「CPAP療法をされている患者さんが、毎月ちゃんと診察に来ない・・・」
こんな風に悩んでいる医療機関は、少なからずあるはず。
うちも、そうです。
で、「なんとかならないかな~」って思って、ダメもとで社会保険診療報酬支払基金に次のことを質問してみました。
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2は、医師の診察がない月の算定はできないのか?
- 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算と在宅持続陽圧呼吸療法材料加算は、指導管理料2の算定がない月でも単独で請求可能か?(つまり、治療器加算、材料加算は、指導管理料とセットじゃないと算定できないのか?)
結論から言っちゃうと、どちらもダメだったんですけど、せっかく色々調べたので、
- CPAP療法における診療報酬の算定ルール
- 社会保険診療報酬支払基金からの回答
- CPAP装置の賃貸借業者との契約内容
について、備忘録的にまとめておきます。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 医療事務の仕事をしている
- 医療機関で、施設基準等の管理を担当している
CPAP療法における診療報酬の算定ルール
まずは、睡眠時無呼吸症候群の患者が、CPAP療法をされている場合に請求できる診療報酬を整理しておきます。
【CPAP療法の患者さんが受診した時の診療報酬】
- C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2 250点
- C165 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算2 1,000点
- C171-2 在宅持続陽圧呼吸療法材料加算 100点
算定回数は、上限が設定されていて、次のようになっています。
- C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2 月1回
- C165 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算2 3ヶ月に3回
- C171-2 在宅持続陽圧呼吸療法材料加算 3ヶ月に3回
法的根拠としては、次のとおりです。
医科診療報酬点数表 第2部 在宅医療
第2節 在宅療養指導管理料
第1款 在宅療養指導管理料
通則1 本款各区分に掲げる在宅療養指導管理料は、特に規定する場合を除き、月1回に限り算定し、同一の患者に対して1月以内に指導管理を2回以上行った場合においては、第1回の指導管理を行ったときに算定する。
C165 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算の通知
(2) 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算2については、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2のウの要件に該当する患者に対して保険医療機関が患者に貸与する持続陽圧呼吸療法装置のうち、CPAPを使用して治療を行った場合に、3月に3回に限り算定できる。
C171-2 在宅持続陽圧呼吸療法材料加算の通知
在宅持続陽圧呼吸療法材料加算には、区分番号「C107-2」在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料を算定する患者に対し、保険医療機関が貸与する持続陽圧呼吸療法装置に係る費用のうち、装置に必要な回路部品その他の附属品等に係る費用が含まれ、3月に3回に限り算定できる。
社会保険診療報酬支払基金からの回答
CPAP療法の診療報酬の算定についての質問に対する回答は、次のとおりでした。
【質問】
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2は、医師の診察がない月の算定はできないのか?
- 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算と在宅持続陽圧呼吸療法材料加算は、指導管理料2の算定がない月でも単独で請求可能か?(つまり、治療器加算、材料加算は、指導管理料とセットじゃないと算定できないのか?)
【回答】
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2は、医師の診察がない月は算定できない
- 在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算と在宅持続陽圧呼吸療法材料加算は、指導管理料の算定がない月は算定できない。つまりは、患者さんの受診があった月に治療器加算と材料加算を指導管理料とセットで算定する
- CPAP療法の算定については、毎月の診察が原則であり、やむを得ない場合でも、3ヶ月に1回の診察が必要となる
ちょっと補足すると、「在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算2」と「在宅持続陽圧呼吸療法材料加算」は、3ヶ月に3回まで算定可能です。
なので、単月で3回までなら請求可能です。
とは言っても、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2の算定がない月には算定(請求)することはできません。
なので、次のように算定することになります。
【CPAP装置を継続的に使用している場合の算定例】
月 | 受診(診察)の有無 | 算定可能項目 |
4月 | 受診なし | 何も算定できない |
5月 | 受診なし | 何も算定できない |
6月 | 受診あり | 指導管理料2 250点(6月分) 治療器加算2 3,000点(4~6月分) 材料加算 300点(4~6月分) |
ちなみに、治療器加算と材料加算は、3ヶ月に3回に限り算定可能なため、前月、前々月分だけでなく、翌月、翌々月分の算定も可能とのことです。(社会保険診療報酬支払基金より)
なぜ、わざわざ、社会保険診療報酬支払基金に質問したのか?
医療事務をされている人からすれば、
- 医師が診察してないのに、指導管理料が取れるわけないでしょ!?
- 加算って、指導管理料の算定する場合に、加えて算定するものだよ
って思うかもしれません。
たしかに、おっしゃるとおりなんですが、次の文言が気になって、「もしかしたら!?」って思っちゃいました。
第2款 在宅療養指導管理材料加算
通知1 在宅療養指導管理材料加算は、要件を満たせば、第1款在宅療養指導管理料を算定するか否かにかかわらず、別に算定できる。
でも、ダメでした・・・
おそらく、この文言は、
「在宅療養指導管理料を算定しない月に関しても算定できるけど、レセプトを提出するのは、在宅療養指導管理料を算定する月にセットで出してね」
ってことなのかな?って勝手に納得することにしました。
まぁ、
「CPAP療法の患者さんが、毎月ちゃんと診察に来ない・・・」
をなんとかしたいという想いも相まっての行動なんですけどね。
CPAP装置の賃貸借業者との契約内容
CPAP療法を行っている医療機関の場合、CPAP装置のレンタルを行っている業者さんと委託契約を締結しているところが多いかと思います。(うちもそうです)
で、CPAP装置の貸し出しや保守点検の費用として、「月額○○円(1台あたり)」の賃貸借料をその委託業者さんに支払います。
このとき、医療機関としては、患者さんの受診がないと診療報酬の請求ができないのにも関わらず、委託業者さんから賃貸借料の請求が来ちゃいます。
つまりは、医療機関がCPAP装置のレンタル料を払って、患者さんが装置を使っている状態です。
そうです、完全に赤字です。
逆に言うと、患者さんからしたら、極力、受診しないほうがお得ってことです。
この状態をほっておくと、医療機関としては運営が厳しすぎます。
これをなんとかするため、以前(だいぶ前)は、委託業者とその月に受診のなかった患者については、「その月のCPAP装置のレンタル料を請求しない」という契約をしていました。
でも、あるとき、委託業者さんから
「1台あたりのレンタル料を下げるので、CPAP装置の貸し出し台数すべてを請求させてほしい」
との申し出があり、契約を見直しました。
なので、今は、患者さんに、月1回の受診を強くお願いしています。
ちなみに、うちの場合は、月2~3件程度、請求できない件数があります。
つまり、お願いしているのに、診察にこない患者が、2~3名いるってことです。
まとめ
ここで、「CPAP療法における算定ルール」について、まとめておきます。
- 医師による診察がない月は、何も算定できない
- 治療器加算と材料加算は、指導管理料とセットで算定する
- 治療器加算と材料加算は、3ヶ月分まとめて算定できる
結局、大切なのは、患者さんに毎月ちゃんと受診してもらうってことです。
裏技もなさそうなので、根気強く、依頼し続けるしかないと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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