤手当を含む)
- 事業所得
- 不動産所得
- 副業による収入
- 年金収入(国民年金、厚生年金、共済年金、企業年金、遺族年金、障害年金等)
- 失業保険
- 傷病手当金
- 出産手当金
- 育児休業給付
- 介護休業給付
- 休業補償給付(労災保険)
収入に含まれないもの
- 退職一時金
- 出産育児一時金
- 不動産売却益
社会保険と国民健康保険のどっちの扶養に入れたほうが得なのか?
自由に選べるわけではありませんが、夫婦間の年間収入(見込み額)が同じ場合は、社会保険の扶養に入れましょう。
社会保険の扶養なら保険料の負担はありません。
国民健康保険には、扶養という考え方がないため、加入者1人1人に対し、保険料の負担が発生します。
子どもを扶養に入れるときの手続き「健康保険被扶養者(異動)届」
社会保険の扶養に入れるときは、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します。
こんな様式です。
赤い部分に、年間収入を記入します。
社会保険の扶養に入れるときは、職場の担当者に相談しましょう。
手続きに必要な書類を案内してくれるはずです。
国民健康保険に加入する場合は、お住まいの市町村が相談窓口です。
厚生労働省の通知「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日)」
参考までに。
夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(別紙)
1.夫婦とも被用者保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。
(1)被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入 、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
(2)夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
(3)夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当(以下「扶養手当等」という。)の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。
なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
(4)被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。
当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。
被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
(5) (4)により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、 当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、 不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。
この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。
標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。
(6)夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。
2.夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合には 、以下の取扱いとする。
(1)被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする。
(2)被扶養者として認定しない保険者等は 、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、届出日及び決定日を記載することが望ましい。
被保険者は当該通知を届出に添えて国民健康保険の保険者に提出する。
(3)被扶養者として認定されないことにつき国民健康保険の保険者に疑義がある場合には、 届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した被用者保険の 保険者等と協議する。
この協議が整わない場合には、直近の課税(非課税)証明書 の所得金額が多い方を主として生計を維持する者とする。
3.主として生計を維持する者が健康保険法(大正 11 年法律第 70 号)第 43 条の2に定める育児休業等を取得した場合、当該休業期間中は、被扶養者の地位安定の観点から特例的に被扶養者を異動しないこととする。
ただし、新たに誕生した子については、改めて上記1又は2の認定手続きを行うこととする。
4.年間収入の逆転に伴い被扶養者認定を削除する場合は、 年間収入が多くなった被保険者の方の保険者等が認定することを確認してから削除することとする。
5.被扶養者の認定後、その結果に異議がある場合には、被保険者又は関係保険者の申立てにより、被保険者の勤務する事業所の所在地の地方厚生(支)局保険主管課長(以下「保険課長」という。)が関係保険者の意見を聞き、斡旋を行うものとする 。
各被保険者の勤務する事業所の所在地が異なる場合には、 申立てを受けた保険課長が上記斡旋を行い、その後、相手方の保険課長に連絡するものとする。
6.前記1から5までの取扱基準は、令和3年8月1日から適用する。
まとめ
ここで、「夫婦で健康保険の被保険者である場合、子どもは、どちらの扶養に入れたらいいのか?(取扱基準)」について、おさらいです。
- 年間収入が多いほうの扶養にいれる
- 年間収入は、過去にいくらもらっていたかではなく「今後1年間の収入見込み額」
- 夫婦間の年間収入が逆転したら、被扶養者の異動を行う
- 育児休業期間などは、年間収入が逆転しても被扶養者の異動はしない
- 健康保険の収入は、税法上の所得に含まれない非課税対象のものも含め、ほぼすべてのものが含まれる
健康保険の扶養については、夫婦間の収入要件がありますが、税金の扶養についてはありません。
なので、扶養親族を自由に異動できます。
もし、「夫婦どちらの扶養に入れたほうが得か?」という視点で、子どもの扶養を考えるなら、健康保険だけじゃなく、税金の扶養についてもセットで検討することをオススメします。
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