この記事では、現役の作業療法士に聞いた、
「新卒時の就職活動は、どういう基準で就職先(病院など)を選んだのか?」
について紹介しています。
もし、就職先(進路等)について悩んでいるなら、ぜひ読んでみてください。
先輩作業療法士の経験が役に立つかもしれませんので。
なお、この記事で紹介している内容は、
- 新卒で入職した作業療法士
- 急性期から在宅までの経験を有する作業療法士
数名から聞いた話をまとめたものです。
【関連記事】
理学療法士さんについては、こちらの記事を。
作業療法士の就職先の選びかた
新卒時の就職先は、次のような順番で選んでいる人が多かったです。
- 「身体障害領域」か「精神障害領域」かを選択する
- 「身体障害領域」を選んだ場合、「急性期系の病院」か「回復期から在宅系の病院」のどちらかを選択する(精神障害領域を選んだ場合は、3に進みます)
- 「新人教育のしくみ」と「学ぶためのしくみ」が、しっかりしている病院を選ぶ
- 働きやすさ(給与、職場の雰囲気、ワークライフバランスなど)を確認
こんなイメージです。
【作業療法士(新卒者)の就職先の選びかた】
それでは、1つずつ説明していきます。
「身体障害領域」か「精神障害領域」を選択する
まず、新卒の作業療法士さんは、
- 身体障害領域
- 精神障害領域
の2つから就職先を絞っています。
理由としては、
「身体障害領域」と「精神障害領域」では、行われるリハビリテーションが全く違う
からです。
身体障害領域のリハビリテーションの特徴
運動機能の低下や日常生活や社会生活に支障をきたした患者で、主に「脳血管疾患、パーキンソン、骨折、脊髄損傷」などの疾患を対象とします。
具体的なリハビリ内容は、こちらのサイトを。
精神障害領域のリハビリテーションの特徴
主に、「うつ病、統合失調症、認知症、アルコールや薬物依存症」などによる症状や障害により、家庭での生活や仕事などが困難な人を対象とします。
具体的なリハビリ内容は、こちらのサイトを。
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ちなみに、「リハビリ技術の応用(経験を活かせるか?)」については、
- 精神障害領域から身体障害領域は、かなり厳しい
- 身体障害領域から精神障害領域は、結構いける
との回答が多かったです。
なので、後々のことを考えると「身体障害領域」を学んでから「精神障害領域」をやるほうがスキルアップしやすいと思います。
「急性期系の病院」か「回復期から在宅系の病院」のどちらかを選択
「身体障害領域」を選んだ人は、
- 急性期系の病院(大学病院などの救急病院)
- 回復期から在宅系の病院(回復期リハビリ、訪問リハビリなど)
の2つから、さらに就職先を絞っていきます。
この選択を行う理由は、
「急性期系の病院」と「回復期から在宅系の病院」では、行われるリハビリテーションが全く違う
からです。
ちなみに、新卒で「老健などの施設系」を希望する人は、少ないそうです。
「まずは、病院で経験を積んでから・・・」と考える学生さんが多いんでしょうね。
急性期系の病院(大学病院などの救急病院)のリハビリテーション
「急性期系の病院」では、様々な病気の患者が集まることから、病気ついて幅広い知識を得ることができます。
ただ、「リハビリの技術」という意味では、領域が限定されます。
また、入院期間の制限などにより、患者さんの回転(入替)が速いため、
- 慌ただしい
- スピードが求められる
という特徴があります。
回復期から在宅系の病院(回復期リハビリ、訪問リハビリなど)のリハビリテーション
「回復期から在宅系の病院」では、病気の知識は限定的ですが「リハビリの技術」という意味では、かなり広い領域を学ぶことができます。
また、患者さんの入院期間も比較的長めなので、じっくりとその患者さんに関われるという特徴があります。
また、「訪問リハビリ」を行っている病院では、
- 退院後のフォロー(リハビリ継続)ができる
- ケアマネさんとともに、退院後の日常生活に関われる
ってこともあり、1人の患者さんとの関わりが、さらに強くなります。
急性期系の病院と回復期から在宅系の病院のリハビリテーションの比較
ざっくりですが、「急性期系の病院」と「回復期から在宅系の病院」違いを一覧表にしておきます。
項 目 |
急性期系の病院 |
回復期から在宅系の病院 |
スピード(慌ただしさ) | 速い | ゆっくり |
受け持ち患者数 | 多い | 少ない |
1人の患者と関わる時間 | 少ない | じっくり |
病気の知識 | 広く学べる | 限定的 |
リハビリ技術 | 限定的 | 広く学べる |
退院後のフォロー | 少ない | 多い |
ちなみに、「回復期から在宅系の病院」のスピードに慣れてしまうと「急性期系の病院」のスピード感で働くのが大変だそうです。
