この記事では、
介護職員さんの給料アップのための施策「介護職員処遇改善加算」
について、紹介しています。
「介護職員処遇改善加算」は、介護職員さんの賃金改善を目的として創設された制度であり、この加算を「取得している事業所」と「していない事業所」では、最大で月額で37,000円の違いが出てしまいます。
もし、あなたが、介護職として働いていて、
「現在の処遇(賃金)に不満を感じている」
なら、あなたが働く事業所が「介護職員処遇改善加算」を取得しているか確認してみてください。
介護職員処遇改善加算を算定している事業所は、賃金改善等の内容を雇用するすべての介護職員へ周知しなければならないことになっていますので、必ず、取得状況について説明してくれるはずです。
それでは説明していきます。
介護職員処遇改善加算の取得要件と賃金改善額
まずは、この基準を取得すると、介護職員さん1人あたりどれくらい給料が上がり、そのためにどんな要件を満たしたらいいのかを一覧にしましたのでご覧ください。
改善額・要件等一覧
加算 | 月額賃金改善額 (1人あたり) |
キャリアパス要件 | 職場環境等要件 | ||
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | |||
加算Ⅰ | 37,000円相当 | ○ | ○ | ○ | ○ |
加算Ⅱ | 27,000円相当 | ○ | ○ | ○ | |
加算Ⅲ | 15,000円相当 | どちらかに○ | ○ | ||
加算Ⅳ | 13,500円相当 | いずれか1つに○ | |||
加算Ⅴ | 12,000円相当 | いずれも満たさない |
○の付いているところは、その要件を満たすという意味です。
なお、廃止時期は未定です。(平成31年4月1日現在)
上記の一覧表のとおり「介護職員処遇改善加算」には、加算Ⅰ~Ⅴのランク分けがされており、加算取得の要件となっている「キャリアパス要件」「職場環境要件」を満たすことで、介護職員さんの賃金改善が行なえるという制度です。
つまり、介護職員さんの処遇や労働環境の改善に積極的に取り組んでいる事業所ほど、高いランクの加算が取得でき、あなたの給与が高くなるということです。
ちなみに、「加算Ⅰ」を取得している事業所では、介護職員1人あたりの給与を、月額37,000円引き上げることができ、年収では、44万円程度の給与引き上げになります。
キャリアパス要件と職場環境要件
次に、各種要件とその内容について説明していきます。
キャリアパス要件
要約してわかりやすくしています。
Ⅰ.職位、職責、職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること。
Ⅱ.資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること。
Ⅲ.経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること。
なお、厚生労働省の通知は次のとおりです。(読みづらいです・・・)
(キャリアパス要件Ⅰ)
次のイ、ロ及びハの全てに適合すること。
イ 介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。
ロ イに掲げる職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。
ハ イ及びロの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
(キャリアパス要件Ⅱ)
次のイ及びロの全てに適合すること。
イ 介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び一又は二に掲げる事項に関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。
一 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT等)するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。
二 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。
ロ イについて、全ての介護職員に周知していること。
(キャリアパス要件Ⅲ)
次のイ及びロの全てに適合すること。
イ 介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次の一から三までのいずれかに該当する仕組みであること。
一 経験に応じて昇給する仕組み
「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること二 資格等に応じて昇給する仕組み
「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みであること。ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。三 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。ロ イの内容について、就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
出典:厚生労働省「通知:介護職員処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について
職場環境等要件
職場環境等要件は、すごく項目が多いのですが、すべての項目を満たす必要はなく、いずれか1つの実施でOKです。
【職場環境等要件の主な内容】
- 資質の向上
⇒介護福祉士取得等への受講支援など - 労働環境・処遇の改善
⇒メンター制度、育児休業制度等の充実、保育施設の整備など - その他
⇒非正規職員から正規職員への転換など
ちなみに、厚生労働省の通知は次のとおりです。
興味のある人は読んでみてください。
資質の向上
- 働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援(研修受講時の他の介護職員の負担を軽減するための代替職員確保を含む)
