この記事では、令和2年8月1日より変更になった、
- 失業等給付(失業保険や育児・介護休業給付など)を受けるために必要な雇用保険の「被保険者期間」の算定方法
- その変更に伴う、「離職証明書」「休業開始時賃金月額証明書」「六十歳到達時等賃金証明書」の書き方
についてまとめています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 失業保険をもらおうと思っている
- 育児休業の予定がある
- 介護休業の取得を考えてる
- 仕事で社会保険手続きを担当している
【変更点】被保険者期間の算定ルールに、労働日数だけでなく、労働時間が追加になった
失業等給付を受けるには、離職をした日(休業の場合は、休業日の前日)以前の2年間に、雇用保険の「被保険者期間」が通算して12ヶ月以上必要です。
この「被保険者期間」の算定方法が、令和2年8月1日以降の離職者(休業者)から、次のように変更となりました。
出典:厚生労働省「失業等給付の受給資格を得るために必要な被保険者期間の算定方法が変わります」
簡単に言うと、
「被保険者期間の考え方に、労働時間(80時間)という概念が追加になった」
ってことです。
なので、離職をした日(休業の場合は、休業日の前日)から、1ヶ月ごとに区切った期間の労働日数が11日に満たない場合でも、その期間の労働時間数が80時間を超えていれば、「被保険者期間」として算入できます。
労働時間数には、残業時間も含めてよい
ちょっと、気になったので、労働時間数の考え方について、ハローワークの雇用保険適用係(担当者)に確認してみました。
【質問】
【回答】
したがって、1日の勤務時間が残業等で長い場合、労働日数が少なくても、80時間を超えることになります。
つまり、次のような勤務でも、要件を満たすことになります。(極端に表現しています)
- 1日の勤務時間 10時間(残業を毎日2時間)× 8日勤務
- 1日の勤務時間 16時間(残業を毎日8時間)× 5日勤務
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まぁ、考え方としては、
「1日の勤務時間 8時間 × 10日勤務」でもOK
っていうのが、一般的な気がしますけどね・・・
「被保険者期間」の計算方法における詳細な取り扱い
厚生労働省が公開している、「雇用保険に関する業務取扱要領(令和2年8月1日以降)」では、リーフレットよりも、詳しく案内されています。
ただ、その分、複雑です・・・
参考程度に、ご覧ください。
失業保険
イ 被保険者期間の計算方法
(イ) 被保険者期間は、被保険者が離職した日の翌日又は各月においてその日に応当し、かつ、当該被保険者であった期間内にある日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日。 以下「喪失応当日」という。)の各前日から各前月の喪失応当日までさかのぼった各期間(賃金の支払の基礎となった日数が11日以上あるもの)を1 か月として計算する(法第14条第1項)。
なお、離職日が令和2年8月1日以降であって、離職日以前の2年間に賃金支払基礎日数の11日以上の月が12か月に満たない場合は、被保険者が離職した日の翌日又は喪失応当日の各前日から各前月の喪失応当日までさかのぼった各期間(賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上であるもの)を1か月として計算する(法第14条第3項)。
すなわち、被保険者として雇用された期間を、資格の喪失の日の前日からさかのぼって1か月毎に区切って行き、このように区切られた1か月の期間に賃金支払基礎日数が11日以上ある場合に、その1か月の期間を被保険者期間の1か月として計算する。
また、このように区切 ることにより1か月未満の期間が生ずることがあるが、その1か月未満の期間の日数が15日以上あり、かつ、その期間内に賃金支払基礎日数が11日以上又は離職日が令和2年8月1日以降であって、離職日以前の2年間に賃金支払基礎日数の11日以上の月が12か月に満たない 場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上あるときに、その期間を被保険者期間の2分の1か月として計算する(例示 1~6 参照)。
育児休業給付
