介護職の労働環境(実態)とは?【離職率・給料・退職理由・将来性・休みやすさ】

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介護施設、老人ホーム、介護職の労働環境

介護職というと、国の政策(介護職の処遇改善など)や報道内容から

  • 体力的にきつい
  • 給与が安い
  • 離職率が高い
  • 休みが取りづらい

みたいなイメージを持っている人が多いかと思います。

 

たしかに、介護はたいへんな仕事ではありますが、僕としては「実態とイメージに大きな乖離があるな~」と感じています。

 

事実、厚生労働省によると、介護のしごとに従事している人(現職)とそうじゃない人で、次のように、認識(イメージ)に違いがあります。

【介護のしごとについて満足している点、魅力を感じる点】

介護のしごとで満足している点

*1仕事の内容(実際の介護や利用者とのコミュニケーションなど)
*2キャリア形成の仕組み(人事評価や教育研修の受講機会など)
*3仕事のやりがい(成長を感じられるエピソードなど)
*4社会への貢献(必要とされている仕事であると感じられるエピソードなど)

 

【介護のしごとについて不満な点、魅力を感じない点】

介護のしごとで不満を感じている点

*1仕事の内容(実際の介護や利用者とのコミュニケーションなど)
*2キャリア形成の仕組み(人事評価や教育研修の受講機会など)
*3仕事のやりがい(成長を感じられるエピソードなど)
*4社会への貢献(必要とされている仕事であると感じられるエピソードなど)

 

【介護職の働き方についての認識】

介護のしごとの働き方の認識

出典:厚生労働省「令和2年度介護のしごと魅力発信等事業福祉・介護に対する世代横断的理解促進事業報告書」

 

そこで、この記事では、介護職の労働環境(実態)について、まとめておきます。

 

こんな人に読んでいただけると嬉しいです。

  • 介護職の労働環境って、実際、どんな感じなの?
  • 「経験はないけど、介護の仕事をやってみようかな?」と考えている
  • 介護業界って、これからどうなっていくの?将来性はあるの?

 

なお、この記事で紹介している各種データ(グラフ)は、

をもとに作成したものです。

また、引用させていただきました表などについては、記事の中で明記しています。

【2020年】介護職の労働環境(実態)

まず、結論です。

  • 介護職の離職率(14.9%)は、全産業の平均とほぼ同じ
  • 介護職の給与は、上がり続けている
  • 介護職として働く人は、増え続けている
  • 2025年度末までに、あと32万人の介護人材が必要になる(2019年度の211万人を基準として)
  • 退職理由の上位は、「人間関係、事業所(運営)への不満、自分の将来の見込み」
  • 労働条件の悩み1位は、「人手が足りない」
  • 「介護職(介護サービス)の仕事を続けたい」が約7割
  • 介護の仕事を選んだ理由は、「働きがい、資格が活かせる、他者貢献」が上位
  • 介護職の有給休暇取得率(50.4%)は、全産業平均より低い

 

それでは、詳しく説明していきます。

介護職の離職率は、全産業の平均とほぼ同じ

2020年度(令和2年度)の調査では、

  • 介護職の離職率 14.9%
  • 全産業の離職率 14.2%

となっており、「0.7%」しか違いはありません。

こんな感じです。

産業別離職率(令和2年)

各産業の分類については、総務省「日本標準産業分類」をご覧ください。

 

産業別では、

  1. 宿泊業・飲食サービス業 26.9%
  2. サービス業(他に分類されないもの) 19.3%
  3. 生活関連サービス業・娯楽業 18.4%
  4. 教育、学習支援業 15.6%
  5. 不動産業、物品賃貸業 14.8%
  6. 医療・福祉 14.2%

が上位となっており、介護職の離職率(14.9%)が著しく高いわけじゃないことがわかると思います。

 

また、介護職の離職率は、2007年から格段に下がっており、介護職員処遇改善加算等による「介護職の労働環境(賃金を含む)」が改善されてきていると言えそうです。

介護職の離職率の推移(2007~2020年)

 

ちなみに、介護職の離職率は、

  • 無期雇用職員(常勤)だと、訪問介護員の離職率が高い
  • 有期雇用職員(非常勤)だと、施設などの介護職員が高い

という結果(内訳)になっています。

 

介護職の離職率(勤務形態別)20200930

出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」

離職率は、「1年間の離職者数÷基準日時点の在籍者数×100」で算出しています。

勤続年数1年未満の離職者が全体の「約4割」

介護職の離職者は、勤続年数1年未満の人が1番多く、全体の「36.2%」となっています。

また、勤続年数3年未満の離職者では、全体の「61.2%」を占めています。

 

このとおりです。

介護職の離職者の勤続年数(令和2年)

出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」

 

このデータを見る限りでは、離職率を引き上げているのは勤続年数の短い人であり、介護サービス事業所の労働環境には、かなりのバラツキがあると言えます。

 

