この記事では、育児休業給付金における
- 休業開始時賃金日額の算定に、産前産後休業期間は含むのか?
- 受給要件と休業開始時賃金日額を算出するときの基準の違い
について紹介しています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 出産を予定している(産休・育休の取得予定がある)
- 「子どもが欲しいな~」と思っている
- 仕事で、社会保険手続きを担当している
産休期間の賃金額によって取扱いが変わる「賃金日額の算定方法」
まずは、
「育児休業給付金における、休業開始時賃金日額の算定に、産前産後休業期間は含むのか?」
についてです。
結論から言っちゃうと、
「産休期間における、賃金支払対象期間ごとの賃金額によって取扱いが変わる」
となります。
「じゃあ、具体的にどう取扱いが変わるのか?」ですが、
- 産休期間の賃金を含めて計算した直近6ヶ月
- 産休期間の賃金を含めないで計算した直近6ヶ月
を比較し、休業開始時賃金日額が高くなる方が適用されます。(判断は、ハローワークにて行われます)
つまり、育児休業給付金の受給者にとって、不利にならないような取扱いになっているということです。
なので、一般的には、「2の計算」が適用されることになります。
産休期間の賃金を含めないで計算したほうが、賃金日額が高くなることが多いと思いますので。
育児休業給付金における、休業開始時賃金日額の算定における法的根拠
「産休期間における、賃金支払対象期間ごとの賃金額によって取扱いが変わる」
というルールですが、色々調べてみたんですが、はっきりとした根拠法令(通知)が見つかりませんでした。
ただ、厚生労働省の資料
- 「育児休業給付の内容及び支給申請手続きについて」
- 「育児休業給付について」
には、
と書いてあります。
つまり、「産休期間における、賃金支払対象期間ごとの賃金額によって取扱いが変わる」というルールは、
「原則として」
という言葉に集約されているってことなのかもしれません。
でも、この文章だけ読むと、
「産休期間中は、休業開始時賃金日額の計算に含めないんだな~」
って思っちゃいますよね・・・
育児休業給付金の受給要件と支給額の計算は別に考える
続いて、
「受給要件と休業開始時賃金日額を算出するときの基準の違い」
についてです。
育児休業給付金の
- 受給要件
- 休業開始時賃金日額の算定
は、ごっちゃになりやすんですが、対象期間などの基準が全く別です。
なので、分けて考えた方がわかりやすいです。
育児休業給付金の受給要件
育児休業給付金の受給要件は、次の2つをいずれも満たすことです。
- 子どもを養育するための「育児休業」を取得していること
- 雇用保険の被保険者で、育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上あること
この基準における「12ヶ月以上」とは、
「育児休業開始日の前日から1ヶ月ごとに区切った期間」
のことです。
たとえば、育児休業開始日の前日が「11月15日」の場合、
- 10/16~11/15(1ヶ月)
- 9/16~10/15(1ヶ月)
- 8/16~9/15(1ヶ月)
- 7/16~8/15(1ヶ月)
って感じで、12ヶ月を数えます。
この要件は、あくまで「育児休業給付金を受給できるかどうか」を判断しています。
【関連記事】
休業開始時賃金日額の算定方法
休業開始時賃金日額は、次のとおり算定されます。
休業開始時賃金日額の算定に当たっては、基本手当の場合と同様に賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までの間を1か月として算定し、当該1か月間に賃金支払基礎日数が11 日以上ある月を完全賃金月として、休業開始時点から遡って直近の完全賃金月6か月の間に支払われた賃金の総額を180 で除して得た額を算定することとする。
出典:厚生労働省職業安定局雇用保険課「業務取扱要領」
ちょっと、わかりづらい表現ですが、要するに、
「休業開始時賃金日額は、育児休業開始前6ヶ月間の賃金合計額を180で割って算出する」
ってことです。
ただ、ここで気をつけてほしいのは、「6ヶ月間」の考え方です。
というのも、育児休業給付金の受給要件では、
「育児休業開始日の前日から1ヶ月ごとに区切った期間」
で確認するのに対し、
休業開始時賃金日額の計算では、
「その会社ごとの賃金支払対象期間で区切った期間」
で計算することになります。
たとえば、賃金支払対象期間が「月末締め」であれば、
- 10/1~10/31(1ヶ月)
- 9/1~9/30(1ヶ月)
- 8/1~8/31(1ヶ月)
- 7/1~7/31(1ヶ月)
って感じで、6ヶ月を数えます。
つまり、育児休業給付金の受給要件と賃金日額の計算における「1ヶ月」は、全く基準(対象期間)が違うんです。
だから、育児休業給付金の受給要件と支給額の計算基準を、別にして考えないと、こんがらかっちゃうと言ったんです。(少し偉そうに言いましたが、僕がそうだったんです・・・)
休業開始時賃金月額証明書で見ると、受給要件と支給額の計算基準の違いがスッキリわかる!
