死亡退院された患者さんの家族から
「生計同一関係に関する申立書の第三者による証明欄の記入をしてほしい」
と依頼されることがあります。
この書類は、年金受給者が亡くなったとき、住民票上の住所が違う人が未支給年金を受け取るために必要になるものです。
うちの病院では、この「第三者による証明欄」の記入を、原則、お断りしています。
というより、年金事務所の担当者に確認を行い、お断りするように変更しました。
そこで、この記事では、
「なぜ、生計同一関係に関する申立書の第三者による証明欄の記入を断ることにしたのか?」
について、年金事務所の給付担当者に確認した内容を備忘録的にまとめています。
「第三者による証明欄への記入について、違和感を感じている」という病院や介護施設などで働いている人に読んでいただけると嬉しいです。
「生計同一関係に関する申立書」における、第三者による証明について
うちの病院では、次のような対応に変更しました。
- 「生計同一関係に関する申立書」における、第三者による証明は、原則、行わない
- 患者さんの家族など(依頼者)へは、証明が難しい旨を伝え、他の方法で証明する方法があるため、年金事務所に相談するように案内する
第三者による証明を行わない理由
年金事務所の担当者に、次の3点について質問をしました。
- 第三者による証明の範囲とは?
- 入院費の領収書の写しの提出をすることで第三者による証明欄の記入は省略できないのか?
- 証明ができないとき、依頼者へは、どう案内したらよいか?
それでは、1つずつ紹介していきます。
第三者による証明の範囲とは?(第三者による証明欄の考え方)
年金事務所としては、入院患者(年金受給者)さんの入院費を負担していれば、「生計同一である」と判断しているとのこと。
なので、病院や介護施設が第三者による証明をするのは、「入院費の支払いを、その申請者が行っていたか?」という部分だけです。
つまりは、経済的援助をしていたことの証明をするってことです。
ちなみに、生計同一関係に関する申立書における「生計同一」の認定要件とは、次に該当する人のことをいいます。
3 生計同一に関する認定要件
(1)認定の要件
生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者に係る生計同一関係の認定に当たっては、次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。
①生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が配偶者又は子である場合
ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
(ア)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ)単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
(ァ)生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(ィ)定期的に音信、訪問が行われていること
②生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が死亡した者の父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族である場合
ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
(ア)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ)生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われていると認められるとき
出典:厚生労働省「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(年発0323第1号)」
入院費の領収書の写しの提出をすることで、第三者による証明欄の記入は省略できないのか?
年金事務所としては、入院費の領収書の写しだけでは、その申請者が本当に入院費を負担したかどうかわからないため、第三者による証明が必要との回答でした。
つまり、「他の人が入院費を支払ったかもしれない」ってことです。
その理屈からすると、
「うちの病院としても、入院費の支払いを受けたことは証明できるけど、本当にその申請者が入院費の負担をしたかどうかまでは確認できてない」
と伝えました。
そうしたら、年金事務所としては、「その証明が難しいのであれば、証明はしないでほしい」との回答でした。
証明ができないとき、依頼者へは、どう案内したらよいか?
一応、聞いてみました。
回答としては、
「証明が難しい旨を伝え、他の方法で証明する方法があるため、年金事務所に相談するよう伝えてほしい」
とのことでした。
「生計同一関係に関する申立書」とは?
生計同一関係に関する申立書は、「亡くなった年金受給者と生計を同じにしてました」と説明するためのもので「未支給年金請求書」に添付する書類になります。
この書類は、年金事務所より、対象の方へ送付しています。
様式としては、こんな感じです。
赤く囲ったところが、「第三者による証明欄」です。
【表面】
【裏面】
未支給年金とは?
未支給年金とは、年金受給者が亡くなった場合、死亡した月まで年金が支払われますが、どうしても受給できない年金が1~2ヶ月分発生しちゃいます。
それが、未支給年金です。
その未支給年金を請求できるのが、亡くなった方の
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの
となります。
法的根拠は、このとおりです。
国民年金法
(未支給年金)
第十九条 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
ちなみに、三親等内の親族とは、次のとおりです。
出典:全国健康保険協会「被扶養者の範囲図」
まとめ
年金事務所の担当者によっては、「第三者による証明」を入院していた病院や介護施設に記入してもらうよう案内する人がいるようです。
もちろん、病院や介護施設側が、その申請者が本当に入院費や入居費用を負担したことを確認しているならいいのですが、なかなかそこまでしている所は少ないと思います。
なので、依頼されたからといって、安易に署名せず、他の証明方法を選んでもらったほうがいいかなって思います。
あとあと、年金事務所から問い合せがきても困りますしね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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