つまり、

  • 労働環境の良い事業所に出会えた人は、やめない
  • 労働環境の悪い事業所に入った人は、すぐにやめる

ってことです。

 

まぁ、介護職に限ったことじゃないですけど、「職場選びは慎重に!」ってことですね。

介護職の給与(年収)は、上がり続けている

「介護職の給与は、他の産業と比べると低い」というのは、確かにそのとおりで、2020年の平均年収は、次のようになっています。

  • 看護補助者 2,975,800円
  • 訪問介護員 3,394,700円
  • 福祉施設介護員 3,450,400円

 

厚生労働省の介護職員等特定処遇改善加算の通知(資料)によると、

「役職者を除く産業平均賃金(水準)は、年収440万円」

とされていますので、約100万円低いことになります。

 

ただ、介護職員処遇改善加算などの効果もあり、介護職員さんの給与(平均年収)は、結構な勢いで上がっています。

このとおり。

介護職の平均年収の推移(2007~2020年)

 

詳細な数字は、次のとおりです。

【介護職の平均年収の推移(単位:円)】

看護補助者訪問介護員福祉施設介護員
20072,845,5002,844,5002,995,100
20082,812,1002,819,0003,094,600
20092,814,1002,702,1003,043,400
20102,816,1002,866,3003,040,600
20112,822,4002,952,5003,069,000
20122,747,5002,784,6003,095,200
20132,819,4002,890,7003,071,600
20142,903,2002,934,3003,093,100
20152,913,5003,043,1003,161,000
20162,949,0003,048,6003,224,900
20172,923,9003,135,6003,296,500
20183,031,0003,333,5003,396,300
20193,031,9003,277,0003,465,700
20202,975,8003,394,7003,450,400

 

【関連記事】

介護職員さんの処遇改善の施策について、詳しくはこちらの記事を。

介護職員処遇改善加算の取得要件と賃金改善額(給与アップ)のまとめ

特定処遇改善加算で変わった!?介護職の事業所(職場)の選び方【転職で確認する3つのこと】

介護職として働く人は、増え続けているが、まだまだ足りない

介護職員数は、2000年度(平成12年度)の「54.9万人」から増え続け、2019年度(令和元年度)では、「210.6万人」となっています。

介護職員数の推移(2000~2019年)

出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

 

ただ、介護職員さんは増えてはいるんですが、厚生労働省の試算では、介護職員の必要数は「2025年度末で243万人」とされています。

なので、これからの6年間で「32万人」の介護人材を確保する必要があります。

このとおり。

第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について

出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

 

つまり、ぜんぜん足りないってことです。(人材不足)

逆に言えば、介護職とは、これからも「需要が増え続ける職種」ってことです。

 

【関連記事】

介護職の7割は40歳以上!もう遅いのない介護業界【50歳の就職・転職】

退職理由の上位は、「人間関係、事業所(運営)への不満、自分の将来の見込み」

介護職は、一般的に、

  • 体力的にきつい
  • 給与が安い

というイメージがありますが、退職理由の上位3位に「体力的にきつい」や「給与が安い」は入っていません。

 

このとおり。

【介護関係の仕事を辞めた理由「2020年度(令和2年度)」】

介護関係の仕事をやめた理由(令和2年)

出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」

 

また、介護職の退職理由の上位は、男女で異なっており、次のようになっています。

【男性の退職理由「トップ5」】

  1. 自分の将来の見込みが立たなかったため 26.9%
  2. 職場の人間関係に問題があったため 26.7%
  3. 法人や施設事業所の理念や運営のあり方に不満があったため 23.4%
  4. 収入が少なかったため 22.9%
  5. 他に良い仕事・職場があったため 20.2%

 

【女性の退職理由「トップ5」】

  1. 結婚・出産・妊娠等のため 23.9%
  2. 職場の人間関係に問題があったため 23.2%
  3. 他に良い仕事・職場があったため 15.9%
  4. 法人や施設事業所の理念や運営のあり方に不満があったため 15.6%
  5. 収入が少なかったため 13.7%

 

男性では、「自分の将来の見込みが立たなかったため」が退職理由の1位ですが、女性では、全くのランク外です。

逆に、男性ではランク外の「結婚・出産・妊娠等のため」が、女性では1位となっています。

 

どの職場でも退職理由の上位に入る、「職場の人間関係」は、介護業界でも上位になっています。

 

「法人や施設事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」が、男女とも退職理由の上位に入っているのは、労働環境のバラツキがあることを感じますね。

 

また、「労働条件等の不満」として、

  • 人手が足りない 52.0%
  • 仕事内容のわりに賃金が低い 38.6%
  • 身体的負担が大きい 30.6%

という意見が多く出ています。

 

こんな感じです。

介護職の労働条件等の悩み(令和2年度)

出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」

 

これらのことから、

「給与(賃金)面や身体的な負担についての不満はあるけど、それが直接的な退職理由になるわけではない」

と言えそうです。

「介護職(介護サービス)の仕事を続けたい」が約7割

介護職として働いている人に「今の勤務先に限らず、あなたの仕事(職種)に関する希望」について聞くと、次のような回答が多くなっています。

  • 今の勤務先で働き続けたい 60.2%
  • 介護関係の別の勤務先で働きたい 6.2%

 

こんな感じです。

介護職の今の勤務先の就業継続の意向(令和2年)

出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」

 

これって、結構、高い数値だと思いませんか?