逆に、「急性期系の病院」のスピードに慣れている人は、「回復期から在宅系の病院」のスピード感に物足りなさを感じるみたいです。
「新人教育のしくみ」と「学ぶためのしくみ」が、しっかりしている所を選ぶ
「急性期系の病院」か「回復期から在宅系の病院」かを選択したら、次は、
- 新人教育のしくみ
- 学ぶため(研修)のしくみ
がしっかりしているかを確認しましょう。
これは、
「この病院は、俺(私)を、一人前の作業療法士にしてくれるのか?」
という視点です。
ちょっと、他力本願に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
どんなに学びたいと思っていたとしても、学ぶための環境が整っていないと「成長のスピード」は鈍ってしまいます。
そもそも、国家資格って「その仕事をするためのスタート地点」なんですよね。
だから、色々と教えてもらいながら、1人前になるしかないです。
逆に言うと、「新人教育のしくみ」がしっかりしてないところだと、かなりの遠まわりになっちゃうってことです。
なので、必ず確認してください。
これ、すっごく大切な要素です。
なお、「学びのしくみ」についてですが、一般的には、次の3つに分かれます。
- 病院側が強制的に研修を受けさせるスタイル
- 学ぶための選択肢を用意してくれ、職員自らが選ぶスタイル
- 勝手に学べというスタイル
1は、「能動的に学べない人」にオススメです。
学ぶしかない環境に自分を置いちゃうってことですから。
2は、学ぶための環境整備はするが、学ぶかどうかは本人次第というしくみです。
つまり、「学びとは強制されるべきものではなく、自ら手を伸ばすべきもの」という考えです。
3は、論外ですね。
うちは2の「学ぶための選択肢を用意してくれ、職員自らが選ぶスタイル」をとっています。
たとえば、
- 学会や研修への参加は、職員の希望制
- 学会や研修の参加は、出勤扱い
- 参加費、宿泊費、交通費は、病院(施設)負担
などです。
働きやすさ(給与、職場の雰囲気、ワークライフバランスなど)を確認
学ぶためのしくみ(新人教育を含む)がしっかりしているところを選んだら、最後に、
「働きやすい職場か?」
についてしっかり確認しましょう。
どんなに学べる環境でも、ブラックな環境では自分が壊れちゃいます。
結果、学びの効率も落ちますし・・・
なお、働きやすさを確認するときのポイントとしては、
- 病院と部署の雰囲気(明るさや挨拶の有無)
- リハビリ科職員の雰囲気(どんな職員がいるのか?)
- リハビリ科職員の年齢層(幅広い年齢層が揃っているか?)
- 年間休日(110~120日ぐらい)
- 有給休暇取得率(80~90%は欲しい)
- 残業の有無(月何時間ぐらい?)
- 院内保育室の有無(理学療法士は使えるか?)
って感じです。
このあたりは、見学や求人票等でもわかる部分が多いので、よくチェックしてください。
給与は、あんまり気にしなくていい
給与って就職先を選ぶときすっごく大事な要素ですが、作業療法士さんについては、あまり気にする人はいませんでした。
おそらくは、そもそもの初任給の相場が高いからかもしれません。
「月額24~26万円」を初任給としているところが多いので。
【関連記事】
作業療法士さんの給与について詳しくは、こちらの記事を。(厚生労働省の調査結果をまとめています)
まとめ
ここで、「作業療法士(新卒)が、就職先を選ぶときのポイント」をまとめておきます。
- 何をやりたいのか?
⇒ 身体障害領域(急性期・回復期・慢性期・在宅)
⇒ 精神障害領域 - どんな作業療法士になりたいのか?(経験と学びの環境)
- どんな働き方をしたいのか?(ワークライフバランスなど)
- 給与は、どのくらい欲しいのか?
最初の就職先って、これからの作業療法士としてのキャリア(生き方)を大きく左右するものです。
「実習でお世話になったしな~」とか、「名前の知れた有名な病院だから・・・」と、安易に決めてしまわず、情報収集をしっかり行い、色々な病院に足を運び「あなたのニーズ」を満たせる就職先を探してみてください。
厚生労働省は、作業療法士の需要と供給のバランスが、次のようになると計算しています。
【理学療法士・作業療法士の需給推計】
出典:厚生労働省「令和4年版厚生労働白書」
需要に対し、供給が圧倒的に多くなっています。
つまり、超買い手市場で、作業療法士の仕事がない状態です。
この状況からしても、作業療法士としてのキャリア(生き方)をしっかりと考えておくことが大切です。
「国家資格を取ったから、もう安心」という状態ではないですからね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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