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高年齢求職者給付金のもらい方と支給額【65歳以上の失業保険(2023年8月以降)】

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お金、コインが積んである

2017年(平成29年)1月1日の雇用保険制度の改正により、雇用保険の適用範囲が拡大され、65歳以上の方でも「高年齢被保険者」として、雇用保険へ加入できるようになりました。

この改正により、今まで、1回しか受給できなかった「高年齢求職者給付金(65歳以上の失業保険)」が、条件を満たせば、何度でも受給できるようになり、転職活動(仕事探し)がしやすくなっています。

 

そこで、この記事では、雇用保険の高年齢求職者給付金における、

  • 受給要件
  • 支給額
  • 手続きのしかた
  • 年金との併給

についてまとめておきます。

 

「65歳以上の人で、退職(転職)を考えている」という人に、読んでいただけると嬉しいです。

この記事は、医療・介護施設で、人事および社会保険関係(手続き)の仕事を10年以上してきた経験をもとに書いています。

高年齢求職者給付金がもらえる人の条件(受給要件)

高年齢求職者給付金の支給を受けるには、次の2つの条件をいずれも満たす必要があります。

条件1:「失業の状態」にあること

失業の状態とは、

「積極的に働く意思と働く能力があって、職業の紹介(希望の仕事)にいつでも応じて働き始めることができるのに、就職できていない状態」

のことです。

 

わかりやすく言うと、次の3つを満たす状態です。

  • 積極的に働く意思があること
  • いつでも就職できる能力(健康状態や環境など)があること
  • 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと

 

なお、次のような状態にあるときは、高年齢求職者給付金はもらえません。

  • 家事に専念するとき
  • 農業・商業などの家業に従事し、就職することができない方
  • 再就職がすでに決まっていて、安定所の就職あっせんを必要としないとき
  • 病気等のため今すぐ働くことができないとき
  • 定年退職後しばらくの間休養するとき
高年齢求職者給付金は、雇用保険の基本手当(失業保険)と違い、受給期間の延長制度はありません。

条件2:退職日以前の「雇用保険の被保険者期間」が一定期間以上あること

離職(退職)の日以前1年間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上、または、賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある完全月が6ヵ月以上あること

 

ちょっとわかりづらいですね・・・

 

わかりやすく言うと、雇用保険の被保険者で、離職(退職)の日以前1年間うち

  • 11日以上働いた月
  • 80時間以上働いた月

の合計が、6ヶ月以上ある人ってことです。

雇用保険に加入していても、休職等により月の出勤日数が11日(または労働時間数が80時間)に満たない場合は、雇用保険の加入期間(被保険者期間)としてカウントされません。

 

また、雇用保険の被保険者期間における1ヶ月とは、

「離職日から1ヶ月ごとに区切っていた期間」

のことです。

 

つまり、退職日が「9月15日」だった場合、

  • 8月16日~9月15日 1ヶ月
  • 7月16日~8月15日 1ヶ月
  • 6月16日~7月15日 1ヶ月

って感じでカウントしていきます。

7月、8月、9月といった、月単位ではありませんので注意してください。

 

なお、「賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上」の受給要件については、令和2年8月1日より追加になった考え方です。

詳しくは、こちらの記事を。

失業手当、育児・介護休業給付等における受給資格の変更【被保険者期間の算定方法】
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高年齢求職者給付金の支給額は、「基本手当日額」と「給付日数」で計算する

支給額は、次の式で計算されます。

基本手当日額 × 給付日数 = 高年齢求職者給付金

 

たとえば、

  • 基本手当日額 4,946円
  • 支給日数 50日

の人の場合は、失業保険の支給合計額は「247,300円」となります。

高年齢求職者給付金は、基本手当(65歳未満の失業保険)と違い、一括支給となります。

基本手当日額の計算方法「基本手当日額早見表」

基本手当日額は、離職前6ヶ月間の給与合計額を180で割った「賃金日額」の約50~80%の範囲で設定されます。

具体的には、賃金日額を次の表に当てはめて計算します。(令和6年8月1日以降の計算式です)