「仕事、やめたい~」という意見を聞くことが多いですからね。

 

ちなみに、「今の勤務先で働き続けたい」と思っている人は、年々、増えています。

このとおり。

勤務先に関する希望(今の勤務先で働き続けたい)の推移

出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」

介護の仕事を選んだ理由は、「働きがい、資格が活かせる、他者貢献」が上位

介護の仕事は、次のような理由で選ぶ人が多いです。

【介護の仕事を選んだ理由(複数回答)】

介護の仕事を選んだ理由(令和2年度)

出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」

 

男女間でバラツキはありますが、全体として、介護の仕事を選んだ理由「トップ5」は、次のようになっています。

  1. 働きがいのある仕事だと思った 50.4%
  2. 資格、技能が活かせるから 37.9%
  3. 人や社会の役に立ちたいから 31.4%
  4. 今後もニーズが高まる仕事だから 31.0%
  5. お年寄りが好きだから 23.6%

 

やはり、介護という仕事に「働きがい」を感じている(求めている)人が多いですね。

介護職の有給休暇取得率(50.4%)は、全産業平均より低い

2020年度(令和2年度)の調査では、

  • 介護職の有給休暇取得率 50.4%
  • 全産業の有給休暇取得率 56.3%

となっており、介護職の方が「5.9%」低くなっています。

全産業および産業別の平均有給休暇取得率は、「厚生労働省令和2年就労条件総合調査結果」を参考にしています。

 

次に、産業別で有給休暇取得率を比較してみます。(一番左が、介護職の有給休暇取得率です)

産業別有給休暇取得率(令和2年)

各産業の分類については、総務省「日本標準産業分類」をご覧ください。

 

産業別では、

  1. 複合サービス業 72.7%
  2. 製造業 64.1%
  3. 情報通信業 64.0%
  4. 学術研究、専門・技術サービス 63.2%
  5. 金融業、保険業 61.2%

が上位となっており、介護職の取得率(50.4%)がかなり下回っています。

 

ただ、介護労働安定センターが行った「勤務先の休暇制度等の状況調査」では、

  • 休んだ時に自分の仕事を代わりに担当できる人がいる 35.9%
  • 日頃から有休がとりやすい 34.5%

という結果になっているので、「休みのとりやすさ」は、事業所(職場)によってバラツキがスゴイのかもしてません。

 

勤務先の休暇制度等の状況(令和2年度)

 

ちなみに、介護職における「法人格別・職種別の有給休暇取得率」は、次のとおりとなっています。

 

介護職の有給休暇取得率(令和2年)法人別

 

介護職の有給休暇取得率(令和2年)職種別

出典:介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」

 

医療法人の取得率が、若干高くなっていますね。

まとめ

介護職の労働環境(実態)について紹介させていただきました。

少しでも「介護のイメージ」が好転していれば、嬉しく思います。

 

介護職というと、「賃金(給与)が低い」という問題ばかりが、フォーカスされますが、

「最大の問題は、需要が増え続けていることによる人材不足が、労働環境を悪化させてしまっていること」

だと思います。

 

事実、労働条件等の不満について、「人手が足りない(52.0%)」という意見が半数以上にのぼります。

また、介護職の有効求人倍率は、令和3年7月現在で「3.64」という非常に高い数値となっています。

この数値からも、どれだけ介護人材が不足しているかが伝わると思います。

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介護人材の需要は、これからもどんどん高まっていきます。

そんな中、介護職員さんが、介護の仕事に働きがい(やりがい)を感じ、長く活躍いただくためにも、労働環境の整備・改善が喫緊の課題なんだと思います。

そうしないと、人材不足が改善されないですからね。

 

ちなみに、介護職の実態を知って、「介護職をやってみようかな」と思ったなら、ぜひ、チャレンジしてみてください。

介護職は、人材不足ということもあり、結構、どこの事業所でも求人募集してますし。

 

ちなみに、転職の際には、必ず、再就職手当の受給を検討しましょう。

再就職手当は、ハローワークから支給される手当で、

  • 2~3ヶ月も休むつもりがない
  • すぐに次の職場を探す予定
  • ハローワークで仕事を探す気がない(人材紹介サービスを使うなど)

という人でも、支給を受けられる場合があります。

 

また、再就職手当は、以前に比べ、給付率が上がったため、結構な金額になってます。

もらわないのはもったいないです。

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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