労働基準監督署は、毎年、各企業への立入検査を行っています。
そして、その結果を厚生労働省が、「労働基準監督年報」として、発表しています。
この記事では、そんな「労働基準監督年報(令和3年)」より、
「労働基準関係法令の違反件数と内容」
について紹介します。
日本企業の約7割が、労働基準関係法令違反をしている【令和3年】
まず、結論です。
- 定期監督等(立入検査)実施数は「122,054件」
- 労働基準関係法令違反事業所は「83,212件」で、違反率「68.2%」
- 違反率が高いのは「安全基準」「健康診断」「労働時間(長時間労働)」「割増賃金」
- 労働基準法とは、労働条件の最低基準を定めたもの
- ブラック企業の定義とは?
- 「この会社、ブラックかも?」と思ったら、厚生労働省の「労働基準関係情報メール窓口」を活用しよう
それでは、1つずつ説明していきます。
定期監督等(立入検査)実施数は「122,054件」
令和3年において、労働基準監督署が行った立入検査は「149,379件」です。
そのうち、労働者等からの申告による立入検査を除いた、定期監督等(毎月一定の計画に基づき実施する監督等)は、「122,054件」となっています。
定期監督等の主な業種別内訳としては、
- 建設業 43,004件(35.2%)
- 製造業 27,356件(22.4%)
- 商業 18,462件(15.1%)
- 保健衛生業 7,951件(6.5%)
- 接客娯楽 5,934件(4.9%)
- 運輸交通業 4,998件(4.1%)
となります。
法令違反が疑われていなくても、年間12万件以上の事業所に立入検査が行われていますので、「そう簡単に、立入検査なんか来ないでしょ!?そのうち改善すればいいよ。」と安易に考えるのは危険です。
日頃からのコンプライアンスの徹底をオススメします。
ちなみに、うちの事業所は、2回ほど立入検査を受けたことがあります。
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労働基準関係法令違反事業所は「83,212件」で、違反率「68.2%」
定期監督等「122,054件」のうち「83,212件」の事業所で、法令違反がありました。
違反率は「68.2%」です。
【労働基準監督署における定期監督等実施件数と違反数の推移】
出典:厚生労働省「労働基準監督年報」をもとに作成
2020年・2021年は、コロナの影響か、定期監督等実施件数が減っていますが、違反率は、2013年から2021年までほぼ変わっていませんので、
「日本企業の半分以上(約7割)が、コンプライアンスが徹底されていない」
というのは間違いありません。
ただ、さすがに7割は、ちょっと高すぎな気がしますね。
就職や転職をしたときに、ほぼ、法令違反の会社に勤めちゃうってことになりますので。
違反率が高いのは「安全基準」「健康診断」「労働時間(長時間労働)」「割増賃金」
立入検査結果で、法令違反が多い項目は、次のようになっています。
【労働基準関係の法令違反が多い項目】
- 安全基準
- 健康診断
- 労働時間(長時間労働)
- 割増賃金
- 労働条件の明示
1位 安全基準
- 違反件数 23,823件(28.6%)
- 労働安全衛生法 第20~25条
「労働者の危険や健康障害を防止するために事業者が行うべき対策」に関する項目です。
2位 健康診断
- 違反件数 22,139件(26.6%)
- 労働安全衛生法 第66条
職員の健康管理に関する項目です。
「職員の健康診断を行いましょう!」ってことですね。
3位 労働時間に関するもの
- 違反件数 18,007件(21.6%)
- 労働基準法 第32条・40条関係
主に、長時間労働に関する項目ですね。
これは、根が深い問題な気がします。
4位 割増賃金(時間外、休日及び深夜)
- 違反件数 16,521件(19.9%)
- 労働基準法 第37条
割増賃金の支払いに関する項目です。
「時間外手当の支払いは、1.25倍に!」みたいなやつですね。
5位 労働条件の明示
- 違反件数 10,025件(12.0%)
- 労働基準法 第15条
「雇用契約書等で、労働条件を明示しましょう」ってやつです。
ちなみに、労働基準法と労働安全衛生法について詳しく知りたい方は、こちらのサイトでご覧ください。
労働基準法とは、労働条件の最低基準を定めたもの
労働基準法の第一条は、次のようになっています。
(労働条件の原則)
第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
出典:労働基準法
ちょっと、読みづらいかもしれませんが、つまりは、
- 労働条件は、労働者が人として生活するために必要なものを満たさなければならない
- 労働基準法で定める労働条件は最低のもの
- 労働基準法の基準を下回ってはいけないし、この基準を上回るように努めなければならない
ってことです。
日本企業の約7割が、労働基準関係法令違反をしているという実績を見ちゃうと、労働基準法を守っている(労働基準法どおり)の会社って、「すごくいい会社」みたいに感じますけど、本来は、最低基準の会社なんですよね。
ブラック企業の定義とは?
