所得金額調整控除(年金等)の創設により、令和2年分から一定額以上の給与と年金の両方がある人は、最大10万円の控除が受けられるようになりました。
ただし、所得金額調整控除(年金等)は、年末調整での適用ができないため、結果的に、確定申告が必要な人(したほうがいい人)の範囲が広がりました。
そこで、この記事では、
「給与と年金の両方がある人で、確定申告が必要になる人」
について、紹介しています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 仕事で年末調整などを担当している
- 所得金額調整控除(年金等)の対象かどうか知りたい
- 確定申告を行う判断基準が知りたい
なお、この記事では、次のことを前提として書いています。
確定申告が必要な人「所得金額調整控除(年金等)を考慮しない場合」
まずは、「所得金額調整控除(年金等)を考慮しない場合、どんな人が確定申告が必要になるのか?」についてです。
確定申告は、次のいずれかに該当すると必要になります。
- 給与収入が「2,000万円」を超える人
- 年金収入が「400万円」を超える人
- 給与収入が「2,000万円」以下で、公的年金等に係る雑所得の金額が「20万円」を超える人
- 年金収入が「400万円」以下で、給与所得の金額が「20万円」を超える人
法的根拠としては、このとおり。
[令和2年4月1日現在法令等]
大部分の給与所得者の方は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますから、確定申告の必要はありません。
しかし、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人は、原則として確定申告をしなければなりません。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
公的年金等に係る確定申告不要制度
[令和2年4月1日現在法令等]
平成23年分以後は、その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません。
1と2については、収入額なので、そのまま給与や年金の受取り額にて判断します。(一定額の通勤手当など、一部収入に含まないものもありますが)
3と4については、所得金額の計算が必要になるため、わかりやすく、収入額を算出しておきます。
公的年金等に係る雑所得の金額が「20万円」とは?
公的年金等に係る雑所得とは、年金収入から「公的年金等控除額」を引いた金額のことです。
公的年金等控除額は、次の計算式にて算出されます。
【公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が「1,000万円以下」の場合】
受給者の区分 | その年中の公的年金等の収入金額(A) | 控除額 |
年齢65歳以上の人 | 330万円以下 | 110万円 |
330万円超 410万円以下 | (A)×25%+27万5,000円 | |
410万円超 770万円以下 | (A)×15%+68万5,000円 | |
770万円超 1,000万円以下 | (A)×5%+145万5,000円 | |
1,000万円超 | 195万5,000円 | |
年齢65歳未満の人 | 130万円以下 | 60万円 |
130万円超 410万円以下 | (A)×25%+27万5,000円 | |
410万円超 770万円以下 | (A)×15%+68万5,000円 | |
770万円超 1,000万円以下 | (A)×5%+145万5,000円 | |
1,000万円超 | 195万5,000円 |
【公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が「1,000万円超2,000万円以下」の場合】
受給者の区分 | その年中の公的年金等の収入金額(A) | 控除額 |
年齢65歳以上の人 | 330万円以下 | 100万円 |
330万円超 410万円以下 | (A)×25%+17万5,000円 | |
410万円超 770万円以下 | (A)×15%+58万5,000円 | |
770万円超 1,000万円以下 | (A)×5%+135万5,000円 | |
1,000万円超 | 185万5,000円 | |
年齢65歳未満の人 | 130万円以下 | 50万円 |
130万円超 410万円以下 | (A)×25%+17万5,000円 | |
410万円超 770万円以下 | (A)×15%+58万5,000円 | |
770万円超 1,000万円以下 | (A)×5%+135万5,000円 | |
1,000万円超 | 185万5,000円 |
【公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が「2,000万円超」の場合】
受給者の区分 | その年中の公的年金等の収入金額(A) | 控除額 |
年齢65歳以上の人 | 330万円以下 | 90万円 |
330万円超 410万円以下 | (A)×25%+7万5,000円 | |
410万円超 770万円以下 | (A)×15%+48万5,000円 | |
770万円超 1,000万円以下 | (A)×5%+125万5,000円 | |
1,000万円超 | 175万5,000円 | |
年齢65歳未満の人 | 130万円以下 | 40万円 |
130万円超 410万円以下 | (A)×25%+7万5,000円 | |
410万円超 770万円以下 | (A)×15%+48万5,000円 | |
770万円超 1,000万円以下 | (A)×5%+125万5,000円 | |
1,000万円超 | 175万5,000円 |
結果、「公的年金等に係る雑所得の金額が20万円」とは、次のとおりとなります。
【公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が「1,000万円以下」】
- 65歳以上 130万円(控除額 110万円 + 20万円)
- 65歳未満 80万円(控除額 60万円 + 20万円)
【公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が「1,000万円超2,000万円以下」】
- 65歳以上 120万円(控除額 100万円 + 20万円)
- 65歳未満 70万円(控除額 50万円 + 20万円)
【公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が「2,000万円超」】
- 65歳以上 110万円(控除額 90万円 + 20万円)
- 65歳未満 60万円(控除額 40万円 + 20万円)
給与所得の金額が「20万円」とは?
