「今の職場で、ずっと働きたい」
「仕事が好き」
「終身雇用・年功序列の会社、最高!」
この3つの言葉に、共感しますか?
それとも、違和感を感じますか?
僕としては、「終身雇用制度は崩壊した」とか、「ジョブ型雇用」「個人の時代」とか言われている現代、違和感を感じる人が多いと思っていました。
でも、違いました。
というのも、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「勤労生活に関する調査」によると、
- 終身雇用
- 年功序列の賃金制度
- 健康であれば年齢に関係なく働ける社会にしたほうがよい
- 年金がもらえるようになっても働きたい
を支持する割合がかなり多かったからです。
そこで、この記事では、働く人の本音として、
- 転職者数の推移
- 転職経験者の割合と転職回数
- 就労意識の動向(終身雇用・年功序列・キャリア形成)
- 高齢時の就労意欲
について、備忘録的にまとめておきます。
「できれば転職なんかしたくない・・・」という人に読んでいただけると嬉しいです。
転職者数の推移
2021年の転職者数は、290万人です。
転職者数のピークは、2019年の353万人ですので、新型コロナウイルスなどの影響もあってか、約60万人が減ったことになります。
とはいえ、転職者数の年間推移を見てみると、2002年から280~350万人の間で推移していますので、毎年、かなりの人が転職していることになります。
こんな感じです。
出典:厚生労働省「令和4年版労働経済の分析」
転職経験者の割合と転職回数
総務省が実施した「平成29年就業構造基本調査」によると、転職経験者(転職したことがある人)は、
- 15~24歳 20.4%
- 25~34歳 43.4%
- 35~44歳 55.4%
- 45~54歳 47.7%
となっています。(概算値です)
また、厚生労働省「令和4年版労働経済の分析」においても、転職経験者の割合は、次のようになっているため、かなりの人が転職を経験していることになります。
【転職経験者の割合(正規雇用労働者)】
【転職経験者の割合(非正規雇用労働者)】
転職経験者の転職回数としては、年齢層により、かなりバラツキがありますが、全体では、1回が最多で「27.7%」次に、3回「19.5%」、2回「18.9%」と続きます。
【転職経験者における年齢別転職回数割合】
(単位:%)
年齢 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回以上 |
15~19歳 | 98.8 | 0.1 | - | - | - | - |
20~24歳 | 69.7 | 16.9 | 9.9 | 1.2 | - | 1.2 |
25~29歳 | 49.3 | 23.9 | 17.8 | 5.9 | 2.0 | 1.0 |
30~34歳 | 27.1 | 24.9 | 23.6 | 14.8 | 3.5 | 5.7 |
35~39歳 | 14.6 | 22.2 | 25.0 | 17.5 | 8.3 | 12.2 |
40~44歳 | 14.9 | 12.9 | 20.0 | 15.4 | 11.5 | 25.1 |
45~49歳 | 13.9 | 14.1 | 22.6 | 17.1 | 11.7 | 20.6 |
50~54歳 | 14.1 | 18.3 | 17.5 | 14.1 | 11.4 | 24.6 |
55~59歳 | 17.9 | 14.6 | 17.6 | 14.9 | 11.6 | 22.9 |
60~64歳 | 34.1 | 16.2 | 10.9 | 20.6 | 5.4 | 12.9 |
65歳以上 | 14.8 | 21.6 | 26.2 | 11.5 | 6.6 | 17.4 |
全体 | 27.7 | 18.9 | 19.5 | 13.1 | 7.1 | 13.4 |
出典:厚生労働省「令和2年転職者実態調査」より作成
40代・50代の人は、6回以上の割合が高くなっています。
割合の変化がわかりやすいように、グラフにしてみます。(見やすさを重視して、3回以上の割合をまとめています)
30歳以上の5割以上の人が、3回以上の転職経験がありますね。
40代については、転職経験者が7割を超えています。
こうやって見てみると、かなり多くの人が転職していることがわかります。
就労意識の動向(終身雇用・年功序列・キャリア形成など)
転職する人はかなり多いですが、
「できれば転職なんかしたくない」
というのが働く人の本音です。
終身雇用制度を希望「87.9%」・年功序列の賃金制度を希望「76.3%」
終身雇用制度は崩壊したとか、仕事の評価基準について、成果主義が注目されたりしてますが、ほとんどの人は、終身雇用制度や年功序列の賃金制度を希望しています。
しかも、その割合はどんどん上がっています。
こんな感じです。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「第7回勤労生活に関する調査」より作成
また、年代別に見てみても、終身雇用制度と年功序列の賃金制度を支持する割合が、すべての年代で高くなっています。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「第7回勤労生活に関する調査」
20~29歳の年代でも、
- 終身雇用を希望 87.3%
