2019年10月の消費増税にあわせて、「介護職員等特定処遇改善加算」が導入されました。
これは、強烈な介護人材不足への対応策として、主に「経験・技能のある介護職員」さんに対し、さらなる処遇改善を目的に行われたものです。
ただ、この加算、処遇改善を行う範囲(職種)が、かなり柔軟なルールになっているため、事業所の選択(制度運用のしかた)によって、介護職員さんの給与に大きな差が出ちゃいます。
つまり、簡単に言うと、
「勤務する事業所(職場)によって、給与がぜんぜん違っちゃう」
ってことです。
そこで、この記事では、介護職員等特定処遇改善加算の制度から見た、
「介護職員さんの資格(介護福祉士)と経験をしっかり評価してくれる事業所の探し方・選び方」
について、僕の考えをまとめておきます。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 介護の仕事をしていて、転職を考えている
- 介護福祉士として働いていて、現在の処遇(賃金)に不満を感じている
- 「勤続10年の介護福祉士で、月額8万円支給」の制度を知りたい
介護職の転職は、事業所(職場)選びが、さらに重要に!!
介護職員等特定処遇改善加算の導入により、「経験・技能のある介護職員」さんの給与は、大幅にアップする可能性があります。
主な理由としては、「介護職員等特定処遇改善加算」の要件の1つである、
- 経験・技能のある介護職員のうち1人は、賃金改善に要する費用の見積額が「月額8万円以上」であること
- 経験技能のある介護職員のうち1人は、賃金改善後の賃金の見積額が「年額440万円以上」であること
のどちらかの要件を、事業所は満たさなければならないからです。
要するに、
「給与を月額8万円以上アップさせるか、年収を440万円以上にしなさいよ」
ってことです。
これだけ聞くと、ただただ嬉しい制度なんですが、事業所(職場)の選択によっては、その恩恵が受けられない、もしくは、すっごく小さくなってしまう場合があるんです。
「じゃあ、そうならないためにどうすればいいのか?」
ですが、転職先を選ぶときには、必ず、次の3つの確認(質問)をするようにしてください。
- 介護職員等特定処遇改善加算の算定をしていますか?
- 介護職員等特定処遇改善加算で、賃金改善を行う職種は何ですか?
- 「経験・技能のある介護職員」の条件(定義)は何ですか?
この3つを確認をしておくことで、ある程度、「あなたの資格(介護福祉士)と経験をしっかり評価してくれる事業所」かどうかがわかります。
つまり、「給与が高くなるかどうか?」がわかるってことです。
それでは、「なぜ?この3つの質問(確認)が大切なのか」について、1つずつ説明していきます。
「介護職員等特定処遇改善加算」を算定をしてない事業所は、転職先としてオススメできない
まずは、「介護職員等特定処遇改善加算の算定をしていますか?」の確認についてです。
事業所(職場)が、「月額給与8万円以上アップ、もしくは、年収を440万円以上」という、経験・技能のある介護職員さんの賃金改善を行うには、介護職員等特定処遇改善加算の算定要件を満たさなければなりません。
介護職員等特定処遇改善加算の算定ができなければ、賃金改善を行うための介護報酬が給付されませんので、当然ですね。
なので、
「介護職員等特定処遇改善加算の算定をしていますか?」
という質問の答えが、
「算定していません」
の場合は、転職先としてはあまりオススメできません。
そもそも、「介護職員等特定処遇改善加算」は、職員さんのための加算なのに、事業所の都合で算定してないなんて、職員さんを大切にしている事業所とは思えませんし・・・
そこで、ざっくりではありますが、介護職員等特定処遇改善加算の主な算定要件について紹介しておきます。
あなたの給与に直接的に影響が出ますので、ぜひ、チェックしてみてください。
【介護職員等特定処遇改善加算の要件】
- 基準に適合した、介護職員等の賃金改善計画に基づき、賃金改善を行っていること
- 介護職員等特定処遇改善計画書を、すべての職員に周知し、都道府県知事に届出していること
- 事業年度ごとに処遇改善の実績を都道府県知事に報告すること
- サービス提供体制強化加算や特定事業所加算の算定をしていること(介護職員等特定処遇改善加算Ⅱを算定する場合は不要)
- 現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを算定していること
これらの要件の中で、僕が一番気にしているのは、「5.現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを算定していること」です。
理由としては、
- 新加算である「介護職員等特定処遇改善加算」は、現行の処遇改善加算の上位基準という位置づけ
- 現行の処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を算定してない事業所は、そもそも、「月額給与8万円以上アップ、もしくは、年収を440万円以上」という賃金改善はない