育児休業給付の受給資格被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下同じ。)が、その1歳(一定の要件(59631 参照。)を満たす場合は1歳2か月)に満たない子を、保育所における保育の実施が行われない等の場合(詳細は 59503 ハ、ニ 59603 及び 59608 参照。)は1歳6か月又は2歳に満たない子を養育するために休業した場合において、原則として、その休業を開始した日前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月又は育児休業開始日が令和2年8月1日以降であって、育児休業開始日以前の2年間に賃金支払基礎日数の11日以上の完全月が12か月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である完全月(以下「みなし被保険者期間」という。詳細は 59533 参照。)が通算して12か月以上あるときに育児休業給付金の受給資格者となる。
介護休業給付
被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この59801-59940において同じ。)が、その家族を介護するための休業(59802 イに該当するものに限る。以下「対象介護休業」という。)をする場合において、原則として、その休業(当該対象家族を介護するための2回以上の介護休業をした場合は初回の介護休業)の開始日前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月又は介護休業開始日が令和2年8月1日以降であって、介護休業開始日以前の2年間に賃金支払基礎日数の11日以上の完全月が12か月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である完全月(以下「みなし被保険者期間」という。詳細は 59833 参照。)が通算して12か月以上あるときに介護休業給付金の受給資格者となる。
ほんと、読みづらい文章ですが、つまりは、
- 失業保険
- 育児休業給付
- 介護休業給付
の受給資格における「被保険者期間」の計算方法は、どれも同様の考え方ってことです。
離職証明書・休業開始時賃金月額証明書・六十歳到達時等賃金証明書の書き方【令和2年8月1日から】
失業等給付(失業保険や育児・介護休業給付など)の受給資格を得るために必要な被保険者期間の計算方法が変わったことにより、
- 離職証明書
- 休業開始時賃金月額証明書
- 六十歳到達時等賃金証明書
の書き方も変わっています。
具体的には、
「賃金支払の基礎となる日数が10日以下の月は、備考欄にその月の労働時間数を記入する」
ということです。
離職証明書などの書き方については、厚生労働省の「雇用保険事務手続きの手引き(令和2年8月版)」で、詳しく案内されていますので、該当箇所を抜粋して紹介します。
雇用保険被保険者「離職証明書」
⑬「備考」
・離職日が令和2年8月1日以降であって、⑨欄の日数が11日以上の完全月(例:8月18日~9
月17日)が12か月以上(高年齢被保険者及び短期雇用特例被保険者の場合は6か月以上)ない場
合、または、⑪欄の日数が11日以上の完全月が6か月ない場合は、⑨欄及び⑪欄の基礎日数が10日以下の期間について、当該期間における賃金支払の基礎となった時間数を記入してください。
つまりは、こういうことです。
雇用保険被保険者「休業開始時賃金月額証明書」
⑫「備考」
・休業開始日が令和2年8月1日以降であって、⑨欄の基礎日数が11日以上の月が12か月以上ない場合、または、⑪欄基礎日数が11日以上の完全月が6か月ない場合は、⑨欄及び⑪欄の基礎日数が10日以下の期間について、当該期間における賃金支払の基礎となった時間数を記入してください。
つまりは、こういうことです。
雇用保険被保険者「六十歳到達時等賃金証明書」
⑬「備考」
・60歳に到達した日が令和2年8月1日以降であって、⑨欄及び⑪欄の賃金支払基礎日数が11日以上の完全月が6か月ない場合は、⑨欄及び⑪欄の基礎日数が10日以下の期間について、当該期間における賃金支払の基礎となった時間数を記入してください。
つまりは、こういうことです。
まとめ
今回の失業等給付(失業保険や育児・介護休業給付など)を受けるために必要な「被保険者期間」の算定方法の改定ですが、該当する人は少ないと思います。
ただ、欠勤(給与が控除される)が多い人や非常勤で働いている人の場合、「被保険者期間」を労働時間数で計算することで、失業保険や育児・介護休業給付を受けられるというケースが出てくるかもしれません。
給付を受けられるかどうかは、すっごく大きな問題ですので、
「出勤日数的に、受給資格が厳しいかも!?」
という人は、労働時間のチェックをしておくことがオススメします。
また、仕事で社会保険手続きを担当しているなら、事前に、職員さんへ案内してあげたほうが親切かなと思います。
退職や育休の申し出があったときなどに。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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