- 年功賃金を希望 72.6%
というのは、ちょっと意外な感じがしますが、これが本音なんだと思います。
とすると、「ジョブ型雇用」とか「成果主義」なんていうのは、一部のハイパフォーマーが希望しているだけで、かつ、雇用する側(企業側)にとって、都合の良い雇用制度なんだと思います。
人件費のコントロールがしやすいですからね。
職員の高齢化によって、人件費が増大することもありませんし、人材育成にかかる投資も最小限ですみますので。
ちなみに、上司などに対して、「大した仕事もしないくせに、給料もらい過ぎだ」みたいに思ったこと、一度や二度は、誰だってありますよね。
いわゆる、「働かないおじさん」や「無能な上司」ってやつです。
そんなとき、「成果主義の会社なら、自分の方が給料がもらえるはずなのに」って思ったりしますよね。
とはいえ、本音では、ほとんどの人が年功序列の賃金制度を希望し、認めているんですよね。
1つの企業に長く勤め、だんだん管理的な地位になるを望む人が約5割(希望のキャリア形成)
最近は、「キャリアアップ=転職」みたいなイメージがありますよね。
メディアでも、ジョブホッパーが注目され、キャリアアップ転職の成功体験(法則)みたいなものがあふれています。
そういった状況からすると、複数の企業を経験し、キャリアアップしていくことを希望する人が多いのかと思いますよね。
でも、違うんです。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「第7回勤労生活に関する調査」より作成
1つの企業に長く勤めることを希望する人が、5割を超え、複数の企業に努めることを希望する人は、2割程度です。
さらに驚きなのは、「一企業キャリア」の支持割合で、20代などの若い世代(20~29歳)が一番多いってことです。
支持率「54.8%」です。
そして、どんどんその割合は高くなっています。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「第7回勤労生活に関する調査」
つまり、若い世代も含めた、どの世代においても「できるなら、転職なんかしたくない」という人が多いってことです。
「じゃあ、なんで毎年300万人も転職しているのか?」ってことになるんですけど、ほとんどの人は、現在の職場に不満があり、その不満が許容範囲を超えたってことだと思います。
つまり、いわゆるブラック的な企業が多いってことです。
職員さんは、「働きやすい職場(環境)なら、ずっと働き続けたい」って思っているわけですし。
【関連記事】
日本企業の約7割が、労働基準関係法令違反をしています。
高齢時の就労意欲「健康であれば働き続けたい 92.1%」
「仕事、行きたくないな~」
「働かないでお金がもらえたらいいのに・・・」
って思ったこと誰だってありますよね?
とはいえ、本心では、9割以上の人が「働きたい」と思っています。
【健康であれば、年齢に関係なく働ける社会にしたほうがよい】
(単位:%)
年齢 | そう思う | よいと思わない |
20~29歳 | 85.4 | 14.6 |
30~39歳 | 90.2 | 9.8 |
40~49歳 | 93.9 | 5.8 |
50~59歳 | 95.4 | 4.3 |
60~69歳 | 93.7 | 5.6 |
70歳以上 | 90.2 | 6.8 |
全体 | 92.1 | 6.9 |
【年金がもらえるようになっても働きたい】
(単位:%)
年齢 | 働く意欲あり | 働く意欲なし | ||
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | |
20~29歳 | 61.3 | 74.4 | 36.0 | 24.4 |
30~39歳 | 69.9 | 76.5 | 30.1 | 21.6 |
40~49歳 | 79.2 | 78.5 | 19.5 | 19.7 |
50~59歳 | 84.3 | 76.1 | 15.0 | 21.3 |
60~69歳 | 79.1 | 74.0 | 20.9 | 22.1 |
70歳以上 | 76.8 | 72.1 | 20.3 | 21.9 |
全体 | 76.7 | 75.1 | 22.0 | 21.6 |
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「第7回勤労生活に関する調査」より作成
働かなくても年金というお金がもらえるのに、8割近くの人が「働きたい」と回答しています。
もちろん、「年金だけじゃ不安だから」という人もいると思います。
とはいえ、これだけの人が「働きたい」と思っているんですから、少なくとも働くことに対して、ネガティブな印象はないんだと思います。
「お金以外の価値を働くことに感じている」という人も多いのかもしれません。
転職したくない人の転職方法:しっかりと転職(就職)活動をする
逆説的ですが、転職したくないなら、しっかりと転職(就職)活動をするしかありません。
働きやすく、職員を大切にしてくれる職場であれば、転職しようとは思いませんし。
たとえば、こういう会社もありますよ。
「じゃあ、しっかりと転職活動するって、どうするの?」ってことになるんですけど、
- 自分の働き方の希望と適性(強み)を明確にする
- 事前の情報収集を徹底する
しかないと思います。
自分の働き方の希望と適性(強み)を明確にするとは?
