この記事では、
共働き夫婦が「産前産後休暇・育児休業」を取得した場合の「配偶者控除等(いわゆる税金の扶養に入る)の取扱い」
について紹介しています。
2018年(平成30年)分の年末調整から「配偶者控除・配偶者特別控除」の取扱いが改正され、配偶者控除等の適用を受けられる(扶養に入れる)人の範囲が拡大しています。
もちろん、産休・育休中の人で、配偶者(旦那さんなど)の扶養に入れる人も増えますので、必要以上の税金を払わないよう、忘れずに申告(手続き)するようにしましょう。
配偶者控除・配偶者特別控除の適用を受けられる人
「配偶者控除・配偶者特別控除」を受けるには、次に3つの条件を満たすことが必要です。
- 「給与所得者の本年中の合計所得金額」が1,000万円以下であること(給与収入だけの場合11,950,000万円以下)
- 「生計を一にする配偶者の本年中の合計所得金額」が133万円以下であること(給与収入だけの場合2,015,999円以下)
- 「給与所得者の配偶者控除等申告書」を年末調整で提出すること
逆にいえば、
「この条件さえ満たしてれば、配偶者さん(旦那さんなど)の扶養(健康保険)に入っていなくても、配偶者控除・配偶者特別控除の適用を受けられる」
ってことです。
配偶者控除・配偶者特別控除の節税効果は大きい
「配偶者控除・配偶者特別控除」の控除額は、次の2つの条件から計算されます。
- 給与所得者の所得金額
- 配偶者(生計を一にする)の所得金額
一覧にすると、こんな感じです。
【令和3年分の配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表】
出典:国税庁「令和3年分年末調整のしかた」
「配偶者控除・配偶者特別控除」の最大控除額は、38万円です。
生命保険料控除(一般・介護医療・個人年金)の最大控除額が12万円ですから、節税効果は大きいと思います。
なお、ざっくりではありますが、「どのくらいの税金が安くなるのか?」を試算してみると、
【試算1】
- 配偶者控除等「所得税38万円、住民税33万円」
- 所得税率 5%
- 住民税率 10%
- 安くなる税金 52,000円
【条件2】
- 配偶者控除等「所得税38万円、住民税33万円」
- 所得税率 10%
- 住民税率 10%
- 安くなる税金 71,000円
となります。
配偶者控除・配偶者特別控除を受けるには「年末調整」で申告するだけ
控除を受けるための手続きは、簡単です。
給与所得者(旦那さんなど)の年末調整で、「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出するだけなんで。
なお、「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、こんな様式です。
出典:国税庁「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
ただ、1つだけ問題が・・・
それは、
「給与所得者の配偶者控除等申告書の作成が、結構めんどくさい~」
ってこと。
いくつか、「めんどーポイント」をあげると、
- 給与収入から所得額を計算する
- 控除額を計算するための「区分Ⅰ・Ⅱ」の判定
- 配偶者控除・配偶者特別控除の金額の算出
などなど。
なので、極力簡単に「給与所得者の配偶者控除等申告書」を作成できるように、
- 所得の計算方法(自動計算)
- 申告書の書き方
をこちらの記事で紹介しています。
参考にしていただけると嬉しいです。
出産手当金・育児休業給付金をもらっていても控除は受けられる
社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している人が出産をする場合、
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 育児休業給付金
をもらうと思いますが、これらの給付金は、「配偶者控除・配偶者特別控除」の適用を受けるための所得計算に含める必要はありません。
わかりやすく、2つのパターンで例えてみます。
【パターン1】
- 配偶者が、1~4月まで「毎月25万円の給与」をもらった
- 5月~12月まで、産休・育休で仕事を休み、次の給付を受けた
①出産育児一時金 42万円
②出産手当金 56万円
③育児休業給付金 70万円 - 賞与支給なし
【パターン2】
- 配偶者が、1~8月まで育休で仕事を休み、「育児休業給付金120万円」をもらった
- 職場復帰し、9月~12月まで「毎月25万円の給与」をもらった
- 賞与支給なし
結論から言うと、どちらのパターンも、配偶者控除が適用され税金が安くなります。
「出産育児一時金」「出産手当金」「育児休業給付金」は収入に含めませんので、給料の100万円(4ヶ月分)のみが所得計算の対象となります。
計算の結果、配偶者の所得金額が38万円以下となり、38万円(住民税は、33万円)の所得控除が受けられることになります。
なお、通勤手当については、「非課税限度額」までは給与収入に含める必要はありません。
詳しくは、国税庁の公式サイトを。
【関連記事】
「傷病手当金」も非課税のため、配偶者控除等の所得計算に含めない
妊娠中の体調不良(妊娠悪阻、切迫流産、切迫早産など)で仕事を休んだ場合、一定の条件を満たすと「傷病手当金」が支給されます。
この「傷病手当金」も、出産手当金などと同じ非課税所得のため、「配偶者控除・配偶者特別控除」の適用を受けるための所得計算に含める必要はありません。
なお、有給休暇で休んだ場合は給料が発生するので、給与収入になります。
【関連記事】
配偶者控除等を受けても、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養に入る必要はない
「税金における扶養」と「社会保険(健康保険・厚生年金)における扶養」は、全く別の制度です。
結構、ごっちゃになりやすいので、完全に分けて考えたほうがいいです。
ですので、配偶者控除等を受けても(税金の扶養に入っても)、社会保険の手続きは不要です。
つまり、「健康保険証は、そのままでOK」ってことです。
なので、安心して控除を受けてください。
まとめ
ここで、「産前産後休暇・育児休業を取得した場合の配偶者控除・配偶者特別控除のポイント」をまとめておきます。
- 給与所得者の給料が「1,195万円以下」であること
- 配偶者の給料が「2,015,999円以下」であること
- 最大控除額は「38万円」
- 手続きは年末調整で「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出するだけ
- 「出産育児一時金・出産手当金・育児休業給付金・傷病手当金」は、非課税所得のため収入に含めない
- 通勤手当は「非課税限度額」までは、給与収入に含めない
- 社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養は、全く別の制度なので関係なし
見ていただいたとおり、配偶者が産休・育休をフルで取得した場合、「配偶者控除・配偶者特別控除」を受けられる可能性が高いです。
「うちは、扶養に入れてないから~」という先入観は捨てて、配偶者控除等の対象になるか調べてみてはいかがでしょうか。
もしかしたら、もしかするかもしれませんよ~
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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