賃金日額 基本手当日額
2,869円以上 5,200円未満 賃金日額 × 0.8
5,200円以上 12,790円以下 0.8 × 賃金日額 – 0.3 × {(賃金日額-5,200)÷ 7,590}× 賃金日額
12,790円超 14,130円以下 賃金日額 × 0.5
14,130円(上限額)超 7,065円(上限額)

 

たとえば、離職前6ヶ月間の月額給与が「30万円」だった場合、

30万円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 10,000円(賃金日額)

0.8 × 10,000 - 0.3 ×{(10,000-5,200)÷ 7,590}× 10,000 = 6,102円(基本手当日額)

となります。

支給日数の決まり方

支給日数は、雇用保険の被保険者期間(被保険者として雇用された期間)によって、変わっています。

このとおり。

被保険者期間 1年未満 1年以上
支給日数 30日 50日

高年齢求職者給付金の支給額を試算してみると

【条件1】

  • 離職前6ヶ月間の月額平均給与「30万円」
  • 雇用保険加入期間「2年間」

 

基本手当日額「6,102円」 × 支給日数「50日」 = 支給額「305,100円」

 

【条件2】

  • 離職前6ヶ月間の月額平均給与「25万円」
  • 雇用保険加入期間「8ヶ月」

 

基本手当日額「5,634円」 × 支給日数「30日」 = 支給額「169,020円」

 

繰り返しにはなりますが、高年齢求職者給付金は一括支給となります。

高年齢求職者給付金 支給額早見表(令和6年8月1日現在)

計算が、ちょっと複雑なので、早見表(概算)にしておきます。

失業保険(高年齢求職者給付金)賃金日額早見表20240801 ※クリック

「離職前6ヶ月間の給与合計額」に賞与は含みません。また、計算途中の端数処理の関係で、基本手当日額に、1円の誤差が出ている箇所があります。

高年齢求職者給付金の支給日は、退職理由で変わってくる

高年齢求職者給付金は、

  • 正当な理由なく、自己都合で退職(自分の責任による重大な理由により解雇されたときを含む)
  • 会社都合による退職(定年、解雇、雇用期間満了など)

で、支給日が変わってきます。

「正当な理由なく、自己都合で退職した場合」の支給日

  • 退職後、2~3週間で離職票が届く
  • ハローワークで手続きをした日から7日間が「待機期間」となる
  • 待機期間(7日間)の翌日から2ヶ月または3ヶ月間は給付制限
  • 給付制限終了後、約1週間で入金(振込み)
令和2年10月1日以降に、自己都合で退職した人は、給付制限期間が、2ヶ月となります。(5年間のうち2回まで)

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「会社都合による退職した場合」の支給日

「会社都合等による退職」の場合、「自己都合による退職」と違うのは、2~3ヶ月の給付制限があるかないかです。

  • 退職後、2~3週間で離職票が届く
  • ハローワークで手続きをした日から7日間が「待機期間」となる
  • 待機期間終了後、約1週間で入金(振込み)

 

65歳以上の人の場合、嘱託契約などで、雇用期間を定めて働いていることが多いかと思います。

その場合、雇用期間満了のタイミングで退職することで、「会社都合による退職」となりますので、給付制限(2ヶ月または3ヶ月)なく、高年齢求職者給付金を受給することができます。

高年齢求職者給付金を受けることのできる期限は離職した日の翌日から1年間です。この期限を過ぎると、それ以後、高年齢求職者給付金は支給されません。

高年齢求職者給付金をもらうための手続き

高年齢求職者給付金を受給するためには、必要書類を持参し、ハローワークの窓口で手続きを行う必要があります。

必要書類

  1. 離職票-1
    ⇒氏名や口座番号などを記入
  2. 離職票-2
  3. マイナンバーカード(マイナンバーカードを持ってない場合は、次の①②が必要です)
    ①個人番号確認書類(いずれか1種類)
    ⇒通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
    ②身元確認書類(いずれか1種類)
    ⇒運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
  4. 本人の印鑑(認印で可)
    ⇒スタンプ印は不可
  5. 写真2枚(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)
  6. 本人名義の預金通帳
  7. 船員であった方は船員保険失業保険証および船員手帳
離職票1・2は、退職時に会社へ依頼しておくことで、退職した会社より、送られてきます。