- 研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
- 小規模事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
- キャリアパス要件に該当する事項(キャリアパス要件を満たしていない介護事業者に限る)
- その他
職場環境・処遇の改善
- 新人介護職員の早期離職防止のためのエルダー・メンター(新人指導担当者)制度等導入
- 雇用管理改善のための管理者の労働・安全衛生法規、休暇・休職制度に係る研修受講等による雇用管理改善対策の充実
- ICT活用(ケア内容や申し送り事項の共有(事業所内に加えタブレット端末を活用し訪問先でアクセスを可能にすること等を含む)による介護職員の事務負担軽減、個々の利用者へのサービス履歴・訪問介護員の出勤情報管理によるサービス提供責任者のシフト管理に係る事務負担軽減、利用者情報蓄積による利用者個々の特性に応じたサービス提供等)による業務省力化
- 介護職員の腰痛対策を含む負担軽減のための介護ロボットやリフト等の介護機器等導入
- 子育てとの両立を目指す者のための育児休業制度等の充実、事業所内保育施設の整備
- ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
- 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成による責任の所在の明確化
- 健康診断・こころの健康等の健康管理面の強化、職員休憩室・分煙スペース等の整備
- その他
その他
- 介護サービス情報公表制度の活用による経営・人材育成理念の見える化
- 中途採用者(他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等)に特化した人事制度の確立(勤務シフトの配慮、短時間正規職員制度の導入等)
- 障害を有する者でも働きやすい職場環境構築や勤務シフト配慮
- 地域の児童・生徒や住民との交流による地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上
- 非正規職員から正規職員への転換
- 職員の増員による業務負担の軽減
- その他
出典:厚生労働省「通知:介護職員処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について
加算Ⅰ~Ⅴに共通して必要な要件
次の要件は、どの加算においても、2つとも満たす必要があります。
- 処遇改善計画を立案している、または既に処遇改善を行っており、適切に報告している
- 労働基準法等の違反、労働保険の未納がないこと
介護職員処遇改善加算の取得状況
厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査」から引用します。
【平成30年度】
約69%の事業所が「介護職員処遇改善加算(Ⅰ)」を取得しています。
平成29年度の調査では、約65%の取得率でしたので、少しだけ上がっています。
【平成29年度】
ただ、介護職員さんからすれば、約31%の事業所は、
「なにやってんの?」
って感じですよね・・・
ちなみに、「介護職員処遇改善加算(Ⅰ)」を取得していない理由としては、次のとおりです。
1位:
「介護職員の昇給の仕組みを設けることにより、職種間・事業所間の賃金のバランスがとれなくなることが懸念されるため」(44.4%)
2位:
「昇給の仕組みを設けるための事務作業が煩雑であるため」(37.2%)
どっちの理由も、介護職員さんには、理解されづらい気がします。
だって、
- 介護職員の給与を上げると、職種間の賃金バランスが崩れる
- 事務作業が大変
って言ってるわけですからね・・・
介護職員のさらなる処遇改善「介護職員等特定処遇改善加算」
2019年10月の介護報酬改定により、
「介護職員等特定処遇改善加算」
が創設されました。
この加算は、介護人材不足への対応策として、主に「経験・技能のある介護職員」さんに対し、さらなる処遇改善を行うためのものです。
また、賃金改善額としては、最大で「月額8万円以上」とかなり大きな金額となります。
ちなみに、この「月額8万円以上」には、既存の「介護職員処遇改善加算(最大で月額37,000円)」を含みませんので、合算すると、月額117,000円以上の賃金改善となります。
こんなイメージです。
出典:厚生労働省「2019年度介護報酬改定について」
ただ、さらなる処遇改善(介護職員等特定処遇改善加算)については、かなり柔軟なルールとなっており、事業所の裁量に委ねられている部分が多くなっています。
要するに、
「勤務する事業所(職場)によって、給与がぜんぜん違っちゃう」
ってことです。
なので、介護職員さんの事業所(職場)選びは、ますます重要になっていきます。
転職などで、事業所(職場)を選ぶ際は、情報収集を徹底してください。
あなたの、資格と経験をしっかり評価してもらうためにも。
【関連記事】
「介護職員等特定処遇改善加算」の取り扱いと「事業所(職場)の選び方」については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
まとめ
ここで、「介護職員処遇改善加算のポイント」をまとめておきます。
- 加算(Ⅰ)の取得で、介護職員さんの月額給与が「37,000円」増える
- 事業所の頑張り次第で、介護職員さんの給与が変わってくる
- 介護職員処遇改善加算(Ⅰ)のを取得している事業所は全体の69%
繰り返しにはなりますが、「介護職員処遇改善加算」は、介護職員さんのための制度です。
なので、介護職員処遇改善加算をとっていないってことは、
「介護職員さんへの優しさが足りない事業所」
だと僕は思います。
もし、あなたの働いている事業所が「介護職員処遇改善加算(Ⅰ)」をとっていないなら、転職を視野に入れてみてください。
長く働くほど、給与額に違いが出てきてしまうでしょうし。
【関連記事】
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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