この記事では、「介護職は離職率が高い」というイメージを払拭するため、
- 離職率の推移(他の産業との比較)
- 給与額の推移
- 介護業界で働く、介護職員数の推移
- 主な退職理由
- 介護という仕事の満足度
- なぜ、介護の仕事を選んだのか?
について紹介しています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 介護職の労働環境って、実際、どんな感じなの?
- 「経験はないけど、介護の仕事をやってみようかな?」と考えている
- 介護業界って、これからどうなっていくの?
なお、この記事で紹介している各種データ(グラフ)は、
をもとに、僕が作成したものです。
また、引用させていただきました表などについては、記事の中で明記しています。
【2019年】介護職の労働環境(実態)
まず、結論からです。
- 介護職の離職率(15.4%)は高いわけではなく、全産業の平均とほぼ同じ
- 介護職の給与は、上がり続けている
- 介護職として働く人は、増え続けている
- 2025年度末までに、あと55万人の介護人材が必要になる(2017年度の190万人を基準として)
- 退職理由の上位は、「人間関係、出産や育児、事業所(運営)への不満」
- 「介護職(介護サービス)の仕事を続けたい」が約8割
- 介護の仕事を選んだ理由は、「働きがい、資格が活かせる、他者貢献」が上位
それでは、詳しく説明していきます。
介護職の離職率は、全産業の平均とほぼ同じ
2018年度(平成30年度)の調査では、
- 介護職の離職率 15.4%
- 全産業の離職率 14.6%
となっており、「0.8%」しか違いはありません。
次に、「産業別の離職率」と比較してみます。(一番左が、介護職の離職率です)
産業別の離職率トップ5は、
- 宿泊業・飲食サービス業 26.9%
- 生活関連サービス業・娯楽業 23.9%
- サービス業(他に分類されないもの) 19.9%
- 教育、学習支援業 16.6%
- 医療・福祉 15.5%
であり、この結果からも、介護職の離職率(15.4%)が著しく高いわけじゃないことがわかると思います。
また、介護職の離職率は、10年前と比べると格段に下がっており、介護職員処遇改善加算等による「介護職の労働環境(賃金を含む)」が改善されてきていることがうかがえます。
ちなみに、平成29年度のデータではありますが、介護職の離職率は、
- 正規職員(常勤)だと、訪問介護員の離職率が高い
- 非正規職員(パート)だと、介護職員(施設等)が高い
という結果(内訳)になっています。
出典:介護労働安定センター「平成29年度介護労働実態調査」
介護職の給与(年収)は、上がり続けている
「介護職の給与は、他の産業と比べると低い」というのは、確かにそのとおりで、2018年の平均年収は、
- 看護補助者 3,031,000円
- ホームヘルパー 3,333,500円
- 福祉施設介護員 3,396,300円
となっています。
厚生労働省の介護職員等特定処遇改善加算の通知(資料)によると、
「役職者を除く産業平均賃金(水準)は、年収440万円」
とされていますので、約100万円低いことになります。
ただ、介護職員処遇改善加算などの効果もあり、介護職員さんの給与(平均年収)は、年々上がり続けています。
しかも、結構な勢いで。
このとおり。
詳細な数字は、次のとおりです。
【介護職の平均年収の推移(単位:円)】
年 | 看護補助者 | ホームヘルパー | 福祉施設介護員 |
2007 | 2,845,500 | 2,844,500 | 2,995,100 |
2008 | 2,812,100 | 2,819,000 | 3,094,600 |
2009 | 2,814,100 | 2,702,100 | 3,043,400 |
2010 | 2,816,100 | 2,866,300 | 3,040,600 |
2011 | 2,822,400 | 2,952,500 | 3,069,000 |
2012 | 2,747,500 | 2,784,600 | 3,095,200 |
2013 | 2,819,400 | 2,890,700 | 3,071,600 |
2014 | 2,903,200 | 2,934,300 | 3,093,100 |
2015 | 2,913,500 | 3,043,100 | 3,161,000 |
2016 | 2,949,000 | 3,048,600 | 3,224,900 |
2017 | 2,923,900 | 3,135,600 | 3,296,500 |
2018 | 3,031,000 | 3,333,500 | 3,396,300 |
また、2019年10月からは、さらなる処遇改善の施策として、「介護職員等特定処遇改善加算」が導入されましたので、介護職員さんの給与(年収)は、さらに上がっています。
まぁ、人材不足もスゴイですからね・・・
【関連記事】
「介護職員等特定処遇改善加算」については、こちらの記事を。

介護職の平均給与について、もう少し詳しく知りたい人は、こちらの記事を。

介護職として働く人は、増え続けている
介護職員数は、2000年度(平成12年度)の「54.9万人」から増え続け、2017年度(平成29年度)では、「186.8万人」となっています。
出典:厚生労働省「介護人材の確保・介護現場の革新(参考資料)」
ただ、厚生労働省の試算では、介護職員の必要数は「2025年度末で245万人」とされていますので、これからの8年間で「55万人」の介護人材を確保する必要があります。
このとおり。
出典:厚生労働省「介護人材の確保・介護現場の革新(参考資料)」
つまり、介護職とは、これからも「需要が増え続ける職種」なんです。
【関連記事】