給与所得の金額とは、給与収入から「給与所得控除額」を引いた金額のことです。
給与所得控除額は、次の計算式にて算出されます。
給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
出典:国税庁「給与所得控除」
給与所得控除の最低額は、「550,000円」ですので、
550,000円 + 200,000円 = 750,000円
となり、「給与所得の金額が20万円」とは、給与収入が「75万円」のことをいいます。
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確定申告をしたほうがいい人「所得金額調整控除(年金等)を考慮した場合」
次に、「所得金額調整控除(年金等)を考慮した場合、どんな人が確定申告をしたほうがよいのか?」についてです。
所得額調整控除(年金等)は、次の要件を2つとも満たす場合、対象となります。
- 給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方がある
- 1の合計額が、10万円を超える
要件を満たす場合は、次の計算式で、所得金額調整控除(年金等)の金額を算出します。
【所得額調整控除額(年金等)の計算式】
算出した控除額が、「0円より多いのであれば、確定申告したほうがよい」ということになります。
所得額調整控除(年金等)は、適用になるパターンが多すぎるので、ざっくりではありますが、一覧表にしておきます。
参考までに。
【65歳以上・公的年金等に係る雑所得以外の所得「1,000万円以下」の場合】
給与収入 | 年金収入 | 所得金額調整控除額 |
550,000円 | 1,100,000円 | 0円 |
650,000円 | 1,100,000円 | 0円 |
650,000円 | 1,110,000円 | 10,000円 |
650,000円 | 1,150,000円 | 50,000円 |
650,000円 | 1,200,000円 | 100,000円 |
560,000円 | 1,200,000円 | 10,000円 |
600,000円 | 1,200,000円 | 50,000円 |
600,000円 | 1,150,000円 | 0円 |
630,000円 | 1,170,000円 | 50,000円 |
【65歳未満・公的年金等に係る雑所得以外の所得「1,000万円以下」の場合】
給与収入 | 年金収入 | 所得金額調整控除額 |
550,000円 | 600,000円 | 0円 |
650,000円 | 600,000円 | 0円 |
650,000円 | 610,000円 | 10,000円 |
650,000円 | 650,000円 | 50,000円 |
650,000円 | 700,000円 | 100,000円 |
560,000円 | 700,000円 | 10,000円 |
600,000円 | 700,000円 | 50,000円 |
600,000円 | 650,000円 | 0円 |
630,000円 | 670,000円 | 50,000円 |
【関連記事】
エクセルが使える方は、こちらの記事で、「所得額調整控除額(年金等)を自動計算できるファイル」を紹介しています。
ちなみに、給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額の最大額である「所得10万円」とは、
- 年間の給与収入 650,000円
- 年間の年金収入 1,200,000円(65歳未満は、700,000円)
のことです。
なので、給与と年金の両方の収入が、上記の金額を超えている場合は、所得金額調整控除(年金等)の最大額である「10万円」の控除が受けられるということになります。
まとめ
ここで、「給与と年金の両方がある人で、確定申告をした方がいい人」について、まとめておきます。
次のいずれかに該当する人は、所得金額調整控除(年金等)を受けられます。
- 年間の給与収入が65万円以上で、年間の年金収入が110万円(65歳未満は、60万円)を超える人
- 年間の年金収入が120万円以上(65歳未満は、70万円以上)で、年間の給与収入が55万円を超える人
もちろん、これ以外にも、たくさんのパターンがあります。
でも、基本はこの考え方で良いと思います。(細かくなり過ぎちゃうんで)
ただ、計算が面倒じゃなければ、
- 年間の給与収入が55万円以上
- 年間の年金収入が110万円以上(65歳未満は、60万円以上)
の条件をいずれも満たす人は、所得金額調整控除額(年金等)を試算しておくことをオススメします。
控除を受けられる場合がありますので。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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