この記事では、訪問看護ステーションにおける「セラピスト等(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)」の
- 離職率
- 退職理由
- 給料(年収)
- 職種割合
- 働きやすい「訪問看護ステーション」の探しかた
について紹介しています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 訪問看護に興味がある
- 訪問看護で、働きたいと思っているんだけど・・・
- 訪問看護って、どうやって探したらいいの?
なお、この記事で紹介している各種データは、
- 神奈川県「看護職員就業実態調査結果(訪問看護ステーション)」
- 日本理学療法士協会「理学療法士を取り巻く状況について」
- 厚生労働省「雇用動向調査」「介護事業経営実態調査」「賃金構造基本統計調査」
の結果をもとに作成したものです。
また、引用させていただきました表などについては、記事の中で明記しています。
理学療法士等の訪問看護ステーションの離職率は、「17.3%」とかなり高め!!
まず、結論です。
- 理学療法士等の離職率は、医療機関で「10.2%」、介護事業所で「18.8%」、訪問看護で「17.3%」
- 産業別の離職率では、「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」「サービス業」に次いで4位
- 訪問看護STの離職率は、2019年度で「19.1%」
- 退職理由の1位は、「訪問看護ST以外の他施設(病院など)に転職」
- 訪問看護、訪問リハビリの給料(年収)は高い
- 訪問看護ステーションの従事者の約2割は、理学療法士などのセラピスト
それでは、1つずつ説明していきます。
理学療法士等の離職率は、医療機関で「10.2%」、介護事業所で「18.8%」、訪問看護で「17.3%」
厚生労働省の調査では、理学療法士等の離職率は、次のようになっています。
【理学療法士等における医療機関・介護事業所別 離職率】
出典:日本理学療法士協会「理学療法士を取り巻く状況について」
高度急性期の病院が、「6.8%」で一番低く、訪問リハが「37.4%」と、一番高くなっています。
訪問看護は「17.3%」なので、介護事業所としては低めですが、医療機関と比べるとかなり高い離職率となっています。
産業別の離職率では、「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」「サービス業」に次いで4位
次に、産業別の離職率と比較してみます。
産業別の離職率ですが、
- 1位は、ダントツで、宿泊業、飲食サービス業「28.6%」
- 2位は、生活関連サービス業、娯楽業「21.5%」
となっています。
そのあとは、
- サービス業(他に分類されないもの) 20.0%
- 不動産業、物品賃貸業 15.9%
- 教育、学習支援業 15.6%
- 卸売業、小売業 15.0%
- 医療、福祉 14.7%
と続きます。
理学療法士等の訪問看護ステーションの離職率は、「17.3%」であるため、第4位となります。
産業別で見てみても、理学療法士等の訪問看護ステーションの離職率は、かなり高めですね。
ちなみに、訪問リハビリは、ダントツの1位です。
訪問看護STの離職率は、2019年度で「19.1%」
職種を理学療法士などのセラピストに限定せず、
「訪問看護ステーションとしての離職率は、高いのか?低いのか?」
を見てみます。
一覧にすると、こんな感じです
年 | 常勤 | 非常勤 | 全体 |
2013年 | 12.4 | 16.0 | 14.2 |
2014年 | 18.0 | 20.4 | 19.1 |
2015年 | 15.2 | 18.7 | 16.8 |
2016年 | 15.0 | 18.0 | 16.4 |
2017年 | 18.1 | 20.4 | 19.1 |
2018年 | 17.8 | 19.3 | 18.4 |
2019年 | 18.2 | 20.4 | 19.1 |
理学療法士等の訪問看護ステーションの離職率は、「17.3%」ですので、ほぼ変わりはないです。
なので、理学療法士等の職種というよりは、訪問看護という業態(事業所)として離職率が高めということになります。
ただ、それより気になるのは、
「なぜ、2014年から急激に離職率が上がっているのか?」
ではないでしょうか。(2013年から2014年にかけて6.0%ほど跳ね上がっています)
これは、おそらく、営利法人(株式会社など)が運営する訪問看護ステーションの割合が急増した時期と近いことが関係していると思われます。
というのも、そもそも、訪問看護ステーションというのは、社会福祉法人や医療法人による運営が多かったのですが、2014年からは、営利法人(株式会社など)による運営が多くなっています。
こんな感じに。
結果、2019年の経営(運営)主体別の割合は、次のとおり、営利法人が「53.6%」とダントツ1位になっています。
つまり、何が言いたいかというと、
「営利法人による、訪問看護事業所の乱立により、劣悪な労働環境の事業所が増えたのでは!?」
ということです。
事実、厚生労働省「介護事業経営実態調査」によると、社会福祉法人や医療法人に比べ、営利法人(株式会社など)が運営する訪問看護ステーションの方が、
- 給与額が低い
- 看護師1人あたりの訪問件数が多い
となっています。
こんな感じです。
社会福祉法人 | 医療法人 | 営利法人 | |
看護職員1人あたり給与費 | 438,117円 | 423,693円 | 396,055円 |
看護職員1人あたり訪問回数 | 60.7回 | 70.6回 | 81.9回 |
訪問1回あたりの給与 | 7,218円 | 6,001円 | 4,836円 |
もちろん、「すべての事業所が・・・」というわけではありませんが、比較的、そういった事業所が多いということです。