 

あとは、ハローワークの職員さんが案内してくれるので安心です。

 

【離職票-1の様式】

離職票1(厚生労働省)

 

【離職票-2の様式】

離職票2様式(厚生労働省)

 

ちなみに、「1.離職票-1」と「2.離職票-2」については、退職した会社から届くのに、通常2週間程度かかっちゃいます。

ただし、離職票の代わりに「退職したことがわかる書類(退職証明書など)」を持っていけば、「1.離職票-1」と「2.離職票-2」は、後日提出でOKです。

そうすれば、退職日の翌日からハローワークで手続きができます。(地域によって多少の違いがあります)

 

【詳細記事】

離職票が届く前に行う手続き(求職申込み)については、こちらの記事で詳しくまとめています。

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受給手続きの全体の流れ

全体の流れとしては、こんなイメージです。

高年齢求職者給付金の全体の流れ(フローチャート)20220801

令和2年10月1日以降に、自己都合で退職した人は、給付制限期間が、2ヶ月となります。(5年間のうち2回まで)

高年齢求職者給付金をもらっても、年金は支給停止にならない(併給可能)

基本手当(65歳未満の失業保険)は年金との併給はできませんが、高年齢求職者給付金は年金を受け取りながら受給できます。

根拠としては、次のとおりです。

雇用保険の失業給付と年金は同時に受けられるの?

特別支給の老齢厚生年金などの65歳になるまでの老齢年金(以下「年金」といいます。)と雇用保険の失業給付は同時には受けられません。

また、厚生年金保険の被保険者の方で、年金を受けている方が雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けられるときは、在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されます。

 

雇用保険の失業給付(基本手当)との調整

ハローワークで求職の申込みを行った日の属する月の翌月から失業給付の受給期間が経過した日の属する月(または所定給付日数を受け終わった日の属する月)まで、年金が全額支給停止されます。

※求職の申込みをした後で、基本手当を受けていない月がある場合、その月分についての年金はすぐに支給されず、3ヶ月程度後の支給となります。また、基本手当の受給期間経過後、年金の支払い開始は3ヶ月程度後となります。

出典:日本年金機構「雇用保険の失業給付と年金は同時に受けられるの?」

 

高年齢求職者給付金における年金との併用(厚生労働省)

出典:厚生労働省「雇用保険と年金の併給調整について」

 

65歳以上の方の失業給付とは、高年齢求職者給付金(一時金)のことです。

まとめ

ここで、「高年齢求職者給付金をもらう時のポイント」についてまとめておきます。

  • 高年齢求職者給付金を受給するには「失業の状態であること」と「一定の雇用保険被保険者期間」が必要
  • 支給額は「基本手当日額」と「支給日数」を掛けて算出
  • 手続きは、必要書類を持って、ハローワークへ行く
  • 受給期間は、退職日の翌日から1年間
  • 高年齢求職者給付金は、年金との併給が可能

 

少子高齢化が進み、人材不足が深刻化していることもあり、65歳以上の人の活躍がますます期待されています。

また、人生100年時代を迎え、今後は、65歳以上の人の転職があたりまえになってくるかと思います。

 

高年齢求職者給付金は、雇用保険制度から支給されるもので、社会保険に加入している人(雇用保険被保険者)の場合、毎月の給料から保険料を支払っています。

せっかく保険料を払っているんですから、活用しないのはもったいないです。

転職するときには、必ず利用するようにしましょう。

 

ちなみに、高年齢求職者給付金は、ハローワークで仕事を探さなくても受給できます。(手続きさえしていればOK)

なので、次のような民間の求人サイト(サービス)の利用も可能です。

上記のサイト(サービス)は、完全無料で利用できます。

 

ハローワークに求人を出さない企業も多いため、情報収集という意味でも、登録しておいて損はないと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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医療・介護業界で経営管理の仕事をしながら、ブログ「まいぼた」を書いています。

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