労働基準関係法令違反をしているというと、「ブラック企業だ~」みたいに思っちゃいますが、そもそも、厚生労働省では「ブラック企業」について定義はしていません。
このとおり。
「ブラック企業」ってどんな会社なの?
厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、
①労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
②賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
③このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
などと言われています。
厚生労働省では、「ブラック企業」という言葉は使わず、その問題点を端的に表す表現として「若者の「使い捨て」が疑われる企業等」と称して対策を展開している。
具体的には、「若者の「使い捨て」が疑われる企業等」の特徴である過重な長時間労働の改善や、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組等を実施している。
この回答を見る限り、「法令違反 = ブラック企業」とは言えませんが、働く側からすれば、法律違反をしている時点で働きたいとは思いませんし、「ブラックだな~」って感じますよね。
「この会社、ブラックかも?」と思ったら、厚生労働省の「労働基準関係情報メール窓口」を活用しよう
もし、「自分の会社って、ブラック企業なんじゃないか?」と感じたら、厚生労働省に直接メールを送りましょう。
労働基準監督署へ相談するより、超効果的です。
送り方は、簡単です。
送信フォームに、必要項目を入力するだけなんで。
【送信フォームは、赤く囲った部分をクリックすると表示されます】
【送信フォーム(必要事項を入力)】
ちなみに、メールを送っておくと、労働基準監督署が、あなたの会社に抜き打ちの立入検査をしてくれますよ。
まとめ
ここで、「労働基準関係法令違反(令和3年)の状況と対応方法」について、おさらいです。
- 労働基準監督署の定期監督等(立入検査)は、年間12万件以上実施している
- 日本企業の約7割が、労働基準関係法令違反あり
- 違反率が高いのは「安全基準(28.6%)」「健康診断(26.6%)」「労働時間(21.6%)」「割増賃金(19.9%)」
- 「労働基準法どおり」とは、最低基準の会社
- 「法令違反 = ブラック企業」というわけではないが大きな要素になる
- 「この会社、ブラック企業なんじゃ!?」と思ったら、厚生労働省にメール送信を
労働基準法などの労働基準関係法令って、結構、複雑に書かれているため、
- 悪気はないんだけど、違反しちゃってた
- 解釈の違いがあった
みたいなこともあると思います。
ただ、なかには、法令違反だとわかっていながら、残業代も出さずに長時間労働を強いたり、パワハラがあたりまえとなっている職場があるのも事実です。
もし、そんな職場に巡りあってしまったら、「さっさと逃げる」ことが大切です。
我慢し続けて、健康を害してもつまらないですし。(そもそも、体を壊してまで、やらなきゃいけない仕事なんてないと思います)
ちなみに、転職するならハローワークから「再就職手当」をもらいましょう。
再就職手当は、以前に比べ、給付率が上がったため、結構な金額になってます。
もらわないのはもったいないと思います。
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再就職手当が支給される転職支援サービスは、こちらの記事で紹介しています。
⇒許可・届出のある職業紹介事業者等の定義とは?【再就職手当の要件】
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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