退職理由の1位は、「訪問看護ST以外の他施設(病院など)に転職」
セラピストさんに限定されたものではないですが
「訪問看護ステーションを退職した人は、どんな理由で辞めているのか?」
について、見てみます。
わかりやすく一覧にすると、1位から5位は、こんな感じです。
- 訪問看護ST以外に転職 21.8%
- 他の訪問看護STに転職 12.9%
- ご自身の体調不良 10.6%
- 結婚・出産・子育て 7.1%
- 転居 6.8%
1位の「訪問看護ST以外に転職」だけを見ちゃうと、
「やっぱ、訪問看護は大変なんだ・・・」
となっちゃいますよね。
でも、退職理由の2位に「他の訪問看護STに転職」が入っていることを思うと、
「訪問看護という仕事は、合う合わないが激しく、また、事業所による労働環境の違いが大きい」
ということなんだと思います。
また、日本理学療法士協会の調査によると、理学療法士等の退職理由(全体)は、
- キャリアアップ
- 仕事内容・待遇への不満
- 職場での人間関係
- 結婚など
が多いとなっているので、退職理由としては、大きな違いはないのかも?って思います。
ちなみに、僕の回りでは、「訪問看護ステーション職員の定着率は高い」というイメージです。
「1回、訪問看護やっちゃうと、もう、病院じゃ働けないよね~」と言っている人が、結構多いので。
ほんと、訪問看護って、向き不向き(合う合わない)が激しい職場なんですよね。
訪問看護、訪問リハビリの給料(年収)は高い
訪問看護ステーションや訪問リハビリで働く「理学療法士等の給料」は、比較的高めで、次のようになっています。
一覧にすると、こんな感じです。
職種 | 年収 |
セラピスト全体 | 4,189,400円 |
訪問看護PT(社会福祉法人) | 5,250,792円 |
訪問看護PT(医療法人) | 5,108,520円 |
訪問看護PT(営利法人) | 4,848,936円 |
訪問看護OT(社会福祉法人) | 4,889,052円 |
訪問看護OT(医療法人) | 5,110,956円 |
訪問看護OT(営利法人) | 4,860,804円 |
訪問リハビリPT | 4,735,896円 |
訪問リハビリOT | 4,533,540円 |
訪問リハビリST | 4,635,312円 |
訪問看護ステーションや訪問リハビリの方が、年収額で、30~100万円ほど高くなっています。
その中でも、社会福祉法人と医療法人の訪問看護が、特に高くなっていますね。
ちなみに、訪問看護ステーションと訪問リハビリ事業所の年収額は、次のように推移しています。
バラツキが大きいので、傾向をつかめるほどではないですが、PT・OT・STの三職種では、PTの給料が一番高くなっています。
【関連記事】
訪問看護ステーションの従事者の約2割は、理学療法士などのセラピスト
訪問看護ステーションで働く理学療法士等は、どんどん増えています。
このとおりです。
出典:厚生労働省中央社会保険医療協議会「介護・障害福祉サービス等と医療との連携の在り方について」
訪問看護ステーションの従事者の約2割は、理学療法士などのセラピストになっています。
また、結構なペースで増えています。
理学療法士等の従事者割合別では、
- 理学療法士等なし 45.9%
- 20%未満 20.7%
- 20~40%未満 17.8%
- 40~60%未満 10.9%
- 60~80%未満 4.3%
- 80%以上 0.4%
となっており、54.1%の事業所で理学療法士等を配置しています。
なかには、理学療法士等を8割以上配置している事業所もありますね。
8割というと、たとえば、看護師が2名だとしたら、理学療法士等が8名になる計算なので、さすがにやりすぎな気がしますが・・・
働きやすい「訪問看護ステーション」の探しかた
この記事で紹介したとおり、訪問看護ステーションは、事業所による労働環境の違いが激しいです。
なので、情報収集をしっかり行い、事業所選びを慎重に行うことが大切になります。
そうじゃないと、
「こんなはずじゃなかったのに・・・」
となっちゃいます。
ただ、情報収集をしっかりすると言っても、なかなか個人では難しいですよね。
そんなときは、無料で利用できる人材紹介サービス(マイナビコメディカルやPT・OT・ST WORKERなど)を活用しましょう。
人材紹介サービスなら、各事業所の情報が豊富のため、あなたの希望条件にあった事業所をいくつも探してくれます。
また、
- 面接などの日程調整
- 給与額の交渉
- 訪問件数や担当数
- 有給休暇の取得状況
などの「面倒な手続き」や「気になったことの確認(情報収集)」も、あなたの代わりにやってくれます。
もちろん、途中で利用をやめても、キャンセル料などが発生することもありません。
なので、
「今すぐ、転職する気はないんだけど・・・」
という人でも、情報収集という意味で、登録しておいて損はないと思いますよ。
【無料登録(公式サイト)はこちら】
まとめ
ここで、「訪問看護ステーションの離職率から考える、働きやすい事業所の探し方」についてまとめておきます。
- 訪問看護ステーションは、労働環境の違いが激しい
- 情報収集をしっかり行い、事業所選びを慎重に行うことが大切
- 社会福祉法人か医療法人が運営する事業所を探す
- 事業所探しは、人材紹介サービス(転職エージェント)を使う
在宅サービスは、社会保障費の問題(財政状況の悪化など)もあり、国が強烈に推進しています。
そういった背景からしても、訪問看護ステーションの需要は増え続けていきます。
ただ、離職率を見ていただいたとおり、訪問看護ステーション探しは、病院以上に、慎重に行う必要があります。
せっかくの「訪問看護(訪問リハ)への興味」を失ってしまわぬよう、働きやすく、やりがいを持って働ける事業所を探してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【あわせて読みたい】
コメント