退職理由の上位は、「人間関係、出産や育児、事業所(運営)への不満」
介護職は、一般的に、
- 体力的、精神的にきつい
- 給与が安い
というイメージがありますが、退職理由の上位に「体力的・精神的にきつい」や「給与が安い」は入っていません。
【介護関係の仕事を辞めた理由「2017年度(平成29年度)」】
出典:介護労働安定センター「平成29年度介護労働実態調査」
介護職の退職理由「トップ5」は、
- 職場の人間関係に問題があったため 20.0%
- 結婚・出産・妊娠等のため 18.3%
- 法人や施設事業所の理念や運営のあり方に不満があったため 17.8%
- 他に良い仕事・職場があったため 16.3%
- 自分の将来の見込みが立たなかったため 15.6%
となっており、どの職場でも退職理由の上位に入る、「職場の人間関係」は、介護業界でも上位になっています。
また、「労働条件等の不満」について、
- 人手が足りない 53.0%
- 仕事内容のわりに賃金が低い 39.6%
- 有給休暇が取りにくい 34.2%
という意見が多く出ています。
これらのことから、
「給与(賃金)面の不満はあるが、それが直接的な退職理由になるわけではない」
と言えそうです。
「介護職(介護サービス)の仕事を続けたい」が約8割
介護職として働いている人に「今の勤務先に限らず、あなたの仕事(職種)に関する希望」について伺うと、
- 今の仕事を続けたい 53.8%
- 今の仕事以外で、介護職を続けたい 23.6%
- 介護職以外の仕事をしたい 4.8%
- わからない 13.9%
- 働きたくない 2.4%
出典:介護労働安定センター「平成29年度介護労働実態調査」
という結果になっています。
つまり、約8割の人が「これからも介護職を続けたい」と思っているってことです。
これって、結構、高い数値だと思いませんか?
「仕事、やめたい~」という意見を聞くことが多いなかで・・・(笑)
僕としては、
仕事を通じて利用者さんから「ありがとう」をもらえるということが大きいな要因になっているのかな?
って感じます。
「ありがとう」のもらえる職種(仕事)に、応募が集まっているという調査結果も出てますし。
介護の仕事を選んだ理由は、「働きがい、資格が活かせる、他者貢献」が上位
介護の仕事は、次のような理由で選ぶ人が多いです。
- 働きがいのある仕事だと思った 50.1%
- 資格、技能が活かせるから 35.5%
- 人や社会の役に立ちたいから 29.7%
- 今後もニーズが高まる仕事だから 29.0%
- お年寄りが好きだから 22.9%
やはり、介護という仕事に「働きがい」を感じている(求めている)人が多いですね。
僕としても、納得の回答です。
もし、あなたが仕事に求める条件として、あてはまる項目があれば、介護職を目指してみても良いかもしれません。
介護職は、人材不足ということもあり、結構、どこの事業所でも求人募集してますし。
ただ、事業所によっては、労働環境が劣悪なところがありますので、仕事を探すときは、人材紹介サービス(カイゴジョブエージェント ・マイナビ介護職
など)の利用をオススメします。
完全無料で利用でき、あなたの希望条件にあった事業所を探してくれるため、転職(就職)での失敗を減らすことができます。(無資格、未経験でも利用できますよ)
また、転職・再就職の際には、ハローワークからの「再就職手当(いわゆる、就職お祝金)」の受給を検討してみてください。
民間の人材紹介サービスの利用でも受給できますし、近年、給付率が高くなったこともあり、もらわないのはもったいないので。
【関連記事】
オススメの人材紹介サービスは、こちらの記事で紹介しています。

再就職手当について、詳しくは、こちらの記事を。

まとめ
介護職の労働環境の実態について紹介させていただきましたが、「介護という仕事のイメージ」に変化はありましたか?
もし、少しでも「介護のイメージ」が好転していれば、嬉しく思います。
介護職というと、「賃金(給与)が低い」という問題ばかりが、フォーカスされますが、
「最大の問題は、需要が増え続けていることによる人材不足が、労働環境を悪化させてしまっていること」
かもしれません。
事実、労働条件等の不満について、「人手が足りない(53.0%)」という意見が半数以上にのぼります。
また、介護職の有効求人倍率は、2018.9月現在で「4.16」という非常に高い数値となっています。
この数値からも、どれだけ介護人材が不足しているかが伝わると思います。
【関連記事】

これからも介護人材の需要が、どんどん高まっていくなか、介護職員さんが、介護の仕事に働きがい(やりがい)を感じ、長く活躍いただくためにも、労働(職場)環境の整備が喫緊の課題なんだと思います。
そうしないと、人材不足が改善されないですからね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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