育児休業給付金の支給を受けるための書類に、
「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」
というのがあるんですが、この証明書を見ると、受給要件と支給額の計算基準の違いが、スッキリわかります。
というのも、この証明書では、
- 受給要件の確認をするための欄
- 支給額を計算するための欄
がはっきり分けられているからです。
こんな感じです。(厚生労働省「育児休業給付について」からの引用です)
雇用保険被保険者 休業開始時賃金月額証明書
「青で囲った部分」が、受給要件の確認部分
「赤で囲った部分」が、賃金日額の確認部分
となります。
休業開始時賃金月額証明書の書き方(厚生労働省の資料より)
④「休業を開始した日の年月日」
- 被保険者が1歳に満たない子を養育するための休業を開始した日を記入してください。
⑦「休業を開始した日の前日に離職したとみなした場合の被保険者期間算定対象期間」
- 「休業を開始した日」欄は、④欄の休業を開始した日を記入してください。
- 休業開始した日から遡って賃金支払基礎日数が11日以上ある月を2年間記入しますが、11日以上ある被保険者算定対象期間を直近より12段以上記入があれば以下は記入を省略できます。
⑧「⑦の期間における賃金支払基礎日数」
- ⑦欄の期間における賃金支払の基礎となった日数を記入してください。
- 有給休暇の対象となった日、休業手当の対象となった日を含みます。
⑨「賃金支払対象期間」
- 最上段には休業を開始した日の直前の賃金締切日の翌日から、休業を開始した日の前日までの期間を記入し、以下順次さかのぼって賃金締切日の翌日から賃金締切日までの期間を2年間記入しますが、完全月で⑩欄の基礎日数が11日以上ある賃金支払対象期間を直近(産前休暇が含まれる期間前)より6段以上記入があれば以下は記入を省略できます。
⑩「⑨の基礎日数」
- ⑨欄の期間における賃金支払いの基礎となった日数を記入してください。
- 有給休暇の対象となった日、休業手当の対象となった日を含みます。
⑪「賃金額」
- 月給者はA欄に、日給者はB欄に記入しますが、日給者で月単位で支払われる賃金(家族手当等)はA欄に記入し、合計額を計欄に計上してください。
- A欄、又はB欄の記入のみで足りる場合は、計欄の記入は省略して差し支えありません。記入しない欄は斜線を引いてください。
⑫「備考」
- ⑦欄から⑪欄の参考となることを記入してください。
- たとえば、
賃金未払いがある場合
出産・傷病等で引き続き30日以上賃金の支払がない場合
休業手当が支払われたことがある場合
ちなみに、ハローワークの担当者は、この「休業開始時賃金月額証明書」で、受給資格の有無と賃金日額の算定をしています。
まとめ
ここで、「育児休業給付金の受給要件の確認と賃金日額の算定」についておさらいです。
- 受給要件は、育児休業開始日の前日から1ヶ月ごとに区切った期間で確認する
- 休業開始時賃金日額は、会社ごとの「賃金支払対象期間」で区切った期間にて計算する
- 育児休業給付金の休業開始時賃金日額の計算に、産休期間を含めるかどうかは、支給された賃金額によって変わる(判断はハローワークが行う)
現在の「出産・育児に係る制度(育児休業給付金を含めた)」は、非常に手厚くなっています。
ただ、制度を知らないと利用できないものもありますので、
「こんな制度があったよな~」
ぐらいには、調べておくことをオススメします。
ほんと、利用しないのはもったいないので。
なお、「出産・育児に係る制度」については、こちらの記事でまとめています。
もしよければ、チェックしてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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