という2点です。
この2つの理由から、現在働いている事業所が、現行の「介護職員処遇改善加算」を算定していないなら、さらなる処遇改善の可能性は低いということになります。(これから算定を始めれば別ですが・・・)
なので、もしあなたが「介護職員処遇改善加算」を算定していない職場で働いているなら、早めに転職を考えてみたほうがいいかもしれません。
【処遇改善加算の全体のイメージ】
出典:厚生労働省「2019年度介護報酬改定について」
また、「1.基準に適合した」の基準とは、
- 経験・技能のある介護職員のうち1人は、賃金改善に要する費用の見積額が「月額8万円以上」または、賃金改善後の賃金の見積額が「年額440万円以上」であること
- 経験・技能のある介護職員の賃金改善に要する費用の見込額の平均が、その他の介護職員(経験・技能のある介護職員を除く。)の賃金改善に要する費用の見込額の平均の2倍以上であること
- その他の介護職員(経験・技能のある介護職員を除く。)の賃金改善に要する費用の見込額の平均が、介護職員以外の職員の賃金改善に要する費用の見込額の平均の2倍以上であること
の3つです。(3つの要件を、すべて満たす必要があります)
イメージとしては、こんな感じです。
出典:厚生労働省「2019年度介護報酬改定について」
もっと詳しく知りたい人は、こちらのサイトを。
経験年数10年以上の介護福祉士は、「処遇改善を行う範囲(職種)」の確認が必須
次に、「介護職員等特定処遇改善加算で、賃金改善を行う職種は何ですか?」の確認についてです。
「介護職員等特定処遇改善加算」を算定する事業所は、次の3つから、処遇改善を行う職種を選ぶことができます。
- 経験・技能のある介護職員のみに処遇改善を実施
- すべての介護職員に処遇改善を実施
- 看護師などを含む、すべての職種に処遇改善を実施
色々な職種に処遇改善が行えるのはいいんですが、「経験・技能のある介護職員」さんからすれば、非常に嬉しくない制度です。
というのも、
「介護職員等特定処遇改善加算」は、現行の処遇改善加算を除いた、介護給付費の合計に対し、加算率を掛け、給付額(賃金改善額)を算出します。
そして、その給付額(賃金改善額)をもとに、処遇改善を行う職員(職種)に分配することになります。
つまり、「介護職員等特定処遇改善加算」とは、
「賃金改善を行う職員数が増えれば増えるほど、1人あたりの賃金改善額が少なくなる」
という制度なんです。
図にすると、こんなイメージです。
出典:厚生労働省「2019年度介護報酬改定について」
そもそもは、
「介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について、月額平均8万円相当の処遇改善を行う」
とされていたんですけどね~
かなり、変わっちゃいました・・・
なので、介護福祉士の資格をお持ちで、経験年数が10年以上あるなら、
「1.経験・技能のある介護職員のみに処遇改善を実施」
の事業所を選んだ方が、賃金改善額が大きくなる可能性が高いってことです。
もしあなたが、現在の給与(待遇)に不満があり、転職を考えているなら、必ず、転職先の事業所へ「処遇改善を行う範囲(職種)」の確認を行ってください。
転職先の「処遇改善を行う範囲(職種)」によって、賃金改善額(給与)が変わっちゃいますので。
まぁ、給与に不満を感じてなかったとしても、給与は少ないより、多いほうがいいと思いますので、確認は必須だと僕は思いますが・・・
勤続10年の考え方は、事業所次第!?介護福祉士の経験は、事業所(職場)によって変わる
続いて、「経験・技能のある介護職員の条件(定義)は何ですか?」の確認についてです。
介護職員等特定処遇改善加算は、
「介護福祉士であって、経験および技能を有する介護職員と認められるもの(経験・技能のある介護職員)」
の賃金改善額が大きくなるように基準が設けられています。
ただ、「経験・技能を有する介護職員」の内容(定義)については、次のとおり、かなり曖昧な表現になっています。
「経験および技能を有する介護職員」は、勤続10年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、勤続10年の考え方は、事業所の裁量で設定
出典:厚生労働省「2019年度介護報酬改定について」
かなり、わかりづらい書き方ですが、
「介護福祉士の資格を持っている人なら、勤続10年については、事業所が柔軟にルールを設定していいよ」
ってことです。
ということは、事業所(事業主)の判断によって、
- 介護福祉士の資格を取ってから、同じ事業所で勤続10年
- 介護福祉士の資格を取ってから、同じ法人(グループ)で勤続10年
- 介護福祉士の資格を取る前の勤務期間を含んだ、同じ事業所で勤続10年
- 介護福祉士の資格を取る前の勤務期間を含んだ、同じ法人(グループ)で勤続10年
- 介護福祉士の資格を取ってからの、介護福祉士としての経験年数10年
- 介護福祉士の資格を取る前の経験年数を含んだ、介護福祉士としての経験年数10年
- 勤続年数も経験年数も、10年必要なし?