働きやすい会社って、その人その人によって違っちゃいます。
なので、まず、「あなたにとって働きやすい会社って、どんな会社なのか?」を明確にする必要があります。
そのためにも、あなたの働き方の希望をはっきりさせるのと、適性(強み)を客観的に把握しなければなりません。
というのも、仕事って、必ず、向き不向きがあるので、あなたの特性(強み)にあった職場じゃないと、活躍できないからです。
もちろん、「活躍なんてできなくてもいいよ」「人事評価なんか関係ない」って人もいるかと思います。
でも、評価されないってことは、色々と、つまらないことを言われたりするので、ストレスが多くなります。
結果、働きづらくなっちゃいます。
そういう意味でも、昇格にこだわる必要は全くないですが、評価自体は良い方がいいです。
また、わざわざ、自分の「得意」から遠い仕事を選ぶ必要はありませんし。
そこで、無料で利用できる自己診断ツールを活用します。
オススメは、リクナビNEXT の「グッドポイント診断」です。
質問に答えるだけで、客観的に見たあなたの「強み」がわかります。
ぜひ、チェックしてみてください。
【グッドポイント診断を受ける】
⇒公式サイト「リクナビNEXT 」
ちなみに、適性(強み)を明確にするという意味では、この本もオススメです。
事前の情報収集を徹底するには?
あなたが希望する働き方と適性(強み)がわかったら、あなたに合う職場を探します。
このとき、個人での情報収集には限界があるので、無料で利用できる転職サイト(リクルートエージェントなど)を活用しましょう。
転職サイトを利用すれば、スカウトメールが届いたり、キャリアアドバイザーさんが、あなたに代わって、情報収集、給料などの条件交渉、面接などの日程調整をすべてやってくれます。
そもそも、「できれば転職なんかしたくない」が前提なので、どんなに時間をかけても、あなたが長く働ける職場に出会えればOKです。
そのためにも、転職サイトを活用し、気長に情報収集していきましょう。
経験則ではありますが、僕としては、次の5つを確認すると、その会社(企業)が職員さんを大切にしているかわかると思っています。
- 出戻り職員数
- 有給休暇消化率
- 休み希望を、何日聞いてくれるのか?(シフト制の場合)
- 残業があるのか、ないのか?
- 勤続年数別の職員数はバランスが良いか?(偏ってないか?)
まとめ
ここで、「働く人の実情と本音」について、まとめておきます。
- 年間の転職者数は、約300万人
- 転職経験者(正規職員)は、男性5割以上、女性6割以上
- 30歳以上の5割以上の人が、3回以上の転職経験あり
- 終身雇用制度を希望「87.9%」・年功序列の賃金制度を希望「76.3%」
- 5割以上の人が「一企業キャリア」を支持
- 8割近くの人が「年金がもらえるようになっても働きたい」と回答
働く人にとっては、雇用が守られていて、給料がちゃんと上がっていくという安心感があるこそ、一生懸命、働くことができるんだと思います。
人生設計(ライフプラン)も立てやすいですし、そもそも、変化を嫌うという人の本質からすれば、転職なんてその最たるものですからね。
そういう意味では、終身雇用(生涯雇用)とか、年功序列の賃金制度って、働く人にとってはすごくいい制度なんですよね。
慣れた職場環境の方が、スキルアップもしやすいと思いますし。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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