などなど、色々なパターンがありえるってことです。
したがって、介護福祉士の資格を持っている場合、
あなたのキャリア(経験・技能など)が、「経験・技能を有する介護職員」に該当するかどうか、事業所(転職先など)に確認しないとわからない
ってことになります。
だから、
「経験・技能のある介護職員の条件(定義)は何ですか?」
の確認が必要なんです。
介護職の資格・経験別オススメ事業所(特定処遇改善加算から見た)
賃金改善額(給与額)を大きくするために、介護職員さんの資格と経験年数によって、どういう事業所を選べばいいか、一覧表にしておきます。
パターン | 資格 |
勤続(経験)年数 |
オススメの事業所タイプ |
A | 介護福祉士あり | 10年以上 |
1.経験・技能のある介護職員のみ |
B | 介護福祉士あり | 10年未満 | 1.経験・技能のある介護職員のみ 2.すべての介護職員 |
C | 介護福祉士なし | 要件なし |
2.すべての介護職員 |
パターンAは、介護福祉士の資格があり、勤続年数も10年を超えているので、
「1.経験・技能のある介護職員のみ」
に処遇改善を行う事業所1択です。
パターンBは、転職を希望する事業所(職場)の「勤続10年」の考え方に左右されるため、
「1.経験・技能のある介護職員のみ」
「2.すべての介護職員」
の2択となります。
パータンCは、処遇改善を行う範囲(職種)が、
「2.すべての介護職員」
の事業所1択です。
ちなみに、あくまで僕の考えですが、
- 介護福祉士の資格取得前や経験年数が少ないときは、「2.すべての介護職員」に処遇改善を行う事業所で働く
- 介護福祉士の資格を取得し、経験10年を満たしたときに、「1.経験・技能のある介護職員のみ」に処遇改善を行う事業所に転職する
というのが一番効率的だと思います。
参考までに。
まとめ
ここで、「介護職員さんの資格(介護福祉士)と経験をしっかり評価してくれる事業所の探し方・選び方」のポイントをまとめておきます。
- 現行の「介護職員処遇改善加算(Ⅰ)」を算定していない事業所は選ばない
- 新たな加算「介護職員等特定処遇改善加算」を算定している事業所を選ぶ
- 介護福祉士で、経験年数が10年以上あるなら、「1.経験・技能のある介護職員のみ」に処遇改善を行う事業所を選ぶ
- 介護福祉士の資格や経験年数が要件を満たせないなら、「2.すべての介護職員」に処遇改善を行う事業所を選ぶ
- 必ず「経験・技能のある介護職員」の条件(定義)を確認する
介護職員等特定処遇改善加算の賃金改善額は、月額8万円以上(もしくは年収440万円以上)と、かなり大きく、現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)の月額3万7千円とあわせると、「月額11万7千円」という、かなり強烈な金額になります。
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「月額11万7千円」って、ほんと、すっごい金額です。
年収で言ったら、140万超えちゃいますし、通常の昇給で、考えたら、軽く10年以上かかっちゃいます・・・
ぜひ、介護職員等特定処遇改善加算の導入にあわせ、
「あなたの資格(介護福祉士)と経験をしっかり評価してくれる事業所」
を探してみてください。
事業所(職場)を、しっかり探すかどうかで、待遇(給与など)が大きく変わっちゃいますので。
ちなみに、転職の際には、必ず、再就職手当の受給を検討しましょう。
再就職手当は、ハローワークから支給される手当で、
- 2~3ヶ月も休むつもりがない
- すぐに次の職場を探す予定
- ハローワークで仕事を探す気がない(人材紹介サービスを使うなど)
という人でも、支給を受けられる場合があります。
また、再就職手当は、以前に比べ、給付率が上がったため、結構な金額になってます。
もらわないのはもったいないです。
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